それなりにまぁまぁのまぁな対談である。断続的なおしゃべりに落ちていかず、最後まで対談の体をなした。森岡と養老が五分に渡り合った硬派なの対談だった、とひとまず評価してよい。よいかもしれない。他の対談と比べての相対評価ではあるけれども。
「この対話は、いろんな面から楽しめて面白い。養老さんと私は、噛み合った会話をしているようでいて、実は、お互いに言いたいことだけを言っているようにも見える。それでいて、二人とも、きちんと大きな流れだけは押さえている」(P.286)。
たしかにそのとおりで、微妙にすれ違っている。死体を扱ってきた養老からすれば、どうしようもない現実が出発点であった。人間死ぬんだよ。あるいは、死ぬ前は生きていた、死ななければ生きている。死が現実であり、出発点だった。具体的には、人生の記憶が父の死から始まり、仕事の対象も死体から始まっている。しかし、死が始まりだと言ったところで、じゃぁどこに落ちつくのかと言えば、死以外にあるまい。
一方、言葉から現実にアプローチした森岡は、要するに評論家の社会正義で、甘さが目につく。言葉だけで事が片づくと思ったら大間違いで、だったらお前やってみな、と言いたくなる。「森岡さんは一種のないものねだりをしているような気がするけど」、という指摘は正しい(P.123)。
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対論脳と生命 (ちくま学芸文庫 ヨ 5-3) 文庫 – 2003/2/1
- 本の長さ286ページ
- 言語日本語
- 出版社筑摩書房
- 発売日2003/2/1
- ISBN-104480087451
- ISBN-13978-4480087454
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登録情報
- 出版社 : 筑摩書房 (2003/2/1)
- 発売日 : 2003/2/1
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 286ページ
- ISBN-10 : 4480087451
- ISBN-13 : 978-4480087454
- Amazon 売れ筋ランキング: - 367,922位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 1,291位ちくま学芸文庫
- - 12,702位哲学・思想 (本)
- - 16,148位評論・文学研究 (本)
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著者について
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1958年高知県生まれ。東京大学大学院、国際日本文化研究センター、大阪府立大学現代システム科学域を経て、現在、早稲田大学人間科学部教授。哲学、倫理学、生命学を中心に、学術書からエッセイまで幅広い執筆活動を行なう。代表作はいまのところ『無痛文明論』だが、そのほかに、男性セクシュアリティ論の話題作『感じない男』、草食系男子ブームの火付け役となった『草食系男子の恋愛学』、オウム真理教事件から哲学する『宗教なき時代を生きるために』、脳死論の古典『脳死の人』、生命倫理の重要作『生命学に何ができるか』、絶版になってしまったメディア論『意識通信』などがある。日本語サイトは、http://www.lifestudies.org/jp/ 新刊『まんが 哲学入門』(講談社現代新書)は私自身がまんがの原画を描いた問題作。鉛筆描き原画はhttp://www.lifestudies.org/jp/manga/で見られます。反出生主義の克服を考察した『生まれてこないほうが良かったのか?』(筑摩選書)。
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トップレビュー
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2008年8月4日に日本でレビュー済み
この対論、オウム真理教事件の直前に行われたものであるが、いまだに全く古さを感じさせない! これは凄いことであるが、言ってみればオウム真理教事件も、その後の日本の社会のさまざまな変遷も、「起こるべくして起こったもの」であるということになるであろう。この対論を読んでいると、これからのわれわれの社会の行く先を思って、暗澹たる気持ちになる。
