まず、自分の嗜好と合う議論以外受け入れる必要はないと考えている場合、本書を読む
必要性は薄い。また「ダメな議論」を捨てれば、必ず「良い議論」に到達することを保
証するものでもないことに注意が必要だ。
さて、本書は「良い議論」の提示という困難にあえて踏み込まず、先にゴミを捨てる方
が機械的で効率的だと説明している。この理屈に納得することができれば、本書を読む
価値はある。後半で気がつくだろうが、世の社会評論は「ダメな議論」がかなり幅を利
かせていることが分かる。だから人によっては、押さえなきゃならない正統(そう)な
議論は、そんなに多くはないというコスト的安心感(失望感?)や展望がもたらされる
かもしれない。常識に照らせば目からウロコな話もあるので、著者の分析に納得するな
らば、知的満足感も得られるだろう。それ以上に重要なのは、新しく触れる議論が果た
してダメな議論なのか、そうじゃないのか、専門的知識が十分なくとも、早い段階であ
る程度峻別できそうだという点である。
しかし実際にはどうだろう。本書を漫然と読んだだけでは、この方法は簡単そうにみえ
て意外に身に付かないかもしれない。論争であるとか、なんらかの克服すべき状況など
の機会でもないと、インセンティブが働かないからである。読者の多くは、飯田さん鋭
いねえで終わってしまう可能性もある。また、幸か不幸か上記のような契機であって
も、ディシプリンの重要性も忘れてはならないだろう。
後半の様々な「ダメな議論」(しかもこれは著者のよく出来た作文)を切っていく様子
は、小気味よくかつ面白いのだが、そこには系統だった豊富な知識やスキルも同時に援
用されているのだ。当たり前だが、著者自身「ダメな議論」を見抜く技術だけで、この
域に達しているわけではないのである。
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ダメな議論: 論理思考で見抜く (ちくま新書 628) 新書 – 2006/11/1
飯田 泰之
(著)
- ISBN-104480063323
- ISBN-13978-4480063328
- 出版社筑摩書房
- 発売日2006/11/1
- 言語日本語
- 本の長さ205ページ
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登録情報
- 出版社 : 筑摩書房 (2006/11/1)
- 発売日 : 2006/11/1
- 言語 : 日本語
- 新書 : 205ページ
- ISBN-10 : 4480063323
- ISBN-13 : 978-4480063328
- Amazon 売れ筋ランキング: - 651,462位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2007年2月23日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2017年3月12日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
経済学者はたいへんだ。数学者のように数式を証明することもならないし、化学者や生物学者のように再現性のある実験結果を発表することもできないし、歴史学者のよう新たな史実を発見して世界をあっといわせることもできない。扱っているものが人間の知能に対して複雑すぎるために、仮説を出しつつけ、検証し続け、修正し続けていくしかない因果な学問だ。しかも彼らの仮説にもとづいて経済政策はつくられ、学会という閉じられた場ではなく、世の中というオープンな場で評価される。意見を異にする同業者とも、生半可な知識しかないメディアとも、気分でモノを言う大衆とも議論していかなくてはならない。だから鍛えられる。見えてくる。相手の繰り出す必殺ワザの盲点や弱点が。負その奥義をまとめたのがこの本だ。
経済学者の道場に殴り込みをかけてくる人たちの中でもっとも多いのが経済評論家たちだ。本書は彼等を分析型、風見鶏型、万年強気派、万年弱気派の4つの流派に分類している。分析型は理論や統計といった、経済学者と同じ武器で勝負する。風見鶏型は「空気読み」が持ち技だが、この技の賞味期限はけっこう早い。そして万年強気派と万年弱気派はそれぞれ「楽観」と「悲観」というそれだけでは破壊のさほどない武器を使って根気よく攻めてくる。
分析派以外の流派の剣客たちは数字や理論ではなく「説得術」を駆使して人を納得させる“一種のコールドリーダー”だと著者は指摘する。宗教家や占い師の類いであると。そして、こういう人たちの耳あたりがよくもっともらしい議論をうかつに信じてしまわないための5つのチェックポイントを挙げている。ここが本書のミソだ。
1) 単純なデータ観察で否定されないか
2) 定義の誤解・失敗はないか
3) 無内容または反証不可能な言説
4) 比喩と例話に支えられた主張
5) 難解な理論の不安定な結論
こうしたチェックリストによって、まずその議論が議論に値するか、ということがある程度みきわめられるわけだが、コールドリーディング諸派はそれに反撃するための武器ももっている。それが「真の幸福」論法、データの不完全性への攻撃、「矮小化」批判、「自然」や「通常」を持ち出す虚無論法などがそうだ。
