圧倒的なフィールドワークに基づいた重厚な論議である。
限界集落を見つめ、思考し、現地に赴き、人々と語らい、共に行動した結果が積み上げられていてる。弘前大学の教官として、地方都市からその延長線上にある限界集落をとらえているところが、他と一線を画す。
地方の小さな集落の出身である私でも、限界集落とは社会の変化に対応できなかった結果であり消えてしまうのは仕方が無いのではないか、限界集落の電力や交通等インフラ維持を都市が負担し続けるのは不合理であり困難ではないか、との立場であったが、読み進み次の一文に会った時に蒙を開かれる思いがした。
「過疎問題は特定の地域が頑張らなかったので落ち込んだという話ではない。日本社会が一体化していく過程で出てくる、大きな変化のうちに生じた現象である。言い過ぎてしまえば、戦後の経済成長という国の発展目標のために人々が力を合わせた結果でもある。」 p.209
こういう視点があれば、地方の人々は誇りを取り戻し、地域の再生に力を尽くすることが出来る。
「実は、コミュニティが消えたのは大都市においてなのである。」 p.278
「日本の社会はもともと、むらや町の集積でできていた。それぞれの社会的主体があって、初めて国が成り立ってきたのである。日本の社会を分析する様々な研究が明らかにしてきたように、この入れ子構造こそが日本社会の強さの秘密であった。」 p.278
「若者が流出していく中で、戦前生まれの人々が村を維持してきた、2010年代に入りこの世代が世を去り、日本社会の戦前から戦後への転換がいよいよ完成するが、この方向は良い方向には見えない。」(p.279 筆者要約)
「このことを、中心からの視点ではなく、周辺からの視点で考えていくことで、現在の我々が迎えている閉塞状況の変化を見極め、またそれを乗り切る答えを探すことができるかもしれないということである。」 p.279
ルポルタージュとしても一級品だが、鯵ヶ沢町深谷地区、弘前市沢田地区等での地域やマスコミを巻き込んだ地域再生の実践例があり、地方再生に心を砕く多くの人々は勇気付けられるのではないか。
最後に余計なことを言うと、これくらい頑張ってくれると昨今の文系軽視の風潮は吹き飛んでしまうだろう。
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限界集落の真実: 過疎の村は消えるか? (ちくま新書 941) 新書 – 2012/1/10
山下 祐介
(著)
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- ISBN-104480066489
- ISBN-13978-4480066480
- 出版社筑摩書房
- 発売日2012/1/10
- 言語日本語
- 寸法10.8 x 1.3 x 17.3 cm
- 本の長さ285ページ
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- 新書 : 285ページ
- ISBN-10 : 4480066489
- ISBN-13 : 978-4480066480
- 寸法 : 10.8 x 1.3 x 17.3 cm
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2014年11月16日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
「消えた集落などない」とはいえ、これから消えそうな集落はたくさんある、ということでこうした問題に関心がある人にとっては、それはそうだということになります。なので、特別ものすごい事実が書いている、というわけではありません。
とはいえ、この本はいわゆる限界集落について社会学的にきちんとした分析がなされており、きわめてまっとうな事がきちんと書かれていると思います。特に筆者のいうΛ型の集落の再生について、集落の人々とともに導き出していくことが大切であり、それぞれの強みを見つめなおし、引き出していくことが大切だという主張は、当然であり、重要だと感じました。個人的には、「効率性の悪い集落には消えてもらったほうがよいのか」に対する筆者の反論が大変納得させられました。一集落の問題としてではなく、私たち日本人全体の問題として考えるべき問題だという筆者の主張を受け止めていかなければならないと感じました。
とはいえ、この本はいわゆる限界集落について社会学的にきちんとした分析がなされており、きわめてまっとうな事がきちんと書かれていると思います。特に筆者のいうΛ型の集落の再生について、集落の人々とともに導き出していくことが大切であり、それぞれの強みを見つめなおし、引き出していくことが大切だという主張は、当然であり、重要だと感じました。個人的には、「効率性の悪い集落には消えてもらったほうがよいのか」に対する筆者の反論が大変納得させられました。一集落の問題としてではなく、私たち日本人全体の問題として考えるべき問題だという筆者の主張を受け止めていかなければならないと感じました。
2014年10月12日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
効率の悪い限界集落からは集団撤退して、効率的な都会に人を集めた方が、
これからの人口減少社会を乗り切るには良いのではないかと思っていましたが、
この本を読んで考え方が変わりました。
むら・地方都市・三大都市圏における昭和一桁生まれ世代、
団塊世代、団塊ジュニア世代の人の流れを分析することによって、
日本での社会構造にどんな変化が起きてきたのか、
どのようにして限界集落ができてきたのかを考察されています。
限界集落といわれていても、意外と簡単に消滅するものではないこと、
だがいよいよ昭和一桁生まれ世代が平均寿命に達しはじめた今、
継承する子どもがいなくなって危機が迫ってきていること、
地域の守るべき伝統の無い都会の限界集落の方がより大変だ
ということなどに言及しています。そして、限界集落を再生する処方箋に関しても、
フィールドワークを通して提示されています。
おそらくは、いままでの歴史・人間関係を無視して集団移住する方が、
なんらかの形で集落を維持できるところは維持した方よりも、
結果的にはコストがかかり、日本全体の人口減少を加速させること、
そしてむらの消滅はまた大規模な都市災害が起きた時の生活を
バックアップする場所の消滅をも意味しているということを示唆していると思いました。
これからの人口減少社会を乗り切るには良いのではないかと思っていましたが、
この本を読んで考え方が変わりました。
むら・地方都市・三大都市圏における昭和一桁生まれ世代、
団塊世代、団塊ジュニア世代の人の流れを分析することによって、
日本での社会構造にどんな変化が起きてきたのか、
どのようにして限界集落ができてきたのかを考察されています。
限界集落といわれていても、意外と簡単に消滅するものではないこと、
だがいよいよ昭和一桁生まれ世代が平均寿命に達しはじめた今、
継承する子どもがいなくなって危機が迫ってきていること、
地域の守るべき伝統の無い都会の限界集落の方がより大変だ
ということなどに言及しています。そして、限界集落を再生する処方箋に関しても、
フィールドワークを通して提示されています。
おそらくは、いままでの歴史・人間関係を無視して集団移住する方が、
なんらかの形で集落を維持できるところは維持した方よりも、
結果的にはコストがかかり、日本全体の人口減少を加速させること、
そしてむらの消滅はまた大規模な都市災害が起きた時の生活を
バックアップする場所の消滅をも意味しているということを示唆していると思いました。
2014年2月11日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
皆さんは、「限界集落」と聞いてどんなことを
思われますか?
