久々にひどい本を読んだ。
著者は物性物理学の研究者で、大阪大学に長年勤めたという人物。
本書は、「理科」で歴史を読みなおすとなっているが、通読したかぎりでは、まったくそうしたことは行われていないように思える。
縄文時代の黒曜石の交易、奈良の大仏のメッキに使われた砂金の出所、沖縄の藁算、デューラーの絵に描き込まれた魔方陣、日本における地動説の受容、サイエンティストの社会的成立といった話題が、まとまりなく語られている。
それぞれは興味深い話題なのだが、いろいろと問題も多い。戦前の研究が平然と引用されたり、近年の研究では否定されているようなことが平然と書かれたり、進歩史観にとらわれて同時代の状況がまったく無視されたり、いろいろな時代のことをいっしょくたに論じてしまったり。
また、憶測が多すぎるのも問題だ。
そもそも、著者の考えている「理科」とはいったい何なのか。また、本書の何をもって「歴史を読みなお」せたと思っているのか。とくに後者はいっさい果たされていないように見える。単に科学史的話題を並べただけで、そられが歴史や文化に与えた影響のことなど、ほとんど触れられていない。
突っ込みどころが多すぎる……。
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「理科」で歴史を読みなおす (ちくま新書 841) 新書 – 2010/4/7
伊達 宗行
(著)
- 本の長さ286ページ
- 言語日本語
- 出版社筑摩書房
- 発売日2010/4/7
- ISBN-104480065229
- ISBN-13978-4480065223
登録情報
- 出版社 : 筑摩書房 (2010/4/7)
- 発売日 : 2010/4/7
- 言語 : 日本語
- 新書 : 286ページ
- ISBN-10 : 4480065229
- ISBN-13 : 978-4480065223
- Amazon 売れ筋ランキング: - 858,555位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 2,256位ちくま新書
- - 127,113位ノンフィクション (本)
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2010年10月17日に日本でレビュー済み
科学技術が人間や社会にどのような影響を与えたのか?科学技術がどのように歴史を動かしてきたのか?という、斬新な視点で書かれた本です。
「第六章アルスの世界」では、科学と芸術の原点について、わかりやすく解説されています。
かつて一つだった“科学”と“芸術は”どのように分かれていったのか?
“科学”はどのようにして日本にたどり着いたのか?
科学に携わる方には特におすすめです。
「第六章アルスの世界」では、科学と芸術の原点について、わかりやすく解説されています。
かつて一つだった“科学”と“芸術は”どのように分かれていったのか?
“科学”はどのようにして日本にたどり着いたのか?
科学に携わる方には特におすすめです。
2010年11月14日に日本でレビュー済み
この本はハッキリ言って「なぜそうなったのか?」ということを考えないような教科書学校教育に飼い慣らされたタイプの人には不向きです
自分で想像力を働かせて考えられる人、または多少なりにも哲学的な考察をしたことのある人向きです
私は自分があらためて5千年前から脈々と積み上げられてきた人類の智の上に立っていることを再認識できました
面白っかたのは、数字に関しては別にしてお経という読み音が倭人伝の魏国の音ではなく南部にあった呉国のものであり半島ルート以前に江南ルートで仏教が入っていたのでは?という指摘と、江戸時代のアイヌ交易記録から古代樺太ルートの可能性への指摘も広範な知識があれば我々日本人のDNA絡みで想像が膨らんで楽しむことができます
またアルスからサイエンスへの進化の過程で明治期の日本が帝大工学部創設が貢献したという指摘もなかなか興味深いものです
科学を志す方に是非一読してもらい哲学的なことについても興味を広げてもらいたいと思います
自分で想像力を働かせて考えられる人、または多少なりにも哲学的な考察をしたことのある人向きです
私は自分があらためて5千年前から脈々と積み上げられてきた人類の智の上に立っていることを再認識できました
面白っかたのは、数字に関しては別にしてお経という読み音が倭人伝の魏国の音ではなく南部にあった呉国のものであり半島ルート以前に江南ルートで仏教が入っていたのでは?という指摘と、江戸時代のアイヌ交易記録から古代樺太ルートの可能性への指摘も広範な知識があれば我々日本人のDNA絡みで想像が膨らんで楽しむことができます
またアルスからサイエンスへの進化の過程で明治期の日本が帝大工学部創設が貢献したという指摘もなかなか興味深いものです
科学を志す方に是非一読してもらい哲学的なことについても興味を広げてもらいたいと思います
2011年7月28日に日本でレビュー済み
一般に「文系」と「理系」の壁は日本では厚いが、あまりよい成果をもたらすことはない。文学や歴史でも筋の通った考え方は必要だし、理倫理や人間性のない物理や生物学など意味はない。
本書は自然科学の観点から歴史上のトピックに切り込み、斬新な仮説を取り上げる。むろん、これからの研究課題にしなければならないものも多いが、「文理」の壁を取り払った斬新なものと言えよう。
最後には文化や科学技術のあり方についても述べられているが、さらにいえば大学制度・教育制度のあり方にも一石を投じるものと言えよう。
本書は自然科学の観点から歴史上のトピックに切り込み、斬新な仮説を取り上げる。むろん、これからの研究課題にしなければならないものも多いが、「文理」の壁を取り払った斬新なものと言えよう。
最後には文化や科学技術のあり方についても述べられているが、さらにいえば大学制度・教育制度のあり方にも一石を投じるものと言えよう。
2010年8月20日に日本でレビュー済み
題名から期待するのは、歴史上の事件や人物を「理科」によって再評価すると、新たな発見や違った角度からの整理ができるということじゃないだろうか。
しかしながら、扱っているネタは鉄の発見、文明と貴金属、数の発見、世界各地の魔法陣といった、あまり目新しくない(もしくはどこかに書いてありそうな)ものが中心で、「歴史を読み直す」というよりは、「歴史の中から理科に関するネタを集めてみた」という印象が強い。
いくつかの興味深い仮説も記載されてはいるが、論拠に乏しく、独善的な印象すら受ける。秋田で発見された土版の3,5,4と並んだ12個のドットから、「直角三角形の辺を表しているんじゃないか?」とか「354日を示しているから太陰暦使っていたのでは?」って推測するのは居酒屋談義としては面白いけど、「ひょっとしたらそうかもしれない」と思わせる論拠に乏しいので、ほとんど空想・妄想の世界だ。
てっきり数学好きの歴史学者が書いたものと思っていたので、物理学のお偉いさんが書いているのにはびっくりしたが、空想の度合いといい、度重なる脱線による知識の披瀝といい、よほど著者と波長が合わなければ、愉快に読み進めることは難しい。
しかしながら、扱っているネタは鉄の発見、文明と貴金属、数の発見、世界各地の魔法陣といった、あまり目新しくない(もしくはどこかに書いてありそうな)ものが中心で、「歴史を読み直す」というよりは、「歴史の中から理科に関するネタを集めてみた」という印象が強い。
いくつかの興味深い仮説も記載されてはいるが、論拠に乏しく、独善的な印象すら受ける。秋田で発見された土版の3,5,4と並んだ12個のドットから、「直角三角形の辺を表しているんじゃないか?」とか「354日を示しているから太陰暦使っていたのでは?」って推測するのは居酒屋談義としては面白いけど、「ひょっとしたらそうかもしれない」と思わせる論拠に乏しいので、ほとんど空想・妄想の世界だ。
てっきり数学好きの歴史学者が書いたものと思っていたので、物理学のお偉いさんが書いているのにはびっくりしたが、空想の度合いといい、度重なる脱線による知識の披瀝といい、よほど著者と波長が合わなければ、愉快に読み進めることは難しい。