伝統的なミクロ経済学やマクロ経済学、マルクス経済学の主要なトピックには直接にはほとんど触れられていないが、だからといって説明責任を逃れている訳ではなく、直接触れられていないからといってそれらの知見が無駄であった訳ではもちろんない。伝統的な経済学から最新の経済学に至るまで、全てのトピックについて正確に理解しておられるからこそ、このように「使える」というタイトルに忠実に伝統的なトピックに大胆に触れないままに書けるのである。理解の浅い巷の多くの経済学者が書き、大学の授業の教科書としてのみ需要されては毎年処分されている、あれがない、という批判を交わすことばかりを考えてとりあえず触れることばかりを繰り返している、例のごった煮の経済原論なる教科書達がどれだけ読むに耐えないものかを思い起こせば、大竹先生が取った執筆方針がいかに正しいかを即座に納得することができる。のみならず基音を聞き取る力のある者が耳を澄ませば、この本のどのトピックにもきちんと、底流に伝統的な経済学のトピックの基音が鳴っているのを聞くことさえできる。
振り返れば90年頃には、「バブル」さえ、経済学者の間では、まともな経済学用語として扱うのが露骨に躊躇われていて、いかに市井でこの語に言及されようと、また、何度なぜこんなことになっているのか説明を求められていようと、大竹先生を重要な例外とする多くの経済学者が、このように俗な言葉は一時のそれこそ泡沫事象に過ぎず、結局扱わないのが最も賢明であったと歴史が証明するに違いないと信じ、その審判の日をじっと待つ姿勢でいたのを、私ははっきりと覚えている。なぜ覚えているかと言えば、私も当時その説明を求めていたからであり、説明をいただけない担保に、その彼らの姿勢だけをしかと目に焼き付けることにして、「その場を去った」からである。
しかしこの本を読んでみれば、このように役に立つ経済学を生むために、役に立つと宣言するのははばかられた私の学んだ経済学も、どうしても必要だったということが、この年月を静かに追い越すように、しみるように説明され、納得されていくのであった。従ってこの本にふさわしいタイトルは、長過ぎるのをおそれず、正確さにのみ忠実に書けば『「あの場を去ら」ずに向き合い続けた大竹先生達の努力で、この20年でこんなに使えるようになった経済学』であるというべきであろう。
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こんなに使える経済学: 肥満から出世まで (ちくま新書 701) 新書 – 2008/1/1
大竹 文雄
(編集)
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- ISBN-104480064001
- ISBN-13978-4480064004
- 出版社筑摩書房
- 発売日2008/1/1
- 言語日本語
- 本の長さ205ページ
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登録情報
- 出版社 : 筑摩書房 (2008/1/1)
- 発売日 : 2008/1/1
- 言語 : 日本語
- 新書 : 205ページ
- ISBN-10 : 4480064001
- ISBN-13 : 978-4480064004
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- カスタマーレビュー:
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上位レビュー、対象国: 日本
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2010年9月8日に日本でレビュー済み
2019年8月17日に日本でレビュー済み
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「週刊エコミスト」2006/10/10号から2007/4/10号までの連載をもとに27編の短い文章を集めてあります。編者を含めて大阪大学社会経済研究所に在籍する(した)23人の経済学者が経済学や統計学を利用して社会経済の話題を論じています。大竹文雄氏の序文とあとがきは、経済学の対象分野が広いこと、経済学が「『これをすると失敗する』という大まかな方向性を示してくれる」ことを丁寧に説明しています。本編ではセイラ―の「ナッジ」のことと思われる、「おせっかい」の概念に触れたり、ロスらの「メカニズ・ムデザイン理論」を紹介したりしており、読者が最新の経済学に触れる機会を提供しています。「臓器売買」や「騒音おばさん」の章はまことに興味深いです。
難というと、限られた紙幅に、多くの話題を詰め込み、それぞれできるだけデータで説明しようとした雑誌連載がもとになっているため、やや中途半端な本になっている点です。また、解雇規制のような、現状と、経済学が示唆する解が、大きく異なる例の紹介がやや少ないです。これらこそ知りたいことなのに。もっと、社会経済問題について、いわゆる常識にとらわれずに、倫理的にどう考えるか、大竹氏の解説を広く深く読みたかったです。星一つ減点。
