小柄な彼女の身体からどうやってここまでの力が出てくるのか。アメリカンフットボールの選手がボール持ったまま前進し、相手ディフェンダーに正面からぶつかられても、背中をくるりと回してステップを踏みながら前進し続ける光景が思い浮かぶ。逆境だとかハンディキャップだとかいう言葉は出てこない。どんどん新しいことに取り組む姿、前を向いて進み続ける姿の美しさ、コミカルな笑いにリエゾンさせてしまう才能、現在に至る松森果林さんの半生を読むことで、今の彼女の生き方・あり方を彷彿とさせる、確かめることができる「原典」のようなエッセイ。
自らのおかれた環境を真摯に見つめ、その環境を生かしきる才能。もちろんその過程にはさまざまな苦悩があったに違いないのに、それを今は笑い話のように変換できるしたたかさ。今は高校生になっている空くんの幼児のころの言動も、興味深くそして愛情あふれる筆致におもわず頬が緩む。同じ環境を持つ読者には最強の指南書であり、そうでない健聴の読者にとっても示唆に富むエピソード群。そして最終章の、抒情的で文学的な格調さえある美しい文章。さらにはあとがきで、14年前の著書と現在のギャップを埋める活動の実績も理解できる。
何度かお目にかかっている者だけに、改めて松森果林さんのすごさを確認できました!
無料のKindleアプリをダウンロードして、スマートフォン、タブレット、またはコンピューターで今すぐKindle本を読むことができます。Kindleデバイスは必要ありません。
ウェブ版Kindleなら、お使いのブラウザですぐにお読みいただけます。
携帯電話のカメラを使用する - 以下のコードをスキャンし、Kindleアプリをダウンロードしてください。
星の音が聴こえますか 単行本(ソフトカバー) – 2003/10/12
松森 果林
(著)
- 本の長さ192ページ
- 言語日本語
- 出版社筑摩書店
- 発売日2003/10/12
- ISBN-104480816283
- ISBN-13978-4480816283
商品の説明
商品説明
10代のころに聴力を失った著者が、その生い立ちから、就職、結婚、出産、子育ての日々をつづったエッセイ集。1975年生まれの著者は、東京ディズニーランドを経営する企業での勤務経験を経て、大学の非常勤講師、ベンチャー企業の商品企画顧問をつとめるなど多方面で活躍。聴覚障害者の立場から、社会に対してさまざまな提言を発信している。本書もまた、軽妙な文章ながら、本当の意味での人と人とのつながりとは何かを考えさせられる内容となっている。
著者の耳は、小学校4年生のころから徐々に聴力をなくしていったという。聞こえる「ふり」をしながらの小学校生活、面接者の質問が聞き取れず苦い思いをした高校受験。自分が「障害者」と呼ばれることへの戸惑い。序盤では、他人と違うことに対して不安と恐怖を感じていた少女時代の記憶が赤裸々に語られる。そんな著者の転機となったのは、聴覚障害者コースを設置する筑波技術短期大学への進学だった。著者はそこで、聴力だけに頼らない、多様なコミュニケーションの方法があることに気づくのである。
その後を語る著者の筆致は一転して、はつらつとして明るい。なかでも、手話を通して繰り広げられる幼い我が子とのふれあいは、じつに微笑ましい。また、誰もが使用可能な「ユニバーサルデザイン」の思想や大切さが説かれている点も見逃せない。バリアフリーの意識の高まりや、IT(情報技術)分野の劇的な進歩などにより、障害者が多方面で活躍することのできるようになってきた現代社会。しかし一方で、障害者と健常者との間には、多くの隔たりが存在するのも現実だ。「聞こえない世界の素晴らしさ」も知っていると力強く断言する著者からの問いかけは、障害を乗り越えて、読み手の心までしっかりと響いてくる。(中島正敏)
内容(「MARC」データベースより)
音のある世界から音のない世界へ。小学校から高校時代にかけて聴力を失った女性が、音のない世界の奥深さを知り、コミュニケーションを豊かにしていった体験を綴った初エッセイ。
登録情報
- 出版社 : 筑摩書店 (2003/10/12)
- 発売日 : 2003/10/12
- 言語 : 日本語
- 単行本(ソフトカバー) : 192ページ
- ISBN-10 : 4480816283
- ISBN-13 : 978-4480816283
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,105,777位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
