収録作品
(序)澁澤龍彦(青銅社版『日本幻想文学大全 幻想のラビリンス』より再録)
紫式部『源氏物語』より「夕顔」円地文子訳
『今昔物語』より「水の精が人の顔を撫でる話」「鬼のため妻を吸い殺される話」「馬に化身させられた僧の話」「大きな死人が浜にあがる話」福永武彦訳
上田秋成『雨月物語』より「白峯」石川淳訳
小泉八雲『怪談』より「耳無芳一のはなし」平井呈一訳
夏目漱石「夢十夜」
幸田露伴「観画談」
泉鏡花「高野聖」
柳田國男『遠野物語』より「二二」「三三」「五五」「七七」「九九」
折口信夫「死者の書」
内田百閨「冥途」
佐藤春夫「女誡扇綺譚」
江戸川乱歩「押絵と旅する男」
葉山嘉樹「セメント樽の中の手紙」
稲垣足穂『一千一秒物語』より「月から出た人」「A MEMORY」「黒猫のしっぽを切った話」「ポケットの中の月」「月光密造者」「A TWILIGHT EPISODE」「コーモリの家」「A MOONSHINE」
久生十蘭「予言」
坂口安吾「桜の森の満開の下」
日影丈吉「月夜蟹」
三島由紀夫「仲間」
澁澤龍彦『唐草物語』より「火山に死す」
都筑道夫「風見鶏」
小松左京「牛の首」
佐藤春夫は「文学の極意は怪談である」と述べたそうだが(瀬戸川猛資『夜明けの睡魔』からの孫引き)その言葉の通り、この一冊に収録された作品、作家のラインナップを見れば地下水脈の如く流れる、日本文学における幻想・怪奇文学の重要性が判る。(プロレタリア文学の中にも葉山嘉樹「セメント樽の中の手紙」のような哀切な幻想譚がある・・・)
平安期の古典から足穂や乱歩の名作、三島の風変わりな吸血鬼小説、さらには怪奇小説にも手腕を発揮した小松左京の傑作まで幅広く収録。
個人的には十蘭作品の中で屈指の短編であり、結末の余韻が一際不気味な「予言」、都筑道夫のラストの意外な着地が見事な名品「風見鶏」がお勧め。
編者の東雅夫氏の長年の素晴らしい幻想文学紹介の業績においても集大成的な内容だと思う。第二巻の刊行も楽しみだ。
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日本幻想文学大全 I 幻妖の水脈 (ちくま文庫 ひ 21-5 日本幻想文学大全) 文庫 – 2013/9/10
東 雅夫
(編集)
『源氏物語』から小泉八雲、泉鏡花、江戸川乱歩、都筑道夫……。妖しさ蠢く日本幻想文学、ボリューム満点のオールタイムベスト。
- 本の長さ606ページ
- 言語日本語
- 出版社筑摩書房
- 発売日2013/9/10
- 寸法10.8 x 2.4 x 14.8 cm
- ISBN-10448043111X
- ISBN-13978-4480431110
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登録情報
- 出版社 : 筑摩書房 (2013/9/10)
- 発売日 : 2013/9/10
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 606ページ
- ISBN-10 : 448043111X
- ISBN-13 : 978-4480431110
- 寸法 : 10.8 x 2.4 x 14.8 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 661,860位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
著者について
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東 雅夫(ひがし・まさお)
1958年、神奈川県横須賀市生まれ。アンソロジスト、文芸評論家、怪談専門誌「幽」編集長。
早稲田大学文学部卒。1982年に研究批評誌「幻想文学」を創刊、2003年の終刊まで21年間にわたり編集長を務めた。
近年は各種アンソロジーの企画編纂や、幻想文学・ホラーを中心とする批評、怪談研究などの分野で著述・講演活動を展開中。
評論家として「ホラー・ジャパネスク」や「怪談文芸」「800字小説ムーヴメント」などを提唱。NHKテレビ番組「妖しき文豪怪談」シリーズ等の企画監修や、「幽」怪談文学賞、ビーケーワン怪談大賞、みちのく怪談コンテストなど各種文学賞の選考委員も務める。
2011年、著書『遠野物語と怪談の時代』で日本推理作家協会賞を受賞。
著書に『なぜ怪談は百年ごとに流行るのか』『百物語の怪談史』『江戸東京 怪談文学散歩』『怪談文芸ハンドブック』ほか、編纂書に『文豪怪談傑作選』『伝奇ノ匣』『てのひら怪談』の各シリーズほか多数がある。
著者公式サイト「幻妖ブックブログ」http://blog.bk1.jp/genyo/