これから大学の学部を選ぼうとする若い方はもちろん、一般社会人に、経済学がしようとしていることを紹介する本としては、「教養としての経済学 -- 生き抜く力を培うために」(一橋大学経済学部)のほうが、紙幅もあり、より広く深く、バランスよく情報を提供しているとおもわれます。
難というと、限られた紙幅に、多くの話題を詰め込み、それぞれできるだけデータで説明しようとした雑誌連載がもとになっているため、やや中途半端な本になっている点です。また、解雇規制のような、現状と、経済学が示唆する解が、大きく異なる例の紹介がやや少ないです。これらこそ知りたいことなのに。もっと、社会経済問題について、いわゆる常識にとらわれずに、倫理的にどう考えるか、大竹氏の解説を広く深く読みたかったです。星一つ減点。
これから大学の学部を選ぼうとする若い方はもちろん、一般社会人に、経済学がしようとしていることを紹介する本としては、「教養としての経済学 -- 生き抜く力を培うために」(一橋大学経済学部)のほうが、紙幅もあり、より広く深く、バランスよく情報を提供しているとおもわれます。
2009年4月26日に日本でレビュー済み
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経済学を学んで得られるメリットの一つとして,バタフライ効果(日本の例で言えば,「風が吹けば桶屋が儲かる」の理論)を予測することが可能になることである.つまり,ある一つの行動や制度が原因で起こる次の行動や状態(因果関係)が分かるようになることである.ある現状の改善策として打ち出される法律や制度の中には,現状を悪化させるようなものも有る.それは経済学で言うところのインセンティブを踏まえていないからであり,因果関係と相関関係を混同していることに由来する場合が少なくない.本書は,統計より得られるデータをもとに,問題の原因とその解決策としてのインセンティブ設計を,個人の行動レベルで考えられる内容となっている.中公新書の『経済学的思考のセンスーお金がない人を助けるには』(大竹)と近い内容だがトピックスが異なり,また論文などの研究成果をベースとしているため,よりインセンティブの考え方が身につくものとなっている.
そうはいってもやはり,インセンティブの発想が自然に「使える」レベルになるには,こういった新書は馴染まないものであるという他ない.
そうはいってもやはり,インセンティブの発想が自然に「使える」レベルになるには,こういった新書は馴染まないものであるという他ない.
2008年10月1日に日本でレビュー済み
特に「インセンティブ」の概念を中心軸としながら複数の著者の論文を掲載した書籍。
見方によっては視点の拡散、内容のまとまりの無さが気になるかもしれませんが、
それをそれと受け入れた上で読めば、現実の問題に対する経済学の適用の仕方、
そこから導かれる経済学的真実(実社会で適応出来るとは限らないが)
など、参考になる点が凝縮された本です。
ゲーム理論の「パレート効率的」という概念や、「効率的市場仮説」という考え。
経済学を学んだものには当然の概念ですが、かつて経済を学び記憶が希薄化した方、
独自に経済を学び始めた方、経済学部の学生など、
経済初級者レベルの方が幅広い知識を学ぶには最適の書籍であると考えます。
「新書の厚み」「新書の内容レベル」において、非常に秀逸な作品です。
見方によっては視点の拡散、内容のまとまりの無さが気になるかもしれませんが、
それをそれと受け入れた上で読めば、現実の問題に対する経済学の適用の仕方、
そこから導かれる経済学的真実(実社会で適応出来るとは限らないが)
など、参考になる点が凝縮された本です。
ゲーム理論の「パレート効率的」という概念や、「効率的市場仮説」という考え。
経済学を学んだものには当然の概念ですが、かつて経済を学び記憶が希薄化した方、
独自に経済を学び始めた方、経済学部の学生など、
経済初級者レベルの方が幅広い知識を学ぶには最適の書籍であると考えます。
「新書の厚み」「新書の内容レベル」において、非常に秀逸な作品です。
2014年12月21日に日本でレビュー済み
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商品はきれいで満足しています。梱包も丁寧で綺麗でした。何かあればまた利用したいです。
2011年7月26日に日本でレビュー済み
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世にある経済学者の多くが、結果が出てから、それまで後生大事に溜め込んどいた仮説から「当たり」
を取り出して、延々と語るだけでの連中だということを、わかりやすく世に示した本として評価した
いな。
22の事例の根拠となるデータはすべて断片的で、推論も含めて裏づけの無い「思い込み」の羅列が
目立つ。(サスガに大竹氏本人の執筆については「思い込み」の要素は薄い)
だいたい、この教授のゼミでは、卒論に統計の引用をする際、サンプリングの母数が示されてなくて
もOKなんだろうか?
