街の作られ方は一見して経済的な合理性の上に成り立っている様に見えるが、実際には歴史的な連続性の中で、人間の活動の範囲や活動目的、利用の仕方等によって決定されていき、変化を続けて来た、と言うのが概ね筆者の主張するところだと思います。
さて、さすが建築学の方です、地理学や社会学という多少関係のある隣接諸科学を勉強していた者としては、この様な素晴らしい地図の読み取り方や考察等はなかなか行えないでしょう、後半に書かれている同潤会アパートの空間利用に関する記述などは、平面図、写真、解説とどれをとっても素晴らしいものだと思います。
建築学の領域で養われた素晴らしい力が存分に発揮されていると思います。
上記の様な地図を使ってその変容過程について考察するのは、長年地理学の分野で土地利用や立地条件と言った文脈で語れることが多い様に思いますが、やはり角度が違い面白い研究です。
さて、気になった点は、前半の江戸に関する記述です。
古地図や浮世絵などを使い巧みに解説を加え「なるほど」と思う点は沢山あったのですが、気になったのはそれ以外の「史料」が少ない点です。要するに江戸時代に書かれた文献資料が無く、地図と浮世絵だけで江戸時代の街に関する記述を行っている点について、少し残念な気持ちになりました。
勿論、筆者があくまでも建築学の分野の人間で地図や平面図から考察を加えると言うスタンスなので、歴史学的な調査を行って考察に厚みを付けるのは無用と考える方も多いと思うのですが、空間人類学という場所に関する記述をするにあたって、当時どのようにその場所や施設が利用されていたのかに当時の史料(地図や浮世絵以外の史料)からある程度付け加えるべきだったのでは無いかと思いました。
大きく2章分の記述を江戸から東京に変容していく過程についやしているので、余計にそのように感じてしまいました。
勿論、前述の様に「ま、別に建築学の人だからいいか」と思える一方で、東京論を歴史学的なアプローチで研究したい人は、この本を主要な参考文献にするのはやや危険かなと思いました。
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東京の空間人類学 (ちくま学芸文庫 シ 2-1) 文庫 – 1992/11/1
陣内 秀信
(著)
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第7回(1985年) サントリー学芸賞・社会・風俗部門受賞
- ISBN-104480080252
- ISBN-13978-4480080257
- 出版社筑摩書房
- 発売日1992/11/1
- 言語日本語
- 本の長さ332ページ
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登録情報
- 出版社 : 筑摩書房 (1992/11/1)
- 発売日 : 1992/11/1
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 332ページ
- ISBN-10 : 4480080252
- ISBN-13 : 978-4480080257
- Amazon 売れ筋ランキング: - 18,243位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 14位都市開発・都市問題 (本)
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- - 55位建築・土木工学
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2013年4月27日に日本でレビュー済み
2012年12月29日に日本でレビュー済み
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あいまいな記憶ですが、東京という都市に魅力が有るとすれば、目に見えない部分がそれを支えているという構造的なものを感じる
2010年6月18日に日本でレビュー済み
本書は都市史を専攻している著者が、現代の東京(といっても本書が刊行されたのは1985年であるが)という都市を探るため江戸時代までさかのぼり昭和に至るまでの東京の移り変わりを記したものである。今日の東京には少なからず江戸時代からの歴史的連続性を観察出来るものが残っているようで、それは武士が住んでいた山の手の坂や豊かな緑、町人が住んでいた下町の掘割などがそうであるようだ。
