少年の夢は、いつの時代でも科学、そして未来にあった。
だから、少年マンガでは、いつもSFマンガが主流だった。
ロボット、ロケット、タイムマシン、エアカー、レイガン、そして宇宙だ。
本書は、そんな少年たちの夢と希望がヴィジュアル化された戦後のSFマンガの歴史と変化を、時代の変革とともに俯瞰したものである。
かつてのSFマンガといえば、「アトム」や「鉄人」に代表されるような、ある意味では脳天気な、しかし勧善懲悪が徹底されていたものだった。
そして、必ずといって良いほど、その時点では実現されていない科学技術が盛り込まれていた。
それが、将来は、未来になったら、可能になるかもしれない、という夢と希望とあこがれの元になった。
宇宙旅行も時間旅行も、21世紀になった今でさえ不可能だが、昭和20〜40年代前半までの高度成長時代には、21世紀なら実現されるという、夢のような期待があった。
そして、現実逃避というわけではないが、現実がとてもリアルである分、空想というイマジネーションの広がりは大きく、まさに無限だった。
今は子供でも、将来的に可能なことと将来にわたって不可能なことの区別が、ある程度はつけられてしまう。
それが幸せなのかどうかは分からないが、かつての少年たちは、どんな実現不可能なことでも、空想の翼を広げることができたのだ。
そう、本書は、SFマンガが、かつて空想科学漫画といわれていた、荒唐無稽なイマジネーションを発揮できた時代からのマンガを俯瞰することができる。
そして、SFの守備範囲の広さ、懐の深さが分かる。
古き良き時代、というつもりはないが、いつからか少年マンガから失われてしまったものがあることを、本書を読むことで気づくこともまた、これからのマンガにとっては良いことなのではないだろうか。
どんな時代でも、少年たちには科学へのあこがれと、未来に対する夢がある。
それがなくならない限り、SFマンガは不滅である。
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戦後SFマンガ史 (ちくま文庫 よ 19-2) 文庫 – 2008/8/6
米沢 嘉博
(著)
- 本の長さ409ページ
- 言語日本語
- 出版社筑摩書房
- 発売日2008/8/6
- ISBN-104480424199
- ISBN-13978-4480424198
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登録情報
- 出版社 : 筑摩書房 (2008/8/6)
- 発売日 : 2008/8/6
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 409ページ
- ISBN-10 : 4480424199
- ISBN-13 : 978-4480424198
- Amazon 売れ筋ランキング: - 517,040位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 649位コミック・アニメ研究
- - 1,992位ちくま文庫
- - 9,512位社会学概論
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2012年8月3日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
末尾の解説にも書かれてあるが、凄いことをやろうとしたもんである。確かに70年代以降は頁数が足りなくなったこともあって密度が薄まってしまったが、それ以前までであれば試みは成功したといえるだろう。しかし今後、マンガ界の南方熊楠のような人が現れない限り、この作品を受け継いでいくことはできないのかもしれない。
手塚治虫がもたらした「エログロナンセンス」がSFマンガにおいてかなり重要な意味を持っていて、石森章太郎、水木しげるを経て、山上たつひこ、永井豪、吾妻ひでおへとつながっていくSFマンガの一つの核ともいうべきものだという指摘は、著者の非凡さを表す一端である。著者は2006年(平成18年)53歳で死去されたが、もっと評価されていい存在である。
手塚治虫がもたらした「エログロナンセンス」がSFマンガにおいてかなり重要な意味を持っていて、石森章太郎、水木しげるを経て、山上たつひこ、永井豪、吾妻ひでおへとつながっていくSFマンガの一つの核ともいうべきものだという指摘は、著者の非凡さを表す一端である。著者は2006年(平成18年)53歳で死去されたが、もっと評価されていい存在である。
2012年4月6日に日本でレビュー済み
残念ながら本書で抜け落ちている点がいくつかあるのに気がついた。1957年のマンガ桑田次郎の「まぼろし探偵」(少年画報)、1960年のTV放映「ミステリー・ゾーン」、1963年のTV放映「アウター・リミッツ」、1966年のTV放映「サンダーバード」、1979年の封切映画「スタートレック」、1963年のSF作品「火星年代記」(レイ・ブラドベリー)の記述がない。1973年のオイルショックについての言及がない。ベトナム戦争についての、1965年の北爆や1975年のサイゴン陥落の記述がない。
以下、本書の内容である。
第一章
少年冒険小説の始まりはまちがいなくナショナリスト押川春浪の「海島冒険奇譚 海底軍艦」だった。明治三十三年に出たこの作品〜。行方不明の海軍大佐が無人島で密かに作っていた無敵の海底軍艦という設定に加え、日出雄少年と犬という組み合わせ、冒険鉄車(タンク)や軽気球等の新兵器の数々。しかも波乱万丈の冒険物語は、その雄大なスケールの物語性で人気を誇る。〜。少年小説の黄金時代を作り、当時の少年達を熱狂させたと言われる「少年倶楽部」(大日本雄弁会講談社)が創刊されたのは大正三年のことである。〜。そして、SFマンガへ多大な影響を与えたのが海野十三だ。〜。〜、「少年倶楽部」も漫画に力を入れ始める。その話題の中心はもちろん、あの「のらくろ」だ。昭和6年から十年以上も連載された田川水泡のこの作品〜。昭和八年には島田啓三の「冒険ダン吉」が連載され、〜。この二つの作品によって子供向きの娯楽として漫画は定着したのである。
第二章
一九四七年 12月「漫画少年」(学童社)創刊 封切映画:「石の花」 マンガ:山川惣治「少年王者」(集英社)、永松健夫「黄金バット」(明々社) 大阪松屋町を中心にした赤本は、最初戦前のマンガや、冒険小説等を出版していた。そこに登場してくるのが、酒井七馬構成、手塚治虫画の「新宝島」(育英出版)である。ソフトカバーのペラペラの赤本が多かった中で、一九二頁もあり豪華なこの本は、そのテンポの早い語り口と共に大人気を呼び、〜。