この対論は、それこそ多岐に亘るさまざまな問題を取り扱っているが、絶えずそうした問題の根本に切り込んでいくといる論点が明確なので、現代社会の抱えた巨大で根の深い矛盾が、くっきりと浮かび上がってくる。そこから見えてくることは、やはりわれわれはここで再び、「人間とは何か」「われわれとは何者なのか」という問題を、根本から考え直さなくてはならないということである。本書でも鋭く指摘されているように、現代社会の難問が、医療の現場に集約されて立ち現れてくるように見えるのは、まさにそのためなのである。
本書はかなり白熱した内容であり、過激な指摘や、立ち入った大胆な主張が満載しており、現場の当事者二人の共通のコンセンサスに強く依存するがゆえに、読むだけでは議論の意味がわかりにくいところがしばしばあるが、それにしても内容の深さは、圧倒的である。特に後半は、内容的にこれだけのことを語ったものが活字になるのも凄いと思わせるものがある。内容はかなり高度で、しばしば難しいが、繰り返し読み直し、考える価値のある一冊。
この対論は、それこそ多岐に亘るさまざまな問題を取り扱っているが、絶えずそうした問題の根本に切り込んでいくといる論点が明確なので、現代社会の抱えた巨大で根の深い矛盾が、くっきりと浮かび上がってくる。そこから見えてくることは、やはりわれわれはここで再び、「人間とは何か」「われわれとは何者なのか」という問題を、根本から考え直さなくてはならないということである。本書でも鋭く指摘されているように、現代社会の難問が、医療の現場に集約されて立ち現れてくるように見えるのは、まさにそのためなのである。
本書はかなり白熱した内容であり、過激な指摘や、立ち入った大胆な主張が満載しており、現場の当事者二人の共通のコンセンサスに強く依存するがゆえに、読むだけでは議論の意味がわかりにくいところがしばしばあるが、それにしても内容の深さは、圧倒的である。特に後半は、内容的にこれだけのことを語ったものが活字になるのも凄いと思わせるものがある。内容はかなり高度で、しばしば難しいが、繰り返し読み直し、考える価値のある一冊。
2006年6月6日に日本でレビュー済み
養老さんの『唯脳論』を読んだ時は、まだまだ脳や生命倫理について勉強し始めたこともあってか、とても難しく感じた。
が、この本は対論形式になっているため、どちらかが一方的に話してももちろん他方がすぐに全てを理解てきるわけではないので、読者の方も難しいところは順を追って見ていけるようになっている。
扱う内容も、対論形式のため、一冊を通じてまとまりがあるわけではないが、興味深い話が多岐に渡っている。
ただ、養老さんが淡々とした口調なので、もう少し森岡さんが調子乗ってもいいと思った(笑)その辺が少し面白味に欠ける気がした。相手が養老孟司だから仕方ないのかもしれないけど。
が、この本は対論形式になっているため、どちらかが一方的に話してももちろん他方がすぐに全てを理解てきるわけではないので、読者の方も難しいところは順を追って見ていけるようになっている。
扱う内容も、対論形式のため、一冊を通じてまとまりがあるわけではないが、興味深い話が多岐に渡っている。
ただ、養老さんが淡々とした口調なので、もう少し森岡さんが調子乗ってもいいと思った(笑)その辺が少し面白味に欠ける気がした。相手が養老孟司だから仕方ないのかもしれないけど。
2003年9月10日に日本でレビュー済み
対談方式のせいかもしれないが、
1つのテーマに対して話を詰めるというよりは、
あるテーマから始まって、そこから触発されて別のテーマに
移ってゆく、という形になっているので
本全体で、これがいいたかったんだな、きっと。
というものを抽出するのは難しい感じです。
それでも、脳死の問題から脳の価値や役割を解いてゆき、
そこから更に、脳が作った社会のシステムについて
その問題点に切り込んでいくあたり内容の深い本だと思います。
1つのテーマに対して話を詰めるというよりは、
あるテーマから始まって、そこから触発されて別のテーマに
移ってゆく、という形になっているので
本全体で、これがいいたかったんだな、きっと。
というものを抽出するのは難しい感じです。
それでも、脳死の問題から脳の価値や役割を解いてゆき、
そこから更に、脳が作った社会のシステムについて
その問題点に切り込んでいくあたり内容の深い本だと思います。