最近増えている「うつ病」は、うつ病なのかそうではないのか……
そういう議論は多い。私はその議論そのものにあまり意味を感じないのだが、
いずれにしてもこの本は、いわゆる「軽症うつ」向きの本ではない。
ある意味で「狂気」とも言える行動に走ることもあるうつ病――
軽症うつを「本物のうつ」ではないと言った人もいるが、その論法でいうと
「本物のうつ」について、やや過激なタッチで、時に露悪的に書かれている。
要するに「心の風邪などもってのほか。うつ病は死に至る病だ」というわけである。
その通りだとは思う。しかしうつ病には実にさまざまなパターンがある。
気分障害とうつ病の境界線をはっきり引ける人が、果たしているだろうか。
取り上げられる事例も過激である。
統合失調症ではないかと思える「妄想性うつ病」など、かなり「怖い」話ばかりだ。
たしかに、あまりに気軽に「今日ちょっとうつでねえ」などと言われ始めて、
本書で書かれているような、うつ病の一面の真実がかすんでいることは否定しない。
その意味ではサブタイトルの「まだ語られていない真実」は、偽りはない。
だが帯にある「うつ病にまつわるウソを暴く!」はどうだろう?
「今日ちょっとうつで……」という人も、何らかの「うつ的病理」を抱えていないか。
甘えもあるかもしれないが、「それはウソだ」と切って捨てるのは、
あまりに「優しさ」がないのではないか。
たしかにある一面の「本当のこと」はわかる本だ。
しかしなぜか読後感が悪い……。☆3つ半、といったところか。
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うつ病: まだ語られていない真実 (ちくま新書 690) 新書 – 2007/11/1
岩波 明
(著)
- 本の長さ228ページ
- 言語日本語
- 出版社筑摩書房
- 発売日2007/11/1
- ISBN-104480063943
- ISBN-13978-4480063946
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登録情報
- 出版社 : 筑摩書房 (2007/11/1)
- 発売日 : 2007/11/1
- 言語 : 日本語
- 新書 : 228ページ
- ISBN-10 : 4480063943
- ISBN-13 : 978-4480063946
- Amazon 売れ筋ランキング: - 99,732位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2008年1月30日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2012年3月2日に日本でレビュー済み
うつ病は非常にリスクの高い病気で他の精神疾患の入口になる危険性は分かった。
しかし、抗うつ薬に対する疑念が晴れるような形でもなく、筆者が数多くの臨床例を体験していると豪語されながら、それが実感できるケースなどが全く提出されておらず、筆者が嫌悪する心理学科や精神学科の大学教授などが語ってきた論との差別化がみられない。
それは、ケースで出される患者の退院後の経過があまり克明に記載されていないからだ。「患者は退院後健康な生活を送った」とそれまでの途中経過は克明に表記しながらも本当に抗うつが効果をもたらしたのか、一時的に抑えられているだけなのか判別がつきにくい。
また、自殺と抗うつの関連性は極端であると批難されながら、筆者が取りだすケースも極例が多いように思われ、ばらつきがある。
他にも精神薬が自殺と直結するという世の風潮に対する意見は、一理あるにしても全体を通してこの本を読むと
「全ての精神症状による自殺や心中はうつに通ずる」
という観念を抱きかねないリードの仕方だ。
薬害論だけを主張するつもりはないが、何らかの挫折経験で神経症うつを発症したのであれば、薬を検討する前にカウンセリングなどの方法が提示されてもよいはずである。
精神科医としての筆者の主張が読み進めるうちに、自己弁論のように聞こえられ、最後は「日本社会は生きづらい」という結論はあまりにも乱暴な感じがする。
