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ハーメルンの笛吹き男―伝説とその世界 (ちくま文庫) 文庫 – 1988/12/1
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伝説化した実在未解決事件の謎を解く!
伏線を回収していくような快感が走る、歴史学の名著 【解説】石牟礼道子
《ハーメルンの笛吹き男》伝説はどうして生まれたのか。13世紀ドイツの小さな町で起こったひとつの事件の謎を、当時のハーメルンの人々の生活を手がかりに解明、これまで歴史学が触れてこなかったヨーロッパ中世社会の差別の問題を明らかにし、ヨーロッパ中世の人々の心的構造の核にあるものに迫る。新しい社会史を確立するきっかけとなった記念碑的作品。阿部史学、渾身の一作。
「ただ単に「事実」を「解明」するのではなく、そのような「伝説」を生むことになった「空気」のようなものまで浮かび上がらせる。
大学生のときに読んで、こんなに面白い歴史の本があるのかと思った。」
――柴田元幸
【目次】
第1部 笛吹き男伝説の成立
はじめに
第1章 笛吹き男伝説の原型
グリムのドイツ伝説集/鼠捕り男のモチーフの出現/最古の史料を求めて/失踪した日付、人数、場所
第2章 1284年6月26日の出来事
さまざまな解釈をこえて/リューネブルク手書本の信憑性/ハーメルン市の成立事情/ハーメルン市内の散策/ゼデミューンデの戦とある伝説解釈/「都市の空気は自由にする」か/ハーメルンの住民たち/解放と自治の実情
第3章 植民者の希望と現実
東ドイツ植民者の心情/失踪を目撃したリューデ氏の母/植民請負人と集団結婚の背景/子供たちは何処へ行ったのか?/ヴァン理論の欠陥と魅力/ドバーティンの植民遭難説
第4章 経済繁栄の蔭で
中世都市の下層民/賎民=名誉をもたない者たち/寡婦と子供たちの受難/子供の十字軍・舞踏行進・練り歩き/四旬節とヨハネ祭/ヴォエラー説にみる<笛吹き男>
第5章 遍歴芸人たちの社会的地位
放浪者の中の遍歴楽師/差別する側の怯え/「名誉を回復した」楽師たち/漂泊の楽師たち
第2部 笛吹き男伝説の変貌
第1章 笛吹き男伝説から鼠捕り男伝説へ
飢饉と疫病=不幸な記憶/『ツァイトロースの日記』/権威づけられる伝説/<笛吹き男>から<鼠捕り男>へ/類似した鼠捕り男の伝説/鼠虫害駆除対策/両伝説結合の条件と背景/伝説に振廻されたハーメルン市
第2章 近代的伝説研究の序章
伝説の普及と「研究」/ライプニッツと啓蒙思潮/ローマン主義の解釈とその功罪
第3章 現代に生きる伝説の貌
シンボルとしての<笛吹き男>/伝説の中を生きる老学者/シュパヌートとヴァンの出会い
あとがき
解説 石牟礼道子「泉のような明晰」
参考文献
- ISBN-104480022724
- ISBN-13978-4480022721
- 出版社筑摩書房
- 発売日1988/12/1
- 言語日本語
- 本の長さ319ページ
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出版社より
マルクト教会のガラス絵から模写した現存する最古の<ハーメルンの笛吹き男>の絵(1592)
<ハーメルンの笛吹き男>伝説とは
日本では鎌倉時代後期にあたる1284年。ドイツ北部の小都市ハーメルンの町にネズミが大繁殖し、人々を悩ませていた。ある日、町に笛を持ち、色とりどりの布で作った衣装を着た男が現れ、報酬をくれるなら街を荒らしまわるネズミを退治してみせると持ちかけた。ハーメルンの人々は男に報酬を約束した。男が笛を吹くと、町じゅうのネズミが男のところに集まってきた。男はそのままヴェーザー川に歩いてゆき、ネズミを残らず溺死させた。しかしネズミ退治が済むと、ハーメルンの人々は笛吹き男との約束を破り、報酬を払わなかった。
約束を破られ怒った笛吹き男は捨て台詞を吐きいったんハーメルンの街から姿を消したが、6月26日の朝(一説によれば昼間)に再び現れた。住民が教会にいる間に、笛吹き男が笛を鳴らしながら通りを歩いていくと、家から子供たちが出てきて男のあとをついていった。130人の少年少女たちは笛吹き男の後に続いて町の外に出てゆき、市外の山腹にあるほら穴の中に入っていった。そして穴は内側から岩でふさがれ、笛吹き男も子供たちも、二度と戻ってこなかった。物語によっては、足が不自由なため他の子供達よりも遅れた1人の子供、あるいは盲目と聾唖の2人の子供だけが残されたと伝える。
(フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)より一部引用』)
商品の説明
著者について
登録情報
- 出版社 : 筑摩書房 (1988/12/1)
- 発売日 : 1988/12/1
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 319ページ
- ISBN-10 : 4480022724
- ISBN-13 : 978-4480022721
- Amazon 売れ筋ランキング: - 38,580位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 18位伝承・神話 (本)
- - 56位昔話・伝承
- - 67位ヨーロッパ史一般の本
- カスタマーレビュー:
著者について
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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グリム童話で有名な「ハーメルンの笛吹き男」が、じつは歴史的な事実を元にしているということを、かつて耳にしたことがありました。
中世ヨーロッパの社会史としての分析による著名な作品として本書の存在を知るに至り、これは必読とばかり、読んでみることに。
【率直な感想】
本書の構成ですが。
○第一部 笛吹き男伝説の成立
第一章 笛吹き男伝説の原型
第二章 一二八四年六月二六日の出来事
第三章 植民者の希望と現実
第四章 経済繁栄の蔭で
第五章 遍歴芸人たちの社会的地位
○第二部 笛吹き男伝説の変貌
第一章 笛吹き男伝説から鼠捕り男伝説へ
第二章 近代伝説研究の序章
第三章 現代に生きる伝説の貌
<第一部に関して>
この第一部の最初の部分は、これまで、「ハーメルンの笛吹き男」伝説の研究の中で語られてきた諸説を解説していて、それなりに説得力のあるものもあり、興味深く読むことができました。
読んでいて、熱中してしまったのは、第三章以下でした。
ここから作者は、歴史的背景をもとに分析を始めます。
ただ、笛吹き男伝説と呼ばれているとおり、庶民の間で語り継がれていたものなので、あまり表立って取り上げられることのなかった、庶民の歴史にスポットを当てることになるのですが、ここは読んでいてちょっと辛くなる部分かもしれません。
「差別」「貧困」「災害」など、いつの世の中でも真っ先に困難な状況に置かれるのが庶民であり、中世ヨーロッパでもそれは例外ではなかったようです。
しかし、その現実が、笛吹き男伝説として長く語り継がれる要因であったという論調は、とても納得のいくものでした。
<第二部について>
笛吹き男伝説には、当初、鼠捕り男のモチーフはなく、後から付け加わったものということはあまり知られていないことと思います。
私も、本書で初めて知りました。
なぜ付け加わったのかについては、実際に本書を読んで理解されるのが一番有効であろうと思いますので、詳細は記載しませんが、「伝説」の中に込められた庶民の思いというものが的確に伝わってくる、格調高き論説になっていたことに感銘を受けました。
【全体評価】
「伝説」というと、グリム童話で取り上げられていることから察せられるとおり、いわゆる「メルヘン」として語られることが多いです。
しかし、この笛吹き男伝説のように、史実がベースにある場合、十分に社会科学として、調査・研究の対象になるものなのだ、ということがよく分かり、好著と言われるのも納得の一冊でした。
伝説は実際の出来事が庶民に語り継がれるうちにいつしか形成され、そこには庶民の隠された願望や想いが無意識のうちに込められる。そして笛吹き男伝説は、身分制の桎梏の下、戦乱や災害にひたすら耐えてきた庶民のやり場のない怒りの捌け口として、事件の痛ましい記憶とともに伝承されてきた。そのため伝説の変遷を探究することは庶民の歴史を明らかにすることになるという。