限界って、集落として存続できないってことかな?
人口も少なそうだし…
まぁでも、都市で暮らしてる自分には関係ないよなぁ…
私も、ちょっと、そうでした。
でも、本当に、都市部の住民と無関係な問題なのか…??
最後まで読めば、日本の抱える人口問題の、
報道されない側面が見えてきます。
綿密なフィールドワークと具体的なデータ、
そして平易な文章で、私たちに問題提起する本です。
おすすめです。
思われますか?
限界って、集落として存続できないってことかな?
人口も少なそうだし…
まぁでも、都市で暮らしてる自分には関係ないよなぁ…
私も、ちょっと、そうでした。
でも、本当に、都市部の住民と無関係な問題なのか…??
最後まで読めば、日本の抱える人口問題の、
報道されない側面が見えてきます。
綿密なフィールドワークと具体的なデータ、
そして平易な文章で、私たちに問題提起する本です。
おすすめです。
2013年7月25日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
イメージがぶち壊された感じです。
村おこしとかやってみたいと思っている学生にはいいかも。
村おこしとかやってみたいと思っている学生にはいいかも。
2015年5月11日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
現地調査にもとづいて執筆した形がとられているが、調査や分析は浅くて薄いので、説得力に乏しい
2013年2月11日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
著者が弘前大学で行っていた研究で得られた経験、知見をベースにした提言。
「過疎の村」が消えて無くなると考えるのは、「効率化」を主張する論者による、地に足のついていない主張でありメディアがそれを助長するのは危険であると強い警告を発しています。
やりようによっては主体者である住民の生き残りたいという意思とともに過疎の村の再生は可能であると。
特に第3章の「世代間の地域住み分け - 効率性か、安定性か」は必読。
人口変動パターン(人口排出・吸収)という観点での分析とその考察を読むにつけ、戦後日本の村落から都市部への人の流れは、「異常事態」としか言いようのないものです。
私が考えている「グローバリゼーションが生む負の部分」と「周辺都市部、農村へのいろいろな期待=localization」の二極をどううまく折り合いをつけながら進めていくのか?ということを著者自身も問題提起しています。「今後も安定して続く農山漁村があってこそ、グローバル化の時代の中でも安定した国民社会が築かれる」というのが著者の主張。
私は、この二極はどちらかがどちらかを補完するものではなく、完全に極化していくもの、即ち、相いれないものではないかと考えています。グローバリゼーションとローカライゼーションのバランスを取りながら・・・それは、かなり難易度が高いのではないかと最近考えるようになりました。
退職者の帰農、若手社会人のUIターン以外の「再生の解決策」をどれだけ考え、実行できるかが問われているのではないかと思うのです。
2100年の日本を想定しながら、「最大化から最適化を目指した持続可能な生活環境」の実現という点で、たとえGDP/GNPが減額しても、回避できる社会コストもあるはず。
その点では、著者が言及しているとおり、村落型ではなく、都市郊外で早期開発された住宅街の方が、著者の指摘を検証する場としてふさわしいのかも知れません。
「過疎の村」が消えて無くなると考えるのは、「効率化」を主張する論者による、地に足のついていない主張でありメディアがそれを助長するのは危険であると強い警告を発しています。
やりようによっては主体者である住民の生き残りたいという意思とともに過疎の村の再生は可能であると。
特に第3章の「世代間の地域住み分け - 効率性か、安定性か」は必読。
人口変動パターン(人口排出・吸収)という観点での分析とその考察を読むにつけ、戦後日本の村落から都市部への人の流れは、「異常事態」としか言いようのないものです。
私が考えている「グローバリゼーションが生む負の部分」と「周辺都市部、農村へのいろいろな期待=localization」の二極をどううまく折り合いをつけながら進めていくのか?ということを著者自身も問題提起しています。「今後も安定して続く農山漁村があってこそ、グローバル化の時代の中でも安定した国民社会が築かれる」というのが著者の主張。
私は、この二極はどちらかがどちらかを補完するものではなく、完全に極化していくもの、即ち、相いれないものではないかと考えています。グローバリゼーションとローカライゼーションのバランスを取りながら・・・それは、かなり難易度が高いのではないかと最近考えるようになりました。
退職者の帰農、若手社会人のUIターン以外の「再生の解決策」をどれだけ考え、実行できるかが問われているのではないかと思うのです。
2100年の日本を想定しながら、「最大化から最適化を目指した持続可能な生活環境」の実現という点で、たとえGDP/GNPが減額しても、回避できる社会コストもあるはず。
その点では、著者が言及しているとおり、村落型ではなく、都市郊外で早期開発された住宅街の方が、著者の指摘を検証する場としてふさわしいのかも知れません。