一九四八年 封切映画:「ガリバー旅行記(アニメ)」「三十四丁目の奇蹟」 マンガ:手塚治虫「地底国の怪人」(不二書房)、手塚治虫「魔法屋敷」(不二書房)、手塚治虫「月世界紳士」(不二書房)、手塚治虫「前世紀(ロストワールド)地球編・宇宙編」(不二書房)、小松崎茂「地球SOS」(冒険活劇文庫〜51)
一九四九年 マンガ:手塚治虫「メトロポリス・大都会」(育英出版)、福島鉄次「砂漠の魔王」(冒険王〜56)
一九五〇年 マンガ:手塚治虫「ジャングル大帝」(漫画少年〜54)、手塚治虫「タイガー博士の珍旅行」(漫画と読物) 前年の「下山事件」「三鷹事件」「松川事件」等の一連の事件は、この年六月に起こった朝鮮戦争をきっかけに、GHQの日共中央委員追放へつながっていく。七月には新聞、通信、放送関係者のレッドパージが始まり、一万人が追放された。
一九五一年 封切映画:「マルタの鷹」「奥様は魔女」「月世界征服」「バンビ」「ジェニイの肖像」 マンガ:山川惣治「少年ケニヤ」(産業経済新聞〜55)、手塚治虫「来るべき世界・前後編」(不二書房)、手塚治虫「アトム大使」(少年〜53)、手塚治虫「新世界ルルー」(漫画と読物〜52) この年九月、対日講和条約がなされ、同時に日米安全保障条約が結ばれた。
一九五二年 1月「漫画王」(秋田書店)創刊 10月「明星」(集英社)創刊 封切映画:「オペラの怪人」「地球の静止する日」「地球最后の日」「遊星よりの物体X」「第三の男」 SF作品:「ソロモンの洞窟」(ハガード) マンガ:手塚治虫「ぼくのそんごくう」(漫画王〜59)、手塚治虫「鉄腕アトム」(少年〜68)、手塚治虫「ロック冒険記」(少年クラブ〜54)、高野よしてる「赤ん坊帝国」(少年画報〜53) 「平凡」のヒットは「明星」を生み、多くのヒット曲や映画が人気を得、来るべきマスコミブームを予兆していた。週刊誌の発行部数も急増し、ラジオは一千万台を超えるという具合だったのである。TV放送が始まったこの年には、集英社から「おもしろ漫画文庫」の刊行が開始された。
一九五三年 封切映画:不思議の国のアリス」「宇宙戦争」 SF作品:「山椒魚戦争」(カレル・チャペック) マンガ:足塚不二雄「最後の世界大戦」(鶴書房)
一九五四年 封切映画:「笛吹童子」「大アマゾンの半魚人」「ゴジラ」「オズの魔法使」「透明人間」 マンガ:手塚治虫「火の鳥」(漫画少年〜55) この年の三月、ビキニ環礁沖で被爆した第五福竜丸の事件をきっかけに、原水爆禁止運動が始まる。そして、九月、香山滋原作による「ゴジラ」が封切られることになるのだ。
一九五五年 1月「ぼくら」「なかよし」(講談社)創刊 9月「リボン」創刊 10月「漫画少年」休刊 TV放映:「猿飛佐助旅日記」 封切映画:「砂漠は生きている」「ゴジラの逆襲」「海底二万里」「宇宙水爆戦」 マンガ:杉浦茂「怪星ガイガー」(漫画王) 収まっていた赤本ブームは、全国での貸本屋の増加にともない貸本マンガブームという形で再浮上してくる。
一九五六年 4月「空想科学小説全集」(元々社)刊行開始 「影」(日の丸文庫)創刊 TV放映:「チロリン村とくるみの木」「スーパーマン」 封切映画:「世紀の謎・空とぶ円盤地球を襲撃す」「禁断の惑星」「空の大怪獣・ラドン」 マンガ:手塚治虫「火の鳥」(少女クラブ〜57)、横山光輝「鉄人28号」(少年〜66)、桑田次郎「ロケット太郎」(おもしろブック〜57)、手塚治虫「緑の猫」(おもしろブック) 街頭TVがあちこちに設置され、普及率三十万台へと増えていた新しいメディア〜。
第三章
一九五七年 TV放映:「赤胴鈴之助」「鉄腕アトム」 封切映画:「縮みゆく人間」「フランケンシュタインの逆襲」「八十日間世界一周」「地球防衛軍」 SF作品:「動物農場」(ジョージ・オーウェル)、「盗まれた町」(ジャック・フィニイ) マンガ:手塚治虫「白骨船長」(おもしろブック)、手塚治虫「黄金のトランク」(西日本新聞) 十月には人工衛星スプートニク1号が打ち上げられ、東海村原子炉に火が入る。
一九五八年 TV放映:「月光仮面」「遊星王子」「ローンレンジャー」 封切映画:「十戒」「美女と液体人間」「吸血鬼ドラキュラ」「「死刑台のエレベーター」「シンドバッド七回目の航海」 SF作品:「火星人ゴーホーム」(フレドリック・ブラウン)、「1984年」(G・オーウェル)、「渚にて」(ネヴィル・シュート」) マンガ:手塚治虫「スーパー太平記」(少年画報〜59)、桑田次郎「弾丸トップ」(ぼくら) 第一回ウエスタン・カーニバルがロカビリーブームを喧伝し、映画館の入場者数はピークを迎える。TV受信契約数は百万台を突破し、十二月には東京タワーが完成する。二月から始まった川内康範の「月光仮面」は大ヒットする。
一九五九年 3月「週刊少年マガジン」(講談社)創刊 4月「週刊少年サンデー」(小学館)創刊 5月「週刊平凡」(平凡出版社)創刊 TV放映:「世にも不思議な物語」「ローハイド」「少年ジェット」 封切映画:「悪魔の発明」「遊星王子」「灰とダイヤモンド」「北北西に進路を取れ」「宇宙大戦争」 SF作品:「呪われた村」(J・ウィンダム) マンガ:手塚治虫「ジェットキング」(漫画王)、手塚治虫「魔人ガロン」(冒険王〜62)、手塚治虫「0マン」(少年サンデー〜60)、藤子不二雄「海の王子」(少年サンデー〜62)、武内つなよし「少年ジェット」(ぼくら〜62)、吉田竜夫「スーパー・ジャイアンツ)(ぼくら〜61) 小林旭の「渡り鳥」シリーズが始まる。白土三平の「忍者武芸帳」の第一巻が出たのもこの年だ。
一九六〇年 TV放映:「ナショナル・キッド」「怪傑ハリマオ」「少年探偵団」「白馬童子」「ララミー牧場」 封切映画:「渚にて」「地底探検」「八十万年後の世界へ タイムマシン」「吸血鬼ドラキュラの花嫁」「サイコ」「顔のない眼」「まぼろし探偵恐怖の宇宙人」「まぼろし探偵幽霊塔の大魔術団」「ガス人間第一号」「失われた世界」 SF作品:「都市」(クリフォード・D・シマック) マンガ:手塚治虫「キャプテンKen」(少年サンデー〜61)、石森章太郎「フラッシュZ」(まんが王〜61)、石森章太郎「幽霊船」(少年〜61)、一峰大二「宇宙人マッハ」(少年〜62)、一峰大二「ナショナル・キッド」(ぼくら〜61)、岸本治「少年旋風児」(日の丸〜62)、水木しげる「墓場鬼太郎」(兎月書房)、横山光輝「少年ロケット部隊」(日の丸〜63) 六月の安保阻止国民会議統一行動には全国で五八〇万人が参加。うち全学連は国会突入を行ない、樺美智子の死で幕を閉じる。七月に成立した池田内閣は「所得倍増政策」をスタートさせる。つまり「高度経済成長時代」が本格的に始まったのである。TVの受信契約台数は前年の倍以上、五百万台を突破していた。
第四章
