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魔術的リアリズム: メランコリ-の芸術 (ちくま学芸文庫 タ 4-2) 文庫 – 2010/2/9

5.0 5つ星のうち5.0 5個の評価

登録情報

  • 出版社 ‏ : ‎ 筑摩書房 (2010/2/9)
  • 発売日 ‏ : ‎ 2010/2/9
  • 言語 ‏ : ‎ 日本語
  • 文庫 ‏ : ‎ 356ページ
  • ISBN-10 ‏ : ‎ 4480092781
  • ISBN-13 ‏ : ‎ 978-4480092786
  • 寸法 ‏ : ‎ 10.8 x 1.4 x 15 cm
  • カスタマーレビュー:
    5.0 5つ星のうち5.0 5個の評価

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種村 季弘
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上位レビュー、対象国: 日本

2016年5月31日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
美術書等で、時たま“ノイエ・ザハリヒカイト”という些か難解なドイツ語に出くわす事があるであろう。
そのまま訳せば「新・即物性(主義?)」という事になるであろうか…これが即ち“魔術的リアリズム”である。
1920年代のドイツに突如現れ、瞬く間に終息を迎えた“魔術的リアリズム”とは一体何だったのであろうか…それを解き明かしたのが本書である。

本書は“魔術的リアリズム”の芸術家達、そして彼等の作品を数多く紹介している。
レーダーシャイト、ラジヴィル、エレボー、シャート、グロスベルク、シュリンプフ、エルツェ、ヴァッカー…。
実の所、恥ずかしながら私は数名しか知らなかったので、改めて美術書を紐解いてみた。
だが、やはり大半は出て来ない。
即ち、彼等は西洋美術史の中でも決してメジャーな位置付けには無いのである。
だが、本書を読めば、彼等が残した作品が如何に衝撃的であったかと言う事を思い知らされるのではなかろうか。
フリードリヒやブリューゲル等の影響を受けながらも、ロマン主義や再生を感じる事が出来ないラジヴィルの空虚…ただ物質が存在する部屋を描いたエレボー…決して到達する事の無い愛を人形で表したヴァッカー等、そこに見出されるのは虚無であり、空洞化であり、悲しみや怒りという感情を越えた“無”でもある。

思えば、当時のドイツは非常に不安定な時期でもあった。
即ち、何処か寂しくメランコリックで、然しながら不気味さと不穏な空気に包まれたこれ等の作品は、正しく時代が生み出した闇でもあったのだ。

更にもう一点、本書の中でも重要と思われる指摘の中に「オランダの魔術的リアリズム」を扱った第12章が挙げられる。
魔術的リアリズムとシュルレアリスムとは時期を同じくしていた事もあり、また、超現実的な性質に共通点がある事から、両者を区別するのは意外に難しい。
現に、ノイエ・ザハリヒカイトと称される芸術家の中には形而上学派の影響を受けた者も多く、シュルレアリスムと同じ出発点と見做す事も可能なのだ。
そこで本書は、その境界線をベルギーとオランダの国境あたりに引いている。
あっさりと国で分けるのは単純過ぎるようではあるものの、本書を読めば成程、これほど明快で解り易い区分けは無いように思われる。
土地柄や文化の違いが微妙に相俟って、一見似たようでありながらも決定的に違う芸術が生まれた土壌を解説している論述には大いに納得した次第である。

尚、巻末にはバイオグラフィーと年譜を掲載している。
“魔術的リアリズム”は一般的な美術書では扱いが小さいだけに、こうした史料は大いに役立ってくれるのではなかろうか。

一瞬にして花開き、一瞬にして消え去ったノイエ・ザハリヒカイト…然しながら、この短命に終わった運動は、西洋美術史に確かな痕跡を残した。
そして本書は、この稀有な芸術を語り尽くした貴重な一冊として、記念碑的な役割を担ってくれるに違いない。
12人のお客様がこれが役に立ったと考えています
レポート
2012年2月18日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
タイトルから、もっと広い意味の「マジックリアリズム」的な文学運動までを含むのかと思っていましたが、本書は、1920年代ドイツの新即物主義と呼ばれた短期間の美術運動をになった画家たちを論じたものです。新即物主義すなわち、ノイエ・ザハリヒカイトとは、新しいリアリズムというようなニュアンスで、シュルレアリスムとも近接しています。
 ブルトンのシュルレアリスム宣言と時期が重なっています。が、私見では、シュルレアリスムに属する画家たちがもっと意識的に「仕掛け」ていったのに対し、こちらの「新即物主義」は印象派の雰囲気やあいまいさを排し、幾何学的鮮烈さとひえびえとしたリアリズムを前面に押し出そうとした感があります。
 最初の「不気味なもの」の章で、種村はフロイトの論文から、キリコの手記につなげ、事物が突然見なれぬものとなってたちあらわれる「生きた死物」から、メランコリーの芸術という観念を引き出します。生き物と機械人形をホフマンの小説によって媒介しながら、新即物主義へとつなげていきますが、全編にわたって参照されているのが、ヴィーラント・シュミートの『ノイエ・ザハリヒカイトと魔術的リアリズム』です。シュミートのあげているこの運動のテーマとは、道化、関節人形、劇場、サーカス、カーニヴァルであり、好まれる手法とは、現実と真実を二重うつしにする「画中画」鏡像、球面鏡、窓。
 このあたりの導入も大変魅力的で、種村はその前史(パルミジニャーノやデューラー、ピラネージ、ベックリン、フリードリヒ)をも縦横に引用しつつ、多くの画像を紹介してゆきます。

 本編として論じられているレーダーシャイト、ラジヴィル、エレボー、シャート、グロスベルク、シュリンプフ、エルツェ、ヴァッカー、などの画家は、わたしにはなじみの薄いものでしたが、それだけに興味深く、シュミートのあげたテーマと手法がきっちりと例証されています。
 この時代のリアリズムは、これまでのものとは違い、すでに世界との異和感を内包した「今日とここ」であり、人工照明に照らされた冥府体験なのだ、というのが種村の主張です。

 数年遅れた「オランダの魔術的リアリズム」や「魔術的リアリズム・その後 アメリカ」についても最後のほうにページが割かれており、視野が広がります。
 今泉文子による解説『蘇る「異様なリアリズム」』が全体を見通しよく整理してくれているのも役に立ちました。
 「世界関連から切りはなされて、いきなりそこにあるもの。その魔術的輝き……事物を「形而上的妖怪的」(キリコ)空間のなかに立ち上らせるリアリズム」

 紹介されている画家の中では、表紙にもなっている球面鏡のエレボー、そして機械人形を描いたヘールレなどがわたしには強烈な印象となって残りました。
 美術を通じて、時代をあぶりだしてゆくスリリングな論考です。

 
29人のお客様がこれが役に立ったと考えています
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