本書は、若くしてナショナル・ギャラリーの館長となり、豊富な執筆活動と共にメディア等でも活躍したケネス・クラーク氏が「名画」について語った一冊である。
決して難しい美術評論ではなく、「名画とは何か」或いは「何を以って名画と称するか」を解り易く纏めてあるので、誰しも気軽に手に取る事が出来るであろう。
本書は「名画とは何か」と「若き日のミケランジェロ」の二つの論文を収録している。
先ず「名画とは何か」に於いては、ドナテッロからピカソに至るまで、実に幅広く、多彩な作品を取り上げながら「名画」について解説して行く。
勿論、作品の選択はクラーク氏の主観である事には相違なく、もしかしたら皆様のお気に入りの作品は漏れてしまっているかもしれないが、作品の主題、構図、精神性、そしてスケール等など、ポイントを抑えながら「名画論」を展開しているので、大いに参考になると思う。
本書に照らし合わせながら、果たして自分の好きな作品は名画であろうか…?等と問い掛けてみるのも一興であろうし、何よりもクラーク氏の鋭い感性や作品を観る上での提案が多く指し示されている所には読み応えを感じるであろう。
次に「若き日のミケランジェロ」は、一応「付録」としてはいるものの、一つの「ミケランジェロ論」と言えるくらいにしっかりした内容である。
特に、彼に纏わる逸話等を紹介しながらその人柄や芸術性を説いているのが面白く、更には「完成されたミケランジェロ」ではなく、青年時代に着目している点は特筆に価する。
本論を読むと、彼が芸術界に与えた衝撃と革新性とを読み取る事が出来るのではなかろうか。
因みに、巻末の訳者あとがき(富士川義之氏)と解説(岡田温司氏)も、クラーク氏の紹介を含めて中々有用なので、是非とも最後までお読み頂きたいと思う。
但し、僅か数時間もあれば読み切ってしまうくらいに簡略な書籍なので、その点だけは留意して頂きたい。
もともと薄い文庫本である上に文字も大きく行間も広く…更には図版掲載も多いので(これは嬉しい事ではあるが…)想定していた以上に内容は簡略だ。
こうした事から、もしかしたら若干の物足りなさを覚える方もいるかもしれないが、寧ろ、これを「読み易さ」と捉え、エッセイを読むような感覚で楽しみながら読むと良いと思う。
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名画とは何か (ちくま学芸文庫 ク 9-3) 文庫 – 2015/8/6
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西洋美術の碩学が厳選された約40点を紹介。なぜそれらは時代を超えて感動を呼ぶのか。アートの本当の読み方がわかる極上の手引…
- 本の長さ176ページ
- 言語日本語
- 出版社筑摩書房
- 発売日2015/8/6
- 寸法10.5 x 1 x 15 cm
- ISBN-104480096841
- ISBN-13978-4480096845
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登録情報
- 出版社 : 筑摩書房 (2015/8/6)
- 発売日 : 2015/8/6
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 176ページ
- ISBN-10 : 4480096841
- ISBN-13 : 978-4480096845
- 寸法 : 10.5 x 1 x 15 cm
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- - 1,304位ちくま学芸文庫
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2015年8月7日に日本でレビュー済み
本書『名画とは何か』は、イギリスの美術史家ケネス・クラーク(1903-1983)の著書 “What is a Masterpiece?”(1979) に、付録として同著者の論文「若きミケランジェロ」〔“The Young Michelangelo”(1964)〕を収録したもの。
