「ちくま日本文学全集」は，文庫ｻｲｽﾞっていうのも手軽でいいし，チョイスもちょっと個性的だし，安野光雅の装丁も瀟洒ですてきです。
自分の小学校のころのﾋｰﾛｰはｼｬｰﾛｯｸ･ﾎｰﾑｽﾞで，中学生から高校生にかけては，渡辺一夫と加藤周一でした。
三つ子の魂みたいなもので，自分のものの考え方の基本は渡辺一夫と加藤周一に影響を受けていると思ってます。
加藤周一の文章は折りに触れ読み返したりしてますが，渡辺一夫の文章を読むのはたぶん30年ぶりぐらいです。
渡辺一夫の専門はﾌﾗﾝｿﾜ･ﾗﾌﾞﾚｰってことでしょうし，渡辺の訳した『ｶﾞﾙｶﾞﾝﾁｭﾜ物語』や『ﾊﾟﾝﾀｸﾞﾘｭｴﾙ物語』が渡辺の偉大な業績っていうのは言うまでもないけれど，ｴﾗｽﾑｽなどﾕﾏﾆｽﾄの影響を受けた「寛容の思想」こそが渡辺の遺した最大のものだと思っています。
人間はいたるところで不寛容に陥り，それが人類の災禍の大半を生み出している現実はいっかな変わろうとしませんが，根気よく粘り強く不寛容を拒否するしか人類に未来はないのだろうという考え方は，不幸にも未だに力を失っていないようです。
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