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2013年11月9日に日本でレビュー済み
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「源氏物語(「夕顔」の段)」から小松左京のSFまでの作品を収めたの日本幻想文学の系譜を綴ったアンソロジー。知らない作家(作家未詳の場合は作品)が一つもないという程の堂々とした選択。ただし、読後感は人によってマチマチだろう。私には新発見がなかった。
定評のある折口信夫「死者の書」、泉鏡花「高野聖」も今読んで見ると、それ程面白しくもないし、現代に影響を与えているとも思えない。一方、既読でありながら、漱石「夢十夜」、乱歩「押絵と旅する男」、上田秋成「雨月物語(「白峯」の段)」、澁澤達彦「唐草物語(「火山に死す(幻想文学というよりは澁澤とプリニウスとの時を越えた友情物語と捉えるべきだろう)」)」が読み応えがあり、作品の充実度と共に現代への影響力を感じた。特に、「夢十夜」は京極流怪談等に相当の影響を与えているのではないか。
「日本幻想文学大全」と銘打ってある以上、致し方ないのだが、総花的印象は免れない。日本幻想文学を概観した上で、自分好みの作家を発見したい方向けのアンソロジーと言うべきか。
定評のある折口信夫「死者の書」、泉鏡花「高野聖」も今読んで見ると、それ程面白しくもないし、現代に影響を与えているとも思えない。一方、既読でありながら、漱石「夢十夜」、乱歩「押絵と旅する男」、上田秋成「雨月物語(「白峯」の段)」、澁澤達彦「唐草物語(「火山に死す(幻想文学というよりは澁澤とプリニウスとの時を越えた友情物語と捉えるべきだろう)」)」が読み応えがあり、作品の充実度と共に現代への影響力を感じた。特に、「夢十夜」は京極流怪談等に相当の影響を与えているのではないか。
「日本幻想文学大全」と銘打ってある以上、致し方ないのだが、総花的印象は免れない。日本幻想文学を概観した上で、自分好みの作家を発見したい方向けのアンソロジーと言うべきか。
2013年9月14日に日本でレビュー済み
間断なく供給される、東氏の重厚なアンソロジーの新刊である。収録作はまさに綺羅星のごとく。ただし、このアンソロジーを愉しむには前提が、存在する。すなわち。過去、大先達たる澁澤氏や紀田氏その他が編んだアンソロジー群等を知らず、所有しておらず、作品の大部分を未読だという大前提が。………………おそらくは意図的なのであろうが、本アンソロジーは前述の、過去に発刊された数々の精華輯。それらの折衷のような構成となっている。疑似合本。疑似再編集本と言いかえた方がいいかもしれない。すなわち、編者は「新しき幻想文学ファン」のために、本書を上梓されたのであろう。ただし。その新しき層の方も、実話怪談的「恐怖」や「都市伝説」等、昨今のコンビニ本等で氾濫しているエッセンスを本書に求めれば、求めて見いだせず、求め訴えて、かえって餓え。前半あたりで挫折するやもしれない。本書はあくまでも、本邦の「幻想文学」を体系的に紹介し始めている。文学は時に難解。時に冗長。あるいは哲学的でさえある。古人から現代人まで、このテーマにいかに挑み、航跡を残してきたか――これが無難な解釈であろうか。それぞれの作品は、すでに評価の定まった綺羅星。けれども本書がとこしえの定本になるかどうか――今後の展開を粛々として待ちたい。
追記。…本日、本シリーズ2巻めにあたる「幻視の系譜」を拝見した。率直に申しあげれば、1巻と同じ印象、同じ感慨しか抱きえない。断っておくが、所収作品のそれぞれの価値をおとしめるつもりは、毛頭ない。あまりにもスタンダードな選ゆえ、疑問符をもてあましているだけである。もちろん、良質な書なるものは、少数派ではなく、広く万人を対象にしたものであろう。その意味ではまさしく第2巻も及第点をつけ得よう。すでにして所収作に接している者は幸いであるし、このシリーズで初めて接する者は、なお幸い――そのような見方をこそ、するべきなのかもしれない。
追記。…本日、本シリーズ2巻めにあたる「幻視の系譜」を拝見した。率直に申しあげれば、1巻と同じ印象、同じ感慨しか抱きえない。断っておくが、所収作品のそれぞれの価値をおとしめるつもりは、毛頭ない。あまりにもスタンダードな選ゆえ、疑問符をもてあましているだけである。もちろん、良質な書なるものは、少数派ではなく、広く万人を対象にしたものであろう。その意味ではまさしく第2巻も及第点をつけ得よう。すでにして所収作に接している者は幸いであるし、このシリーズで初めて接する者は、なお幸い――そのような見方をこそ、するべきなのかもしれない。