投資に必勝法は無い．しかし，未だに『○○で勝つ』とか『儲かる××』といった本が売れ，メディアではアナリスト，ブローカーやトレーダー，ファンドマネージャーが尤もらしいコメントを発している．所謂「投資の必勝本」は問題外としても，アナリストたちは頭がキレて知識も経験もある人たちだ．しかし，彼らの多くの「予言」は外れ，外れても臆面もなく再びコメントを垂れ流す．著者ハワード・カーツは彼らを「フォーチュンテラー」と呼ぶ．
本書『フォーチュンテラーズ』では，ITバブル期のウォール街を舞台に，「予言」を発するフォーチュンテラーたちを描いた記録である．フォーチュンテラーの予言は，「無知」から外れる場合もあるが，特定銘柄に利害関係をもつことから外れる場合もあるという．訳者・池村千秋は「会社の評判を上げたい企業幹部は言うまでもなく、証券会社のアナリストにとって企業は投資銀行業務の大事な得意先だし、ファンドマネジャーはマスコミなどで紹介する銘柄を自分で保有している場合が多い」と解説し，フォーチュンテラーが「完全な第三者」に成り得ないという．
映画『ウォール街』の投資家ゴードン・ゲッコーは"The most valuable commodity I know of is information."と述べ，ブルームバーグなどのディスプレイに噛り付いてないで自分で情報（事実）を収集することの重要性を説いた．マーケットで信用できるのは事実と自分の論理だけであり，本書を読むことでその重要性を再認識することができる．
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