昔NHKのラジオ文芸館で「時間線下り列車」を聴き、それ以来ずっと原作を読んでみたいと思っていました。
経木のフタを外し、小さな木のさじで食べる油脂分が非常に少なくて、どちらかというとシャーベットのような味のアイスクリーム。
車窓から見える小屋の壁面に取り付けられた「金鳥」の広告のブリキ板。
そして列車内には、木製のひじかけ、文字通りの網棚、油を塗りこんだような床。
読者の頭の片隅にあったような記憶が次々と眼前に現れてきます。しかしそれは奇異というよりも、なつかしい心地よさを伴った変化です。むしろ疲れた心身がそれを望んでいたかのようでもあります。
日常に疲れた時に一読すると、ほっと一息つくことができる、名作です。
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