前著『伊勢斎宮と斎王』は斎宮入門で本書はやや専門的。今や斎宮について最も
説明のうまい人の著作である。
斎宮の和歌などを論じた著作は豊富にあるが、「延喜式」「江家次第」「儀式帳」
などの出典が明記されていないので信頼性に難がある。その点、本書は丁寧に出典
を記してある。したがってさらに斎宮を学ぼうとする人にとっては実にありがたい
ものと言えるだろう。
ただ「光仁天皇が聖武天皇の娘婿、つまり称徳の義兄弟という資格で即位したので
あれば」（Ｐ８７）との仮定は歴史の事実に違背している。光仁天皇は天智天皇・
施基親王と続く皇統にあって、娘婿云々が即位に関係したことは史書に確認できな
い。
第１４章から最終章まではかなりむつかしいが考えさせられる。たしかに「神宮の
歴史は、深くて厚い」。やはり壬申の乱の分析がまだまだ必要だということかもし
れない。今後はさらに神宮、あるいは歴代の大御神解釈を解説してほしい。
「斎宮歴史博物館」のサイトも充実しているが、本書は『伊勢斎宮と斎王』ととも
に斎宮を知る最良の書である。また著者にはこの先、奈良・平安の歴史について、
これまでとは異なる見方を教えてくれる可能性があるように思う。
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