平易な文章で民主主義の成立過程や民主主義という政体の性質を明らかにしている。
ポリス滅亡後の古代世界では、プラトンの『国家』やアリストテレスの『政治学』にも記されているように、「民主制」という政体があまり良いものとは受け取られていなかったことが説明されている。その理由として、大衆迎合的な政治指導者が活躍し、大衆の意向がそのまま最高の決定になるようでは合理的な政策判断が望めないこと、そして、人々が直に政治に影響力を及ぼすことのできる「直接民主制」という形は規模の小さい都市国家しか不可能であるという「スペースの問題」があること、の2つが挙げられている。こうして考えると、古代より民主制の弊害は指摘されており、この2つの問題を改善する民主制の仕組みがアメリカ合衆国の共和制などという形で近代以降取られていったことがわかる。
個人的に最も興味深いと思ったのは、第3章の「「みなし」の積み重ねで民主政治は動く」という章である。我々が普段所与のものとしてとらえている民主主義という仕組みが、選挙で選ばれた人が人民を代表していると「みなす」というきわめてあいまいな仮定のもとに成り立っているという視点は新鮮だった。このことは、私は人民の意思を代表していると「みなされている」から自身の政策には全て正当性があると主張する「人民のための独裁者」の出現もあり得ることを示唆している。反対に、マディソンらが『フェデラリスト』で主張したように、代表者を「みなす」ことは、人民よりも賢明な判断力をもった優秀な代表者に政治を任すことができるというプラスの効果もある。
「みなす」ことが民主政治の本質である以上、選挙時はもちろん選挙の後においても、候補者が人民の意思表示を実現するのかどうかチェックすることが必要不可欠であり、それなりのコストと人材を用意して、環境を整備することが、「みなし」の質を向上させるために重要であるという筆者の主張には大いに賛成する。
プライム無料体験をお試しいただけます
プライム無料体験で、この注文から無料配送特典をご利用いただけます。
非会員 | プライム会員 | |
---|---|---|
通常配送 | ¥410 - ¥450* | 無料 |
お急ぎ便 | ¥510 - ¥550 | |
お届け日時指定便 | ¥510 - ¥650 |
*Amazon.co.jp発送商品の注文額 ¥3,500以上は非会員も無料
無料体験はいつでもキャンセルできます。30日のプライム無料体験をぜひお試しください。
¥858¥858 税込
発送元: Amazon.co.jp 販売者: Amazon.co.jp
¥858¥858 税込
発送元: Amazon.co.jp
販売者: Amazon.co.jp
¥109¥109 税込
配送料 ¥240 6月4日-6日にお届け
発送元: バリューブックス 【防水梱包で、丁寧に発送します】 販売者: バリューブックス 【防水梱包で、丁寧に発送します】
¥109¥109 税込
配送料 ¥240 6月4日-6日にお届け
発送元: バリューブックス 【防水梱包で、丁寧に発送します】
販売者: バリューブックス 【防水梱包で、丁寧に発送します】
無料のKindleアプリをダウンロードして、スマートフォン、タブレット、またはコンピューターで今すぐKindle本を読むことができます。Kindleデバイスは必要ありません。
ウェブ版Kindleなら、お使いのブラウザですぐにお読みいただけます。
携帯電話のカメラを使用する - 以下のコードをスキャンし、Kindleアプリをダウンロードしてください。
民主主義という不思議な仕組み (ちくまプリマー新書) 新書 – 2007/8/1
佐々木 毅
(著)
{"desktop_buybox_group_1":[{"displayPrice":"¥858","priceAmount":858.00,"currencySymbol":"¥","integerValue":"858","decimalSeparator":null,"fractionalValue":null,"symbolPosition":"left","hasSpace":false,"showFractionalPartIfEmpty":true,"offerListingId":"NItNq0WHaxfzv0dxejtTWCzkmAQCt0AGMs%2ByS1nexMO9LBZh0YezPPMbva7qqdf2Ow0LXb6lm8neLwYyM0Rdc8LvNIWwT8kL91MVfjMOv6lUJIVRYegElCLkCXmffHgl","locale":"ja-JP","buyingOptionType":"NEW","aapiBuyingOptionIndex":0}, {"displayPrice":"¥109","priceAmount":109.00,"currencySymbol":"¥","integerValue":"109","decimalSeparator":null,"fractionalValue":null,"symbolPosition":"left","hasSpace":false,"showFractionalPartIfEmpty":true,"offerListingId":"NItNq0WHaxfzv0dxejtTWCzkmAQCt0AGEU1vrmwlmlqx07zhPFqPudIIro45VQBFEj91Ixcjf4DNG9DBU%2BWSgwDCrbxvK8oYQi7slxHxCeOXb0L72roF2KZDgCVmtsH3ppsfTwSNotx00vAo%2B%2FbrMRicjtuoRBqgvrUUa8hdPlQryHWjizFsuw%3D%3D","locale":"ja-JP","buyingOptionType":"USED","aapiBuyingOptionIndex":1}]}