読みながら、自分がいかにコールドリーディング諸派のもっともらしい言説を信じたり、ウケウリしたりしているかということに気付かされた。と同時に、「なんとなくそれは違うんじゃないか」とモヤモヤしていた「常識」の突っ込みどころも見えてきた。たとえば「生産性」。OECDの出している労働生産性ランキングで日本は35カ国中20位で、これを「日本人の働き方は効率が悪い」として問題視する論調が「常識」である。だが、この労働生産性はどうやって計算されているかというと分母が「購買力平価換算のGDP」で分子が「就業者数」。この式のっどこに「働き方」のファクターがどこに入ってくるのかを明確に説明することは非常に難しい。「働き方」というのはゆとり教育における「生きる力」のような、定義のあいまいな都合のいい言葉だが、昨今あらゆる政策にこの言葉が登場している。「地方創生」もしかり。「イノベーション」もしかり。
往々にして盛り上がっている議論ほど、ダメな議論化していることが多い。さまざまな飛び道具でやりやっているから、端から見ていても面白く迫力があって、見世物としては面白い。でも、本当に大事なことを決めるとき、たとえば選挙で支持政党を決めたり候補者をみきわめたりするときには面白がってばかりはいられない。そんなとき5つのチェックポイントが役に立つ。
経済学者の道場に殴り込みをかけてくる人たちの中でもっとも多いのが経済評論家たちだ。本書は彼等を分析型、風見鶏型、万年強気派、万年弱気派の4つの流派に分類している。分析型は理論や統計といった、経済学者と同じ武器で勝負する。風見鶏型は「空気読み」が持ち技だが、この技の賞味期限はけっこう早い。そして万年強気派と万年弱気派はそれぞれ「楽観」と「悲観」というそれだけでは破壊のさほどない武器を使って根気よく攻めてくる。
分析派以外の流派の剣客たちは数字や理論ではなく「説得術」を駆使して人を納得させる“一種のコールドリーダー”だと著者は指摘する。宗教家や占い師の類いであると。そして、こういう人たちの耳あたりがよくもっともらしい議論をうかつに信じてしまわないための5つのチェックポイントを挙げている。ここが本書のミソだ。
1) 単純なデータ観察で否定されないか
2) 定義の誤解・失敗はないか
3) 無内容または反証不可能な言説
4) 比喩と例話に支えられた主張
5) 難解な理論の不安定な結論
こうしたチェックリストによって、まずその議論が議論に値するか、ということがある程度みきわめられるわけだが、コールドリーディング諸派はそれに反撃するための武器ももっている。それが「真の幸福」論法、データの不完全性への攻撃、「矮小化」批判、「自然」や「通常」を持ち出す虚無論法などがそうだ。
読みながら、自分がいかにコールドリーディング諸派のもっともらしい言説を信じたり、ウケウリしたりしているかということに気付かされた。と同時に、「なんとなくそれは違うんじゃないか」とモヤモヤしていた「常識」の突っ込みどころも見えてきた。たとえば「生産性」。OECDの出している労働生産性ランキングで日本は35カ国中20位で、これを「日本人の働き方は効率が悪い」として問題視する論調が「常識」である。だが、この労働生産性はどうやって計算されているかというと分母が「購買力平価換算のGDP」で分子が「就業者数」。この式のっどこに「働き方」のファクターがどこに入ってくるのかを明確に説明することは非常に難しい。「働き方」というのはゆとり教育における「生きる力」のような、定義のあいまいな都合のいい言葉だが、昨今あらゆる政策にこの言葉が登場している。「地方創生」もしかり。「イノベーション」もしかり。
往々にして盛り上がっている議論ほど、ダメな議論化していることが多い。さまざまな飛び道具でやりやっているから、端から見ていても面白く迫力があって、見世物としては面白い。でも、本当に大事なことを決めるとき、たとえば選挙で支持政党を決めたり候補者をみきわめたりするときには面白がってばかりはいられない。そんなとき5つのチェックポイントが役に立つ。
2013年7月9日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
とても面白かった。
学者が書いているのだが、優秀な気鋭のビジネスパーソンが書いた本のようだった。
みんながこんな風に、演繹と帰納を使い分けて論理的に考える社会だと楽だろうなと思った。
学者が書いているのだが、優秀な気鋭のビジネスパーソンが書いた本のようだった。
みんながこんな風に、演繹と帰納を使い分けて論理的に考える社会だと楽だろうなと思った。
2014年3月2日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
表題のとおりダメな議論を見抜くためのチップス集的な本です。
個々の手法についてはどこまで正しいのか判断できません。
が、参考に出来る部分は大きいと思うので、この点で悪い本だとは思いません。
ただ著者が経済学者のため専門領域である経済ネタが多いのは失敗だったと思います。
誤解の無いように先に断っておくと経済学は円滑な経済運営を考える上で間違いなく重要な学問です。
ただキツイ見方をすると経済学の主張は前提となる仮定次第で、180°異なる解決策で出てきてしまったりする(だから論争が絶えない)。
この点で経済学の知識を持ってないと「著者の経済主張をごり押しするために組み立てている」印象は拭えないでしょう。
