多分20世紀と思われる時代設定の中、複数の要素が絡み合いながら時に縺れ、時に捩じり合う・・・というストーリーで進行する小説。
ある筋ではローレンという人妻が自分の夫や子供のことに悩みながら、ミシェルという青年と出会い関係を深めていくという展開になっていてこの辺は普通のフィクション風に読める(砂嵐が襲ってくるところは普通じゃないけど)。
別の筋では捨て子がやがてアドルフという映画監督になって「マラーの死」という映画を製作するが難航し、途中放棄され、それから何年も経ってからグラハムという青年が訪ねてきて映画を完成させて上映したいと絡んでくる展開の流れになっていてこの辺は失われた映画を巡るサスペンス風に読める(厳寒で放火が頻発するところは異常に見えますが)。
ここで著者エリクソンがこの小説で何を言いたかったか考察してみると、失われた愛は復活するのか?というテーマを追及したかったのでは、と思いました。ローレンと夫やミシェルや死んだ息子への愛、アドルフの自分の未完になっている映画への情熱(愛)、グラハムの失われた映画に対する愛等など・・・。それを異常気象の中で描くことで不条理な状況で愛は貫けるのかを描きたかったように思いました。以上はかなり牽強付会な解釈なので信用しないでください。多分殆どの人が反撥すると思うので。
というような解釈を抜きにして詩的美しさに満ちた不思議な小説として楽しめるとも思いましたが、人によっては訳が判らなくて怒る人もいるかと思うのであまり奨める気にはなりませんですが。原文は判りませんが、丁寧な翻訳も素晴らしいと思いました。
因みに作中の失われた映画のモデルになってる映画はアベル・ガンスの「ナポレオン」らしいです。こちらも機会があったら観てみたいですね。
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彷徨う日々 単行本 – 1997/4/1
- 本の長さ278ページ
- 言語日本語
- 出版社筑摩書房
- 発売日1997/4/1
- ISBN-104480831738
- ISBN-13978-4480831736
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商品の説明
内容(「MARC」データベースより)
1970年代ロサンジェルス。孤独な人妻ローレンと、記憶をなくした男ミシェルは運命的に出会い、激しく愛し合う。一方1900年パリでは双子の兄弟が捨てられ、娼婦に拾われたひとりはやがて映画をつくり始めるが…。
登録情報
- 出版社 : 筑摩書房 (1997/4/1)
- 発売日 : 1997/4/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 278ページ
- ISBN-10 : 4480831738
- ISBN-13 : 978-4480831736
- Amazon 売れ筋ランキング: - 722,698位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2010年3月13日に日本でレビュー済み
すでに3人の方が満点をつけていますが、同じく一票。
エリクソンの中ではこれがいちばん好きです。
エリクソン特有の世界の中で生きる男と女。
最近の作品は個人的にもはやついていけなくなっていますが、
この作品は強く惹きつけられるものがあり、
意識を完全に持っていかれて読んでいた記憶があります。
結局のところすべては読み解けていないのですが、
それでも圧倒的な読後感に包まれました。
ほかのエリクソン作品を読んで敬遠している方も、この処女作ならいけるのではないかと。
エリクソンの中ではこれがいちばん好きです。
エリクソン特有の世界の中で生きる男と女。
最近の作品は個人的にもはやついていけなくなっていますが、
この作品は強く惹きつけられるものがあり、
意識を完全に持っていかれて読んでいた記憶があります。
結局のところすべては読み解けていないのですが、
それでも圧倒的な読後感に包まれました。
ほかのエリクソン作品を読んで敬遠している方も、この処女作ならいけるのではないかと。
2009年8月2日に日本でレビュー済み
なぜかこれだけ、読んでなかったエリクソンの処女作。よくエリクソンを読んでいた頃にはまだ翻訳されていなかったのかも。
それにしてもエリクソンの文章は美しい。マジカルなストーリーはエリクソンの特徴だけど、それ以上に一文一文の美しさに圧倒される。翻訳もいいのだろうが、原文はどうなんだろう?まだエリクソンは原書を読んだことがないが今度チャレンジしてみよう。
ストーリーは祖父と孫のそれぞれの悲恋を時空を超えて結び付ける。切なさに胸を打たれる。
それにしてもエリクソンの文章は美しい。マジカルなストーリーはエリクソンの特徴だけど、それ以上に一文一文の美しさに圧倒される。翻訳もいいのだろうが、原文はどうなんだろう?まだエリクソンは原書を読んだことがないが今度チャレンジしてみよう。
ストーリーは祖父と孫のそれぞれの悲恋を時空を超えて結び付ける。切なさに胸を打たれる。
2010年1月8日に日本でレビュー済み
アメリカ文学好きの友達に勧められて、暇つぶしに読んでみました。でも、翻訳の日本語がこなれていて、外国の小説を読むときに感じる面倒くささをちっとも感じませんでした。叙情性ゆたかな物語に酔いしれ、あっという間に読了しました。自分の失恋体験を思い出しながら、涙しました。ほかのエリクソンの作品も読んでみたいと思います。村上龍さんの推薦文はウソじゃありませんでしたね。