一九六一年 6月「虫プロダクション動画部」発足 封切映画:「未知空間の恐怖・光る眼」「金星ロケット発信す」「モスラ」「謎の大陸アトランティス」 SF作品:「ようこそ地球さん」(星新一) マンガ:手塚治虫「白いパイロット」(少年サンデー〜62)、藤子不二雄「銀河船長」(中学生の友一年〜62)、桑田次郎「ガロロQ」(少年クラブ〜62) 四月十二日、ガガーリン少佐を乗せた初の人間衛星が大気圏外を回り、「地球は青かった」のメッセージが世界をめぐった。
一九六ニ年 TV放映:「隠密剣士」「コンバット」「ベン・ケーシー」 封切映画:「妖星ゴラス」「アラビアンナイト シンドバッドの冒険」「キングコング対ゴジラ」「世界残酷物語」「気球船探検」 SF作品:「砂の女」(安部公房)、「人間の手がまだ触れない」(ロバート・シュクリ)、「月は地獄だ!」(J・W・キャンベル) マンガ:石森章太郎「少年同盟」(少年)、小沢さとる「少年台風」(少年〜64) 月刊誌の売れゆきの不振の原因としては、小学生の絶対数の激変、〜、テレビの普及等が言われている。加えてプラモの流行で紙製付録の魅力がなくなったことや、生活の週単位化がTVによって進んでいたことが思われる。
一九六三年 TV放映:「鉄腕アトム」「鉄人28号」「8マン」 封切映画:「わんぱく王子の大蛇退治」「何がジェーンに起こったか?」「007は殺しの番号」「鳥」「マタンゴ」「怪人カリガリ博士」「人類SOS」「海底軍艦」 SF作品:「人間以上」(シオドア・スタージョン)、「トリフィドの日」(J・ウィンダム)、「われはロボット(I・アシモフ) マンガ:手塚治虫「SFファンシーフルー」(SFマガジン〜64)、手塚治虫「ビッグX」(少年ブック〜66)、桑田次郎「キングロボ」(少年キング〜64)、桑田次郎「8マン」(少年マガジン〜65)、小沢さとる「サブマリン707」(少年サンデー〜65) 前年十月のキューバ危機は核戦争の恐怖で全世界を震え上がらせた。ベトナム戦争は徐々に進行しており、アメリカの神話は少しずつ崩壊しつつあった。そしてこの年の十一月、ケネディ大統領が暗殺され、衛星中継でそのニュースは全世界に流れた。この年の暮、戦後日本の国民的英雄として、TV普及の立役者としての力道山が、ヤクザに刺されて死んだ。一月、TVアニメ第一作「鉄腕アトム」が放映され、高視聴率をあげる。
一九六四年 1月「カッパコミックス・鉄腕アトム」(光文社)刊行開始 4月「週刊平凡パンチ」(平凡出版)創刊 9月「月刊ガロ」(青林堂)創刊 10月東京オリンピック開催 TV放映:「ひょっこりひょうたん島」「ビッグX」「忍者部隊月光」「逃亡者」 封切映画:「アルゴ探検隊の大冒険」「007/危機一髪」「モスラ対ゴジラ」「博士の異常な愛情」 SF作品:「宇宙船ビーグル号の冒険」(A・E・ヴァン・ヴォークト)、「幼年期の終り」(A・C・クラーク)、「虎よ、虎よ!」(アルフレッド・ベスター)、「銀河帝国の崩壊」(A・C・クラーク) マンガ:石森章太郎「サイボーグ009」(少年キング〜65)、「藤子不二雄「オバケのQ太郎」(少年サンデー〜66)、松本あきら「潜水艦スーパー99」(冒険王〜65)、水木しげる「悪魔くん」(東考社) TVアニメ「鉄腕アトム」の人気はうなぎ上りで、一月より発行されたB5判形式の雑誌単行本「カッパ・コミックス」の「鉄腕アトム」はアニメファンの子供を対象にして大ヒットした。四月に創刊された「平凡パンチ」は団塊の世代を中心とした青年文化の始まりであったといえよう。しかし、子供のものだと思われていたマンガは、その団塊の世代に引きずられるようにして読者年齢の幅を広げていた。「ガロ」の創刊もそうだった。東京オリンピックという一大イベントにより、日本は繁栄をむさぼっていた。
第五章
赤本マンガが貸本マンガと名を変え、全国に広まった貸本屋を通して読まれるようになったのは一九五五年頃のころだ。赤本の匂いを残したB6判ハードカバーのマンガ単行本が、A5判ソフトカバーに変わるのは、「影」(日の丸文庫)の人気が定着した一九五八、五九年頃であり、「影」の大ヒットと定着はそのまま「劇画」による貸本マンガの刷新であった。
第六章
一九六五年 10月火星シリーズ第一巻「火星のプリンセス」(エドガー・ライス・バローズ・創元文庫)刊 TV放映:「スーパー・ジェッター」「宇宙少年ソラン」「宇宙エース」「W(ワンダー)3」「遊星少年パピイ」「オバケのQ太郎」「ジャングル大帝」 封切映画:「大怪獣ガメラ」「メリー・ポピンズ」「007/サンダーボール作戦」「怪獣大戦争」 SF作品:「高い城の男」(フィリップ・K・ディック)、「破壊された男」(A・ベスター)、「ソラリスの陽のもとに」(S・レム) マンガ:手塚治虫「マグマ大使」(少年画報〜67)、手塚治虫「W(ワンダー)3」(少年サンデー〜66)、石森章太郎「ミュータント・サブ」(少年サンデー〜66)、藤子不二雄「怪物くん」」(少年画報〜69)、久松文雄「スーパージェッター」」(少年サンデー〜66)、桑田次郎「エリート」(少年キング〜66)、宮腰義勝「宇宙少年ソラン」(少年マガジン〜66)
一九六六年 5月レンズマンシリーズ第一巻「銀河パトロール隊」(E・Eスミス・東京創元新社)刊行開始 TV放映:「レインボー戦隊ロビン」「魔法使いサリー」「ウルトラQ」「バットマン」「宇宙家族ロビンソン」「ウルトラマン」「マグマ大使」「悪魔くん」 封切映画:「大魔人」「ミクロの決死圏」 SF作品:「火星のタイムスリップ」(フィリップ・K・ディック) この年航空事故があいついで起こり、ビートルズ」が来日し、〜。二年ほど前から「オバケのQ太郎」「おそ松くん」といったギャグマンガが流行し、水木しげる、楳図かずおの怪奇マンガが注目を集め、この年の五月に「巨人の星」の連載が始まる。〜、大学生がマンガを読むと言われ始めた〜。〜団塊の世代が大学生になっていたのである。
一九六七年 1月「COM」(虫プロ商事)創刊 8月「週刊漫画アクション」(双葉社)創刊 TV放映:「パーマン」「コメットさん」「キャプテンウルトラ」「光速エスパー」「ウルトラセブン」「タイムトンネル」「インベーダー」「ジャイアントロボ」 封切映画:「恐竜100万年」「大怪獣空中戦ガメラ対ギャオス」「宇宙大怪獣ギララ」「大巨獣ガッパ」「サンダーバード」「キングコングの逆襲」「007/カジノ・ロワイヤル」「華氏451」 SF作品:「宇宙の戦士」(R・ハインライン)、「時をかける少女」(筒井康隆) マンガ:手塚治虫「火の鳥」(COM〜72)、石森章太郎「幻魔大戦」(少年マガジン) 手塚治虫マガジンの様相を呈する「COM」は、手塚マンガの集大成ともいえる「火の鳥」の連載をメインに、石森章太郎、永島慎二等の手塚スクールの作家を集め、マンガエリートを対象に新人を育てること、実験意欲作を掲載することを目的としていた。「ガロ」が白土三平、水木しげるメインにした劇画勢力のマンガ専門誌だとしたら、「COM」は児童マンガ、少年マンガの勢力を結集しようとしていた。
