面白い本だと思います。
何が面白いかといえば、実名で実際に行った市町村の地域再生の試みを一刀両断に具体的に、ボロクソに批判しているという痛快さにあります。
金を掛けただけで血が通わないただの箱物は失敗しているし、
市民ニーズからスタートした市民交流に根ざした試みは活気が出ています。
「活気が出ている」と書いたのは、利益が出ていないということです。
この本での地域の活性化とは私益より公益を追求し、試み自体に利益は出ずとも街全体で利益を出すために、
公的支援は赤字でも仕方が無いというスタンスです。
このスタンスは、IBMでコンサル的な仕事をしてきた(私益中心だった)著者が、とある経験をきっかけに公益に目覚めたバックストーリーを絡めて展開されていきます。
この考えは、大きくは企業活動にも通じるし、個人の生き方にも通底する深さがあるとこの本では暗示しています。
深さという意味では、「人口減少の日本社会の中での地域再生とは何か」をさらに触れてあれば深みが出たと思います。
日本の地域はどうなるべきか、全ての地域を再生するべきなのか、一部に集約化すべきかという財政的な根本問題を知りたいという思いは残りました。
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地域再生の罠 なぜ市民と地方は豊かになれないのか? (ちくま新書 853) 新書 – 2010/7/7
久繁 哲之介
(著)
- ISBN-104480065628
- ISBN-13978-4480065629
- 出版社筑摩書房
- 発売日2010/7/7
- 言語日本語
- 寸法10.8 x 1.3 x 17.4 cm
- 本の長さ254ページ
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登録情報
- 出版社 : 筑摩書房 (2010/7/7)
- 発売日 : 2010/7/7
- 言語 : 日本語
- 新書 : 254ページ
- ISBN-10 : 4480065628
- ISBN-13 : 978-4480065629
- 寸法 : 10.8 x 1.3 x 17.4 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 82,015位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 273位ちくま新書
- カスタマーレビュー:
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2014年5月27日に日本でレビュー済み
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2020年3月20日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
この本に書かれている筆者の考えにも納得。ただ、地方が豊かになるとは、どういったことなのか、どうあれば豊かさや幸せを実感できるのかをもう一度問い直すことから始まる。方法は決して一つではない。まだ知らない方法もきっと見つかるはず。本書はそういったことも示唆してくれる良本。
2017年11月30日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
内容としてはとても勉強になりました。
個人の意見としては、
地方は地方の特色や付加価値があるので
一概に豊かでないとは言い切れないと思った。
豊かさとは何か?
そういった視点でも読んでみる価値がある本だ。
個人の意見としては、
地方は地方の特色や付加価値があるので
一概に豊かでないとは言い切れないと思った。
豊かさとは何か?
そういった視点でも読んでみる価値がある本だ。
2012年4月5日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
本書は、面白い造りになっています。
専門家の誤った認識による地域再生策の押し付けが、地方の衰退を進めているということを罠としてるのですが、結局は著者も机上の空論をかます専門家のひとりである、ということを証明していくシュールな内容となっています。
結論としては、専門家ではなく、市民が主体になって地域再生を進めなさいという、使い古された論調に終始します。
また、地域再生の方向性としては、ギリシャモデル。つまり、心の豊かさを追求し、経済的な破綻が迫ってくることには眼をつぶって、幸せを感じましょうというないようです。
地域再生の方策案は、現実的ではないが、響きはいいものを並べているに過ぎません。
読んでいて気になった点は3点。
・仮想敵を作って批判する内容が多すぎる上、その内容がうすっぺらい。客観的なデータを使うことが少なく、都合の良い状況証拠などを切り貼りしたイメージで人を批判している点。
・ロジカルじゃない点。ストーリーも、散らかりすぎています。
・さまざまな用語の定義があいまいで、部分部分で意味が変わっている、混同している箇所がある。
上から目線はやめて、市民主体の改革をしましょうという本書の提案には賛同しますが、チープな論議に終始しますので、いまいちでした。
専門家の誤った認識による地域再生策の押し付けが、地方の衰退を進めているということを罠としてるのですが、結局は著者も机上の空論をかます専門家のひとりである、ということを証明していくシュールな内容となっています。
結論としては、専門家ではなく、市民が主体になって地域再生を進めなさいという、使い古された論調に終始します。
