哲学部以外、例えば高校倫理や教養科目で触れたカントの哲学では
まず知ることはないカント哲学の豊かさ・凄みを知れます。
見慣れない哲学用語は解説されており、小難しい内容をいい意味で平易に説明しています。
レビューを見てると、難しいという意見が多いです。
無理もありません。カントが代表作「純粋理性批判」を発表した際に
当時のドイツを代表する知識人たちがあまりの難しさに困ったほどですから。
カントの哲学的ドイツ語が難しいだけでなく、語っている内容も難しいとされ
現代でもドイツ人の教養高い人が挑んでもチンプンカンらしいのです。
(カント曰く、数学を理解できる人こそ理解できる内容らしい)
日本でいえば、一般的に人生で一番頭を使っているであろう
大学受験生レベルの頭脳や
大人の読書慣れしている人にも難易度が高いと思います。
入門書なのに難しく感じる……と悩んでもしょうがない。
あなた様の頭が悪いのではありません。
教養人や学者さんでも悩んでいるのですから。
注意点としては現代論理学を例に出した説明箇所。
論理学の本ではないので仕方がないのもかしれませんが
四角い円は存在しないので空集合に言及することになるから
現代論理学では真なる命題になる、の箇所は説明不足です。
現代論理学で標準とされる古典論理学。古典論理学には命題論理と述語論理がある。
述語論理には議論領域(話題にしている世界の範囲)というのがあり
例えば実在しないものを(現時点では空想上の生物だとされる一角獣など)
議論領域に選ぶと、空集合になるので禁止している。
述語(個体が持つ性質)にあたる部分集合には空集合を許している。
上記以外にも全称命題と特殊命題が関係する推論が関わってくることや
実質なき一般化、存在措定(もしくは存在仮定)の情報が必要です。
カント哲学は批判哲学・理性批判と呼ばれてます。
なぜ理性批判なのか、なぜ理性批判が必要だったのか。
理性的になれという常套句のように理性は肯定的に見られている。
理性自身に誤謬や悪が含まれているとは考えられない。
カントが発見したのは理性の問題性だった。
序盤はカント以前に理性がどう考えられてきたかの歴史から始まり
ルソーの著書との出会いにより、独断のまどろみから抜け出し
学者カントから哲学者カントに至る流れを描きます。
中盤は有名な二律背反・アンチノミーの問題や認識のカテゴリー論を解きほぐし
終盤はカントの道徳・倫理学の話になります。
カント哲学の用語をどのような背景があるのかを含めて説明しているので
高校倫理の説明との違いに戸惑うかもしれません。
高校倫理に限りませんが、高校の教科書・参考書は時間の関係や生徒の理解力もあり
教育的配慮で一部の記述をわかりやすくするため簡潔にしています。
例えばア・プリオリという有名な哲学用語。
本棚にあった山川出版の倫理用語集2009年改訂版にはこうあります。
要約すると
ア・プリオリの元々の意味が書かれ、日本語では先天的と訳されるとあります。
反対語はア・ポステリオリ、後天的とあります。
カント哲学にも言及し、人間が対象を認識するために必要なア・プリオリな形式として
感性の形式と悟性の思考の形式を備えている、と書かれています。
これに関する点を著者の石川さんが注意をしています。
要約すると
カント哲学のア・プリオリを先天的と訳すのは間違い。
日本語の先天的は生得的と同じ意味だからです。
カント以前(例えばデカルトやライプニッツなど)はほぼ同義語だったが
カント哲学では少し違うのです。
生得的と後天的(経験から獲得)の二分法とは違う意味で用いている哲学用語です。
生得的でも経験的でもない、根源的に獲得的を意味します。
西洋哲学では生得的観念の由来や客観的妥当性を神から導いてきます。
カントが用いるア・プリオリの用語は、神のような、すべてに先立つ存在を前提にしません。
悟性が自己活動によって悟性自身が獲得したという意味です。
このように、倫理用語集などでは大事な要点が省かれているのです。
かといって、教科書はうまいことできている方だと思いますし
山川出版の倫理用語集は受験のみならず、大学1,2年や一般教養のお供に有用だと思います。
要点の一部でも何がなんでも省かず、細かい所も説明しようとすれば
分厚い学術的用語集になってしまいますから。
それを高校教育・大学受験参考書に求めるのは厳しいでしょう。
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カント入門 (ちくま新書 29) 新書 – 1995/5/20
石川 文康
(著)
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- ISBN-104480056297
- ISBN-13978-4480056290
- 出版社筑摩書房
- 発売日1995/5/20
- 言語日本語
- 本の長さ238ページ
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登録情報
- 出版社 : 筑摩書房 (1995/5/20)
- 発売日 : 1995/5/20
- 言語 : 日本語
- 新書 : 238ページ
- ISBN-10 : 4480056297
- ISBN-13 : 978-4480056290
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2022年8月7日に日本でレビュー済み
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2023年5月5日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
西洋世界に多大な影響を与えたカント哲学は読んで理解する価値は十分にあるはず、なのだがとにかく難解。
若かりし頃、背伸びして純粋理性批判を読んでチンプンカンプン。
それを噛み砕いたプロレゴメナも挫折。
そしてさらにそれを噛み砕いた(流動食かよ)本書を読んで、ようやく何となく「ああ、なるほど、そういうことなのね」とぼんやり理解した、気がする。(まだ自分の言葉に出来ていないので理解が浅い)
