『郊外の社会学』は、2005年に書かれた『東京スタディーズ』の郊外論が元になっている本であるが、どちらも一貫した議論がされている。それは郊外がいかに人工的に作られ、イメージ付けられているのか、新しいタイプの郊外の発生と今後の郊外の展望について述べている。また、自身が郊外の出身という事もあり本書は「私論」ではないのかという批判を恐れつつも、としつつも「社会という集合的な出来事は、いつでも個々人の具体的な生を通じて現れる。個々人の具体的な生の軌跡は、その人が生きる社会のなかでの社会的な出来事としてしかありえない。」
と述べ、自身の意見を強めている。
本書は、都市と郊外の姿をとてもよく捉えているし、データや参考資料もかなりしっかりしている。
個人的には、郊外について、議論をする時には、基礎知識であったり、郊外の社会学的な扱いについて理解したりするのには非常に良い本だと思う。しかし、宮台真司氏や三浦展氏などのかなり刺激的な郊外論を展開する人が好みの方はやや物足りなさを感じるかもしれない。
個人的には、これは入門書であり、それ以上でも、それ以下でも
ない。新書の役割は、新しい学術の紹介なのだから、日本都市社会学で郊外論の第一人者である、若林幹夫を知るには十分な本であると考える。
『東京スタディーズ』も拝見したし、本書を読んだ後に、日本都市社会学会で発表された特集論文「郊外、ニュータウンと地域の記憶」は、事前に本書を読んでいたので、非常に理解しやすく、また大変参考になった。
都市論をやる上では一読の価値があると思う。
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郊外の社会学: 現代を生きる形 (ちくま新書 649) 新書 – 2007/3/1
若林 幹夫
(著)
- ISBN-104480063501
- ISBN-13978-4480063502
- 出版社筑摩書房
- 発売日2007/3/1
- 言語日本語
- 本の長さ231ページ
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登録情報
- 出版社 : 筑摩書房 (2007/3/1)
- 発売日 : 2007/3/1
- 言語 : 日本語
- 新書 : 231ページ
- ISBN-10 : 4480063501
- ISBN-13 : 978-4480063502
- Amazon 売れ筋ランキング: - 142,951位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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2012年2月18日に日本でレビュー済み
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2012年6月14日に日本でレビュー済み
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郊外をめぐる様々な言説を紹介し
否定的な郊外イメージ、肯定的な郊外イメージを包括した郊外像を
著者の実体験も踏まえながら平易に語る本でした。
郊外には地域の歴史がない、風土に根差さない薄っぺらさしかない
などと否定的に語られることがおおい印象を受ける郊外ですが・・・
郊外がいままさに紡いでいる郊外的文化の蓄積
郊外という風土・歴史の誕生を積極的に評価している点が面白い本でした。
否定的な郊外イメージ、肯定的な郊外イメージを包括した郊外像を
著者の実体験も踏まえながら平易に語る本でした。
郊外には地域の歴史がない、風土に根差さない薄っぺらさしかない
などと否定的に語られることがおおい印象を受ける郊外ですが・・・
郊外がいままさに紡いでいる郊外的文化の蓄積
郊外という風土・歴史の誕生を積極的に評価している点が面白い本でした。
2022年7月27日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
少し期待して読んだのですが、著者の郊外ポエムに感じました。特に新しい内容があるわけではなかった気がします。
2011年2月18日に日本でレビュー済み
郊外論のディスコースを展開してきた著者の著作の中で、本著は郊外生活者の著者自身の経験が多く語られており、郊外人としての著者の自伝的な要素が濃い内容となっている。ということで、これまで著者の作品に多く接してきたものにとっては、興味深い内容ではあるが、初めて著者の本を手に取ったものにとっては、著者の郊外論の鋭い思想を理解するには不十分であろう。また、三浦展や吉見俊哉、西川祐子、宮脇壇、隈研吾といった他の郊外論客への言及も多く、著者の立ち位置を改めて確認することができる。このように、本書は「郊外そのもの」より「郊外を研究する若林幹夫なる社会学者」を理解するのにはうってつけの著書であるが、著者の郊外論本の中では付録的な位置づけにあると思う。「郊外の社会学」というタイトルだと、いかにもこれで若林の郊外論の大まかな点は理解できるとの印象を覚えるかもしれないが、そういう点では本書の内容はカバーしていない面が多いと思われる。とはいえ、それでも内容は充実しているので☆4つ。