しばしば理不尽に悲惨な運命に見舞われた庶民にとって、当初、罪のない子供を理由もなく連れ去る笛吹き男は正に悪魔であった。
転機となるのは16世紀に鼠退治の話が付け加えられてからである。笛を吹くだけで苦も無く鼠を駆除する男は、日々の仕事を価値の源泉と信じて市民的世界を拓いた人々に対し、自らが揚棄した筈の古代の呪術的世界からの使者として、その合理的思考への再考を迫った。またいつの世でも政治・宗教上の争いに巻き込まれ苦しむ庶民は、市当局の約束破りに憤慨する笛吹き男に自らを重ね、その復讐に溜飲を下げるようになった。この伝説が現代でも語り継がれる理由はその辺りにあるのかもしれない。
私はこれまで、著者の著作では、『自分のなかに歴史をよむ』、『日本人の歴史意識―「世間」という視角から』を読んだことがあるが、今般たまたま新古書店で著者の代表作である本書を目にし、手に取った。
本書は、グリム童話で有名な「ハーメルンの笛吹き男」の話が、いかにして生まれ、今日まで伝承されてきたのかを、著者がドイツ滞在中に様々な文献史料に当たり、考察したものである。尚、グリム童話の話は、中世の時代、ハーメルンの街でネズミが大繁殖して人々を悩ませていたある日、街に笛を持ち、まだらの服を着た男が現れ、約束した報酬と引き換えに、笛で街中のネズミを川に誘い出して溺死させたものの、街の人びとが約束を反故にして報酬を払わなかったため、再び街に現れた男は、同様に笛で街の子どもたちを連れ出して、その130人の少年少女は二度と街に戻ってこなかった、というものである。
本書でまず確かめられるのは、1284年6月26日に、130人の子どもたちが、まだら模様の男に連れられてハーメルンの街から姿を消した出来事は歴史上の事実だということで、驚くべきは、その原因・背景について、既に17世紀から様々な研究が為され、その解釈は26にも上るのである。
そして、著者は、それらの様々な解釈について、仔細に分析・考察を行うのであるが、最終的に結論に至るわけではない。しかし、その過程では、それまであまり取り上げられることのなかった、中世の都市や農村の民衆(特に、都市下層民)の日常生活と、その思考世界が浮かび上がってくるのだ。
本書は1974年に刊行(1988年文庫化)され、日本中世史研究の網野善彦らとともに、中世史ブームを作るきっかけとなった作品だが、それらが気付かせてくれるのは、どの時代においても、歴史のメインストリームとして残るのは、支配者が書いた支配者側の歴史であり、実際には、そこには描かれていない大多数の人間の歴史が存在するということである。
グリム童話の一編をもとに、ヨーロッパ中世の民衆の生活に光を当てた、興味深い作品と言えるだろう。
(2023年12月了)
まず、童話(伝説)の原型を辿り、そこには「130人の子供達が行方不明になった」とだけ書かれており、<笛吹き男>は登場しない事を明らかにする。そこで、当時のブレーメンの状況を広く考察し、周囲の貴族と闘ったが惨敗した事(先頭に立って戦った若者が<喇叭男>と呼ばれ、これが<笛吹き男>の基になったという仮説も紹介)、支配層・庶民の差が激しく農民にとって慢性的に土地不足であった事、当時、東方地域(現在のチェコやポーランドなど)の開拓地を紹介する<植民請負人>が存在し、<笛吹き男>とはこの<植民請負人>であって、「130人の子供達が行方不明になった」は「多くの若者が移民した」のメタファーではないかという魅惑的な説を紹介する。この説の欠点は「何故ハーメルンだけ」というものだが、ハーメルンの祭祀の際に「130人の子供達が(実在の)沼に溺れた」という説も紹介する。ある意味では身も蓋もない説だが、これに当時の身分制度・祭祀などを深く考察した著者独自の見解を加えると、「ハーメルンだけ」という問題を解決すると同時に、我が子を失った貧しい庶民の慨嘆が伝説として残ったという事由を説明している上に、「<笛吹き男>=<遍歴芸人>」という図式で祭祀と<笛吹き男>とを巧みに結び付けている。
この後、宗教改革・庶民の生活などと絡め、<笛吹き男>の造形が悪魔的になって行った過程、<笛吹き男>伝説が各地にあった<鼠捕り男復讐伝説>へと転化・同化して行った過程が詳細に語られ、興味が尽きない。正解のない、童話(伝説)の成立過程を辿るという難問を庶民及び庶民を取り巻く社会環境の視点で系統的に追及した快著だと思った。