本書『哲学事典―AからZの定義集』は、アメリカ哲学界の重鎮・W・V・クワインによる『QUIDDITIES― an intermitently philosophical dictionary』の邦訳である。正しく訳すならば、本書は『物事の本質―ところどころ断続的な哲学事典』になるのかな。「QUIDDITIES」には「微妙な、あるいはくだらない区別」とか「屁理屈」などという意味もあるらしいが…。
これは「事典」というより寧ろ副題にある通り「AからZの定義集」といった趣で、訳者じしん「本書は、少なくとも最初は、『わからないときに引く』事典としてではなく、『気楽にあちこち拾い読みする』エッセイ集として読むことをおすすめしたい」と言っておられる。私もそのようにして本書を楽しんだ。
扱われている項目は以下の通り。八十数項目しかない。アルファベット順。「A」の「 Alphabet アルファベット」から始まり「Z」の「Zero ゼロ」で終わる。英語表記は省略する。
A:アルファベット/利他主義/異常/人工言語/原子
B:美/信仰
C:クラス対性質/クラス対セット/コミュニケーション/複素数/子音結合/構成主義/繋辞/創造
D:十進法とディミディアル/定義/離散
E:語源/婉曲語法/排中律/濫用
F:フェルマの最終定理/形式主義/自由/自由意志/函数/未来
G:博奕/ジェンダ/ゲーデルの定理
H:―
I:アイデア/アイデンティティ/イディオティズム/非述語性/無限数/屈折/情報
J:―
K:語の親族関係/知識
L:言葉の変動/言葉の改革/ラテン語の発音/線/経度と緯度
M:記号/数学症候群/意味/心対身体/誤導
N:自然数/必然性/否定
O:―
P:パラドックス/音素/複数/述語論理/予報/接頭辞/賞/発音
Q:―
R:実数/再帰法/冗長度/指示と具体化/レトリック
S:意味論的変換/語の意味/固有名辞/空間‐時間/統語論
T:もの/寛容/三位一体/真理/型対トークン
U:単位/ユニヴァーサル・ライブラリー/普遍/用法と誤用/使用対言及
V:変数
W:―
X:―
Y:―
Z:ゼロ
である。ご覧の通り、古典的な哲学的テーマに限らず、クワインが得手とするところの論理哲学や数学にも重きが置かれている。私のように英米哲学に明るくない人間にとっては、じつにありがたい入門書として、愉しむことができた一冊。
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哲学事典: AからZの定義集 (ちくま学芸文庫 ク 13-1) 文庫 – 2007/4/1
- 本の長さ408ページ
- 言語日本語
- 出版社筑摩書房
- 発売日2007/4/1
- ISBN-10448009055X
- ISBN-13978-4480090553
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登録情報
- 出版社 : 筑摩書房 (2007/4/1)
- 発売日 : 2007/4/1
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 408ページ
- ISBN-10 : 448009055X
- ISBN-13 : 978-4480090553
- Amazon 売れ筋ランキング: - 818,267位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 1,769位哲学・思想の論文・評論・講演集
- - 2,151位ちくま学芸文庫
- - 5,059位哲学 (本)
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2007年10月27日に日本でレビュー済み
現代英米哲学界の重鎮クワインが書いた哲学辞典(?)です。
クワインにしては珍しく、ユーモアを交えながら、各項目について気軽に書いています。読みやすいとはいえ、一般教養向きではないのでご注意下さい。間違っても辞典としては使用しないで下さい。原書のタイトル通り、クワインのエッセンスだと思ってください。
内容はやはりクワイン・カラーで統一されていますので、気軽に現代哲学の雰囲気に浸りたい方にお薦めです。
できれば英語で読んだ方がいいかも。
クワインにしては珍しく、ユーモアを交えながら、各項目について気軽に書いています。読みやすいとはいえ、一般教養向きではないのでご注意下さい。間違っても辞典としては使用しないで下さい。原書のタイトル通り、クワインのエッセンスだと思ってください。
内容はやはりクワイン・カラーで統一されていますので、気軽に現代哲学の雰囲気に浸りたい方にお薦めです。
できれば英語で読んだ方がいいかも。
2012年2月19日に日本でレビュー済み
日本語名は、哲学事典、といかめしい。
原語の本題は、Quiddities。辞書によれば、”何かを現状のようなものにさせ、しかもそれを他の如何なるものとも異ならせている本質”。
こちらももっといかめしいが、いざ読み始めると、エッセイ風の哲学・数学・言語学の定義集ということがわかる。
内容は、信仰、美、知識、などといった一般的な言葉から、クラス的性質、フェルマの最終定理、再帰法など、専門的な物までさまざま。
中には、数学症候群という言葉もあり、数学者の奇妙な振る舞いが、ユーモアを持って語られる。
いかめしい題名とは違い、カフェでお茶でもしながら、気楽に楽しめる内容になっている。
この本に登場する言葉は、当然のことながら、クワインが関心を寄せている言葉が集まっている。
彼の関心外の言葉は、無論、含まれてはいない。
果たして、自分で”Quiddities”を作って見ると、どんな言葉が含まれるだろうか?
