設計事務所に勤務し、数多くのマンション建設に関わってきた著者が指摘する
優良マンションとダメマンションを見分けるためのポイント集。
ちょうどマンションの耐震工事偽装問題が世間を騒がせていました頃に書かれた本なので、
時代の追い風を受けていたかと思われます。全編を通して問題とされているのは
「デベロッパー・ゼネコンの容積率を限界まで使って、只管コストダウンを追い求めた物件至上主義」ですね。
この本で著者が指摘していることの問題の根本がそこに行き着くと言っても過言ではありません。
要は「住まいという空間を創り出すのだ」という意識が欠落している業者が甚だ多いのです。
その構造・間取り等から一流と三流を見抜こうというのがこの本の主旨ですね。
まず
・大手が一流マンションを造る訳では必ずしもない
として、所謂「大手信仰」に警鐘を鳴らしております。
著者は基本的に超高層マンションには否定的です。上階は地震の際に揺れが酷く、また住人がファミリー層とシングル層の混合になって生活スタイルの違いからトラブルの原因にもなります。
住人が外に出難くなり、運動不足等も懸念されます。遮音性も低いらしい。
・地盤がN値50以上の良好な地盤に建てられているのか。
・周辺建物の日陰の影響をどれだけ受けるのか。
・建物の配置は「I型」か「L型」が理想。「E型」「F型」「コの字型」は日当たり等に問題が出るので避ける。
・高さ45m以内なら容積率に余裕を見ている14階建が理想。15階建だと逆に余裕無く建てているということ。
・「AVルーム」「キッズルーム」「温泉施設」「噴水」等は管理費等の無駄な出費が増える不良設備。
・エレベーターの数は基本的に50戸につき1台。
・駐車場が100％確保されているか。都内でも85％は必要。
・昭和56年以降の新耐震基準で造られているかどうか。
・階高（建物の1層分の高さ）が充分に取られているかどうか。理想は3ｍ以上。
・床・天井ともに「二重床」「二重天井」で遮音性を高めていること。
・超高層マンション以外は外壁にALC版を使っていないこと。単にコストダウンのためでしかないから。
・外階段を鉄骨にすると経年で劣化が目立ってくる。外部階段も鉄筋コンクリート製であること。
・戸境壁のコンクリの厚さは最低でも18cm以上。仕上げはコンクリにクロスの直貼りであること。
・石膏ボードの厚さも9.5mmではなく、12.5mmを使用していること。
・床のスラブは20cm以上であること。
・LDKが12畳以下で正方形だと家具が置き難い。
・3LDK以上の間取りなら70平米はないと狭くなる。
・トイレのペーパーホルダーが左側の壁にあり、便器の先端から入り口の壁まで60cm以上の余裕があること。
・共用の配水管が「鋳鉄管」であること。
・オール電化マンションは東日本大震災でも電力供給の問題が出たのでメリットばかりではない。
・24時間換気は吸気・排気共に機械で行う方式であること。
このあたりが重要なポイントになる模様です。
と、書いても多くの読者は建築の部材や間取りや工法には素人だと思いますので、後はモデルルーム等に出掛けて
実際の現場でチェックしたり、質問してみたりするのがいいかと思われます。
実際にマンション購入を検討されている方だけでなく、昨今流行の「不動産投資家」も読んで得るものが多いかと思われます。
投資家の方は設備や間取りや工法に詳しい方は少ないと思われます分、余計に。
本の知識＋現場での確認をすることが大切です。
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