兄の朱雀帝の寵姫朧月夜に密会しているところをその父親に発見され、弘徽殿の仕打ちを受け源氏が都落ちする”花散里”から2巻が始まります。中央の政治・社交界からはじき出され窮地に陥った源氏は須磨へ自主的に蟄居します。その後、都にもどり太政大臣と人臣の位を極め権力の頂点を手に入れる一方で、成人に近づいた息子の夕霧の恋が描かれ、物語としての源氏の絶頂とその後訪れる落日へのエピローグへと繋がるところまでが2巻です。
「平安貴族が受領など、実際に土地を管理する代理人に蚕食されていくしくみが分かった」:
都に残していく財産管理を妻紫の上とその乳母に託すカ所では、離れた土地の管理人を女性が管理することの困難さが描かれています。高貴な身分の女性は人に顔を見せないのが常識であり、その制約の中で管理人を指揮管理することの難しさは想像に難くありません。
当主であっても、土地の権利書だけで順当に荘園を管理できるわけもなく、中央政府である朝廷が端々の財産権を保障するしくみも弱いため、その後の武士の台頭に繋がっていった、その背景がこの巻で理解できました。
「ミカドを頂点とする当時の身分制の強さ」:
源氏が女性を物色するときの基準が興味深いです。歌の巧みさや筆跡はもとより、たたずまいや所作も重要ですが、それを上回るのが血筋で、それはしかも天皇にどれくらい近いかというものです。
源氏物語中で屈指のブスと言われる末摘花は故常陸宮の姫君でした。
しかし源氏のエライところは、たとえびっくりするほどの不細工であると分かっても、ひとたび情を交わした女性を捨てないところです。
「受領と貴族の関係性」:
明石の受領は、都落ちしてきた源氏に娘を差し出します。高貴な血筋に価値があり、孫娘が入内でもした日には位も上がり経済力もアップするという期待です。ミカドの後宮に入れなくても、息子よりも娘が歓迎される背景には婿入り婚が背景にあるというのも再認識されます。財力と権力を婿が持ち込んでくれるのですから。
現代なら財力が最大の社会的パワーですが、当時は財力は身分の高いものが必要なときに受領に差し出させればよいとでも思われていたのでしょうか、高貴な身分の前には財力は非力であるように描かれます。
「多妻制を日々どうやってしのいでいたのか」:
娘を産んだ受領の娘、明石の君は自邸には置かずにいったん嵯峨野あたりに住まわせます。
ときどき通うのですが、婚家の家が経済力があれば、そこへも通って2,3日してまた移動という生活です。
多妻制が社会常識であった当時のこととはいえ、当然のことながら嫉妬という感情も普遍的なものです。
そこをどうやってうまく切り抜けていたのか興味あります。
以前にも増した権力と財力を得た源氏は六条に広壮な邸宅を構えますが、その4区画にそれぞれ季節をテーマにした庭や家屋を造作し、それぞれに妻を住まわせます。
基本的に当時の女性は基本的に出歩かないので、屋敷内でバチバチッと火花を散らすこともないのでしょうが、それぞれの妻の心象風景を想像するのも興味ぶかいものがあります。
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源氏物語 第2巻 (ちくま文庫 お 39-5) 文庫 – 2008/12/10
花散里~少女
- 本の長さ525ページ
- 言語日本語
- 出版社筑摩書房
- 発売日2008/12/10
- ISBN-104480424822
- ISBN-13978-4480424822
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登録情報
- 出版社 : 筑摩書房 (2008/12/10)
- 発売日 : 2008/12/10
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 525ページ
- ISBN-10 : 4480424822
- ISBN-13 : 978-4480424822
- Amazon 売れ筋ランキング: - 435,582位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
著者について
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978?~1014?。平安時代中期の女流作家、歌人。本名は不明。生没年に多数の説がある。藤原為時の娘で幼い頃より漢文を読みこなすなど、才女として の逸話が残されている。藤原道長の長女で一条天皇の中宮である彰子に、女房兼家庭教師として奉仕。「桐壺」に始まり「夢浮橋」で終わる54帖にもおよぶ世 界最古の長編小説『源氏物語』などを著す(「BOOK著者紹介情報」より:本データは『 源氏物語 (名著をマンガで!) (ISBN-13: 978-4059006145)』が刊行された当時に掲載されていたものです)
