単行本未収録エッセイ集成全五冊の二冊目。山田風太郎の旧制中学のころの「暗愁の時代」や、太平洋戦争についてのエッセイを収録。
「昭和二十年八月十五日。私はいまでも、あらゆることの物差しの原点にこの日をおいている。たとえば、昭和十年生まれでことし五十歳の人がいる。それを現在の私の年齢とくらべないで、昭和二十年にひき戻し、それじゃこのオジンはあのとき十のガキであったか、ははん、と心中にうなずくのである。いわんや昭和二十一年以降に生まれた人類など、私にとっては精虫以前の煙のような存在にすぎない。」
……すごいな。精虫以前の煙にとっては、あの「全部精神異常あり」（「西部戦線異状なし」のもじりです）の時代を知るには、この戦中派列外老人の言を聴くに如かず。「わだつみの声」も真実だが、それがすべてではないということが分かります。
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