一度、トライしてもみても、おもしろいかもしれない。
原語の本題は、Quiddities。辞書によれば、”何かを現状のようなものにさせ、しかもそれを他の如何なるものとも異ならせている本質”。
こちらももっといかめしいが、いざ読み始めると、エッセイ風の哲学・数学・言語学の定義集ということがわかる。
内容は、信仰、美、知識、などといった一般的な言葉から、クラス的性質、フェルマの最終定理、再帰法など、専門的な物までさまざま。
中には、数学症候群という言葉もあり、数学者の奇妙な振る舞いが、ユーモアを持って語られる。
いかめしい題名とは違い、カフェでお茶でもしながら、気楽に楽しめる内容になっている。
この本に登場する言葉は、当然のことながら、クワインが関心を寄せている言葉が集まっている。
彼の関心外の言葉は、無論、含まれてはいない。
果たして、自分で”Quiddities”を作って見ると、どんな言葉が含まれるだろうか?
一度、トライしてもみても、おもしろいかもしれない。
2007年4月16日に日本でレビュー済み
本書は「哲学事典―‾とは何であるかを考える」の文庫化です。語学〜数学〜哲学に関する色々なキーワード(A:アルファベット〜Z:ゼロ)に関するエッセイ的解説集で、決して哲学用語の辞書ではありません。どこからでも好きな話題から拾い読み出来ます。
著者の幅広い知識が披露される際に醸し出される「凝り性」「マニア」な感じが、なんだかアシモフの科学エッセイ集に通じるものがあります(笑)。外国語(英語及びそれ以外の言語)・数学(特に数論・論理学・集合論などの数学基礎論)に多少通じている方が面白く読めると思います。なにせ「ゲーデルの不完全性定理」や「フェルマーの最終定理」といった話題も出てきますので。(原著が古く(1987年刊)、フェルマーの最終定理は「まだ解けてない」ことになっていて古臭い部分も多少ありますが、それでも十分に読み応えがありました) また、「なんちゃってpolyglot」を目指す私にとって、語学に関する話はナカナカ面白く、「トリビアの泉」的ネタにもすっかり感心しました。こうしてこの著者の博識/機知/ユーモアにすっかり魅了されました。
一般読者に広くお薦めできるような本ではありませんが、語学・数学・哲学のどれにも興味がある人にはお薦めできそうです。
著者の幅広い知識が披露される際に醸し出される「凝り性」「マニア」な感じが、なんだかアシモフの科学エッセイ集に通じるものがあります(笑)。外国語(英語及びそれ以外の言語)・数学(特に数論・論理学・集合論などの数学基礎論)に多少通じている方が面白く読めると思います。なにせ「ゲーデルの不完全性定理」や「フェルマーの最終定理」といった話題も出てきますので。(原著が古く(1987年刊)、フェルマーの最終定理は「まだ解けてない」ことになっていて古臭い部分も多少ありますが、それでも十分に読み応えがありました) また、「なんちゃってpolyglot」を目指す私にとって、語学に関する話はナカナカ面白く、「トリビアの泉」的ネタにもすっかり感心しました。こうしてこの著者の博識/機知/ユーモアにすっかり魅了されました。
一般読者に広くお薦めできるような本ではありませんが、語学・数学・哲学のどれにも興味がある人にはお薦めできそうです。