1961年生まれ。早稲田大学第一文学部日本史学専攻卒業。小さいころから漫画のよみかきと古典と歴史が大好き。中学生のころは新撰組と柳生十兵衛に入れ込み、学校を休んで柳生の里に行ったりした。『ブス論』『歯医者が怖い。』『源氏物語』全訳六巻、『本当はひどかった昔の日本』『昔話はなぜ、お爺さんとお婆さんが主役なのか』『女系図でみる驚きの日本史』など著書多数。
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2017年10月19日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
「快楽で読み解く古典文学」「感情を出せない源氏のひとびと」などに見られる、この著者独自の切り口をこの訳書に求めると、あきません。世に数多い逐語訳のひとつですから。しかし、「巌の中」などの、多くの訳者が訳したくなる「源語」もそのまま遣われてるところを見ると、「源氏詞=源氏物語を想起する詞」を大切にしていると思います。「訳したくない源氏の詞」を主張するこの人の面目は生きています。
できれば、というか、きっと、源氏原文を手元に置くか、ディスプレイに出しながらこの本を読むと、絶対に越えられない源氏物語原文の美しさを認識できると思います。そのぐらいよくできた、「逐語訳」です。
できれば、というか、きっと、源氏原文を手元に置くか、ディスプレイに出しながらこの本を読むと、絶対に越えられない源氏物語原文の美しさを認識できると思います。そのぐらいよくできた、「逐語訳」です。
2013年6月24日に日本でレビュー済み
『源氏物語』……。
自分の場合で言えば、学生のころから全く興味湧かず、大人になってもぜんっぜん読む気しませんでした。
大まかな筋については、日本人なら否が応でもドラマやマンガやらでわかってますよね。
光源氏がウハウハと楽しく女らをつまみ食いするエリート世界の、どうでもいい話と思っていて……。
それでも、それほど良いといわれてるものだし、日本人としていちおう全訳と呼ばれるものには何度か挑戦し、で、だいたい冒頭でギブしてました。
で、当時、大塚ひかり訳の『源氏物語』が出ると知った時も、いくら大塚さんの訳といえど、どうせまた途中でギブだな、と思っていて、でも、また勉強のつもりでこわごわ読み始めたら、ありゃっ、スルスル読めますっ。構えていたのがバカみたい。
アメリカの連ドラとかを見るように大いにリラックスして源氏を謳歌しましたよ〜〜。
あまりに面白くて6巻までイッキですよ、イッキ。
まず男たちがノンキに女の良し悪しを言いたい放題ダラダラしゃべる光景(『雨後の品定め』というやつ)でつかまれました。
タランティーノがよくやる映画のツカみ=「ザ・無駄話の面白さ」じゃん、これ、と。
なにこれ、ぜんぜん「現在(いま)」じゃん、と。
そうなのかーー、源氏ってディテールというか人々の心のかすかな動きを味わい尽くすものなのだな、せつなくなったり、さびしくなったり、要領の悪い奴にイライラしたり、ザマアミロと思ったり……。
マンガやダイジェスト版でスジを知っても、この物語の真の面白さはとうてい味わえないことが、よーーくわかりました。
この2巻では美しかった光源氏が中年になってきて気持ち悪さも出てきます。
魅力あふれるキャラクターも1巻以上にバンバン出てきます。
源氏物語中、一番、キャラが立ってる(と私が思う)かわいすぎるおっさん、明石の入道という方も出てきます。
有名すぎるブス美人、末摘花のどんくささはここでも大いに発揮されます。その叔母の末摘花へのバカにし加減に自分の悪しき心を覗かれた気がしました。
そこここに「リアル」があります。
それぞれの言い分や行動にいちいち大共感です。
名言もたくさん。
大塚ひかりの読みやすさの秘密はなんなのか。
言葉づかいは現代風で軽やかであるが、奇をてらうとかセンセーショナルに書こうということとは対極にあるように見受けられます。
紫式部の心に寄り添って自然にあるがままに、かつ誠実に繊細に書いてると思います。
他の大塚本でもわかりましたが、大塚ひかりは式部のように、色々なタイプの女の底の気持ちをよくわかってる。
そしてやはり、ユーモア・センスとシビアな観察眼。そして子供の時から異常な古典オタクだったという鍛え上げられた知識の地盤。
こういったことがあるから、こちらの心にぐいぐい入ってくるのではないでしょうか。
もうすでに通しで4回読んでます。軽く、つまんで好きなエピソードを読み返すときもあります。
こんな興味なかったものを何度も読むなんて夢にも思わなかった。