一九六八年 1月「少年」(光文社)休刊 4月「月間ビッグコミック」(小学館)創刊 7月隔週刊「少年ジャンプ」(集英社)創刊 TV放映:「ゲゲゲの鬼太郎」「サイボーグ009」「怪物くん」「妖怪人間ベム」「マイティジャック」「怪奇大作戦」 封切映画:「2001年宇宙の旅」「猿の惑星」「魚が出てきた日」「バーバレラ」「昆虫大戦争」「ガンマー第3号・宇宙大作戦」 SF作品:「沈んだ世界」(J・G・バラード)、「人類皆殺し」(T・M・ディッシュ)、「ウは宇宙船のウ」(R・ブラッドベリ) マンガ:松本零士「セクサロイド」 団塊世代と共に黄金時代を創り上げた少年マンガ月刊誌は、〜、団塊の世代が青年になっていくのを見送ったのである。かつて少年達の夢をときめかせていた紙製の付録は、高度成長期にともなう消費文化時代の中に現れた豪華なオモチャやプラモデルの前には、ただの紙くずにすぎなかった。〜。「少年」の休刊とは「鉄腕アトム」の終わりでもあったのだ。
第七章
一九六九年 7月隔週刊「少年チャンピオン」(秋田書店)創刊 7月有人宇宙船アポロ11号月面着陸を全世界同時TV放映 TV放映:「宇宙大作戦」「ゲバゲバ90分」 封切映画:「ローズマリーの赤ちゃん」「恐竜グワンジ」「ビートルズ/イエロー・サブマリン」「緯度0大作戦」「ネモ船長と海底都市」 SF作品:「結晶世界」(J・G・バラード)、「異星の客」(R・ハインライン)、「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」(P・K・ディック) マンガ:手塚治虫「青いトリトン」(サンケイ新聞〜71)、手塚治虫「ザ・クレーター」(少年チャンピオン〜70)、石森章太郎「リュウの道」(少年マガジン〜70) 「巨人の星」「あしたのジョー」の大ヒットで百五十万部を誇った「少年マガジン」〜。前年創刊され、この年に週刊になった「少年ジャンプ」〜。この年の七月、世界初の有人宇宙船アポロが月面着陸した。
一九七〇年 3月大阪万国博覧会(EXPO’70)開催 TV放映:「謎の円盤UFO」 SF作品:「アンドロメダ病原体」(M・クライトン)、「継ぐのは誰か」(小松左京)、「バベル17」(マニュエル・R・ディレーニィ)、「家畜人ヤプー」(沼正三) マンガ:手塚治虫「アポロの歌」(少年キング)、手塚治虫「きりひと讃歌」(ビッグコミック〜71)、手塚治虫「時計仕掛けのりんご」(プレイコミック〜72)、藤子不二雄「ドラエもん」(小学一〜四年生〜86)、山上たつひこ「光る風」(少年マガジン)
一九七一年 TV放映:「ふしぎなメルモ」「原始少年リュウ」「仮面ライダー」 封切映画:「恐竜時代」 SF作品:「夜の翼」(R・シルバーバーグ)、「人間がいっぱい」(ハリイ・ハリスン)、「賢者の石」(コリン・ウィルソン) マンガ:手塚治虫「鳥人大系」(SFマガジン〜75)、手塚治虫「ライオンブックスシリーズ」(少年ジャンプ〜73)、石森章太郎「仮面ライダー」(ぼくらマガジン)、石森章太郎「原始少年リュウ」(少年チャンピオン〜72)、横山光輝「バビル2世」(少年チャンピオン〜73)、聖悠紀「超人ロック」(東考社)
一九七ニ年 TV放映:「海のトリトン」「デビルマン」「科学忍者隊ガッチャマン」「マジンガーZ」「人造人間キカイダー」「レインボーマン」「タイムトラベラー」 封切映画:「ダーティハリー」「時計じかけのオレンジ」 SF作品:「百年の孤独」(ガルシア・マルケス)、「闇の左手」(A・K・ル・グィン)、「デューン砂の惑星」(フランク・ハーバート) マンガ:石森章太郎「人造人間キカイダー」(少年サンデー〜74)、永井豪「デビルマン」(少年マガジン〜73)、永井豪「マジンガーZ」(少年ジャンプ〜73)、楳図かずお「漂流教室」(少年サンデー〜74)
第八章
一九七三年 8月「COM」休刊 TV放映:「バビル2世」「ドラえもん」「新造人間キャシャーン」「キューティーハニー」 封切映画:「失われた地平線」「ウエストワールド」「日本沈没」 SF作品:「日本沈没」(小松左京) マンガ:永井豪「キューティーハニー」(少年チャンピオン〜74) この年の三月に出た小松左京の「日本沈没」(光文社)はSF界、いや出版界始まって以来の大ベストセラーを記録し、ブームを呼んだ。
一九七四年 TV放映:「ゲッターロボ」「宇宙戦艦ヤマト」 封切映画:「ノストラダムスの大予言」「未来惑星ザルドス」「シンドバッド/黄金の航海」 マンガ:手塚治虫「三つ目がとおる」(少年マガジン〜78)、松本零士「宇宙戦艦ヤマト」(冒険王〜75)、諸星大二郎「妖怪ハンター」(少年ジャンプ)、諸星大二郎「生物都市」(少年ジャンプ) 前年の「日本沈没」に続いて「ノストラダムスの大予言」がベストセラーになり、終末ブームは続き、オカルト的要素を加えつつあった。映画では「エクソシスト」が大ヒットし、〜。一方では「同棲時代」、ニューフォーク等がやさしさの時代を喧伝し、沈滞したムードが全体をおおっていた。
一九七五年 TV放映:「勇人ライディーン」「タイムボカン」「秘密戦隊ゴレンジャー」「なぞの転校生」「スペース1999」 封切映画:「スローターハウス5」「ファントム・オブ・パラダイス」「ヤング・フランケンシュタイン」 SF作品:「妖星伝」(半村良)、「階層宇宙の危機」(フィリップ・ホセ・フォーマー)、「七瀬ふたたび」(筒井康隆)、「神狩り」(山田正紀) マンガ:石川賢「魔獣戦線」(少年アクション〜76)、萩尾望都「11人いる!」(別冊少女コミック)
一九七六年 TV放映:「空とぶモンティ・パイソン」 封切映画:「ロッキー・ホラー・ショー」「キングコング」 SF作品:「ゲド戦記」(A・K・ル・グィン)、「竜を駆る種族」(J・ヴァンス) マンガ:石森章太郎「ギルガメッシュ」(少年キング〜77)、永井豪「手天童子(少年マガジン〜78)、諸星大二郎「生命の木」(少年ジャンプ増刊) この年、マンガファンを対象にした少年マンガ誌「マンガ少年」が創刊する。未完ゆえに伝説化されていた手塚治虫の「火の鳥」を中心に、マンガファンの好むSFマンガを多く掲載していた。
第九章
一九七七年 6月「手塚治虫マンガ全集」(講談社)刊行開始 TV放映:「ヤッターマン」「スペース1999」 封切映画:「巨大生物の島」「地球に落ちてきた男」「2300年未来への旅」「惑星ソラリス」「宇宙戦艦ヤマト」「シンドバッド虎の目大冒険」「カプリコン・1」 SF作品:「ジョナサンと宇宙クジラ」(ロバート・F・ヤング) マンガ:松本零士「宇宙海賊キャプテンハーロック」(プレイコミック〜79)、松本零士「銀河鉄道999」(少年キング〜81)、竹宮恵子「地球テラへ」(マンガ少年〜80」 この年の夏、一部アニメファンの間で根強い人気を持っていた「宇宙戦艦ヤマト」が劇場用に編集されたころから、アニメブームが顕在化し、それとともに松本零士ブームが巻き起こる。
