本書は、フランスの歴史家でアナール学派の創始者であるリュシアン・フェーヴルと「古文書学校教授」アンリ=ジャン・マルタンの手から産み出された、極めて知的興奮に満ちた書物である。
これだけでも推薦の価値があるのだが、上巻のみ推薦に足るというわけではないので、上下巻のスペースを借りて、ポイントを(もちろん知的興奮を殺ぐようなことにならないよう注意して)述べたい。
まず、E・H・カーに従うなら、『歴史家』について述べねばならないだろう。ご存知の方には申し訳ないが、「アナール派」について、邦訳者の『解題』から引用してみたい。ひいては、邦訳者の認識も含まれていると考えられるからだ。
『一九世紀ヨーロッパ史学界に広まっていた考証学的研究を偏重する実証主義の風潮に反発し、歴史家自身の問題意識の下に仮説設定・検証の手続きを踏んで行なわれる主体的な歴史学を提唱。そして同時に、外交史、政治史中心の事件史と訣別し…(中略)…隣接の社会諸科学の最新の成果をトータルに理解しようと努めたのである。』(下巻p275)
こういった視点である。
したがって、本書の構成は(1)活版印刷による書物が出現するための要件、(2)定着に関わる要件、(3)綜合もしくは影響と役割の見積もり、となる。(1)に相当するのが上巻第一章(以下:上n章と表記)『前提条件』上二章『技術的問題』であり、(2)は上三章『体裁』上四章『商品としての書物』上五章『本造りの世界』下六章『書物の地理』下七章『取引』が、相当する。(3)最終の下八章である。
すっきりした構成である。それゆえ、ほかのメディア史を考える際の大枠にもなるだろう。応用が広い。
次は下巻スペースにて、本書の取り上げる問題意識と、読む際に小生の感じたことをお伝えしたい。
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書物の出現 上 (ちくま学芸文庫 フ 6-2) 文庫 – 1998/11/1
- 本の長さ466ページ
- 言語日本語
- 出版社筑摩書房
- 発売日1998/11/1
- ISBN-10448008441X
- ISBN-13978-4480084415
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登録情報
- 出版社 : 筑摩書房 (1998/11/1)
- 発売日 : 1998/11/1
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 466ページ
- ISBN-10 : 448008441X
- ISBN-13 : 978-4480084415
- Amazon 売れ筋ランキング: - 916,901位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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2004年5月27日に日本でレビュー済み
「読書の歴史学」を標榜するロジェ・シャルチェの出発点となった本です。いわずと知れたフランスの歴史学者リュシアン・フェーブルです。シャルチェはもちろん,この本を批判しているのですが,何も知らない私にとっては非常に勉強になります。もちろん,ヨーロッパにおける印刷技術の発展の歴史を知るとともに,全8章のうち1章は「書物の地理」というテーマに割かれている。それから,ルターの宗教革命との密接な関係。まさに物質的な歴史を通して精神史を考える。フェーブル歴史学に欠かせないテーマです。
2002年4月17日に日本でレビュー済み
それまでは世の中に無かった「書物」というものが登場して以来、本や印刷物
、印刷術などはどのように発展してきたのか。歴史的にどんな影響を与えた
のか。背景にはどのような文化があったのか。本を作っていた人々はどのよう
な生活をしていたのか。そしてその本を買う人々はどんな人たちであったの
か。
書物をめぐる、以上のような事柄が分厚い文庫本にたっぷり盛り込まれてい
ます。今でこそ、誰でも買え、どこにでもあり、階層に関係なく利用する
「書物」ですが、印刷の技術ができた時代には今とは相当違うバックグラウン
ドを本は有していたわけです。
本の文化史として読め、歴史としても面白い本です。
ただ一文が長く、訳しにくいフランス語の文章をどうにかして日本語にしたのある所があり、多少読みにくいと思います。
、印刷術などはどのように発展してきたのか。歴史的にどんな影響を与えた
のか。背景にはどのような文化があったのか。本を作っていた人々はどのよう
な生活をしていたのか。そしてその本を買う人々はどんな人たちであったの
か。
書物をめぐる、以上のような事柄が分厚い文庫本にたっぷり盛り込まれてい
ます。今でこそ、誰でも買え、どこにでもあり、階層に関係なく利用する
「書物」ですが、印刷の技術ができた時代には今とは相当違うバックグラウン
ドを本は有していたわけです。
本の文化史として読め、歴史としても面白い本です。
ただ一文が長く、訳しにくいフランス語の文章をどうにかして日本語にしたのある所があり、多少読みにくいと思います。