しかし、抗うつ薬に対する疑念が晴れるような形でもなく、筆者が数多くの臨床例を体験していると豪語されながら、それが実感できるケースなどが全く提出されておらず、筆者が嫌悪する心理学科や精神学科の大学教授などが語ってきた論との差別化がみられない。
それは、ケースで出される患者の退院後の経過があまり克明に記載されていないからだ。「患者は退院後健康な生活を送った」とそれまでの途中経過は克明に表記しながらも本当に抗うつが効果をもたらしたのか、一時的に抑えられているだけなのか判別がつきにくい。
また、自殺と抗うつの関連性は極端であると批難されながら、筆者が取りだすケースも極例が多いように思われ、ばらつきがある。
他にも精神薬が自殺と直結するという世の風潮に対する意見は、一理あるにしても全体を通してこの本を読むと
「全ての精神症状による自殺や心中はうつに通ずる」
という観念を抱きかねないリードの仕方だ。
薬害論だけを主張するつもりはないが、何らかの挫折経験で神経症うつを発症したのであれば、薬を検討する前にカウンセリングなどの方法が提示されてもよいはずである。
精神科医としての筆者の主張が読み進めるうちに、自己弁論のように聞こえられ、最後は「日本社会は生きづらい」という結論はあまりにも乱暴な感じがする。
2007年11月10日に日本でレビュー済み
ヘミングウェイ・ヴィヴィアン・リーなど有名人から一般の人まで、自殺したり事件(事故?)に関与した"うつ状態"(私はあえて「うつ病」とは言わない)の人たちの病状や自殺などに至る経緯の具体的な紹介が大きな特徴。うつ病を「心のかぜ」と軽く見る風潮に対する著者の批判自体には同意できる。ただし、実例の中には統合失調症の色彩が濃い人や神経症的人格傾向をもつ人の例もあり、本書の例が典型的なうつ病の具体像と言えるかどうかは疑問。典型的なうつ病とそうでないものとの違いに注目する人には不満が残るだろう。
また、抗うつ薬には古典的な三環系と新規抗うつ薬(SSRI・SNRI)があるが、著者は新規抗うつ薬派で、三環系の副作用を重いと見、年配の医者ほど三環系を勧めると皮肉をこめて言うが、うつ病にかかった私には逆に、新規抗うつ薬で重い副作用(攻撃性など)が出る。薬の副作用は人それぞれ。新規抗うつ薬が優れるという現在の風潮を強めそうで危険を感じる(実際私は若い精神科医に新規抗うつ薬を強く勧められ、断るのにたいへん苦労した)。新規抗うつ薬を安易に信用しない「年配の医者」とは、そういう決めつけに慎重なベテランで、むしろその姿勢に学ぶものがあるのかもしれない。
読み終えて、結局、本書は、うつ病かどうかはともかく、自殺などの深刻な社会問題とそれを助長する日本人の国民性との関係に焦点を当てた本ではないかという印象を持った。そういう意味では、日本人の国民性に警鐘を鳴らす著者の意見は一読に値する。
また、抗うつ薬には古典的な三環系と新規抗うつ薬(SSRI・SNRI)があるが、著者は新規抗うつ薬派で、三環系の副作用を重いと見、年配の医者ほど三環系を勧めると皮肉をこめて言うが、うつ病にかかった私には逆に、新規抗うつ薬で重い副作用(攻撃性など)が出る。薬の副作用は人それぞれ。新規抗うつ薬が優れるという現在の風潮を強めそうで危険を感じる(実際私は若い精神科医に新規抗うつ薬を強く勧められ、断るのにたいへん苦労した)。新規抗うつ薬を安易に信用しない「年配の医者」とは、そういう決めつけに慎重なベテランで、むしろその姿勢に学ぶものがあるのかもしれない。
読み終えて、結局、本書は、うつ病かどうかはともかく、自殺などの深刻な社会問題とそれを助長する日本人の国民性との関係に焦点を当てた本ではないかという印象を持った。そういう意味では、日本人の国民性に警鐘を鳴らす著者の意見は一読に値する。
2008年12月3日に日本でレビュー済み
本書の内容はプチうつなどと軽々しく表現されるようなものではありません。
一精神疾患(パニック障害)の妹を持つ私にとっても大変にセンセーショナルで
ショッキングな内容でした。
リストラ、失業などに遭った中高年男性が自宅マンションなどの多額のローンや借金を抱え、
生活苦の果ての自殺や、未遂、一家心中。