一九七八年 5月「アニメージュ」(徳間書店)創刊 TV放映:「宇宙海賊キャプテンハーロック」「未来少年コナン」「銀河鉄道999」 封切映画:「ドクター・モローの島」「未知との遭遇」「スター・ウォーズ」「さらば宇宙戦艦ヤマト愛の戦士たち」「火の鳥」 SF作品:「神の目の小さな塵」(ラリー・ニーヴン)、「果てしなき河よ我を誘え」(フィリップ・ホセ・フォーマー)、「アルジャーノに花束を」(ダニエル・キイス)、「デューン・砂丘の子供たち」(フランク・ハーバート) マンガ:高橋留美子「うる星やつら」(少年サンデー〜87)、寺沢武一「コブラ」(少年ジャンプ〜84) 「スター・ウォーズ」「未知との遭遇」の公開は、SFブームを巻き起こす。
一九七九年 TV放映:「ドラえもん」「機動戦士ガンダム」「七瀬ふたたび」 封切映画:「宇宙空母ギャラクティカ」「スーパーマン」「指輪物語」「エイリアン」「銀河鉄道999」「SF/ボディ・スナッチャー」「戦国自衛隊」 SF作品:「宇宙のランデブー」(アーサー・C・クラーク)、「終わりなき戦い」(ジョー・ホールドマン) マンガ:吾妻ひでお「不条理日記」(劇画アリス)、大友克洋「Fire-Ball](アクション・デラックス)
※以上、本書では『戦後』ということで1980年以降の記述はない。それ以降、1981年のTV放映「うる星やつら」、1982年のTV放映「超時空要塞マクロス」と封切映画の「ブレードランナー」と「ET」、1983年のTV放映「装甲騎兵ボトムズ」、1984年の封切映画「風の谷のナウシカ」と「うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー」、1986年の封切映画「天空の城ラピュタ」、1988年の封切映画の「AKIRA」と「となりのトトロ」、1989年ベルリンの壁の崩壊、1995年のTV放映の「新世紀エヴァンゲリオン」と「Xファイル」、1995年の封切映画「攻殻機動隊」とあって、『戦後』を『昭和』と捉えれば、1988年までであるが、2006年に没した本書の作者の米沢嘉博は、当然これらにも注目していたはずだ。1987年当時のバブル景気、1995年の阪神・淡路大震災と地下鉄サリン事件、1999年の封切映画「マトリックス」、2002年のサッカーワールドカップ日韓主催も体験しているのだ。
以下、本書の内容である。
第一章
少年冒険小説の始まりはまちがいなくナショナリスト押川春浪の「海島冒険奇譚 海底軍艦」だった。明治三十三年に出たこの作品〜。行方不明の海軍大佐が無人島で密かに作っていた無敵の海底軍艦という設定に加え、日出雄少年と犬という組み合わせ、冒険鉄車(タンク)や軽気球等の新兵器の数々。しかも波乱万丈の冒険物語は、その雄大なスケールの物語性で人気を誇る。〜。少年小説の黄金時代を作り、当時の少年達を熱狂させたと言われる「少年倶楽部」(大日本雄弁会講談社)が創刊されたのは大正三年のことである。〜。そして、SFマンガへ多大な影響を与えたのが海野十三だ。〜。〜、「少年倶楽部」も漫画に力を入れ始める。その話題の中心はもちろん、あの「のらくろ」だ。昭和6年から十年以上も連載された田川水泡のこの作品〜。昭和八年には島田啓三の「冒険ダン吉」が連載され、〜。この二つの作品によって子供向きの娯楽として漫画は定着したのである。
第二章
一九四七年 12月「漫画少年」(学童社)創刊 封切映画:「石の花」 マンガ:山川惣治「少年王者」(集英社)、永松健夫「黄金バット」(明々社) 大阪松屋町を中心にした赤本は、最初戦前のマンガや、冒険小説等を出版していた。そこに登場してくるのが、酒井七馬構成、手塚治虫画の「新宝島」(育英出版)である。ソフトカバーのペラペラの赤本が多かった中で、一九二頁もあり豪華なこの本は、そのテンポの早い語り口と共に大人気を呼び、〜。
一九四八年 封切映画:「ガリバー旅行記(アニメ)」「三十四丁目の奇蹟」 マンガ:手塚治虫「地底国の怪人」(不二書房)、手塚治虫「魔法屋敷」(不二書房)、手塚治虫「月世界紳士」(不二書房)、手塚治虫「前世紀(ロストワールド)地球編・宇宙編」(不二書房)、小松崎茂「地球SOS」(冒険活劇文庫〜51)
一九四九年 マンガ:手塚治虫「メトロポリス・大都会」(育英出版)、福島鉄次「砂漠の魔王」(冒険王〜56)
一九五〇年 マンガ:手塚治虫「ジャングル大帝」(漫画少年〜54)、手塚治虫「タイガー博士の珍旅行」(漫画と読物) 前年の「下山事件」「三鷹事件」「松川事件」等の一連の事件は、この年六月に起こった朝鮮戦争をきっかけに、GHQの日共中央委員追放へつながっていく。七月には新聞、通信、放送関係者のレッドパージが始まり、一万人が追放された。
一九五一年 封切映画:「マルタの鷹」「奥様は魔女」「月世界征服」「バンビ」「ジェニイの肖像」 マンガ:山川惣治「少年ケニヤ」(産業経済新聞〜55)、手塚治虫「来るべき世界・前後編」(不二書房)、手塚治虫「アトム大使」(少年〜53)、手塚治虫「新世界ルルー」(漫画と読物〜52) この年九月、対日講和条約がなされ、同時に日米安全保障条約が結ばれた。
一九五二年 1月「漫画王」(秋田書店)創刊 10月「明星」(集英社)創刊 封切映画:「オペラの怪人」「地球の静止する日」「地球最后の日」「遊星よりの物体X」「第三の男」 SF作品:「ソロモンの洞窟」(ハガード) マンガ:手塚治虫「ぼくのそんごくう」(漫画王〜59)、手塚治虫「鉄腕アトム」(少年〜68)、手塚治虫「ロック冒険記」(少年クラブ〜54)、高野よしてる「赤ん坊帝国」(少年画報〜53) 「平凡」のヒットは「明星」を生み、多くのヒット曲や映画が人気を得、来るべきマスコミブームを予兆していた。週刊誌の発行部数も急増し、ラジオは一千万台を超えるという具合だったのである。TV放送が始まったこの年には、集英社から「おもしろ漫画文庫」の刊行が開始された。
一九五三年 封切映画:不思議の国のアリス」「宇宙戦争」 SF作品:「山椒魚戦争」(カレル・チャペック) マンガ:足塚不二雄「最後の世界大戦」(鶴書房)
一九五四年 封切映画:「笛吹童子」「大アマゾンの半魚人」「ゴジラ」「オズの魔法使」「透明人間」 マンガ:手塚治虫「火の鳥」(漫画少年〜55) この年の三月、ビキニ環礁沖で被爆した第五福竜丸の事件をきっかけに、原水爆禁止運動が始まる。そして、九月、香山滋原作による「ゴジラ」が封切られることになるのだ。
