中古品:
¥1,509 税込
配送料 ¥240 6月1日-3日にお届け(5 時間 9 分以内にご注文の場合)
詳細を見る
コンディション: 中古商品: 良い
コメント: ◆◆◆おおむね良好な状態です。中古商品のため使用感等ある場合がございますが、品質には十分注意して発送いたします。 【毎日発送】
Kindleアプリのロゴ画像

無料のKindleアプリをダウンロードして、スマートフォン、タブレット、またはコンピューターで今すぐKindle本を読むことができます。Kindleデバイスは必要ありません

ウェブ版Kindleなら、お使いのブラウザですぐにお読みいただけます。

携帯電話のカメラを使用する - 以下のコードをスキャンし、Kindleアプリをダウンロードしてください。

KindleアプリをダウンロードするためのQRコード

著者をフォロー

何か問題が発生しました。後で再度リクエストしてください。

完本八犬伝の世界 (ちくま学芸文庫 タ 10-3) 文庫 – 2005/11/1

4.3 5つ星のうち4.3 5個の評価

登録情報

  • 出版社 ‏ : ‎ 筑摩書房 (2005/11/1)
  • 発売日 ‏ : ‎ 2005/11/1
  • 言語 ‏ : ‎ 日本語
  • 文庫 ‏ : ‎ 572ページ
  • ISBN-10 ‏ : ‎ 4480089403
  • ISBN-13 ‏ : ‎ 978-4480089403
  • カスタマーレビュー:
    4.3 5つ星のうち4.3 5個の評価

著者について

著者をフォローして、新作のアップデートや改善されたおすすめを入手してください。
高田 衛
Brief content visible, double tap to read full content.
Full content visible, double tap to read brief content.

著者の本をもっと発見したり、よく似た著者を見つけたり、著者のブログを読んだりしましょう

カスタマーレビュー

星5つ中4.3つ
5つのうち4.3つ
5グローバルレーティング

この商品をレビュー

他のお客様にも意見を伝えましょう

上位レビュー、対象国: 日本

2018年6月28日に日本でレビュー済み
敬愛する松岡正剛が、『千夜千冊エディション 本から本へ』(松岡正剛著、角川ソフィア文庫)の中で、「高田衛さんの『八犬伝の世界』を読んで、愕然としたんだね。目からウロコが落ちました」と絶賛している以上、読まないで過ごすわけにはいかず、『完本 八犬伝の世界』(高田衛著、ちくま学芸文庫。出版元品切れだが、amazonで入手可能)を手にした。

結論から先に言うと、松岡の言うとおり、この『南総里見八犬伝』の解剖学的解説書は凄い本で、目から鱗が落ちっ放しであった。

「作者(曲亭馬琴)には、歴史、伝説、故事にたいする博い知見や学識も必要で、『八犬伝』の各冊をいちいち見ていて、その筋、口絵、挿絵、語りのみごとさ(時代考証、場面設定)、その裏付けとなる作者の学力と知性に対して、いくたび舌を巻いたことか。そして、『八犬伝』の先の展開が、まだ読めず、その都度の物語に一喜一憂する同時代読者の立場に、あえてみずからを置き換えてみたとき、さまざまな奇妙な問題を感じなくてはいられなくなってきたのだった」。

「知ってのとおり、この長編は乱世戦国を背景にした安房里見家の勃興史なのである」。

「『二輯』巻一が、『八犬伝』の『脳髄』であるとする(北村)透谷の見解に私は全面的に共感する。・・・本書ではこれを伏姫物語と仮称して、ただ神聖受胎論とするのではなく、この変形した異類婚姻譚の中に錯綜する、さまざまの脈絡を、典拠、主題、その中の因果論や象徴主義の方法などを、一つ一つ解きほぐしてゆこうと思う」。この高田の言葉に、馬琴に劣らぬ気宇壮大な意図が表れている。

「里見・房総関係資料が独特の神話的想像力の運動によって再構成され、虚構として自立しつつ、一つの史伝体伝奇物語のストーリーのレベルに凝集してゆく過程が目に見えてきた。これに加えて、玉梓悪霊の司霊する『犬』が登場することによって、馬琴の伏姫物語のお膳立ては全部ととのうわけである。『犬』の話はもちろん槃瓠説話を拠りどころにしている」。

