エッセイなのでいつものような絢爛豪華な文体は影を潜めているが、肩肘張らずに書かれたぶん三島の本音や泥臭い一面まで垣間見られて面白い。
同時に、あの厳粛な作品群からは想像も出来ないほど茶目っ気もあったことがうかがえる。
はたから見れば、早くから文壇の寵児と持てはやされ華々しいことこの上ない作家人生であるが、決して衝撃的なデビューを飾ったわけではなく、デビュー当初は、掲載予定の作品をなかなか載せてもらえず日夜悶々と過ごし、やっと掲載されても問題にされず意気消沈して再び法律の勉強に戻るなど、それなりの苦悩はあったようだ。
またこのころ太宰治と面会し、「僕は太宰さんの文学はきらいなんです」と言い放った有名な事件の顛末も披露されている。
事あるごとに太宰を批判した三島だが、なぜ太宰を嫌っていたのかが本書である程度わかる。
時折笑い話もはさまれ、パリで街頭ドル買いにだまされて有り金をすられたり、週刊誌中の『誰でもこんな体になれる』というコメント付きのボディー・ビル写真に狂喜して早速始めちゃったりと、人並におっちょこちょいな一面もあったようだ。
しかしあの衝撃の死に先立ち、一人の男子高校生がアポなしで三島邸を訪れ、「先生はいつ死ぬんですか」と抜けぬけと質問したエピソードにはたまげてしまった。
さすがの三島も、この時ばかりはシドロモドロになってしまったようで・・・・・・
無料のKindleアプリをダウンロードして、スマートフォン、タブレット、またはコンピューターで今すぐKindle本を読むことができます。Kindleデバイスは必要ありません。
ウェブ版Kindleなら、お使いのブラウザですぐにお読みいただけます。
携帯電話のカメラを使用する - 以下のコードをスキャンし、Kindleアプリをダウンロードしてください。
私の遍歴時代 (ちくま文庫 み 13-5 三島由紀夫のエッセイ 1) 文庫 – 1995/4/1
三島 由紀夫
(著)
- 本の長さ282ページ
- 言語日本語
- 出版社筑摩書房
- 発売日1995/4/1
- ISBN-10448003028X
- ISBN-13978-4480030283
この著者の人気タイトル
ページ 1 以下のうち 1 最初から観るページ 1 以下のうち 1
登録情報
- 出版社 : 筑摩書房 (1995/4/1)
- 発売日 : 1995/4/1
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 282ページ
- ISBN-10 : 448003028X
- ISBN-13 : 978-4480030283
- Amazon 売れ筋ランキング: - 398,313位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 1,587位ちくま文庫
- - 6,818位近現代日本のエッセー・随筆
- - 17,306位評論・文学研究 (本)
- カスタマーレビュー:
著者について
著者をフォローして、新作のアップデートや改善されたおすすめを入手してください。
(1925-1970)東京生れ。本名、平岡公威。
1947(昭和22)年東大法学部を卒業後、大蔵省に勤務するも9ヶ月で退職、執筆生活に入る。1949年、最初の書き下ろし長編『仮面の告白』を刊行、作家としての地位を確立。
主な著書に、1954年『潮騒』(新潮社文学賞)、1956年『金閣寺』(読売文学賞)、1965年『サド侯爵夫人』(芸術祭賞)等。1970年11月25日、『豊饒の海』第四巻「天人五衰」の最終回原稿を書き上げた後、自衛隊市ヶ谷駐屯地で自決。ミシマ文学は諸外国語に翻訳され、全世界で愛読される。
カスタマーレビュー
星5つ中4.4つ
5つのうち4.4つ
8グローバルレーティング
評価はどのように計算されますか?
全体的な星の評価と星ごとの割合の内訳を計算するために、単純な平均は使用されません。その代わり、レビューの日時がどれだけ新しいかや、レビューアーがAmazonで商品を購入したかどうかなどが考慮されます。また、レビューを分析して信頼性が検証されます。
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2024年2月3日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
個々のエッセイの内容については、三島由紀夫の評論の定評通り、どれも読みやすく、はっとさせられる表現や考察にあふれた魅力的な内容です。政治色の強いものは無いこともあり、気軽に楽しく、単純に一時代の証言としても読めます。
三島由紀夫のエッセイ(評論)集は、文庫に限ってもかなりの数がありますが、その中で、本書の収録内容は、珍しいものが多いです。
表題の「私の遍歴時代」などは他にも収録されている本が多いですが、その他では、全集以外でなかなか収録本が無いような、映画出演についてのものや母親について述べたものなど、手軽に読める手段になるのは嬉しいです。
自分自身について述べたものが多いので、一種の自伝として読めそうです。
刊行が95年であまり増刷されていないようですが、比較的状態のいい本もまだ手に入りやすそうです。
三島由紀夫のエッセイ(評論)集は、文庫に限ってもかなりの数がありますが、その中で、本書の収録内容は、珍しいものが多いです。
表題の「私の遍歴時代」などは他にも収録されている本が多いですが、その他では、全集以外でなかなか収録本が無いような、映画出演についてのものや母親について述べたものなど、手軽に読める手段になるのは嬉しいです。
自分自身について述べたものが多いので、一種の自伝として読めそうです。
刊行が95年であまり増刷されていないようですが、比較的状態のいい本もまだ手に入りやすそうです。
2013年8月19日に日本でレビュー済み
三島の書いたものを初めて読んだ。これを読むと、確かに切腹する人だったんだなという感じがする。自己の鋭敏な感性、高い知性、完璧性、過剰な自意識の行きつく先には自死しか見いだせなかったのではないか。
一級のエリート家庭に生まれ、自らも一級のエリート(東大法→大蔵省)で、泥臭さのない、ガラスのような美しさと脆さ弱さを持っていたのではないかと思う。
書かれている内容は非常に面白い。色々な視点、感じ方を教えられ、為になった。
一級のエリート家庭に生まれ、自らも一級のエリート(東大法→大蔵省)で、泥臭さのない、ガラスのような美しさと脆さ弱さを持っていたのではないかと思う。
書かれている内容は非常に面白い。色々な視点、感じ方を教えられ、為になった。
2003年6月12日に日本でレビュー済み
三島由紀夫のエッセイは、面白くて読みやすいものがわりかし多い。小説となると、あんなにも格調高い文体になるのに。
で、このエッセイは彼の小説の裏話的な部分を垣間見ることができるため、ファンにとってはドキドキの一品であろう。
で、このエッセイは彼の小説の裏話的な部分を垣間見ることができるため、ファンにとってはドキドキの一品であろう。