戦国時代というと、どうしても大名同士の領地争いという視点から歴史を見がちである。しかし、戦国武将の領地を一つの国家とみれば、領地を治める大名の下には多くの領民が暮らしており、それぞれが村社会を形成していた。そうした庶民の視点から、戦国大名の権力構造や社会システムを捉えなおそうというのが本書の狙いである。
戦国時代は慢性的な飢饉の時代であり、民衆にとっては、生存の保証されない過酷な社会であった。ひとたび戦争になれば、百姓や雑兵にとって戦場は格好の稼ぎ場となった。食糧の略奪にとどまらず、人身売買や奴隷狩りも普通に行われていた。 村同士の争いも頻繁にあり、土地の境界や生業の利権をめぐって、しばしば対立していたようだ。そこには領主である戦国大名も顔負けの村と村の合力関係(同盟みたいなもの)があり、紛争になれば、武器を持って隣村に加勢することもあったという。
武田、上杉、北条といった戦国大名も、現代の政治家と同じように、領民から支持されなければ一国を統治することはできなかった。たとえば、武田信玄は21歳のとき、父親の信虎を国外へ追放することで家督を継いだわけだが、従来、この事件は信玄のクーデターとして語られることが多かった。しかし実際は、信虎が内政を顧みず、戦さにばかり明け暮れ、領民から支持されなかったことが原因らしい。いわば、民衆を味方につけた信玄による「政権交代」だったのだ。
また、関東の北条氏の場合、領国内のすべての村に北条氏への直訴を認める目安制(目安とは訴状の意味)を導入している。目安といえば、江戸幕府8代将軍の徳川吉宗が有名だが、実際は戦国時代から行われていた。北条氏に限らず、今川氏や武田氏も目安を採用していたようだ。大名たちは裁判制度を確立することで、当事者同士の実力行使を禁じ、社会秩序の回復に努めた。判例を蓄積することで公平な判決を出そうとするなど、現代の司法制度に近い部分もあった。
このように戦国時代の百姓たちは、大名から一方的に支配され、虐げられていたわけではない。政治に不満があれば、公然と「世直し」を要求する、たくましい存在でもあった。政治に無関心でも何となく毎日が送れる現代人と違って、当時の民衆はそれだけ生きることに必死だったのだろう。本書を読んで、今まで中学・高校で何を勉強してきたのかと思ってしまった。英雄から見た日本史ばかりで、何も理解できていなかったのかもしれない。戦国大名も、領民がいるからこそ大名でいられるのだ。末端の庶民の生活を知らずして、戦国時代は語れない。
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百姓から見た戦国大名 (ちくま新書 618) 新書 – 2006/9/5
黒田 基樹
(著)
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- 本の長さ222ページ
- 言語日本語
- 出版社筑摩書房
- 発売日2006/9/5
- ISBN-104480063137
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2020年1月24日に日本でレビュー済み
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2018年10月10日に日本でレビュー済み
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2006年の本だが今も新鮮。戦国時代は日常的に饑饉が続いていた時代であったこと、寒冷化の気候変動の指摘もあるが、春先から麦の収穫ができる迄の端境期に毎年餓死者が出ていた訳で、個人ではなく、村単位の連帯が生存のために必要で、村存続のために争論が不可避であったこと。損害賠償を意味する「相当」、武器を言う「兵具」、他の村の援助を意味する「合力」の3原則で動いていた。中で国衆、戦国大名が生まれる。この時代に生まれた「お国」意識が幕藩体制から、国民国家の祖型になった訳で、日本の社会の祖型を探った1冊とも言える。
2016年8月9日に日本でレビュー済み
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本書は2006年9月に刊行されました。
黒田氏は「はじめに」で、「戦国大名を理解するうえで、その社会システムがどのような構造にあり、どのような歴史的段階のものであるかを
認識していくことが大切であり、民衆の視座がポイント」と語っていますが、本書では飢饉と村の紛争に拘りすぎている気がします。
黒田氏が考える「村の成立ち」が理解できなかったため、内容がピンときませんでした。
また、慢性的な飢饉に加え戦争による飢餓が起こったと考えているようですが、鶏と卵の関係のような気がします。
一番の驚きは、レビュアーによる評価が、軒並み高評価だということでした。
黒田氏は「はじめに」で、「戦国大名を理解するうえで、その社会システムがどのような構造にあり、どのような歴史的段階のものであるかを
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黒田氏が考える「村の成立ち」が理解できなかったため、内容がピンときませんでした。
また、慢性的な飢饉に加え戦争による飢餓が起こったと考えているようですが、鶏と卵の関係のような気がします。
一番の驚きは、レビュアーによる評価が、軒並み高評価だということでした。
2016年8月18日に日本でレビュー済み
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慢性的飢饉で生存が危ぶまれる戦国社会の基本単位は「村」。村人同士の私権力を制限して内部紛争を抑えながら、外には武力を発動して戦う法人。戦国社会の成り立ちを下から解剖しながら明らかにする手法に目からウロコ。
2020年9月23日に日本でレビュー済み
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大名などが、村を基本として存在していたのが理解出来る。
2016年2月4日に日本でレビュー済み
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戦国大名を英雄として描くテレビドラマなどでは語られない、驚くべき事実。戦国大名を度重なる戦争に駆り立てたのは、戦国時代に慢性化した飢饉だった。飢えから逃れたい民衆(百姓)の後押しを受け、戦国大名は攻め入った敵国で掠奪の限りを尽くした。現代日本国家の起源は、侵略戦争を目的に形成された戦国大名の領国にあると著者はみる。一方、民衆は自分たちを守る能力のない大名をあっさり見捨て、より有能な大名に乗り換えていたという。国家や国防の本質について考えさせてくれる本。
2014年4月1日に日本でレビュー済み
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村の中での争いと 村と村との争いが もっと大きくなると 大名同士のいくさとなるという構造は知らなかったのと(そのぐらい自分は無知である) 上杉謙信が遠征を頻繁に行っていた理由も百姓に関係あったので 興味深い内容であった