一九五五年 1月「ぼくら」「なかよし」(講談社)創刊 9月「リボン」創刊 10月「漫画少年」休刊 TV放映:「猿飛佐助旅日記」 封切映画:「砂漠は生きている」「ゴジラの逆襲」「海底二万里」「宇宙水爆戦」 マンガ:杉浦茂「怪星ガイガー」(漫画王) 収まっていた赤本ブームは、全国での貸本屋の増加にともない貸本マンガブームという形で再浮上してくる。
一九五六年 4月「空想科学小説全集」(元々社)刊行開始 「影」(日の丸文庫)創刊 TV放映:「チロリン村とくるみの木」「スーパーマン」 封切映画:「世紀の謎・空とぶ円盤地球を襲撃す」「禁断の惑星」「空の大怪獣・ラドン」 マンガ:手塚治虫「火の鳥」(少女クラブ〜57)、横山光輝「鉄人28号」(少年〜66)、桑田次郎「ロケット太郎」(おもしろブック〜57)、手塚治虫「緑の猫」(おもしろブック) 街頭TVがあちこちに設置され、普及率三十万台へと増えていた新しいメディア〜。
第三章
一九五七年 TV放映:「赤胴鈴之助」「鉄腕アトム」 封切映画:「縮みゆく人間」「フランケンシュタインの逆襲」「八十日間世界一周」「地球防衛軍」 SF作品:「動物農場」(ジョージ・オーウェル)、「盗まれた町」(ジャック・フィニイ) マンガ:手塚治虫「白骨船長」(おもしろブック)、手塚治虫「黄金のトランク」(西日本新聞) 十月には人工衛星スプートニク1号が打ち上げられ、東海村原子炉に火が入る。
一九五八年 TV放映:「月光仮面」「遊星王子」「ローンレンジャー」 封切映画:「十戒」「美女と液体人間」「吸血鬼ドラキュラ」「「死刑台のエレベーター」「シンドバッド七回目の航海」 SF作品:「火星人ゴーホーム」(フレドリック・ブラウン)、「1984年」(G・オーウェル)、「渚にて」(ネヴィル・シュート」) マンガ:手塚治虫「スーパー太平記」(少年画報〜59)、桑田次郎「弾丸トップ」(ぼくら) 第一回ウエスタン・カーニバルがロカビリーブームを喧伝し、映画館の入場者数はピークを迎える。TV受信契約数は百万台を突破し、十二月には東京タワーが完成する。二月から始まった川内康範の「月光仮面」は大ヒットする。
一九五九年 3月「週刊少年マガジン」(講談社)創刊 4月「週刊少年サンデー」(小学館)創刊 5月「週刊平凡」(平凡出版社)創刊 TV放映:「世にも不思議な物語」「ローハイド」「少年ジェット」 封切映画:「悪魔の発明」「遊星王子」「灰とダイヤモンド」「北北西に進路を取れ」「宇宙大戦争」 SF作品:「呪われた村」(J・ウィンダム) マンガ:手塚治虫「ジェットキング」(漫画王)、手塚治虫「魔人ガロン」(冒険王〜62)、手塚治虫「0マン」(少年サンデー〜60)、藤子不二雄「海の王子」(少年サンデー〜62)、武内つなよし「少年ジェット」(ぼくら〜62)、吉田竜夫「スーパー・ジャイアンツ)(ぼくら〜61) 小林旭の「渡り鳥」シリーズが始まる。白土三平の「忍者武芸帳」の第一巻が出たのもこの年だ。
一九六〇年 TV放映:「ナショナル・キッド」「怪傑ハリマオ」「少年探偵団」「白馬童子」「ララミー牧場」 封切映画:「渚にて」「地底探検」「八十万年後の世界へ タイムマシン」「吸血鬼ドラキュラの花嫁」「サイコ」「顔のない眼」「まぼろし探偵恐怖の宇宙人」「まぼろし探偵幽霊塔の大魔術団」「ガス人間第一号」「失われた世界」 SF作品:「都市」(クリフォード・D・シマック) マンガ:手塚治虫「キャプテンKen」(少年サンデー〜61)、石森章太郎「フラッシュZ」(まんが王〜61)、石森章太郎「幽霊船」(少年〜61)、一峰大二「宇宙人マッハ」(少年〜62)、一峰大二「ナショナル・キッド」(ぼくら〜61)、岸本治「少年旋風児」(日の丸〜62)、水木しげる「墓場鬼太郎」(兎月書房)、横山光輝「少年ロケット部隊」(日の丸〜63) 六月の安保阻止国民会議統一行動には全国で五八〇万人が参加。うち全学連は国会突入を行ない、樺美智子の死で幕を閉じる。七月に成立した池田内閣は「所得倍増政策」をスタートさせる。つまり「高度経済成長時代」が本格的に始まったのである。TVの受信契約台数は前年の倍以上、五百万台を突破していた。
第四章
一九六一年 6月「虫プロダクション動画部」発足 封切映画:「未知空間の恐怖・光る眼」「金星ロケット発信す」「モスラ」「謎の大陸アトランティス」 SF作品:「ようこそ地球さん」(星新一) マンガ:手塚治虫「白いパイロット」(少年サンデー〜62)、藤子不二雄「銀河船長」(中学生の友一年〜62)、桑田次郎「ガロロQ」(少年クラブ〜62) 四月十二日、ガガーリン少佐を乗せた初の人間衛星が大気圏外を回り、「地球は青かった」のメッセージが世界をめぐった。
一九六ニ年 TV放映:「隠密剣士」「コンバット」「ベン・ケーシー」 封切映画:「妖星ゴラス」「アラビアンナイト シンドバッドの冒険」「キングコング対ゴジラ」「世界残酷物語」「気球船探検」 SF作品:「砂の女」(安部公房)、「人間の手がまだ触れない」(ロバート・シュクリ)、「月は地獄だ!」(J・W・キャンベル) マンガ:石森章太郎「少年同盟」(少年)、小沢さとる「少年台風」(少年〜64) 月刊誌の売れゆきの不振の原因としては、小学生の絶対数の激変、〜、テレビの普及等が言われている。加えてプラモの流行で紙製付録の魅力がなくなったことや、生活の週単位化がTVによって進んでいたことが思われる。
一九六三年 TV放映:「鉄腕アトム」「鉄人28号」「8マン」 封切映画:「わんぱく王子の大蛇退治」「何がジェーンに起こったか?」「007は殺しの番号」「鳥」「マタンゴ」「怪人カリガリ博士」「人類SOS」「海底軍艦」 SF作品:「人間以上」(シオドア・スタージョン)、「トリフィドの日」(J・ウィンダム)、「われはロボット(I・アシモフ) マンガ:手塚治虫「SFファンシーフルー」(SFマガジン〜64)、手塚治虫「ビッグX」(少年ブック〜66)、桑田次郎「キングロボ」(少年キング〜64)、桑田次郎「8マン」(少年マガジン〜65)、小沢さとる「サブマリン707」(少年サンデー〜65) 前年十月のキューバ危機は核戦争の恐怖で全世界を震え上がらせた。ベトナム戦争は徐々に進行しており、アメリカの神話は少しずつ崩壊しつつあった。そしてこの年の十一月、ケネディ大統領が暗殺され、衛星中継でそのニュースは全世界に流れた。この年の暮、戦後日本の国民的英雄として、TV普及の立役者としての力道山が、ヤクザに刺されて死んだ。一月、TVアニメ第一作「鉄腕アトム」が放映され、高視聴率をあげる。