購入オプションとあわせ買い
「あたりまえ」を疑ってみる
若い人のための政治入門
誰もがあたりまえだと思っている民主主義。それは、本当にいいものなのだろうか?この制度の成立過程を振り返りながら、私たちと政治との関係について考える。若い人のための政治入門。
【目次】
第1章 民主主義のルーツを言葉から考える
第2章 代表制を伴った民主政治の誕生
第3章 「みなし」の積み重ねの上で民主政治は動く
第4章 「世論の支配」―その実像と虚像
第5章 政治とどう対面するか―参加と不服従
第6章 これからの政治の課題とは
若い人のための政治入門
誰もがあたりまえだと思っている民主主義。それは、本当にいいものなのだろうか?この制度の成立過程を振り返りながら、私たちと政治との関係について考える。若い人のための政治入門。
【目次】
第1章 民主主義のルーツを言葉から考える
第2章 代表制を伴った民主政治の誕生
第3章 「みなし」の積み重ねの上で民主政治は動く
第4章 「世論の支配」―その実像と虚像
第5章 政治とどう対面するか―参加と不服従
第6章 これからの政治の課題とは
- ISBN-104480687653
- ISBN-13978-4480687654
- 出版社筑摩書房
- 発売日2007/8/1
- 言語日本語
- 本の長さ174ページ
よく一緒に購入されている商品
対象商品: 民主主義という不思議な仕組み (ちくまプリマー新書)
¥858¥858
最短で6月2日 日曜日のお届け予定です
残り8点(入荷予定あり)
総額:
当社の価格を見るには、これら商品をカートに追加してください。
ポイントの合計:
pt
もう一度お試しください
追加されました
一緒に購入する商品を選択してください。
この商品をチェックした人はこんな商品もチェックしています
ページ 1 以下のうち 1 最初から観るページ 1 以下のうち 1
商品の説明
出版社からのコメント
誰もがあたりまえだと思っている民主主義。それは、本当にいいものなのだろうか? この制度の成立過程を振り返りながら、私たちと政治との関係について考える。
著者について
佐々木毅 1942年秋田県生まれ。東京大学法学部卒業。東京大学教授、東京大学総長を経て、学習院大学法学部教授。博士(法学)。日本における政治学・政治思想史研究の第一人者であり、数々の要職を歴任(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
登録情報
- 出版社 : 筑摩書房 (2007/8/1)
- 発売日 : 2007/8/1
- 言語 : 日本語
- 新書 : 174ページ
- ISBN-10 : 4480687653
- ISBN-13 : 978-4480687654
- Amazon 売れ筋ランキング: - 201,910位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
著者について
著者をフォローして、新作のアップデートや改善されたおすすめを入手してください。
著者の本をもっと発見したり、よく似た著者を見つけたり、著者のブログを読んだりしましょう
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2017年9月17日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2022年3月7日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
プリマ―新書、という部分を見ずに題だけ見て買ってしまいました…中高生(気の利いた小学生?)向けだったんですね…公民の授業(昔の人間なので…)プラスアルファ、という感じです。逆に少し政治に興味のあるお子さんには良いかもしれません。
2023年10月9日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
古代ポリスの民主制から、ヨーロッパ・アメリカでの代表民主制の誕生と「代表」にまつわる諸問題、世論の支配からエリート主義へ、参加と不服従、これからの政治の課題まで、高校生にも分かる言葉で語った「民主政治思想史」と言うべきか。
難しい言葉は使っていないけれど、内容は高度で、挿絵はあるもののベタに文章で(図表や資料はなく)読みやすいとは言いがたい。(私が)歴史に沿った叙述スタイルを苦手とするだけかもしれないが。
