良い妻、賢い母。
それ自体に悪い意味はない。ところが、それを「誰が、誰の、何に対して」使うかに目を向けてみれば、そこには「闇」がある。
「良妻賢母」の陰には「悪女」「醜業婦」と蔑まれる人がいる。悲惨の極みで喘ぐ人々を殊更に称揚し、「皆の模範」としようとする人々がいる。
現代の目から見れば悲劇とも喜劇ともつかないエピソードがこれでもかと出てくるが、現代は大正時代とどれほど違っているのだろうか。遠いといえば遠い、近いといえば近い過去から現代が逆照射されてくる、そんな一冊である。
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