本書は、白水社から出版されたハードカバー版(1985)の文庫化です。それにあたって、カラー図版が新たに三点掲載されており、西洋美術史家である岡田温司先生の解説が追加されています(岡田氏のクラーク解説も読み応えあり)。くわえて文庫といっても、近年の「ちくま学芸文庫」から出される美術史系の書籍と同じく質が高く厚手の印刷紙が使われていため、モノクロの図版でもかなり見やすい。また、一応 “Masterpiece” が「名画」と訳されていますが、本文のなかで最初に選ばれる “Masterpiece” はドナテロの彫刻作品です。
本書において一貫しているのは、「名画=傑作」は主観に還元されるものではなく客観的なものとして存在する、という著者の信念です。それは「芸術(頭文字が大文字の “Art”)」と、芸術家という「芸術」の創造主体への絶対的な信頼に由来するものでしょう。
また、著者の美術批評における持ち味といえば、該博な知識だけでなく、それに裏うちされた直観的な洞察が挙げられます。客観的な価値基準ではなく主観的印象にもとづく印象批評が、著者の得意とする批評スタイルに近いと思います。
ただしその分、著者が「名画とは何か」を客観的かつ具体的に論じようとするほど、ズレが生じてくるように思われます。そのため「名画とは何か」という問いが客観的に論じられているかとは疑問です。ほかにも、小論「若きミケランジェロ」において現在では疑義が呈されている伝記的エピソードも引用されているし、瑕疵を探そうと思えば、ほかにも目につくところがあるかもしれません。
また訳者は本書を「絶好の名画入門書」と評しているものの、芸術論特有のもってまわった言い回しで語られているので、むしろ美術の「入門書」として読むのはすすめられません。
けれど本書には実証性にしがみついた美術史的記述や、難解な現代思想を援用した美術批評とは異なる、ディレッタント的な趣という魅力があります。これほどまでに自らの審美眼に対する確信をもって美術を論じられる美術史家は、おそらく現代にはもういないのではないでしょうか。現在の美術系の書籍にはない魅力を味わうことができる著作であることは疑いありません。
あるていど芸術論に触れたことがあるという前提があり、美術史における「古典」のひとつということを念頭において読むのであれば、著者独自の視点を楽しんで読むことができると思います。
本書は、白水社から出版されたハードカバー版(1985)の文庫化です。それにあたって、カラー図版が新たに三点掲載されており、西洋美術史家である岡田温司先生の解説が追加されています(岡田氏のクラーク解説も読み応えあり)。くわえて文庫といっても、近年の「ちくま学芸文庫」から出される美術史系の書籍と同じく質が高く厚手の印刷紙が使われていため、モノクロの図版でもかなり見やすい。また、一応 “Masterpiece” が「名画」と訳されていますが、本文のなかで最初に選ばれる “Masterpiece” はドナテロの彫刻作品です。
本書において一貫しているのは、「名画=傑作」は主観に還元されるものではなく客観的なものとして存在する、という著者の信念です。それは「芸術(頭文字が大文字の “Art”)」と、芸術家という「芸術」の創造主体への絶対的な信頼に由来するものでしょう。
また、著者の美術批評における持ち味といえば、該博な知識だけでなく、それに裏うちされた直観的な洞察が挙げられます。客観的な価値基準ではなく主観的印象にもとづく印象批評が、著者の得意とする批評スタイルに近いと思います。
ただしその分、著者が「名画とは何か」を客観的かつ具体的に論じようとするほど、ズレが生じてくるように思われます。そのため「名画とは何か」という問いが客観的に論じられているかとは疑問です。ほかにも、小論「若きミケランジェロ」において現在では疑義が呈されている伝記的エピソードも引用されているし、瑕疵を探そうと思えば、ほかにも目につくところがあるかもしれません。
また訳者は本書を「絶好の名画入門書」と評しているものの、芸術論特有のもってまわった言い回しで語られているので、むしろ美術の「入門書」として読むのはすすめられません。
けれど本書には実証性にしがみついた美術史的記述や、難解な現代思想を援用した美術批評とは異なる、ディレッタント的な趣という魅力があります。これほどまでに自らの審美眼に対する確信をもって美術を論じられる美術史家は、おそらく現代にはもういないのではないでしょうか。現在の美術系の書籍にはない魅力を味わうことができる著作であることは疑いありません。
あるていど芸術論に触れたことがあるという前提があり、美術史における「古典」のひとつということを念頭において読むのであれば、著者独自の視点を楽しんで読むことができると思います。