また、地域再生の方向性としては、ギリシャモデル。つまり、心の豊かさを追求し、経済的な破綻が迫ってくることには眼をつぶって、幸せを感じましょうというないようです。
地域再生の方策案は、現実的ではないが、響きはいいものを並べているに過ぎません。
読んでいて気になった点は3点。
・仮想敵を作って批判する内容が多すぎる上、その内容がうすっぺらい。客観的なデータを使うことが少なく、都合の良い状況証拠などを切り貼りしたイメージで人を批判している点。
・ロジカルじゃない点。ストーリーも、散らかりすぎています。
・さまざまな用語の定義があいまいで、部分部分で意味が変わっている、混同している箇所がある。
上から目線はやめて、市民主体の改革をしましょうという本書の提案には賛同しますが、チープな論議に終始しますので、いまいちでした。
2016年1月15日に日本でレビュー済み
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自治体関係者に広く喧伝されている地域再生の成功例の実態と、失敗例と成功例を紹介しながらこれからの地域再生のあるべき姿を提案する一冊。「成功」とうたわれてきた多くの地域再生事業が、実は失敗していることを実地に調べ、そこに隠された「罠」を暴き、より実のある地域再生を説く。そのカギは、「市民の生活を中心に据えて考えること」「箱をつくるのでなく、需要を創り出すこと」。
2012年6月10日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
本書は、衰退する多くの地方都市のなかでも成功事例として語られる
いくつかの都市に実際に訪れた著者が、残念ながら成功しているとは言えない
閑散とした都市の実態を例にあげ、なぜ地域再生が失敗するのかについて
考え、そして真の地域再生のためのビジョンと方策を提言したものである。
私が本書で紹介された事例で特に興味をもった都市は、鳥取県天神町商店街の事例である。
鳥取県天神町商店街は、いくつかの成功事例集に掲載されるほど、有名な成功事例でありながら、
著者が30分滞在しても人っこ一人いない状態であった。
それに対して、鳥取県庁職員と鳥取市役所職員の反応は、180度異なっていた。
県職員「確かに月に一度のイベントでは盛り上がるけど、普段は閑古鳥が鳴いている。自動車の格好の通り道となっている。
成功事例として扱う認識には問題がある。」
市職員「普段は閑古鳥が鳴いているが、、月に一度のイベントは非常に賑わう、月に1度でも賑わうので成功といってもよい。」
県職員は市民目線で、市職員は提供者目線で捉えており、成功事例集は提供者目線から事例を選び、
そのよい点だけを記述して成功とされていると。
これは私が地域再生や地域振興に取り組んでいる人と話をするときに感じる違和感を非常に的確に言い表していた。
多くの地域再生関係者は関係者たちだけで話をしているから、提案者目線になりがちであり、
私(一般市民)にとっては実感を持ちにくいものとなっている。
本書には、この事例のように成功事例をもとに地域再生に潜む罠をあぶり出す。
国家公務員、地方公務員、土建工学者、地域再生関係者問わず広く本書が手にとられることを祈る。
いくつかの都市に実際に訪れた著者が、残念ながら成功しているとは言えない
閑散とした都市の実態を例にあげ、なぜ地域再生が失敗するのかについて
考え、そして真の地域再生のためのビジョンと方策を提言したものである。
私が本書で紹介された事例で特に興味をもった都市は、鳥取県天神町商店街の事例である。
鳥取県天神町商店街は、いくつかの成功事例集に掲載されるほど、有名な成功事例でありながら、
著者が30分滞在しても人っこ一人いない状態であった。
それに対して、鳥取県庁職員と鳥取市役所職員の反応は、180度異なっていた。
県職員「確かに月に一度のイベントでは盛り上がるけど、普段は閑古鳥が鳴いている。自動車の格好の通り道となっている。
成功事例として扱う認識には問題がある。」
市職員「普段は閑古鳥が鳴いているが、、月に一度のイベントは非常に賑わう、月に1度でも賑わうので成功といってもよい。」
県職員は市民目線で、市職員は提供者目線で捉えており、成功事例集は提供者目線から事例を選び、
そのよい点だけを記述して成功とされていると。
これは私が地域再生や地域振興に取り組んでいる人と話をするときに感じる違和感を非常に的確に言い表していた。
多くの地域再生関係者は関係者たちだけで話をしているから、提案者目線になりがちであり、
私(一般市民)にとっては実感を持ちにくいものとなっている。
本書には、この事例のように成功事例をもとに地域再生に潜む罠をあぶり出す。
国家公務員、地方公務員、土建工学者、地域再生関係者問わず広く本書が手にとられることを祈る。
2013年7月15日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
新書と割り切っているなら、読む価値は十分あります。各地の事例は面白いです。
副題に「なぜ市民と地方は豊かになれないのか」とありますが、ところどころ論理に無理があるので、著者の「豊かさ」の定義が微妙です。いくつかの自治体の失敗を指摘したうえで、「大事なのは経済的な利益ではなく、心の交流や市民の幸福感」といわれれば、期待していた読者はがっかりですよね。
とはいえ読後感は悪くなく、この著者の本をまた購入してもいいかなと思うので4点。