挙げられている手法もデータ観察以外あやふやなものが多いので、余計にそう感じます。
はじめにを読む限り、本書のターゲットは経済に限らず一般的な議論全般と思われます。
で、あるなら自身の専門領域である経済ネタは避けるべきでした。
既に述べた立場の問題以外にも、専門領域が中心となると一般的な議論では応用できる機会が少ない印象を受けます。
あるいは逆に経済ネタを中心にするほかないのであれば、タイトルで明示しておく方が誠実だったと思います。
個々の手法についてはどこまで正しいのか判断できません。
が、参考に出来る部分は大きいと思うので、この点で悪い本だとは思いません。
ただ著者が経済学者のため専門領域である経済ネタが多いのは失敗だったと思います。
誤解の無いように先に断っておくと経済学は円滑な経済運営を考える上で間違いなく重要な学問です。
ただキツイ見方をすると経済学の主張は前提となる仮定次第で、180°異なる解決策で出てきてしまったりする(だから論争が絶えない)。
この点で経済学の知識を持ってないと「著者の経済主張をごり押しするために組み立てている」印象は拭えないでしょう。
挙げられている手法もデータ観察以外あやふやなものが多いので、余計にそう感じます。
はじめにを読む限り、本書のターゲットは経済に限らず一般的な議論全般と思われます。
で、あるなら自身の専門領域である経済ネタは避けるべきでした。
既に述べた立場の問題以外にも、専門領域が中心となると一般的な議論では応用できる機会が少ない印象を受けます。
あるいは逆に経済ネタを中心にするほかないのであれば、タイトルで明示しておく方が誠実だったと思います。
2011年2月19日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
世の中で行われている「議論」で
「ダメ」なものを見つける5つの方法を挙げています。
定義の誤解・失敗はないか
無内容または反証不可能な言説
難解な理論の不安定な結論
単純なデータ観察で否定されないか
比喩と例話に支えられた主張
その後駄目な例文をずーっと例示して解説しているというスタイルです。
大学受験の国語論説対策をしている気分になる本ですが、
経済関連という筆者のライフワークがベースになっているため、
テーマ読みとしても面白いしです。
著者の意見を本著を通して主張しているともとれますが、
あくまで駄目な例文をあげているだけであり、
たとえば食糧自給率問題に関してなどは、
あまり問題にならないような主張をされているととれますが、
著者の意見もまた'@の定義に関して問題ないの?
と感じるようになったのは、上手に身についた証拠でしょうか?
又、議論としては駄目だけど、提言とか夢とかいった類の文章
に対しては威力は発揮できない点もあるかと思いますが、
ツールの一つとして身につければはかなり有効と感じます。
「ダメ」なものを見つける5つの方法を挙げています。
定義の誤解・失敗はないか
無内容または反証不可能な言説
難解な理論の不安定な結論
単純なデータ観察で否定されないか
比喩と例話に支えられた主張
その後駄目な例文をずーっと例示して解説しているというスタイルです。
大学受験の国語論説対策をしている気分になる本ですが、
経済関連という筆者のライフワークがベースになっているため、
テーマ読みとしても面白いしです。
著者の意見を本著を通して主張しているともとれますが、
あくまで駄目な例文をあげているだけであり、
たとえば食糧自給率問題に関してなどは、
あまり問題にならないような主張をされているととれますが、
著者の意見もまた'@の定義に関して問題ないの?
と感じるようになったのは、上手に身についた証拠でしょうか?
又、議論としては駄目だけど、提言とか夢とかいった類の文章
に対しては威力は発揮できない点もあるかと思いますが、
ツールの一つとして身につければはかなり有効と感じます。
2006年12月20日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
世の中にはびこる議論。
その多くは主観やある価値観を前提にした
結論ありきの「常識」という名の素朴な感情論。
そのいかにも論理の体裁をした、不毛な論理・議論を見抜くための本。
感情のカタルシスより、有用な解決策を模索するための視点5つが述べられていて面白い。
蛇足だけど、
「気持ちは分かるけど悲惨な結果になるよ」と思い続けて議論していただろう
同い年の真っ当な経済学者の自分の議論、
その態度への静かで高らかな宣言でもあるこの本に
日本経済の未来へ少し希望を感じる。
その多くは主観やある価値観を前提にした
結論ありきの「常識」という名の素朴な感情論。
そのいかにも論理の体裁をした、不毛な論理・議論を見抜くための本。
感情のカタルシスより、有用な解決策を模索するための視点5つが述べられていて面白い。
蛇足だけど、
「気持ちは分かるけど悲惨な結果になるよ」と思い続けて議論していただろう
同い年の真っ当な経済学者の自分の議論、
その態度への静かで高らかな宣言でもあるこの本に
日本経済の未来へ少し希望を感じる。
2007年1月21日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
あなたが常識と思っていることは本当に正しいでしょうか?