「白犬だが身体に『八所の斑毛(ぶち)』があるので八房と名づけ、(里見)義実はこの犬を里見の飼犬とした。伏姫の遊び相手となって育ち、かわいがられて、伏姫17歳になる頃は、たくましい猛犬となった。牡犬であった」。

隣郡の安西景連に攻められ、落城を覚悟した「義実の前に、(飢えのため)痩せ衰えた八房が姿を見せた。いじらしくて、義実は何気なくつぶやく。こんな時にお前が敵将安西景連を啖い殺してくれたらなあ、その時は恩賞は望む通りにするぞ、魚肉はふんだんに喰わせるぞ、と。八房は背を向けてこばむ様子であった。つい戯れて、しからば官職を与えんか、領地をあて行なわんか、それともわが女婿にして伏姫と妻(めあわ)せんか、と言った。八房は、尾をふり頭をもたげ、『わわ』と吠え、それを望むかの様子を見せる。義実は笑って、よし、事成れば婿にせん、と言いながらも興ざめして、つまらぬ冗談を言ってしまった、われながら愚かなことよ、とひとり言して奥に入った」。この戯れの言葉が思いがけない事態を招くのである。

「八房はその夜、安西の陣営深くしのび入り、敵将安西を殺して、その首をくわえて戻ってきたのである。・・・滅亡必至であった里見軍は、一匹の犬の大功のため、労せずして宿敵を自壊させ、義実は安房一国の国主となったのである。さて、そうなると問題は八房への恩賞であった。・・・八房はその(最高の待遇という)恩賞に見むきもしなかった。ひたすら義実が口にした、伏姫の婿にせんという約束の履行を迫るかのように、人々には見えた。・・・激怒した義実は、ついに自ら長槍をとって八房を殺そうとした。八房は真っ向から牙を剥き出して、反撃の気配を見せた。その間に割って入ったのは伏姫であった」。なお、『南総里見八犬伝』の挿し絵では、確かに「長槍」だが、馬琴の原文は「短槍」となっている。

「透谷を引きあいに出すまでもなく、作者馬琴自身が、この伏姫物語を『八犬伝』世界の『秘鍵』であると言っている」。

「伏姫は、わが生命を八房に与える決意のもとに、犬と共に(山中で)暮した。けれど人間の尊厳を捨てる気持はなかった」。八房に同行する時、伏姫は八房に「自己を恋慕する犬に身も生命も与える、しかし肌身は許さない」と言い聞かせる。

「馬琴は文章の音楽で読者を酔わせ、文章の紋様の呪法で読者をめくらませ、この世ならぬ不思議な聖女と犬の物語に読者を招き入れ、やがておとずれる悲劇をあらかじめ追悼している」。悲劇とは、何ぞや。

「伏姫の月水(つきのさわり)は止まったのである。その後、伏姫は山中で牛に乗った笛吹き童子に逢う。童子(仙童)は伏姫に懐胎を告知する。伏姫は純潔である。懐胎するわけがない。・・・八房と伏姫は、犯し犯されることなく、たがいに情欲なくしてすでに夫と妻ではないか。彼(八房)はおん身(伏姫)を愛するゆえに、その(伏姫の)読経を聞くのを喜び、おん身は彼が聖教に帰依するのを知って、憐れみの情を持ったではないか。その情はすでに相感している。受胎に何の不思議があろう、と(童子は)言うのである。この論理を、伏姫はすぐには諒解できない。当然のことであろう」。処女懐胎に犬を配する馬琴の伝奇幻想の想像力のまがまがしさは驚嘆に値する。「これは、かつてない異様な美と暗さが妖しく同居する世界ではないだろうか」。

八房を殺し、伏姫を奪還しようと洞穴に近づいた里見家の元家臣・金碗大輔(後のゝ大<ちゅだい>法師)の鉄砲によって、八房だけでなく、誤って撃たれた伏姫も命を失ってしまう。割腹した伏姫の腹から八つの珠――孝、義、忠、信、悌、仁、智、礼――が空に飛び散り、これらの珠を持つ八犬士――犬塚信乃、犬川荘介、犬山道節、犬飼現八、犬田小文吾、犬江親兵衛、犬坂毛野、犬村大角――の波瀾万丈の物語が、この後、華々しく展開されていく。