一九六四年 1月「カッパコミックス・鉄腕アトム」(光文社)刊行開始 4月「週刊平凡パンチ」(平凡出版)創刊 9月「月刊ガロ」(青林堂)創刊 10月東京オリンピック開催 TV放映:「ひょっこりひょうたん島」「ビッグX」「忍者部隊月光」「逃亡者」 封切映画:「アルゴ探検隊の大冒険」「007/危機一髪」「モスラ対ゴジラ」「博士の異常な愛情」 SF作品:「宇宙船ビーグル号の冒険」(A・E・ヴァン・ヴォークト)、「幼年期の終り」(A・C・クラーク)、「虎よ、虎よ!」(アルフレッド・ベスター)、「銀河帝国の崩壊」(A・C・クラーク) マンガ:石森章太郎「サイボーグ009」(少年キング〜65)、「藤子不二雄「オバケのQ太郎」(少年サンデー〜66)、松本あきら「潜水艦スーパー99」(冒険王〜65)、水木しげる「悪魔くん」(東考社) TVアニメ「鉄腕アトム」の人気はうなぎ上りで、一月より発行されたB5判形式の雑誌単行本「カッパ・コミックス」の「鉄腕アトム」はアニメファンの子供を対象にして大ヒットした。四月に創刊された「平凡パンチ」は団塊の世代を中心とした青年文化の始まりであったといえよう。しかし、子供のものだと思われていたマンガは、その団塊の世代に引きずられるようにして読者年齢の幅を広げていた。「ガロ」の創刊もそうだった。東京オリンピックという一大イベントにより、日本は繁栄をむさぼっていた。
第五章
赤本マンガが貸本マンガと名を変え、全国に広まった貸本屋を通して読まれるようになったのは一九五五年頃のころだ。赤本の匂いを残したB6判ハードカバーのマンガ単行本が、A5判ソフトカバーに変わるのは、「影」(日の丸文庫)の人気が定着した一九五八、五九年頃であり、「影」の大ヒットと定着はそのまま「劇画」による貸本マンガの刷新であった。
第六章
一九六五年 10月火星シリーズ第一巻「火星のプリンセス」(エドガー・ライス・バローズ・創元文庫)刊 TV放映:「スーパー・ジェッター」「宇宙少年ソラン」「宇宙エース」「W(ワンダー)3」「遊星少年パピイ」「オバケのQ太郎」「ジャングル大帝」 封切映画:「大怪獣ガメラ」「メリー・ポピンズ」「007/サンダーボール作戦」「怪獣大戦争」 SF作品:「高い城の男」(フィリップ・K・ディック)、「破壊された男」(A・ベスター)、「ソラリスの陽のもとに」(S・レム) マンガ:手塚治虫「マグマ大使」(少年画報〜67)、手塚治虫「W(ワンダー)3」(少年サンデー〜66)、石森章太郎「ミュータント・サブ」(少年サンデー〜66)、藤子不二雄「怪物くん」」(少年画報〜69)、久松文雄「スーパージェッター」」(少年サンデー〜66)、桑田次郎「エリート」(少年キング〜66)、宮腰義勝「宇宙少年ソラン」(少年マガジン〜66)
一九六六年 5月レンズマンシリーズ第一巻「銀河パトロール隊」(E・Eスミス・東京創元新社)刊行開始 TV放映:「レインボー戦隊ロビン」「魔法使いサリー」「ウルトラQ」「バットマン」「宇宙家族ロビンソン」「ウルトラマン」「マグマ大使」「悪魔くん」 封切映画:「大魔人」「ミクロの決死圏」 SF作品:「火星のタイムスリップ」(フィリップ・K・ディック) この年航空事故があいついで起こり、ビートルズ」が来日し、〜。二年ほど前から「オバケのQ太郎」「おそ松くん」といったギャグマンガが流行し、水木しげる、楳図かずおの怪奇マンガが注目を集め、この年の五月に「巨人の星」の連載が始まる。〜、大学生がマンガを読むと言われ始めた〜。〜団塊の世代が大学生になっていたのである。
一九六七年 1月「COM」(虫プロ商事)創刊 8月「週刊漫画アクション」(双葉社)創刊 TV放映:「パーマン」「コメットさん」「キャプテンウルトラ」「光速エスパー」「ウルトラセブン」「タイムトンネル」「インベーダー」「ジャイアントロボ」 封切映画:「恐竜100万年」「大怪獣空中戦ガメラ対ギャオス」「宇宙大怪獣ギララ」「大巨獣ガッパ」「サンダーバード」「キングコングの逆襲」「007/カジノ・ロワイヤル」「華氏451」 SF作品:「宇宙の戦士」(R・ハインライン)、「時をかける少女」(筒井康隆) マンガ:手塚治虫「火の鳥」(COM〜72)、石森章太郎「幻魔大戦」(少年マガジン) 手塚治虫マガジンの様相を呈する「COM」は、手塚マンガの集大成ともいえる「火の鳥」の連載をメインに、石森章太郎、永島慎二等の手塚スクールの作家を集め、マンガエリートを対象に新人を育てること、実験意欲作を掲載することを目的としていた。「ガロ」が白土三平、水木しげるメインにした劇画勢力のマンガ専門誌だとしたら、「COM」は児童マンガ、少年マンガの勢力を結集しようとしていた。
一九六八年 1月「少年」(光文社)休刊 4月「月間ビッグコミック」(小学館)創刊 7月隔週刊「少年ジャンプ」(集英社)創刊 TV放映:「ゲゲゲの鬼太郎」「サイボーグ009」「怪物くん」「妖怪人間ベム」「マイティジャック」「怪奇大作戦」 封切映画:「2001年宇宙の旅」「猿の惑星」「魚が出てきた日」「バーバレラ」「昆虫大戦争」「ガンマー第3号・宇宙大作戦」 SF作品:「沈んだ世界」(J・G・バラード)、「人類皆殺し」(T・M・ディッシュ)、「ウは宇宙船のウ」(R・ブラッドベリ) マンガ:松本零士「セクサロイド」 団塊世代と共に黄金時代を創り上げた少年マンガ月刊誌は、〜、団塊の世代が青年になっていくのを見送ったのである。かつて少年達の夢をときめかせていた紙製の付録は、高度成長期にともなう消費文化時代の中に現れた豪華なオモチャやプラモデルの前には、ただの紙くずにすぎなかった。〜。「少年」の休刊とは「鉄腕アトム」の終わりでもあったのだ。
第七章
一九六九年 7月隔週刊「少年チャンピオン」(秋田書店)創刊 7月有人宇宙船アポロ11号月面着陸を全世界同時TV放映 TV放映:「宇宙大作戦」「ゲバゲバ90分」 封切映画:「ローズマリーの赤ちゃん」「恐竜グワンジ」「ビートルズ/イエロー・サブマリン」「緯度0大作戦」「ネモ船長と海底都市」 SF作品:「結晶世界」(J・G・バラード)、「異星の客」(R・ハインライン)、「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」(P・K・ディック) マンガ:手塚治虫「青いトリトン」(サンケイ新聞〜71)、手塚治虫「ザ・クレーター」(少年チャンピオン〜70)、石森章太郎「リュウの道」(少年マガジン〜70) 「巨人の星」「あしたのジョー」の大ヒットで百五十万部を誇った「少年マガジン」〜。前年創刊され、この年に週刊になった「少年ジャンプ」〜。この年の七月、世界初の有人宇宙船アポロが月面着陸した。
一九七〇年 3月大阪万国博覧会(EXPO’70)開催 TV放映:「謎の円盤UFO」 SF作品:「アンドロメダ病原体」(M・クライトン)、「継ぐのは誰か」(小松左京)、「バベル17」(マニュエル・R・ディレーニィ)、「家畜人ヤプー」(沼正三) マンガ:手塚治虫「アポロの歌」(少年キング)、手塚治虫「きりひと讃歌」(ビッグコミック〜71)、手塚治虫「時計仕掛けのりんご」(プレイコミック〜72)、藤子不二雄「ドラエもん」(小学一〜四年生〜86)、山上たつひこ「光る風」(少年マガジン)