2009年10月31日に日本でレビュー済み
「郊外」というものに対して、いろんな角度から分析してあります。
筆者自身が郊外出身で、現在も郊外在住であることから説得力があります。
社会学を勉強したことがない私には多少難しい言葉がありましたが、「郊外」に住んでいるものとして共感をもてるところ、参考になるところが多かったです。
「郊外」在住の人にはお勧めの本です。
筆者自身が郊外出身で、現在も郊外在住であることから説得力があります。
社会学を勉強したことがない私には多少難しい言葉がありましたが、「郊外」に住んでいるものとして共感をもてるところ、参考になるところが多かったです。
「郊外」在住の人にはお勧めの本です。
2008年5月20日に日本でレビュー済み
著者は、これまで郊外について言われてきた言説を大きく2つにわけます。まずは社会学者達による、伝統やコミュニティの不在の指摘。つぎに建築家達による、オリジナルで優れたデザインの不在の指摘。
こうして大きく2つの視点から批判される郊外ですが、著者は自らが郊外地居住者であるという視点から、郊外で生きることこそが現代人の生きる条件なのだと議論します。そして、たとえ浅くても、そうした郊外で積み重ねられてきた記憶を辿っていこうではないか、というのが全体のテーマです。
あとは、優秀な著者のことですので、時折引っ張ってくる文化論や統計データも説得的で、勉強にもなります。「生きることの条件としての郊外」論の視点が、一通り身につくと思います。
こうして大きく2つの視点から批判される郊外ですが、著者は自らが郊外地居住者であるという視点から、郊外で生きることこそが現代人の生きる条件なのだと議論します。そして、たとえ浅くても、そうした郊外で積み重ねられてきた記憶を辿っていこうではないか、というのが全体のテーマです。
あとは、優秀な著者のことですので、時折引っ張ってくる文化論や統計データも説得的で、勉強にもなります。「生きることの条件としての郊外」論の視点が、一通り身につくと思います。
2008年10月8日に日本でレビュー済み
これが「社会学」であるのかどうか私にはわからないが,郊外に関するさまざまなエピソードを 5 つの章にまとめている.新書なので印刷はあまりよいとはいえないが,団地などの写真が効果的に配置されている.区別のつかない建物や部屋がならぶ団地に関するエピソードとして安部公房の「燃えつきた地図」や「ウルトラセブン」の「あなたはだぁれ?」という話がとりあげられているのが印象にのこった.
2007年4月20日に日本でレビュー済み
無理矢理「動ポス」的に読むとすれば、都市を「郊外」からポストモダン的に定点観測した著書といえるかもしれない。
地方出身者の「都会的な生活」への憧れと、都市出身者の「都市には無い理想的な生活」への憧れを一手に背負い込んだ「郊外」。さらにそこには核家族という新しい家族像への期待も混じり、郊外は一つの「大きな物語」としての機能を持つようになった。
しかし、1980年代以降「郊外」が一般化するに従い、そうした理想は物語としての機能を失う。ニュータウンの建築様式が画一的なモダニズムから、装飾をほどこしたポストモダニズム的になっていったのもこの頃からだった。それはどこかで見たような「地中海風」とか「イタリア風」と言った記号を消費する、データベース的建築様式である。そして人々の行動様式もまた、一つの価値観を共有しようという「共同体志向」から、単に住む場所を偶然にも共有するだけの「共異体志向」へと変化している。
通底する筆者の方向性を汲み取れば非常に示唆的であり、面白い。新書だが、時間をかけて読み込む必要がある。
地方出身者の「都会的な生活」への憧れと、都市出身者の「都市には無い理想的な生活」への憧れを一手に背負い込んだ「郊外」。さらにそこには核家族という新しい家族像への期待も混じり、郊外は一つの「大きな物語」としての機能を持つようになった。
しかし、1980年代以降「郊外」が一般化するに従い、そうした理想は物語としての機能を失う。ニュータウンの建築様式が画一的なモダニズムから、装飾をほどこしたポストモダニズム的になっていったのもこの頃からだった。それはどこかで見たような「地中海風」とか「イタリア風」と言った記号を消費する、データベース的建築様式である。そして人々の行動様式もまた、一つの価値観を共有しようという「共同体志向」から、単に住む場所を偶然にも共有するだけの「共異体志向」へと変化している。
通底する筆者の方向性を汲み取れば非常に示唆的であり、面白い。新書だが、時間をかけて読み込む必要がある。