![[全訳]念処経:ブッダの瞑想法](https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/I/713v5rlgmQL._AC_UL165_SR165,165_.jpg)
日本史上に名を残す、さりとてそれほど有名ではない、少々ふうがわりな僧侶たちのエピソードを古代・中世を主とした説話集から選抜して、著者のうがったコメントを加えてまとめたエッセイ集です。宮元さんはインド思想を学んでおられる俊才でありますが、説話集のなかの興味深い逸話を解読したり仕分けしたりするのが趣味なのだそうで、これはその趣味がこうじて一冊の本になったという体裁の作品です。この方のインド思想系の著作は、対象が難解なだけに決して万人にすすめれれたものではありませんが、この本は、小説集、というか小話集に近いので、とても読みやすいです。
ただ、読んでいて気になってしまったのは、彼の「奇僧」たちに対する少し行き過ぎたロマンティシズムのような匂いです。本書では、世俗からしりぞき、さらに国家によって制度化されていた官僚的な僧職からも離脱した真に超俗的な僧侶たちが、なによりも賞賛されています。たしかに「僧侶」という視点からすれば、彼らは理想的な英雄たちなのかもしれません。しかし、俗世間であれ寺院内のまた別の俗界であれ、そこにも「超俗」とはちがった、しかし同等の価値があるはずです。本書を読みすすめていくと、そうした「俗」の側の意義が貶められている気がしてまりません。まあ、そういうふうに書いたほうが、「奇僧」たちのフィクション的なおもしろさが際だつので、それも当然なのかもしれませんし、実際、そうすることでこの本は成功しているのですが。
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