一九七一年 TV放映:「ふしぎなメルモ」「原始少年リュウ」「仮面ライダー」 封切映画:「恐竜時代」 SF作品:「夜の翼」(R・シルバーバーグ)、「人間がいっぱい」(ハリイ・ハリスン)、「賢者の石」(コリン・ウィルソン) マンガ:手塚治虫「鳥人大系」(SFマガジン〜75)、手塚治虫「ライオンブックスシリーズ」(少年ジャンプ〜73)、石森章太郎「仮面ライダー」(ぼくらマガジン)、石森章太郎「原始少年リュウ」(少年チャンピオン〜72)、横山光輝「バビル2世」(少年チャンピオン〜73)、聖悠紀「超人ロック」(東考社)
一九七ニ年 TV放映:「海のトリトン」「デビルマン」「科学忍者隊ガッチャマン」「マジンガーZ」「人造人間キカイダー」「レインボーマン」「タイムトラベラー」 封切映画:「ダーティハリー」「時計じかけのオレンジ」 SF作品:「百年の孤独」(ガルシア・マルケス)、「闇の左手」(A・K・ル・グィン)、「デューン砂の惑星」(フランク・ハーバート) マンガ:石森章太郎「人造人間キカイダー」(少年サンデー〜74)、永井豪「デビルマン」(少年マガジン〜73)、永井豪「マジンガーZ」(少年ジャンプ〜73)、楳図かずお「漂流教室」(少年サンデー〜74)
第八章
一九七三年 8月「COM」休刊 TV放映:「バビル2世」「ドラえもん」「新造人間キャシャーン」「キューティーハニー」 封切映画:「失われた地平線」「ウエストワールド」「日本沈没」 SF作品:「日本沈没」(小松左京) マンガ:永井豪「キューティーハニー」(少年チャンピオン〜74) この年の三月に出た小松左京の「日本沈没」(光文社)はSF界、いや出版界始まって以来の大ベストセラーを記録し、ブームを呼んだ。
一九七四年 TV放映:「ゲッターロボ」「宇宙戦艦ヤマト」 封切映画:「ノストラダムスの大予言」「未来惑星ザルドス」「シンドバッド/黄金の航海」 マンガ:手塚治虫「三つ目がとおる」(少年マガジン〜78)、松本零士「宇宙戦艦ヤマト」(冒険王〜75)、諸星大二郎「妖怪ハンター」(少年ジャンプ)、諸星大二郎「生物都市」(少年ジャンプ) 前年の「日本沈没」に続いて「ノストラダムスの大予言」がベストセラーになり、終末ブームは続き、オカルト的要素を加えつつあった。映画では「エクソシスト」が大ヒットし、〜。一方では「同棲時代」、ニューフォーク等がやさしさの時代を喧伝し、沈滞したムードが全体をおおっていた。
一九七五年 TV放映:「勇人ライディーン」「タイムボカン」「秘密戦隊ゴレンジャー」「なぞの転校生」「スペース1999」 封切映画:「スローターハウス5」「ファントム・オブ・パラダイス」「ヤング・フランケンシュタイン」 SF作品:「妖星伝」(半村良)、「階層宇宙の危機」(フィリップ・ホセ・フォーマー)、「七瀬ふたたび」(筒井康隆)、「神狩り」(山田正紀) マンガ:石川賢「魔獣戦線」(少年アクション〜76)、萩尾望都「11人いる!」(別冊少女コミック)
一九七六年 TV放映:「空とぶモンティ・パイソン」 封切映画:「ロッキー・ホラー・ショー」「キングコング」 SF作品:「ゲド戦記」(A・K・ル・グィン)、「竜を駆る種族」(J・ヴァンス) マンガ:石森章太郎「ギルガメッシュ」(少年キング〜77)、永井豪「手天童子(少年マガジン〜78)、諸星大二郎「生命の木」(少年ジャンプ増刊) この年、マンガファンを対象にした少年マンガ誌「マンガ少年」が創刊する。未完ゆえに伝説化されていた手塚治虫の「火の鳥」を中心に、マンガファンの好むSFマンガを多く掲載していた。
第九章
一九七七年 6月「手塚治虫マンガ全集」(講談社)刊行開始 TV放映:「ヤッターマン」「スペース1999」 封切映画:「巨大生物の島」「地球に落ちてきた男」「2300年未来への旅」「惑星ソラリス」「宇宙戦艦ヤマト」「シンドバッド虎の目大冒険」「カプリコン・1」 SF作品:「ジョナサンと宇宙クジラ」(ロバート・F・ヤング) マンガ:松本零士「宇宙海賊キャプテンハーロック」(プレイコミック〜79)、松本零士「銀河鉄道999」(少年キング〜81)、竹宮恵子「地球テラへ」(マンガ少年〜80」 この年の夏、一部アニメファンの間で根強い人気を持っていた「宇宙戦艦ヤマト」が劇場用に編集されたころから、アニメブームが顕在化し、それとともに松本零士ブームが巻き起こる。
一九七八年 5月「アニメージュ」(徳間書店)創刊 TV放映:「宇宙海賊キャプテンハーロック」「未来少年コナン」「銀河鉄道999」 封切映画:「ドクター・モローの島」「未知との遭遇」「スター・ウォーズ」「さらば宇宙戦艦ヤマト愛の戦士たち」「火の鳥」 SF作品:「神の目の小さな塵」(ラリー・ニーヴン)、「果てしなき河よ我を誘え」(フィリップ・ホセ・フォーマー)、「アルジャーノに花束を」(ダニエル・キイス)、「デューン・砂丘の子供たち」(フランク・ハーバート) マンガ:高橋留美子「うる星やつら」(少年サンデー〜87)、寺沢武一「コブラ」(少年ジャンプ〜84) 「スター・ウォーズ」「未知との遭遇」の公開は、SFブームを巻き起こす。
一九七九年 TV放映:「ドラえもん」「機動戦士ガンダム」「七瀬ふたたび」 封切映画:「宇宙空母ギャラクティカ」「スーパーマン」「指輪物語」「エイリアン」「銀河鉄道999」「SF/ボディ・スナッチャー」「戦国自衛隊」 SF作品:「宇宙のランデブー」(アーサー・C・クラーク)、「終わりなき戦い」(ジョー・ホールドマン) マンガ:吾妻ひでお「不条理日記」(劇画アリス)、大友克洋「Fire-Ball](アクション・デラックス)
※以上、本書では『戦後』ということで1980年以降の記述はない。それ以降、1981年のTV放映「うる星やつら」、1982年のTV放映「超時空要塞マクロス」と封切映画の「ブレードランナー」と「ET」、1983年のTV放映「装甲騎兵ボトムズ」、1984年の封切映画「風の谷のナウシカ」と「うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー」、1986年の封切映画「天空の城ラピュタ」、1988年の封切映画の「AKIRA」と「となりのトトロ」、1989年ベルリンの壁の崩壊、1995年のTV放映の「新世紀エヴァンゲリオン」と「Xファイル」、1995年の封切映画「攻殻機動隊」とあって、『戦後』を『昭和』と捉えれば、1988年までであるが、2006年に没した本書の作者の米沢嘉博は、当然これらにも注目していたはずだ。1987年当時のバブル景気、1995年の阪神・淡路大震災と地下鉄サリン事件、1999年の封切映画「マトリックス」、2002年のサッカーワールドカップ日韓主催も体験しているのだ。