「常識」とは、正しい事ではなく、「多くの人が正しいと思っていること」であると。
では、その多くの思い込みはどこから生まれるのでしょうか。
メディアを通じて流される多くの言説。それらは、実しやかに、学者や政治家が語っているわけですが、語られるだけなら問題ないが、それが常識となり、本当に正しい事が言いにくい世の中や、政策の決定に使われてしまうと実害になるわけです。
しかし、素人にその正否を確認するのは困難で時間がかかります。そこで、本書では簡単にダメな議論を見破る分析的思考方法を提唱しています。
具体的には
・単純なデータで否定されないか
・定義の誤解・失敗はないか
・無内容または反証不可能な内容ではないか
・難解な理論の不安定な結論となっていないか
・比喩と例え話に支えられた主張ではないか
この5つのチェックポイントを用いて、ダメな議論を省いていく事で、より正しいと思われるものに近づけるというわけです。
ロジカルシンキングやディベートが好きな方にもお勧めです。
「常識」とは、正しい事ではなく、「多くの人が正しいと思っていること」であると。
では、その多くの思い込みはどこから生まれるのでしょうか。
メディアを通じて流される多くの言説。それらは、実しやかに、学者や政治家が語っているわけですが、語られるだけなら問題ないが、それが常識となり、本当に正しい事が言いにくい世の中や、政策の決定に使われてしまうと実害になるわけです。
しかし、素人にその正否を確認するのは困難で時間がかかります。そこで、本書では簡単にダメな議論を見破る分析的思考方法を提唱しています。
具体的には
・単純なデータで否定されないか
・定義の誤解・失敗はないか
・無内容または反証不可能な内容ではないか
・難解な理論の不安定な結論となっていないか
・比喩と例え話に支えられた主張ではないか
この5つのチェックポイントを用いて、ダメな議論を省いていく事で、より正しいと思われるものに近づけるというわけです。
ロジカルシンキングやディベートが好きな方にもお勧めです。
2016年10月28日に日本でレビュー済み
飯田氏はいくつかこうした「思考法」をテーマにした本を書いているけれど,中でもこれが傑作といえます。
飯田氏のいう「経済学的思考法」は,きちんとしたデータを背景に,定義をしっかりさせた言葉を用いて,論理的に考える,ということなんだけれど,実際に,普段から自分がそうやるのは難しいものです。
だけど,他人の主張に対して,「経済学的思考法」を用いて,「本当にそうなんだろうか?」と考えたり,後から調べたりして考えることはまだできる。そこで,この本は,「普段からこういう考え方をしましょう」という本じゃなくて,「他人のこんな考え方や主張は注意(基本的に疑うべき)」という指南書になっています。ここに,飯田氏が「実際に使えるツールを与えたい」という工夫があるように思えました。
「こうしましょう」よりも「これはするな」のほうが,しばしば生活上で実用的なもので,これを読んでから,例えばテレビのコメンテーター(本の中では「お茶の間コメンテーター」といって,何となく視聴者の感情に沿うことを,それっぽく言っている専門家的な人)の言ういい加減なことを鵜呑みにせず「え,そうなの?というかその言葉の定義ってなんだ?」といったん自分の頭に持ち帰って考える癖がつきました。
余力があれば,飯田氏の「思考の型を身につける」もオススメです。
飯田氏のいう「経済学的思考法」は,きちんとしたデータを背景に,定義をしっかりさせた言葉を用いて,論理的に考える,ということなんだけれど,実際に,普段から自分がそうやるのは難しいものです。
だけど,他人の主張に対して,「経済学的思考法」を用いて,「本当にそうなんだろうか?」と考えたり,後から調べたりして考えることはまだできる。そこで,この本は,「普段からこういう考え方をしましょう」という本じゃなくて,「他人のこんな考え方や主張は注意(基本的に疑うべき)」という指南書になっています。ここに,飯田氏が「実際に使えるツールを与えたい」という工夫があるように思えました。
「こうしましょう」よりも「これはするな」のほうが,しばしば生活上で実用的なもので,これを読んでから,例えばテレビのコメンテーター(本の中では「お茶の間コメンテーター」といって,何となく視聴者の感情に沿うことを,それっぽく言っている専門家的な人)の言ういい加減なことを鵜呑みにせず「え,そうなの?というかその言葉の定義ってなんだ?」といったん自分の頭に持ち帰って考える癖がつきました。
余力があれば,飯田氏の「思考の型を身につける」もオススメです。