著者について
著者をフォローして、新作のアップデートや改善されたおすすめを入手してください。
著者の本をもっと発見したり、よく似た著者を見つけたり、著者のブログを読んだりしましょう
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2017年8月30日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2016年8月27日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
耳の聞こえる私たちが普通なんじゃない。ってことを気づかせてくれる1冊でした。
果林さんの表紙の笑顔に隠された沢山の経験を皆さんに知ってほしいと思いました。
果林さんの表紙の笑顔に隠された沢山の経験を皆さんに知ってほしいと思いました。
2008年8月3日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
思春期に聴力を失った著者は、音のある世界とない世界、その二つを知っています。学生時代は美術を学び、出産後はネットを駆使して香を使ったユニバーサルデザインの開発に携わっているといいます。必要以上に感情的になることのない、読みやすく明るい文章は、そんな筆者ならではでしょう。
なにかというとお酒がらみの話が出てきますし(笑)、お産関係のちょっと恥ずかしい話や、赤ん坊の泣き声が聞こえない母親を周辺が(最期は赤ん坊自身が)サポートした様子など、地に足の着いた体験談が多く、大上段に振りかぶった演説より説得力があります。中途失聴の苦労や苦悩は相当だったようですが、前向きに生きて行くきっかけになった先生や同級生、会社の同僚の一言が効きます(そんな一人と結婚しちゃうわけですし…)。
それにしても香によるユニバーサルデザインとは巧妙ですね。嗅覚の研究はものすごい勢いで進んでいますし、特殊な膜とFETを組み合わせたセンサとコンピュータを組み合わせて機械に嗅覚を持たせようという計画もあります。
なにかというとお酒がらみの話が出てきますし(笑)、お産関係のちょっと恥ずかしい話や、赤ん坊の泣き声が聞こえない母親を周辺が(最期は赤ん坊自身が)サポートした様子など、地に足の着いた体験談が多く、大上段に振りかぶった演説より説得力があります。中途失聴の苦労や苦悩は相当だったようですが、前向きに生きて行くきっかけになった先生や同級生、会社の同僚の一言が効きます(そんな一人と結婚しちゃうわけですし…)。
それにしても香によるユニバーサルデザインとは巧妙ですね。嗅覚の研究はものすごい勢いで進んでいますし、特殊な膜とFETを組み合わせたセンサとコンピュータを組み合わせて機械に嗅覚を持たせようという計画もあります。
2003年10月23日に日本でレビュー済み
この本はエッセイという次元を超えている。プロローグから最終章まで、個々のエッセイに起承転結があり、改行一つ一つ良く考えられていて、リズムがあってシリアスだったり、面白かったり、唐突でない流れがあって変化があって、全体が、交響曲のようです。
そしてこの本は、著者から贈られたみんなへのプレゼントだと感じました。
周りの人とのコミュニケーションを通じて周りの人々がみんな浮かび上がってきます。幼少期の友だち、高校の親友、大学の仲間、、、、、両親、夫、息子の空くん。空くんが可愛い。いろいろな話の後、月夜野の家の階段で並んで月を見る母と息子。映画のように目に浮かんできてしまう。空くんに最高の贈り物になるでしょう。
最後の章は、実は少し意外な気もしました。自分!が想像するとこれから目指すもの、みたいなまとめになりそうなのに、書かれていたのは、改めて「聞く」ということ」。
著者、果林さんの中にある、宝物、音。この本は、著者自身への贈り物でもあったんだと思いました。
そしてこの本は、著者から贈られたみんなへのプレゼントだと感じました。
周りの人とのコミュニケーションを通じて周りの人々がみんな浮かび上がってきます。幼少期の友だち、高校の親友、大学の仲間、、、、、両親、夫、息子の空くん。空くんが可愛い。いろいろな話の後、月夜野の家の階段で並んで月を見る母と息子。映画のように目に浮かんできてしまう。空くんに最高の贈り物になるでしょう。
最後の章は、実は少し意外な気もしました。自分!が想像するとこれから目指すもの、みたいなまとめになりそうなのに、書かれていたのは、改めて「聞く」ということ」。
著者、果林さんの中にある、宝物、音。この本は、著者自身への贈り物でもあったんだと思いました。