大渕憲一 さんの本は「人を傷つける心 - 攻撃性の社会心理学」に続いて2冊目です。
著者の文章は、構成や文言、専門用語の解説にいたる隅々まで、読者の立場で理解しやすいように徹底的な配慮がなされている。
例えば専門用語の解説は、通常は本文中に一度だけであるから、専門性のない読者は、一々ページを戻って定義を探す必要があるのだが、本書は、繰り返しを恐れず、何度も定義となる解説を絶妙に繰り返してくれる。このために、専門的な内容でありながら、スムーズに読み進むことが出来る。当然、読者の理解度も高くなる。節と節の連結も絶妙で、読者が読み進む内に浮かぶであろう疑問に、即座に次節で答えてゆくというスタイルが確立されており、引き込まれるように読み進める内に、深い理解が得られる。
文章の書き方に対するコメントが長くなったが、内容も良い。
社会心理学者である著者が、臨床心理学を上手く取り込みながら、心理学的な見地から、自己愛と、現代社会の深い関連性を解説してゆく。社会心理学や臨床心理学(精神分析学なども含む)の理論体系を学術的に解説し、さらに現代社会、現代人の特徴や、政治、犯罪といった実例を挙げながら、自己愛という切り口から分析を施してゆく。その明快性に頷くことばかりである。また、自己愛と社会の関係性を紐解く作業の連続として、社会心理学の研究や人生を通して見出した、著者の思想信条を提示することも、本書の隠れた目的であろう。
その意味で、本書は、学術的でありながら、エッセイの要素をも含んでいると言えるだろう。

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満たされない自己愛: 現代人の心理と対人葛藤 (ちくま新書 404) 新書 – 2003/4/1
大渕 憲一
(著)
- 本の長さ210ページ
- 言語日本語
- 出版社筑摩書房
- 発売日2003/4/1
- ISBN-104480061045
- ISBN-13978-4480061041
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2020年10月8日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
自己愛について様々な事を深く知ることができるが、同じ表現が繰り返されたり、同じテーマで、前述された内容と違った内容が記述されていたりする箇所があり、(さっきと言っていることが違うなど)正直まとまっていない印象がある。なので理解がすんなりいかない。ただ内容自体は興味深いので惜しい。
2017年2月14日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
心理学のことをよく知らない人が読むには少し難しい気がしたので星4です。
身近にいる、自己愛や自尊心が高過ぎる人、低過ぎる人を具体的に思い浮かべてその理由を探るべく読む場合は、「そう! そうなのよ!! あれはそういうことだったのか〜!」となって読みやすいです。
インターネットで自己愛や自尊心について調べてもいまいち納得できなかった部分が納得できました。
この本では、自尊心について、二種類の要素が合わさっている説が紹介されています。
私の解釈では、それは誇りと自信です。
いい会社に勤めているとか、尊敬する師匠の弟子であるとか、人様に恥じない生き方をしているとかが誇りです。
自分の能力や容姿や存在に自信があるのが、自信です。
この二つの自尊心が両方とも低い人は、いわゆる自信がない、自分がない人です。
二つとも高い人は、いわゆる自尊心が高い人、自分に自信がある人です。
問題は、二種類の自尊心の高さに偏りがある人です。
誇りだけ高いと、理想や言うことだけは素晴らしいが、能力がついていっていないタイプになります。
自信だけが高いと、能力は高いが規律がなく、トラブルメーカー?っぽくなります。
どちらのタイプも、人間関係で問題を起こしやすいです。
著者によると、自尊心は、独りで維持できるものではなく、関わる他人によって維持されるものらしいです。
なので、自尊心が偏っていて人間関係で問題が起きると、(低い方の)自尊心が傷ついて、偏ったままで維持される。
そこでこの二種類の自尊心を高めるには、目標、理想とする人(父親的存在)を見つけるのと、自分を受け止めて応援してくれる人(母親的存在)をそばに置く、のが良いみたいです。(あくまで私の解釈です)
もちろん、目標を見つけるだけではなく近づく努力が必要ですし、応援してくれる人には誠意・敬意を持って接しなければいけないと思います。
周りに適当な人がいない場合は、理想の有名人をテレビなどで見つけて、自信については、その根拠となる能力を先につけるのが良いのでは。能力があれば、能力のある友達同士、同僚同士で褒め合う、応援し合うのもありです。
この本には、他にも、
自尊心が過剰すぎる困った人の仕組みも書かれていたと思います。
あとは、ぱっと見自信がなさそうなのに、実は自尊心が過剰な、隠れ自己愛の人?についても解説されていたと思います。