誰もがうらやむ裕福な家庭の奥さんの妄想うつ病の夫殺害事件。
30代女性が離婚の末に子連れ心中を図ろうと放火。父親、祖母、子供二人を殺害等々。
うつ病患者でここまで…と思う程、たくさんの悲惨な事件が掲載されていて驚きました。
と共に早急に入院や適切な投薬治療が必要な場合にありながらミスをおかす
精神科医の多さにも憤りを感じました。
そうした治療が施されていれば防げたはずであり明らかに医師のミスと著者も明言しています。
そして投薬治療を反対する生田哲氏やその他の学識者に対しても批判されています。
座禅や呼吸法などで治癒するようなたやすい病気ではないのであると。
第六章は『自殺者の国』と題されています。
旧ソ連に続き先進国の中でも突出して自殺率の高い国『日本』。
年間3万人超、一日80人以上の計算になるそうです。
著者の別書にありましたが、
『日本という国で生きていくということは大変なことである。』
当事者、ご家族の方はもちろんまた身の回りにうつ病を罹患されている方が
おられなくてもいつ我が身に降りかかるかもわからない病気であると
認識して読んでいただきたい本であると思いました。
一精神疾患(パニック障害)の妹を持つ私にとっても大変にセンセーショナルで
ショッキングな内容でした。
リストラ、失業などに遭った中高年男性が自宅マンションなどの多額のローンや借金を抱え、
生活苦の果ての自殺や、未遂、一家心中。
誰もがうらやむ裕福な家庭の奥さんの妄想うつ病の夫殺害事件。
30代女性が離婚の末に子連れ心中を図ろうと放火。父親、祖母、子供二人を殺害等々。
うつ病患者でここまで…と思う程、たくさんの悲惨な事件が掲載されていて驚きました。
と共に早急に入院や適切な投薬治療が必要な場合にありながらミスをおかす
精神科医の多さにも憤りを感じました。
そうした治療が施されていれば防げたはずであり明らかに医師のミスと著者も明言しています。
そして投薬治療を反対する生田哲氏やその他の学識者に対しても批判されています。
座禅や呼吸法などで治癒するようなたやすい病気ではないのであると。
第六章は『自殺者の国』と題されています。
旧ソ連に続き先進国の中でも突出して自殺率の高い国『日本』。
年間3万人超、一日80人以上の計算になるそうです。
著者の別書にありましたが、
『日本という国で生きていくということは大変なことである。』
当事者、ご家族の方はもちろんまた身の回りにうつ病を罹患されている方が
おられなくてもいつ我が身に降りかかるかもわからない病気であると
認識して読んでいただきたい本であると思いました。
2015年6月11日に日本でレビュー済み
本書で語られているうつ病は、最近よくいわれる新型うつや、軽いうつ病ではない。
かなり重症のうつ病です。
うつ病という言葉が一般化したことで、軽いものはカミングアウトしやすくなった。
人に相談しやすくなったという点では、この傾向はいいのかもしれない。
しかしその反面、うつ病が以前よりも、“心の風邪”程度の軽いものと思われてきているような気がする。
本書は、そういったうつ病を軽く見る傾向に警鐘を鳴らす、とても重い内容です。
軽いものから重いものまで、幅広くうつ病と呼ばれてしまっている昨今、その中でも最悪のうつ病を理解するための本だと思った方がいいかと思います。
軽いうつ病をライトに理解したいのであれば、香山リカあたりの著書がいいかもしれません。
しかしそういう方でも、愛する人を守るためにも、万が一のために、重いうつ病もあるということをしっかり認識しておいた方がいいと思います。
かなり重症のうつ病です。
うつ病という言葉が一般化したことで、軽いものはカミングアウトしやすくなった。
人に相談しやすくなったという点では、この傾向はいいのかもしれない。
しかしその反面、うつ病が以前よりも、“心の風邪”程度の軽いものと思われてきているような気がする。
本書は、そういったうつ病を軽く見る傾向に警鐘を鳴らす、とても重い内容です。
軽いものから重いものまで、幅広くうつ病と呼ばれてしまっている昨今、その中でも最悪のうつ病を理解するための本だと思った方がいいかと思います。
軽いうつ病をライトに理解したいのであれば、香山リカあたりの著書がいいかもしれません。