政治に向き合うための姿勢についての以下の3つのメッセージが心に響いた。
「本当に必要なのは、地道に一歩一歩何をどう変えていくかという地上戦なのです。……ここでは『あれか、これか』式の空中戦ではなく、『より良く』が合言葉になります。(p.12)」
「政治の場合にも最悪の事態を避けることと最善の状態を実現することとを、はっきり分けて考える必要があります。(p.169)」
「政治は感情で動くように見えますが、最後は『頭脳』でする活動であることを決して忘れてはなりません。(p.171)」
難しい言葉は使っていないけれど、内容は高度で、挿絵はあるもののベタに文章で(図表や資料はなく)読みやすいとは言いがたい。(私が)歴史に沿った叙述スタイルを苦手とするだけかもしれないが。
政治に向き合うための姿勢についての以下の3つのメッセージが心に響いた。
「本当に必要なのは、地道に一歩一歩何をどう変えていくかという地上戦なのです。……ここでは『あれか、これか』式の空中戦ではなく、『より良く』が合言葉になります。(p.12)」
「政治の場合にも最悪の事態を避けることと最善の状態を実現することとを、はっきり分けて考える必要があります。(p.169)」
「政治は感情で動くように見えますが、最後は『頭脳』でする活動であることを決して忘れてはなりません。(p.171)」
2021年4月29日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
今年の正月前後から民主主義を論じた本を何冊か読んで、ようやく最近ベンサム(ベンタム)が「邪悪な利益」(今で言えば「利権」や「既得権益」です)について論じていたことを知りましたが、この本は「「狭い」業界利益」(p.84-5)の語が少し出てくるところは評価しても良いと思いますが、同然ながら??「邪悪な利益」には一切言及がされていないし、J.S.ミルの名前はちょっとだけ出てきます(p.92-3)が「邪悪な利益」には一切関係しない話なので星2つにします。
ただ改めて読んでみると、マグナ・カルタという明確な「契約」が、「社会契約」に基づく「法の支配」という得体の知れないものに変わっていった経緯の説明はいくらかタメになりました。
ただ改めて読んでみると、マグナ・カルタという明確な「契約」が、「社会契約」に基づく「法の支配」という得体の知れないものに変わっていった経緯の説明はいくらかタメになりました。
2016年1月7日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
読みやすい文、わかりやすい解説。
民主主義って何?と聞かれて、答えられない人は、是非ご一読されることをオススメしたい。
福沢諭吉の本についても言及されているが、彼が懸念した民主主義の根付きの状況が、
明治の世から今まで変わっていないことに、政府や官僚は自分たちが政治をしやすいように、
意図的に民主主義を教えていないのだということにも気づく。
民主主義って何?と聞かれて、答えられない人は、是非ご一読されることをオススメしたい。
福沢諭吉の本についても言及されているが、彼が懸念した民主主義の根付きの状況が、
明治の世から今まで変わっていないことに、政府や官僚は自分たちが政治をしやすいように、
意図的に民主主義を教えていないのだということにも気づく。
2020年3月19日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
受験指導で購入するも、なかなかに分かりづらい。理念としては理解するものの、実際の政治運用や現実世界の背景を説明するものでは無い。国際的な政治の力学や世界の経済戦略など、リアルワールドを反映させないと厳しいと考える。
2018年10月7日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
民主主義というシステムの根本から現代における制度と民主主義のねじれをわかりやすく説明しています。
2013年5月7日に日本でレビュー済み
古今東西の政治の仕組みとその歴史が凝縮された一冊である。古代ギリシアの政治形態から話は始まる。途方もない大昔かと思ってしまうが、政治はその時代から脈絡と続いており、いかなる理由でその時代から政治の転換が行われて、今に至るまでの変遷をたどってきたのかを非常にドラマチックに表現している。
中盤からは、現行の民主主義の穴や、民衆を騙したり、代表者が得をするようなトリックの仕組みについても話が展開され、政治の奥深さとともに投票責任の重み、というものを考えさせられる。
基本的な内容であるとともに、挿絵などもはさみわかりやすい表現でまとめられているので、政治にあまり興味はなくても、知っておきたい、理解しておきたいという人にはうってつけである。
中盤からは、現行の民主主義の穴や、民衆を騙したり、代表者が得をするようなトリックの仕組みについても話が展開され、政治の奥深さとともに投票責任の重み、というものを考えさせられる。
基本的な内容であるとともに、挿絵などもはさみわかりやすい表現でまとめられているので、政治にあまり興味はなくても、知っておきたい、理解しておきたいという人にはうってつけである。