自尊心が不当に低過ぎる人については、書いてあったかどうか覚えていません。
身近にいる、自己愛や自尊心が高過ぎる人、低過ぎる人を具体的に思い浮かべてその理由を探るべく読む場合は、「そう! そうなのよ!! あれはそういうことだったのか〜!」となって読みやすいです。
インターネットで自己愛や自尊心について調べてもいまいち納得できなかった部分が納得できました。
この本では、自尊心について、二種類の要素が合わさっている説が紹介されています。
私の解釈では、それは誇りと自信です。
いい会社に勤めているとか、尊敬する師匠の弟子であるとか、人様に恥じない生き方をしているとかが誇りです。
自分の能力や容姿や存在に自信があるのが、自信です。
この二つの自尊心が両方とも低い人は、いわゆる自信がない、自分がない人です。
二つとも高い人は、いわゆる自尊心が高い人、自分に自信がある人です。
問題は、二種類の自尊心の高さに偏りがある人です。
誇りだけ高いと、理想や言うことだけは素晴らしいが、能力がついていっていないタイプになります。
自信だけが高いと、能力は高いが規律がなく、トラブルメーカー?っぽくなります。
どちらのタイプも、人間関係で問題を起こしやすいです。
著者によると、自尊心は、独りで維持できるものではなく、関わる他人によって維持されるものらしいです。
なので、自尊心が偏っていて人間関係で問題が起きると、(低い方の)自尊心が傷ついて、偏ったままで維持される。
そこでこの二種類の自尊心を高めるには、目標、理想とする人(父親的存在)を見つけるのと、自分を受け止めて応援してくれる人(母親的存在)をそばに置く、のが良いみたいです。(あくまで私の解釈です)
もちろん、目標を見つけるだけではなく近づく努力が必要ですし、応援してくれる人には誠意・敬意を持って接しなければいけないと思います。
周りに適当な人がいない場合は、理想の有名人をテレビなどで見つけて、自信については、その根拠となる能力を先につけるのが良いのでは。能力があれば、能力のある友達同士、同僚同士で褒め合う、応援し合うのもありです。
この本には、他にも、
自尊心が過剰すぎる困った人の仕組みも書かれていたと思います。
あとは、ぱっと見自信がなさそうなのに、実は自尊心が過剰な、隠れ自己愛の人?についても解説されていたと思います。
自尊心が不当に低過ぎる人については、書いてあったかどうか覚えていません。
2003年4月13日に日本でレビュー済み
実は先に、コフートの本を購入していたのですが、なんとなく
ボリューム的にも楽そうだったので、こちらを先に読んでみました。
臨床的な面よりも、「自己愛とはなんぞや」的に総論で話が進められてます。
しかし時折、ほどよく引用される統計や学説なども、説明をうまく補強して
物足りない感は一切無く、好印象でした。
現代は自己愛の時代などと、言われてるような時代ですが、自己愛傾向は
誰にしもあるはずです。
自分は、この著作を読んで、随分と顧みるべき点がある事に気が付きました。
なかなか、こういった本でも読まない限り、自分を外から対象化する事は
ホント難しいです。
ボリューム的にも楽そうだったので、こちらを先に読んでみました。
臨床的な面よりも、「自己愛とはなんぞや」的に総論で話が進められてます。
しかし時折、ほどよく引用される統計や学説なども、説明をうまく補強して
物足りない感は一切無く、好印象でした。
現代は自己愛の時代などと、言われてるような時代ですが、自己愛傾向は
誰にしもあるはずです。
自分は、この著作を読んで、随分と顧みるべき点がある事に気が付きました。
なかなか、こういった本でも読まない限り、自分を外から対象化する事は
ホント難しいです。
2003年5月20日に日本でレビュー済み
最近書店の心理学書、あるいはビジネス書の棚の一部は、心理学と銘打った愚にもつかない
金儲けのための本が占拠している感があります。経験上、これはどれだけ大きな声で言ってもいいと思うのですが、本当に信頼できるひとりの友人と話すことは本を100冊読むのと同じくらいの価値があります。
しかし、そもそも本で問題を解決しようとする人々の多くは頼れる友人が少ないか、ある問題について「閉じたやりかたで」解決しようとします。
くだらない本で得た知識はコンピューターウイルスのようにプログラムを腐らせます。
前置きが長くなりました。この本は大言壮語せず、安直な解決策を提示せず、
学者の良心をもって書かれており、何の即効性もありませんが無害なほうだと
思います。
金儲けのための本が占拠している感があります。経験上、これはどれだけ大きな声で言ってもいいと思うのですが、本当に信頼できるひとりの友人と話すことは本を100冊読むのと同じくらいの価値があります。
しかし、そもそも本で問題を解決しようとする人々の多くは頼れる友人が少ないか、ある問題について「閉じたやりかたで」解決しようとします。
くだらない本で得た知識はコンピューターウイルスのようにプログラムを腐らせます。
前置きが長くなりました。この本は大言壮語せず、安直な解決策を提示せず、
学者の良心をもって書かれており、何の即効性もありませんが無害なほうだと
思います。