本書は山の手・下町における都市の形成過程、文明開化や震災などによって変化していく建築様式、近所との交流の場であった路地の代わりとなる小公園や広場の設置などについて述べられているが、私が特に興味を抱いたのは、高層ビルが連立し車社会と言えるだろう現代の東京の背景には、かつての江戸時代の下町では掘割により水路が確保されていて船が行きかい水の都として発展してきたという事実だ。車や電車はもちろんなく、船が交通手段だったようで、掘割の入り込んだ町に河岸や蔵が並び商業的に賑わっていた。隅田川などは流通経済などの役目をはたす一方、料亭や劇場などが並ぶ歓楽街を形成しており、そんな情景をイタリアの水の都ヴェネチアの素晴らしさに例えることができ、船からの景色は圧巻だっただろう。水辺にはおのずと人が集い、経済・社会・文化を形成してきており、江戸時代から都市の発展に水辺空間は欠かせなかったことがわかる。
―新旧織り交ぜた様々な要素が巧みに混淆(こんこう)し、世界にも類例のないユニークな都市空間、東京―。そんな都市をもつ日本に住んでいることに少し誇らしくもあり、高度経済成長により工業化が進み都市から郊外に人は流れ、歴史を感じさせるものが減っていることは寂しい。そしてそんな機能性や実用性が求められてきた現代の東京に必要なのは、江戸からの歴史的構造が現在の東京を根底から支えているという事実をふまえ、著者はこれからの都市開発は東京が受け継いできた都市空間の価値を見つめなおし、それぞれの都市空間に合った開発をしていくべきだと指摘しており、今後の東京に対し悲観的ではなく、それが東京に住む私たちにとっては救いである。本書の情報量から著者がフィールドワークや研究に多くの時間を割いたことがうかがえ、江戸〜昭和の東京を都市史的観点から明確に解読しているため、本書は熟読することで東京の成り立ちが理解でき都市を読む力を養える名著であり、都市学を学ぶ上でのバイブル的な一冊ではないだろうか。
Y.T
本書は山の手・下町における都市の形成過程、文明開化や震災などによって変化していく建築様式、近所との交流の場であった路地の代わりとなる小公園や広場の設置などについて述べられているが、私が特に興味を抱いたのは、高層ビルが連立し車社会と言えるだろう現代の東京の背景には、かつての江戸時代の下町では掘割により水路が確保されていて船が行きかい水の都として発展してきたという事実だ。車や電車はもちろんなく、船が交通手段だったようで、掘割の入り込んだ町に河岸や蔵が並び商業的に賑わっていた。隅田川などは流通経済などの役目をはたす一方、料亭や劇場などが並ぶ歓楽街を形成しており、そんな情景をイタリアの水の都ヴェネチアの素晴らしさに例えることができ、船からの景色は圧巻だっただろう。水辺にはおのずと人が集い、経済・社会・文化を形成してきており、江戸時代から都市の発展に水辺空間は欠かせなかったことがわかる。
―新旧織り交ぜた様々な要素が巧みに混淆(こんこう)し、世界にも類例のないユニークな都市空間、東京―。そんな都市をもつ日本に住んでいることに少し誇らしくもあり、高度経済成長により工業化が進み都市から郊外に人は流れ、歴史を感じさせるものが減っていることは寂しい。そしてそんな機能性や実用性が求められてきた現代の東京に必要なのは、江戸からの歴史的構造が現在の東京を根底から支えているという事実をふまえ、著者はこれからの都市開発は東京が受け継いできた都市空間の価値を見つめなおし、それぞれの都市空間に合った開発をしていくべきだと指摘しており、今後の東京に対し悲観的ではなく、それが東京に住む私たちにとっては救いである。本書の情報量から著者がフィールドワークや研究に多くの時間を割いたことがうかがえ、江戸〜昭和の東京を都市史的観点から明確に解読しているため、本書は熟読することで東京の成り立ちが理解でき都市を読む力を養える名著であり、都市学を学ぶ上でのバイブル的な一冊ではないだろうか。
Y.T
2013年1月30日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
内容を理解しながら読むには実力がいる。
平易な文章だが、筆者には小説的表現法が無いので読解力の試される文章となっている。
東京の街の成り立ちに興味ある人には必携の一冊。
平易な文章だが、筆者には小説的表現法が無いので読解力の試される文章となっている。
東京の街の成り立ちに興味ある人には必携の一冊。
2005年12月10日に日本でレビュー済み
東京の成り立ちを地形・歴史的視点でとても丁寧に解説し、歩き回りたい気持ちにさせてくれる本。著者は、一見歴史はもう残っていないかのように見える現在の東京からでも江戸時代の都市を読み取れるとわかりやすく主張している。現在の東京の繁華街に通ずる部分もあり、おすすめです。
2020年8月10日に日本でレビュー済み
本書は、東京という巨大な都市において、江戸時代から現代に至るまでにどのような変化が生じたのか、その空間構造に着目した上でまとめたものである。
著者は東京大学大学院博士課程を修了したのち、イタリアのヴェネツィア建築大学へ留学、そこで建築・都市史についての調査や研究を行なっている。留学中は水の都と呼ばれるヴェネツィアで地図を片手に町の中をくまなく歩き回りつつ、陸・運河・住宅など様々な観点から都市について調査を行なっていたという。本書でも自分の足で東京の各地を歩き回った上でその都市の文脈を読み取るという工程を取っており、イタリアでの経験がふんだんに発揮された内容となっている。本文中では東京に存在する様々な地名が頻出するため、東京、それも現在の山手の内側に位置する地名に疎い読者は地図を片手に読むことをお勧めする。