もちろん本書は著者の一解釈でしかないとは思うが、カント哲学を学ぶうえでの副読本としておススメできます。
若かりし頃、背伸びして純粋理性批判を読んでチンプンカンプン。
それを噛み砕いたプロレゴメナも挫折。
そしてさらにそれを噛み砕いた(流動食かよ)本書を読んで、ようやく何となく「ああ、なるほど、そういうことなのね」とぼんやり理解した、気がする。(まだ自分の言葉に出来ていないので理解が浅い)
もちろん本書は著者の一解釈でしかないとは思うが、カント哲学を学ぶうえでの副読本としておススメできます。
2022年5月28日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
サンデルの本を読んで、カントやアリストテレスに興味を持ち、この「カント入門」を購入。アリストテレスの倫理学は、古代の幸福学。そこからカントの哲学へ。
幸福(最高善)になるためには、幸福を直接求めるのではなく、道徳的に生きること。道徳的に生きるとは、幸福を得る手段ではないが、幸福を得る資格を有する者となる。カント哲学の用語は難しいが非常に人生に参考になった。とくに印象に残ったのは、「道徳法則への尊敬」という言葉。
幸福(最高善)になるためには、幸福を直接求めるのではなく、道徳的に生きること。道徳的に生きるとは、幸福を得る手段ではないが、幸福を得る資格を有する者となる。カント哲学の用語は難しいが非常に人生に参考になった。とくに印象に残ったのは、「道徳法則への尊敬」という言葉。
2024年4月26日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
前半から中盤まではなんとか理解しながら夢中で読めたが、後半からいきなり、より抽象的になり読解が難しくなった。
まず日本語であるはずの文章なのにピンと来ない。
これは哲学書にはよくあることだが、本書も該当する。
入門というからには、原書を噛み砕いてやさしく説明していると思われるが、
それでも???マークで頭がいっぱいになった。
まず100分で名著など、さらに薄くさらに簡単なものから読んでみたいと思う。
まず日本語であるはずの文章なのにピンと来ない。
これは哲学書にはよくあることだが、本書も該当する。
入門というからには、原書を噛み砕いてやさしく説明していると思われるが、
それでも???マークで頭がいっぱいになった。
まず100分で名著など、さらに薄くさらに簡単なものから読んでみたいと思う。
2021年5月29日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
読んでいて楽しい哲学者の解説書には、
その哲学者への著者の熱い尊敬の気持ちや、尊敬する哲学者と併走して自分が筆を走らせていることへの興奮が感じられるものだと思います。
この本からもそれを感じることができました。
カントの哲学について、これ以上ないほど分かりやすく整理して書かれていますが、
それでも、簡単な本ではありません。
自分は読書好きの一般人で、
哲学史の入門書を何冊か読んだ後に、この本を手にとったのですが
かなり難しかったです。
とはいえここで語られているのは、
「自由とは、幸福とは、善悪とは何か」という
誰にとっても興味のあることなので、好奇心を刺激されますし、
それに対するカントの思想は驚きと発見があり、
たとえ完全には分からなかったとしても、読んでいて飽きることは無い気がします。
その哲学者への著者の熱い尊敬の気持ちや、尊敬する哲学者と併走して自分が筆を走らせていることへの興奮が感じられるものだと思います。
この本からもそれを感じることができました。
カントの哲学について、これ以上ないほど分かりやすく整理して書かれていますが、
それでも、簡単な本ではありません。
自分は読書好きの一般人で、
哲学史の入門書を何冊か読んだ後に、この本を手にとったのですが
かなり難しかったです。
とはいえここで語られているのは、
「自由とは、幸福とは、善悪とは何か」という
誰にとっても興味のあることなので、好奇心を刺激されますし、
それに対するカントの思想は驚きと発見があり、
たとえ完全には分からなかったとしても、読んでいて飽きることは無い気がします。
2022年3月15日に日本でレビュー済み
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カントがどういう人間でどうしてそういう考え方をしたのか。人間性の面から文章を読み解くことで色々な知識を得ることができる。その上で本書は非常に有益である。カントの本は正直哲学初心者には難しい。だから初心者の方は本書とカントの本を併せて読むことをおすすめする。
2021年11月5日に日本でレビュー済み
p.76で筆者はカントは数学的証明に関してはそれ自体の厳密性は認めても、それを哲学に適応するのを一貫して拒んでいた。その理由は哲学の対象は数学のそれと根本的に違うのであるとしている。対してp.90で絶対的全体に対しての述語が意味をなさない例として大相撲の勝敗を出している。この際に勝ちをプラス、負けをマイナスとして計算するとゼロだから述語が成り立たないとしているが、カントによれば数学的証明は哲学には適応されるべきではないのではないだろうか。
厳密性を欠かなければ専門的になりすぎるのかもしれないが、こういった点はしっかりしてほしいと思う。
厳密性を欠かなければ専門的になりすぎるのかもしれないが、こういった点はしっかりしてほしいと思う。
2021年7月30日に日本でレビュー済み
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難解で有名なカントの思想を新書としてまとめた優れた入門書です。私はカントの思想をベースにした倫理学に最近触れる機会が多く、カント哲学自体に関心を持ち、以前から読んでみたいと思っていた本書を手に取ったのですが、倫理学で初歩的に終始した記載しかないカント倫理学、義務論の本質的な説明がしっかり本書では書かれており、とても勉強になりました。