馬琴、透谷に倣うわけではないが、私も伏姫物語が『八犬伝』の掌中の珠だと考えている。
2人のお客様がこれが役に立ったと考えています
レポート
2005年11月18日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
本書は、1980年中公新書から出た「八犬伝の世界」を増補したものである。

原著は、八犬伝の口絵を手がかりに、南総里見八犬伝の壮大な仕掛けを大胆に絵解きして、話題を呼んだ名著であるが、何故か近年絶版になっていた(なお、本書のあとがきによれば、中公新書版の絶版は作者の意向だったとのこと)。

さて、今回の「完本」だが、増補とはいったが、新たに加筆、書き改められた分量の方が原著そのままの部分よりもはるかに多いし、章立てまでも変わっているので、別の本といってもいいくらい、印象が違う。

殊に、原著のハイライトともいうべき「八犬士の原基イメージは文殊八大童子」という驚くべき新説が、本書では既定の事実のように補強する新たな事実を紹介しながら、本書の前半三分の一ほどでさらりと明かされているのは、原著のその部分に興奮した読者としては、感慨深いものがあった。

本書では、さらに原著にはなかった犬江親兵衛の原イメージ巡る論考など、新たに掘り下げられた部分も多く、読み応えは十分である。

原著、中公新書版を読んだ方も買って損はないだろう。いや、むしろ、中公新書版を愛読した人こそ、まず買うべきといってもいいかもしれない。

もちろん、八犬伝という名前は知っていて、興味はあるるのだけれど、どういう話かよく知らないという人にもぜひ読んでいただきたいと思う。読後きっと、馬琴の「南総里見八犬伝」を実際に読んでみたくなるだろう。私事だが、自分が「南総里見八犬伝」をなんとか読み通すことが出来たのは、中公新書版を読んだからである。

内容的には、文句なく星五つなのだが、あえて四つにしたのは、原著への愛着が深いゆえ。今回の増補では、焦点がぼやけたというか複数になったため、原著のシャープさが失われた点を惜しんでのことである。
55人のお客様がこれが役に立ったと考えています
レポート
2012年9月30日に日本でレビュー済み
 「八犬伝」、作者・滝沢馬琴は幅広い知識と様々な物語を自家薬籠中のものとして、このとてつもなく長く壮大な物語を構築しました。それは解ってました。
 この研究書には、この挿話の原点はこれだ、とか、この設定はここから来ている、とか、実際にはありそうもないような名前を名乗る人物が登場するのはこういうわけだ、とか、数々の裏話的研究が網羅されています。
 が、どうも面倒くさい。いちいち「伏姫神女」とか「八房犬」とか「大八の親兵衛」とか呼び方も煩雑だし、曼荼羅がどうだとか、八大童子が八犬士の設定のひとつだとか、「う〜ん、頭痛い」。
 やはり、「八犬伝」は血沸き肉躍る大ロマンであれば良いのです。
 種明かしばかりされて、八犬士はなんだか遠い存在に思えてきてしまいました。虚しい限りです。
2人のお客様がこれが役に立ったと考えています
レポート
2008年2月14日に日本でレビュー済み
 この本が素晴らしいのは、化政期の江戸読者が、どんな読み方を「八犬伝」に対してしていたのかを、示してくれたところにあります。
 筋を追うだけでも、「八犬伝」は楽しめるのですが、馬琴がどんな“仕掛け”をこの小説に入れていたのかを知れば、ますます面白く読めることを、本書は教えてくれます。小説を読み解く面白さと、それに値する小説の書き手としての馬琴の凄さに驚かされます。
 それに、馬琴がその世界観を現す為に、挿絵をいかに大事に考えていたのかに触れ、その挿絵の解説もなされています。そして、その挿絵があってこそ完本であり、当時の挿絵も一緒に載せられなければ、(馬琴の小説の場合)いかに作品の魅力が、伝わりにくいものであるかも説明されています。
 古典は、後世の者からすれば、その作品当時の人達の共通認識を共有していない為に、当時の人達が感じた面白さが、分からない部分があったりします。だから、研究者以外の一般読者に分かり易くこういう説明をしてくれるような本書は、貴重だと思います。
 犬士は、なぜ八人か?という、素朴な疑問に興味を持たれた方は、ぜひ読んで下さい。きっと、面白く読めるはずです。
19人のお客様がこれが役に立ったと考えています
レポート