たとえば、たばこ中毒の“メカニズム”にあたっては、幸福感に関するアンケートで「非常に幸福」
を10点、「非常に不幸」を0点とする11段階評価で、たばこを吸わない人の幸福度が6.55なのに
対して、吸う人の幸福度は6.06 “でしか” ないらしい。
0.49低い結果を「でしかない」とまで断じる根拠がわからんのだが、マクロだってんなら、今日と
比べて喫煙率が3倍も高かった30年前は、国民の7割に及ぶ喫煙者の幸福度や所得自体が、
3割の非喫煙者と比較して圧倒的に低かったことになるんじゃないの?
高度経済成長期の勤労男性にいたっては、インテリを含む実に8割以上がこの本で言うところの
「中毒材に依存」してる連中だったワケだから、お説が正しけりゃ、執筆者の先生にあたる
教授陣も、フタを開けりゃ3人に1人がギャンブル狂のアホだったことになるわな。
しかも依存の理由に至っては、
「過去の喫煙量に応じて今日の1本がうまく感じられ、現在の1服のおいしさは過去どれだけ
たばこを吸ってきたかに比例する」
んだそうだ。あのな・・・
「いやあ、20年近くタバコ吸ってきたけど、やっぱり10年前の1服より今日の1服のほうが遥か
にうまいよな。あと10年吸ったらどんだけうまくなんだろうな?」
なんてヤツは、後にも先にも聞いたこと無いぞ。だいたい20年セブンスターを吸ってたヤツが
ハイライトを吸えば、それだけで美味くは感じないのに、「美味い」なんて味覚をどうやって
計ったんだ?
この本に高い評価を下してる人たちは、「タバコのおいしさ」なんてものを数値データにする
ことが出来るのかもしれないが、経済音痴には「健康志向の流行でインテリがたばこをやめた」
だけの話しを、タバコ嫌いの助手が一度ややこしくしといてから、わかりやすく話そうとして、
ドツボにはまったとしか思えんな。
思い込みの仮説はイイが、検証方法を明確にしないで、さも統計から導き出したかのように結論
を羅列する手法は、三流営業マンのセールストークにも及ばんだろ。
結果論を羅列することにかけては定評のある経済誌に連載されてたっていうのも、妙に納得のい
く内容だったけど、福沢先生の時代ならイザ知らず、ネット時代の学者は、真実だけをひたすら
追求してさえいりゃあ、「わかりやすく」「役に立つように」ってトコはどこぞの誰かがして
くれんだから、こんな小遣い稼ぎしてる暇があったら、ひたすら研究に勤しんで欲しいもんだ。
を取り出して、延々と語るだけでの連中だということを、わかりやすく世に示した本として評価した
いな。
22の事例の根拠となるデータはすべて断片的で、推論も含めて裏づけの無い「思い込み」の羅列が
目立つ。(サスガに大竹氏本人の執筆については「思い込み」の要素は薄い)
だいたい、この教授のゼミでは、卒論に統計の引用をする際、サンプリングの母数が示されてなくて
もOKなんだろうか?
たとえば、たばこ中毒の“メカニズム”にあたっては、幸福感に関するアンケートで「非常に幸福」
を10点、「非常に不幸」を0点とする11段階評価で、たばこを吸わない人の幸福度が6.55なのに
対して、吸う人の幸福度は6.06 “でしか” ないらしい。
0.49低い結果を「でしかない」とまで断じる根拠がわからんのだが、マクロだってんなら、今日と
比べて喫煙率が3倍も高かった30年前は、国民の7割に及ぶ喫煙者の幸福度や所得自体が、
3割の非喫煙者と比較して圧倒的に低かったことになるんじゃないの?
高度経済成長期の勤労男性にいたっては、インテリを含む実に8割以上がこの本で言うところの
「中毒材に依存」してる連中だったワケだから、お説が正しけりゃ、執筆者の先生にあたる
教授陣も、フタを開けりゃ3人に1人がギャンブル狂のアホだったことになるわな。
しかも依存の理由に至っては、
「過去の喫煙量に応じて今日の1本がうまく感じられ、現在の1服のおいしさは過去どれだけ
たばこを吸ってきたかに比例する」
んだそうだ。あのな・・・
「いやあ、20年近くタバコ吸ってきたけど、やっぱり10年前の1服より今日の1服のほうが遥か
にうまいよな。あと10年吸ったらどんだけうまくなんだろうな?」
なんてヤツは、後にも先にも聞いたこと無いぞ。だいたい20年セブンスターを吸ってたヤツが
ハイライトを吸えば、それだけで美味くは感じないのに、「美味い」なんて味覚をどうやって
計ったんだ?