副題に「なぜ市民と地方は豊かになれないのか」とありますが、ところどころ論理に無理があるので、著者の「豊かさ」の定義が微妙です。いくつかの自治体の失敗を指摘したうえで、「大事なのは経済的な利益ではなく、心の交流や市民の幸福感」といわれれば、期待していた読者はがっかりですよね。
とはいえ読後感は悪くなく、この著者の本をまた購入してもいいかなと思うので4点。
2011年7月15日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
「地域再生」という名目の地方活性化を地方自治体が実施するが、実態は失敗だらけ。でも地方自治体は責任問題に発展するのを避けるため、実態を隠し成功事例として発表する。
その偽りの「成功事例」を参考にして、別の地方都市が「地域再生」を行うが、元々の「成功事例」が的外れな政策なので、真似した別の地方都市も実質失敗に陥る。
これが日本中の至る所(地方都市)で繰り返されている光景。
著者は幾つもの事例を紹介し、その本質に迫る。
・109を誘致したのはいいけど、店員がダサくて、ビルの目の前に八百屋があって、雰囲気ぶちこわしで、それで4年で109が撤退してしまった宇都宮市
・商店街再生で成功事例だった松江市を著者が見に行くと、人っ子一人歩いていない寂れた商店街だった。松江市職員は「月一回のイベントの時は大勢人が来ます」と言い、島根県職員は「アレが成功事例?冗談でしょ。普段は閑古鳥だよ、松江市の商店街は車の抜け道で危ないよ」と言う
・小樽のような観光都市を目指したけど実質的に大失敗している長野市の「ぱてぃお大門」
・コンパクトシティを目指し市の中心部に箱物をいっぱい作ったのに、市の中心部へ行く交通機関である路面電車を廃止して、人が寄りつかなくなってしまった岐阜市
などなど、などなど。いっぱい事例が載っているので、著者が指摘したい問題点がすごくよくわかる良い本である。
ただなんだろう、著者には田舎の都市に住む人の気持ちがわかっていないんだろうな、という感じがする。
私の故郷は北海道苫小牧市の近隣なのだけれども、苫小牧市というのは北海道でも珍しく1970年くらいからずっと人口増加を続けている自治体で(市町村大合併はしていない)、でも駅ビルはほぼ全てのテナントが撤退して廃墟となっていて、駅前はすごく寂れているんだけれども、マイカーでの買い物に便利な立地にはいろんな商業施設が建っていて、ここには苫小牧市民だけじゃなく近隣市町村からの買い物客もどんどんやってくる。客が来るから街は勝手に発展する。帰京する度に街並みが変わっている。帰郷する度に便利になっている。
でもこれは著者がいうところの「大型ショッピングモールを誘致するだけでグランドデザインがない都市」に近い発展の仕方なんだけれども、グランドデザインがあろうがなかろうが住民は関係ない。住民は便利であればそれでいいのだ。
この辺の感覚が著者にあるのかないのかがわからない。
著者は都会に住んで都会から田舎を見ているだけの人なのか、もともと田舎者で田舎の発展という事を実感として捉えて書いているのか、そこがわからないから、ちょっと内容に悩む本である。
まあまあ面白かったかな、とは言えるんですけどね。
その偽りの「成功事例」を参考にして、別の地方都市が「地域再生」を行うが、元々の「成功事例」が的外れな政策なので、真似した別の地方都市も実質失敗に陥る。
これが日本中の至る所(地方都市)で繰り返されている光景。
著者は幾つもの事例を紹介し、その本質に迫る。
・109を誘致したのはいいけど、店員がダサくて、ビルの目の前に八百屋があって、雰囲気ぶちこわしで、それで4年で109が撤退してしまった宇都宮市
・商店街再生で成功事例だった松江市を著者が見に行くと、人っ子一人歩いていない寂れた商店街だった。松江市職員は「月一回のイベントの時は大勢人が来ます」と言い、島根県職員は「アレが成功事例?冗談でしょ。普段は閑古鳥だよ、松江市の商店街は車の抜け道で危ないよ」と言う
・小樽のような観光都市を目指したけど実質的に大失敗している長野市の「ぱてぃお大門」
・コンパクトシティを目指し市の中心部に箱物をいっぱい作ったのに、市の中心部へ行く交通機関である路面電車を廃止して、人が寄りつかなくなってしまった岐阜市
などなど、などなど。いっぱい事例が載っているので、著者が指摘したい問題点がすごくよくわかる良い本である。
ただなんだろう、著者には田舎の都市に住む人の気持ちがわかっていないんだろうな、という感じがする。
私の故郷は北海道苫小牧市の近隣なのだけれども、苫小牧市というのは北海道でも珍しく1970年くらいからずっと人口増加を続けている自治体で(市町村大合併はしていない)、でも駅ビルはほぼ全てのテナントが撤退して廃墟となっていて、駅前はすごく寂れているんだけれども、マイカーでの買い物に便利な立地にはいろんな商業施設が建っていて、ここには苫小牧市民だけじゃなく近隣市町村からの買い物客もどんどんやってくる。客が来るから街は勝手に発展する。帰京する度に街並みが変わっている。帰郷する度に便利になっている。
でもこれは著者がいうところの「大型ショッピングモールを誘致するだけでグランドデザインがない都市」に近い発展の仕方なんだけれども、グランドデザインがあろうがなかろうが住民は関係ない。住民は便利であればそれでいいのだ。
この辺の感覚が著者にあるのかないのかがわからない。
著者は都会に住んで都会から田舎を見ているだけの人なのか、もともと田舎者で田舎の発展という事を実感として捉えて書いているのか、そこがわからないから、ちょっと内容に悩む本である。
まあまあ面白かったかな、とは言えるんですけどね。