しかしそういう方でも、愛する人を守るためにも、万が一のために、重いうつ病もあるということをしっかり認識しておいた方がいいと思います。
2008年11月21日に日本でレビュー済み
著者の、うつ病(気分障害)は、心の風邪などという生易しい病ではない。下手をすると、命に関わる危険な病である…と言った趣旨は、正しいと思う。だからと言って、新聞や週刊誌の記事になる様な悲惨な事件(自殺・無理心中など)を次々と取り上げ、その根拠とするのは、いたずらに、かつてあったような精神疾患への偏見をあおり、それこそ「危険」であると思う。「うつ病(気分障害)は、心の風邪」と言ったキャンペーンが張られたのは、この病が、早期に治療開始すればするほど、また、早期に回復するものであるからであり、精神神経科への敷居を下げる上で大変効果があったものと考える。著名人のカミングアウトが続いたのも、この傾向を後押しした。著者は、最近特にこうしたセンセーショナルなタイトル・目次・内容で次々に出版物を出しているのが気になる。しかも、告発ばかりで、解決に向けた提言は投げ出してしまうのである。いったい著者は、これらの本を手にした人々の、患者の、その家族の…思いを想像したことがあるのだろうか。特にこの本はメインのタイトルが「うつ病」とだけあり、全くこの病の知識がない人々が手に取る可能性が高い。精神神経科のプロであるならば、上記の点にも「神経」を使って欲しいものである。
2012年8月31日に日本でレビュー済み
個々の症例に関する記載も判り易く、良くまとまっていると思います。筆者の文章は読みやすく、判りやすい構成、文章です。しかし、内容は大胆で明快。日本の自殺の多さの原因は日本社会の内在する社会病理、筆者の言う「日本的な心理風土・落伍することを許容しない社会・無慈悲な行動」が原因として関与しているという意見は明快です。さらに「はみ出し者を嫌い、切り捨てる日本独特の「悪人情」」とまで言い切ります。しかし、私からさらに言えば、それらは日本社会に江戸時代から強く根付いた儒教性の影響を見て取れる気がします。いわゆる専門家の意見を疑ってかかるべきだと言う意見は痛快です。我々臨床医にも内省を込めて一読の価値があります。さらに産業医として企業の社員の健康管理、特に精神診療管理に苦労している産業医に一読を薦めたいです。
2014年8月27日に日本でレビュー済み
臨床に興味があり、今や代表的な精神疾患となった「うつ病」について知りたく、著書を読むことにした。
内容は患者たちの体験談、うつ病の種類や対策等、素人でも分かりやすい言葉で綴られている。
また、現代日本という国の風土に警鐘を鳴らしている。昨今、貧困失業と暗いワードがニュースで飛び交っているが、それでも日本の失業率は他国と比べれば低い。環境的には文句なしに恵まれた住みやすさであるにも関わらず、自殺率は上位である。
つまり失業率=自殺ではないということになる。日本人の一度人生を踏み外した者に対しての冷淡さ、寛容なき社会をなんとかしなければこの病は増える一方だ。社会的な因子に関しては男性の自殺率が圧倒的多数というのも、納得だろう。
アメリカンドリームとまでは言わないが、日本社会の根底に潜む生真面目さ故のものを変えない限り、この病は決してなくならない。
そして誰もがなる可能性があるということだ。
内容は患者たちの体験談、うつ病の種類や対策等、素人でも分かりやすい言葉で綴られている。
また、現代日本という国の風土に警鐘を鳴らしている。昨今、貧困失業と暗いワードがニュースで飛び交っているが、それでも日本の失業率は他国と比べれば低い。環境的には文句なしに恵まれた住みやすさであるにも関わらず、自殺率は上位である。
つまり失業率=自殺ではないということになる。日本人の一度人生を踏み外した者に対しての冷淡さ、寛容なき社会をなんとかしなければこの病は増える一方だ。社会的な因子に関しては男性の自殺率が圧倒的多数というのも、納得だろう。
アメリカンドリームとまでは言わないが、日本社会の根底に潜む生真面目さ故のものを変えない限り、この病は決してなくならない。
そして誰もがなる可能性があるということだ。