この本に高い評価を下してる人たちは、「タバコのおいしさ」なんてものを数値データにする
ことが出来るのかもしれないが、経済音痴には「健康志向の流行でインテリがたばこをやめた」
だけの話しを、タバコ嫌いの助手が一度ややこしくしといてから、わかりやすく話そうとして、
ドツボにはまったとしか思えんな。
思い込みの仮説はイイが、検証方法を明確にしないで、さも統計から導き出したかのように結論
を羅列する手法は、三流営業マンのセールストークにも及ばんだろ。
結果論を羅列することにかけては定評のある経済誌に連載されてたっていうのも、妙に納得のい
く内容だったけど、福沢先生の時代ならイザ知らず、ネット時代の学者は、真実だけをひたすら
追求してさえいりゃあ、「わかりやすく」「役に立つように」ってトコはどこぞの誰かがして
くれんだから、こんな小遣い稼ぎしてる暇があったら、ひたすら研究に勤しんで欲しいもんだ。
2008年3月18日に日本でレビュー済み
本書は経済学の入門書というより、経済学的な考え方で世の中の現象を説明したものである。『週刊エコノミスト』の連載をまとめたもので、経済雑誌の中で読むと「ちょっと読んでみようか」などと興味が引かれそうなテーマが多い。
内容は多岐にわたる。肥満、タバコ、臓器売買、教師の質の低下、能力か学歴か、早生まれと遅生まれなど経済とさほど関係なさそうなものから、日本人の貯蓄の低下、株式、貸し渋りなど、まさに経済が対象になったものまである。
それぞれのテーマを、基本的に1人の執筆者が担当している。執筆者一覧を見ると、1980年生まれもおり、若い研究者が中心である。そのぶん発想も柔軟で、新しい視点でそれぞれの現象を見ることができ、「なるほど、そういう考え方もあるのか」と目がひらかれることもあった。読ませる文章を書く人もいるので、今後、本の執筆で活躍できそうな人材もいて頼もしい。
本書は経済学を知るのには役に立たないだろうが、物事を経済学的な視点から考えられるようになりたいという向きには有益だ。たとえば、教師の質の低下なら、普通なら教師の資質の問題を問うだろうが、本書ではそれを「女性の労働市場における差別が減少し、男女で差のない数少ない職である教師という仕事の魅力が減り、優秀な女性が教師にならなくなってきた」という視点から説明を加え、データの裏付けを与えている。感情的になりがちな社会問題ほど、こういった冷静な視点を必要とする。そういった意味で、本書はたいへん有意義である。
本書の研究はおそらくCOEになっているのだろうが、COEでは多額の公費(つまり税金)が使われているのだから、こういった形でなるべく一般に還元して欲しいものだ。COEにはどう考えてもくだらないテーマもあるようだ。そうでないと言うなら、本書のように一般が読める形で提供し、一般の「審査」も受けるべきだろう。その意味でも本書は評価できる。
内容は多岐にわたる。肥満、タバコ、臓器売買、教師の質の低下、能力か学歴か、早生まれと遅生まれなど経済とさほど関係なさそうなものから、日本人の貯蓄の低下、株式、貸し渋りなど、まさに経済が対象になったものまである。
それぞれのテーマを、基本的に1人の執筆者が担当している。執筆者一覧を見ると、1980年生まれもおり、若い研究者が中心である。そのぶん発想も柔軟で、新しい視点でそれぞれの現象を見ることができ、「なるほど、そういう考え方もあるのか」と目がひらかれることもあった。読ませる文章を書く人もいるので、今後、本の執筆で活躍できそうな人材もいて頼もしい。
本書は経済学を知るのには役に立たないだろうが、物事を経済学的な視点から考えられるようになりたいという向きには有益だ。たとえば、教師の質の低下なら、普通なら教師の資質の問題を問うだろうが、本書ではそれを「女性の労働市場における差別が減少し、男女で差のない数少ない職である教師という仕事の魅力が減り、優秀な女性が教師にならなくなってきた」という視点から説明を加え、データの裏付けを与えている。感情的になりがちな社会問題ほど、こういった冷静な視点を必要とする。そういった意味で、本書はたいへん有意義である。
本書の研究はおそらくCOEになっているのだろうが、COEでは多額の公費(つまり税金)が使われているのだから、こういった形でなるべく一般に還元して欲しいものだ。COEにはどう考えてもくだらないテーマもあるようだ。そうでないと言うなら、本書のように一般が読める形で提供し、一般の「審査」も受けるべきだろう。その意味でも本書は評価できる。