本書に通底するのは、東京は江戸、明治、大正後期・昭和初期の3つの時代につくられた層が重なり合ってできているという考えである。同じ東京という都市についての書籍として鈴木博之による『東京の地霊』(1990年)が挙げられるが、鈴木がそれぞれの地域における特定の人間の営みにフォーカスするのに対し、『東京の空間人類学』で陣内は、日本人・武士・商人など大まかに括られた人間の空間に対する意識に重点を置く。また、幕府や近代の政府による区画整理、橋詰広場の形成過程などハードとしての空間の歴史について考察を行なっているのも本書の特徴である。
このように多角的な観点から東京を見つめ直す本書の初版発行年は1985年、日本経済がバブルに湧く丁度一年前である。東京はそれからバブル期はもちろんのこと、失われた20年と呼ばれる日本経済の低迷期、新型コロナウイルスの流行など様々な局面を経験し、その様相も変化し続けており、都市が抱える問題点も当時とは大きく異なっている。しかし、本書で行われている都市の読み方の価値は薄れておらず、2020年となった今でも有用ではないかと思われる。
そんな本書であるが、惜しむらくは内容の重複が点在している点だろうか。とはいえ、それを補って余るほど密度の濃い東京の解説書である。
著者は東京大学大学院博士課程を修了したのち、イタリアのヴェネツィア建築大学へ留学、そこで建築・都市史についての調査や研究を行なっている。留学中は水の都と呼ばれるヴェネツィアで地図を片手に町の中をくまなく歩き回りつつ、陸・運河・住宅など様々な観点から都市について調査を行なっていたという。本書でも自分の足で東京の各地を歩き回った上でその都市の文脈を読み取るという工程を取っており、イタリアでの経験がふんだんに発揮された内容となっている。本文中では東京に存在する様々な地名が頻出するため、東京、それも現在の山手の内側に位置する地名に疎い読者は地図を片手に読むことをお勧めする。
本書に通底するのは、東京は江戸、明治、大正後期・昭和初期の3つの時代につくられた層が重なり合ってできているという考えである。同じ東京という都市についての書籍として鈴木博之による『東京の地霊』(1990年)が挙げられるが、鈴木がそれぞれの地域における特定の人間の営みにフォーカスするのに対し、『東京の空間人類学』で陣内は、日本人・武士・商人など大まかに括られた人間の空間に対する意識に重点を置く。また、幕府や近代の政府による区画整理、橋詰広場の形成過程などハードとしての空間の歴史について考察を行なっているのも本書の特徴である。
このように多角的な観点から東京を見つめ直す本書の初版発行年は1985年、日本経済がバブルに湧く丁度一年前である。東京はそれからバブル期はもちろんのこと、失われた20年と呼ばれる日本経済の低迷期、新型コロナウイルスの流行など様々な局面を経験し、その様相も変化し続けており、都市が抱える問題点も当時とは大きく異なっている。しかし、本書で行われている都市の読み方の価値は薄れておらず、2020年となった今でも有用ではないかと思われる。
そんな本書であるが、惜しむらくは内容の重複が点在している点だろうか。とはいえ、それを補って余るほど密度の濃い東京の解説書である。
2003年6月20日に日本でレビュー済み
内容は「東京の空間人類学」というよりむしろ「江戸からの空間人類学」といった具合で、江戸>明治>昭和末現在の具体的な街の在り方の推移が中心となっている。そしてこれは人類学というより地学的な部類に属するだろう。
結果としてそこに街並みが広がっているのではなく、それは長い歴史で必然的かつ因果的に異化を続けた軌跡であり、今もなお「経過」であるということが、別に本書に記述されているわけではないが漠然と感じられた。
近代の東京の地理的な意味合い(なぜ東側は下町や年寄りが多いのか、西は風俗店や若者が多いのかといったようなこと)を期待して本書を手にした俺としては満足いかない内容だったが、本書のある意味穿った東京をはじめとする都市の見解やそれについての表現はな!かなか面白く、2003年現在読んでもそれらに対しては「古い」などといった感覚はしない。
結果としてそこに街並みが広がっているのではなく、それは長い歴史で必然的かつ因果的に異化を続けた軌跡であり、今もなお「経過」であるということが、別に本書に記述されているわけではないが漠然と感じられた。
近代の東京の地理的な意味合い(なぜ東側は下町や年寄りが多いのか、西は風俗店や若者が多いのかといったようなこと)を期待して本書を手にした俺としては満足いかない内容だったが、本書のある意味穿った東京をはじめとする都市の見解やそれについての表現はな!かなか面白く、2003年現在読んでもそれらに対しては「古い」などといった感覚はしない。