塩山氏はエロ漫画編集者だから、こんなこともやるのである。
・・ニチバンのマイタックラベルとカッターで、エロシーン修整する毎日。
(中略)このシールははがせるので、情勢次第で露出度を調整できて便利。
弱点も。はがす際、女性器の割れ目に沿って貼ったような細いトーンだと、
一緒に取れちゃう。単行本化時は、どこも露出度を増やすため悩みの種。
漫画家によっても違う。貧乏性の者のトーン程はがれやすい。・・・
露出度はエロ漫画の華である。同じ作品が雑誌、単行本、特集号とさまざまな
かたちになって現れるが、そのたびに微妙に(規制や利潤や世の中の風を勘案して)
性器の露出度が変化する。露出度をどうやってコントロールしているのかと
不思議だったがなるほどこんな苦労をされていたのか。わがやに転がっている
エロ漫画を眺めながらつくづく塩山氏たちの努力に敬意を表する。成人マークの
ついていない本はやはりしろぬき中心だし、ついている本はなるほど薄い
アミカケがしてある。読者はアミカケの底にうっすらと残っている残像と
アミカケ以外の部分を脳内でつなげて、こんなアミカケ要らんやろうと鬱憤するので
ある。でもこの規制のおかげで、日本ではきわめて淫靡なエロティシズム文化が
発達したのだし、あっけらかんよりもこのぎりぎり・すれすれの表現こそがもっとも
官能的で日本人好みなのだと納得したりもする。
このようなお仕事をされている塩山氏の日乗をたんたんと綴ったのが当書である。
100年後にはまちがいなく風俗資料として一級の評価を得るだろう。
一読、著者の「こころざしの高さ」に感動した。生活の糧を得るためにやっている
ことと、趣味(読書や映画)&物書きのクオリティのレベルのGAPがものすごい。
例えば通勤電車で楽しんでいる本はファーブル、ディケンズ、ジュール・ベルヌ
はじめ日本の近代文学者たち。そして評論家の駄文には容赦ないダメ出し。
塩山氏は言う。
・・幸福の概念は人間の数同様に存在しようが、俺は充分に天日干しした
蒲団で、面白い本読みながら、トロトロ眠りにつく瞬間だな。
女も男も添い寝の必要なし。・・
ああ、なんとうらやましい日々。こんな生活がほんとにできるなら、
サラリーマンなげうって、わたしもエロ雑誌の修整作業の弟子入りしたい。
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出版業界最底辺日記: エロ漫画編集者「嫌われ者の記」 (ちくま文庫 し 26-1) 文庫 – 2006/7/1
- 本の長さ344ページ
- 言語日本語
- 出版社筑摩書房
- 発売日2006/7/1
- ISBN-104480422358
- ISBN-13978-4480422354
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登録情報
- 出版社 : 筑摩書房 (2006/7/1)
- 発売日 : 2006/7/1
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 344ページ
- ISBN-10 : 4480422358
- ISBN-13 : 978-4480422354
- Amazon 売れ筋ランキング: - 542,293位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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2017年4月10日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
エロ劇画時代から下請編集プロダクションで活躍している著者の日記。当時から現在に至るまでの業界裏話に映画や本の辛口の評論も交えて、期待通りの内容。紹介文にある『血闘記録』という表現がぴったり。
2006年9月13日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
大手出版社や取次ぎに纏るオフレコ話を期待したが、結局は著者本人の日記・・と言うよりもメモを羅列しただけの本。やはり今の出版流通業界で本音を吐露したら生きていけないんだろうな・・と、実感させられました。
2020年8月6日に日本でレビュー済み
一部で絶賛されていたので読んだのですが。
筆者やその周辺環境における状況説明がまるでないまま、ひたすら愚痴と暴言だけが続く内容。
90年代のエロ漫画業界事情に精通している方なら楽しめるのでしょうね、おそらく。
詳しくない自分には理解不能。汚言症編集者の乱文放言日記でした。
筆者やその周辺環境における状況説明がまるでないまま、ひたすら愚痴と暴言だけが続く内容。
90年代のエロ漫画業界事情に精通している方なら楽しめるのでしょうね、おそらく。
詳しくない自分には理解不能。汚言症編集者の乱文放言日記でした。
2011年5月24日に日本でレビュー済み
自称「出版業界最底辺」に位置する、H漫画誌の編集者塩山さんの、毒舌とユーモア、青春時代の左翼運動話、それに驚くほど幅広い、本や映画に関する辛口批評など、読みどころ満載の日記です。騒音垂れ流しの富岡市役所や悪書狩りをする東京都庁との戦いの記録でもあります。217頁の「馬鹿を基準に全員に説教すんな」は特に印象的。
2011年9月29日に日本でレビュー済み
漢字だけの強烈なタイトルに引き付けられ購入。
正に日記である。
人物は殆ど実名表記されているし、読み易さを考慮した、改行や、専門、業界用語に注釈を付ける等はされていない。
その、突き放した書きっぷりは正に日記。
正直、読みにくい。
その日の昼食から立ち寄った本屋、其処で買った本、視た映画、仕事上のトラブルや、名指しの忠告など、著者の人生の一部分を読むことができます。
そして、それが300ページ以上にわたって綴られており、読み応え抜群。
各章トビラに、エロ漫画界の大きな動きが記されているのも、又興味深いです。
エロ漫画編集者の生活はもとより、それに関わる仕事の過酷さも、チラホラと覗き見ることができました。
だが、しかし読みにくい。
正に日記である。
人物は殆ど実名表記されているし、読み易さを考慮した、改行や、専門、業界用語に注釈を付ける等はされていない。
その、突き放した書きっぷりは正に日記。
正直、読みにくい。
その日の昼食から立ち寄った本屋、其処で買った本、視た映画、仕事上のトラブルや、名指しの忠告など、著者の人生の一部分を読むことができます。
そして、それが300ページ以上にわたって綴られており、読み応え抜群。
各章トビラに、エロ漫画界の大きな動きが記されているのも、又興味深いです。
エロ漫画編集者の生活はもとより、それに関わる仕事の過酷さも、チラホラと覗き見ることができました。
だが、しかし読みにくい。