ご本人のブログやツイッターを見させていただくと、とてつもない労苦の割にはぜんぜん報われてないようです。って大きなお世話ですけど……。
でもぜひもっと多くの人にちゃんと読んでもらって、この面白さを味わってほしいなぁ。と本当に切に思います……。
自分の場合で言えば、学生のころから全く興味湧かず、大人になってもぜんっぜん読む気しませんでした。
大まかな筋については、日本人なら否が応でもドラマやマンガやらでわかってますよね。
光源氏がウハウハと楽しく女らをつまみ食いするエリート世界の、どうでもいい話と思っていて……。
それでも、それほど良いといわれてるものだし、日本人としていちおう全訳と呼ばれるものには何度か挑戦し、で、だいたい冒頭でギブしてました。
で、当時、大塚ひかり訳の『源氏物語』が出ると知った時も、いくら大塚さんの訳といえど、どうせまた途中でギブだな、と思っていて、でも、また勉強のつもりでこわごわ読み始めたら、ありゃっ、スルスル読めますっ。構えていたのがバカみたい。
アメリカの連ドラとかを見るように大いにリラックスして源氏を謳歌しましたよ〜〜。
あまりに面白くて6巻までイッキですよ、イッキ。
まず男たちがノンキに女の良し悪しを言いたい放題ダラダラしゃべる光景(『雨後の品定め』というやつ)でつかまれました。
タランティーノがよくやる映画のツカみ=「ザ・無駄話の面白さ」じゃん、これ、と。
なにこれ、ぜんぜん「現在(いま)」じゃん、と。
そうなのかーー、源氏ってディテールというか人々の心のかすかな動きを味わい尽くすものなのだな、せつなくなったり、さびしくなったり、要領の悪い奴にイライラしたり、ザマアミロと思ったり……。
マンガやダイジェスト版でスジを知っても、この物語の真の面白さはとうてい味わえないことが、よーーくわかりました。
この2巻では美しかった光源氏が中年になってきて気持ち悪さも出てきます。
魅力あふれるキャラクターも1巻以上にバンバン出てきます。
源氏物語中、一番、キャラが立ってる(と私が思う)かわいすぎるおっさん、明石の入道という方も出てきます。
有名すぎるブス美人、末摘花のどんくささはここでも大いに発揮されます。その叔母の末摘花へのバカにし加減に自分の悪しき心を覗かれた気がしました。
そこここに「リアル」があります。
それぞれの言い分や行動にいちいち大共感です。
名言もたくさん。
大塚ひかりの読みやすさの秘密はなんなのか。
言葉づかいは現代風で軽やかであるが、奇をてらうとかセンセーショナルに書こうということとは対極にあるように見受けられます。
紫式部の心に寄り添って自然にあるがままに、かつ誠実に繊細に書いてると思います。
他の大塚本でもわかりましたが、大塚ひかりは式部のように、色々なタイプの女の底の気持ちをよくわかってる。
そしてやはり、ユーモア・センスとシビアな観察眼。そして子供の時から異常な古典オタクだったという鍛え上げられた知識の地盤。
こういったことがあるから、こちらの心にぐいぐい入ってくるのではないでしょうか。
もうすでに通しで4回読んでます。軽く、つまんで好きなエピソードを読み返すときもあります。
こんな興味なかったものを何度も読むなんて夢にも思わなかった。
ご本人のブログやツイッターを見させていただくと、とてつもない労苦の割にはぜんぜん報われてないようです。って大きなお世話ですけど……。
でもぜひもっと多くの人にちゃんと読んでもらって、この面白さを味わってほしいなぁ。と本当に切に思います……。
2009年1月6日に日本でレビュー済み
須磨に蟄居したり、暴風雨に襲われたり、明石の入道の娘に恋焦がれ、アレをしたり、ナニをしたり、藤壺との不義の子が冷泉帝として即位したりして、光源氏クンはいろいろと忙しいが、女性関係だけは、相変わらずの筋金入りのまめさで達者さは変わらない。
第二巻は、なかなかに起承転結の効いた面白い巻で、小説としての面白さに満ち満ち溢れている。
大塚センセの「ひかりナビ」もますます絶好調で、第一巻に次いでこの古典の面白さ、エロさ加減を充分に引き出しています。「澪標」の上品な下ネタの解説、「月が出入りし・・・・」云々の解説、「月」が何を意味し、何が出入するのやら、「薄雲」の「"露"のおりた庭・・・・・」って一体ナニ?
第二巻は、なかなかに起承転結の効いた面白い巻で、小説としての面白さに満ち満ち溢れている。
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2018年8月3日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
与謝野晶子、円地文子、林望の現代語訳を読んできましたが、思い切ってかみ砕いた大塚訳には驚きました。ひかりナビも少々うるさいぐらいていねいに解説してくれます。