キレている。ものすっごいキレている。こんなに激怒しながら書かれた罵倒の嵐に満ち満ちた口の悪い書籍は久しぶりに見た。ニーチェ以来かもしれない。こんなに激しいのでは勿論アマゾンなどに載せようとすれば部分的であれ確実にNGワードの嵐に絡めとられるに違いないし、自分と意見を異にする人に冷静に読んでもらおうと思ってもそれは困難な事である。著者のどこから湧き出てくるのだろうという感心が止まらないほどの罵倒テク、罵倒的表現の嵐からは高レベルな悪口の上手い言い方、人を徹底的に言葉で傷つける方法を学び取る事が出来るだろう。特に執拗に敵の言葉を引用し、さらにその引用の至る所に（！）を執拗に付け足す事で徹底的に馬鹿にする手法が印象深い。
私はこのように著者の過剰なまでの口の悪さを指摘する事で感情的に著者を批判したいわけではない。むしろその批判内容に関してはかなり正論的であり、批判されている側は確かに馬鹿な事も言っている。子供は天使だ、子供は絶対悪くない、悪いのはいつでも大人であり教師だ、子供はみんな学びたがっている、学校では子供が神様だ、学校の授業なんて全部が権力の暴力なのだから解体した方がいい…といった言説は確かにぶっとんだ要素を持っている。リベラリズムに依拠しており、管理教育に反対している私が著者に積極的に反論するとすれば、一部四節のイデオロギー的批判の批判の箇所（ここで批判されるイデオロギーは明白にリベラリズムであった）だろうと思い、構えていたのだが残念（？）な事にそこでは著者のそれまでの激烈で辛口な調子は急激に収まり、冷静な調子で「学校の病理は体罰などの管理教育の強化で生まれたというよりは、時代的な問題として病理が発生しそれに対応する形で管理教育が強化されたんじゃないの」という話がされ、殆どそれだけで終る。他の批判批判に見られるような罵倒テクも殆ど見られる事はない。ただ次の政治的批判の批判になると再び激しさと口の悪さを取り戻している。
本書は二部構成で一部では上記のように理想主義的、子供中心主義的、左翼的な教育論が激烈な調子で徹底的かつ執拗に批判され、それらの教育論は共通して制度の作り手、担い手だけの問題、つまり教師などの問題だけを糾弾するものであり、授業を受ける側、子供の問題には無批判的で制度の現実の分析を欠いていると批判される。こういった倫理主義的批判は教育の現在、学校現象の認識にとって不毛であるらしい。もっと現実の子供の姿、現実の学校の形式を考慮しての教育論が必要だというのが著者の主張だ。現在の学校現象を正しく読み解くにはまず学校の集団的関係の特殊性、形式的在り方（学校形式論）、現在の文化的変動（文化状況論）、思春期的関係意識の特質（少年論）の三つが論じられなくてはならない。二部からはそのような立場からの教育論が展開される。著者は自ら塾も経営していて教育活動も行っているようで著者の書く子供の姿は大変にリアルなものであった。本書はそういったしばしば天使的でも理想的でもないリアルな認識を根底に置いた教育論と言えるだろう。
無料のKindleアプリをダウンロードして、スマートフォン、タブレット、またはコンピューターで今すぐKindle本を読むことができます。Kindleデバイスは必要ありません。
ウェブ版Kindleなら、お使いのブラウザですぐにお読みいただけます。
携帯電話のカメラを使用する - 以下のコードをスキャンし、Kindleアプリをダウンロードしてください。
何か問題が発生しました。後で再度リクエストしてください。
この商品をチェックした人はこんな商品もチェックしています
ページ 1 以下のうち 1 最初から観るページ 1 以下のうち 1
著者について
著者をフォローして、新作のアップデートや改善されたおすすめを入手してください。
