海の底に沈むナマコが、中華料理の高級食材として、世界中から中国へと集められている。
日本においても例外ではなく、江戸時代以降、フカヒレ、干しアワビと並ぶ重要な輸出品目となって現在に至っている。
本書は、ナマコ漁、加工、流通といった一連の動きを、著者が実際に現地を訪ね歩いて取材した労作だ。
歩いた土地は日本列島から太平洋の島々に及び、足どりは軽々と国境を越える。
国家単位の歴史からは見えてこない世界だ。
横につながる庶民のネットワークだけでなく、蝦夷地アイヌと和人など搾取をめぐる階層差にも視野は及ぶ。
書名を長らく「ナマコのメ」と読んでいたが、「ナマコのマナコ」という洒落であることに迂闊にも最近気づいた!
読んでいて自分も、こんなスケールの大きな旅をしてみたくなる。
無料のKindleアプリをダウンロードして、スマートフォン、タブレット、またはコンピューターで今すぐKindle本を読むことができます。Kindleデバイスは必要ありません。
ウェブ版Kindleなら、お使いのブラウザですぐにお読みいただけます。
携帯電話のカメラを使用する - 以下のコードをスキャンし、Kindleアプリをダウンロードしてください。
ナマコの眼 ハードカバー – 1990/2/1
鶴見 良行
(著)
- 本の長さ561ページ
- 言語日本語
- 出版社筑摩書房
- 発売日1990/2/1
- ISBN-10448085522X
- ISBN-13978-4480855220
この商品をチェックした人はこんな商品もチェックしています
ページ 1 以下のうち 1 最初から観るページ 1 以下のうち 1
登録情報
- 出版社 : 筑摩書房 (1990/2/1)
- 発売日 : 1990/2/1
- 言語 : 日本語
- ハードカバー : 561ページ
- ISBN-10 : 448085522X
- ISBN-13 : 978-4480855220
- Amazon 売れ筋ランキング: - 883,638位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 3,960位その他の歴史関連書籍
- - 5,493位紀行文・旅行記
- - 109,348位社会・政治 (本)
- カスタマーレビュー:
著者について
著者をフォローして、新作のアップデートや改善されたおすすめを入手してください。
著者の本をもっと発見したり、よく似た著者を見つけたり、著者のブログを読んだりしましょう
カスタマーレビュー
星5つ中4.2つ
5つのうち4.2つ
全体的な星の数と星別のパーセンテージの内訳を計算するにあたり、単純平均は使用されていません。当システムでは、レビューがどの程度新しいか、レビュー担当者がAmazonで購入したかどうかなど、特定の要素をより重視しています。 詳細はこちら
9グローバルレーティング
虚偽のレビューは一切容認しません
私たちの目標は、すべてのレビューを信頼性の高い、有益なものにすることです。だからこそ、私たちはテクノロジーと人間の調査員の両方を活用して、お客様が偽のレビューを見る前にブロックしています。 詳細はこちら
コミュニティガイドラインに違反するAmazonアカウントはブロックされます。また、レビューを購入した出品者をブロックし、そのようなレビューを投稿した当事者に対して法的措置を取ります。 報告方法について学ぶ
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2016年12月17日に日本でレビュー済み
中国を中心としたアジアは、次々にヨーロッパの植民地になって言った・・・
と言った類の教科書的なアジアの近代史に対して、鶴見は、ナマコという一見すると無視されそうなテーマに焦点を絞り、
実際のアジアのそれぞれの土地では、具体的にはどんなことが起こっていたかを、ルポールタージュ的な視点で語っている。
歴史は、象牙の塔の中で作られるのではなく、まさに人々が住む地で作られているのだ、とでも言ったところか。
と言った類の教科書的なアジアの近代史に対して、鶴見は、ナマコという一見すると無視されそうなテーマに焦点を絞り、
実際のアジアのそれぞれの土地では、具体的にはどんなことが起こっていたかを、ルポールタージュ的な視点で語っている。
歴史は、象牙の塔の中で作られるのではなく、まさに人々が住む地で作られているのだ、とでも言ったところか。
2006年6月12日に日本でレビュー済み
とても平易に書かれた、誰が読んでも楽しめる本ですが、本書には鶴見良行さんの思想や世界観が凝縮されています。
本書においてナマコとは直叙でもあり、隠喩でもあります。ここで語られているのは紛れもなくナマコの話なのですが、海底に横たわるナマコは「目立たぬもの」「重要視されぬもの」「忘れ去られたもの」「辺境・周縁に位置するもの」の隠喩でもあり、『ナマコの眼』(ナマコには生物器官としての目はない)というタイトル自体が、<辺境・周縁>から物事を見てやろうという鶴見さんの意思表明なのです。
鶴見さんは「<辺境・周縁>へのアプローチという作業は、タマネギの皮を一枚一枚剥いていくようなもので、どこまで剥いていってもキリはなく、またそれによって事物の本質に迫れるといったものでもない」と語っていますが、それはその通りで、<辺境・周縁>を探求したからといって簡単に新しい歴史観や世界観を獲得できるわけではありません。
ただ、中央中心主義的な歴史観、世界観を相対化し、その全体像をつかむためにはこうした地道な作業は不可欠なのであり、鶴見さんは「今は焦って無理に大きな理論や物語を語るべき時期ではなく、これまで見落とされていたものを丹念に拾い集めながら材料を揃えていくべき時期だ」とも語っていました。
とは言え、そんなふうに<辺境・周縁>の地を巡りながらも、いつの間にか新しい世界像を作り上げてしまうのは鶴見さんの視野の広さと筆力によるものであり、そこには緻密に練り上げられた戦略もあるように思われます。多くの人に読んでいただきたい本です。
本書においてナマコとは直叙でもあり、隠喩でもあります。ここで語られているのは紛れもなくナマコの話なのですが、海底に横たわるナマコは「目立たぬもの」「重要視されぬもの」「忘れ去られたもの」「辺境・周縁に位置するもの」の隠喩でもあり、『ナマコの眼』(ナマコには生物器官としての目はない)というタイトル自体が、<辺境・周縁>から物事を見てやろうという鶴見さんの意思表明なのです。
鶴見さんは「<辺境・周縁>へのアプローチという作業は、タマネギの皮を一枚一枚剥いていくようなもので、どこまで剥いていってもキリはなく、またそれによって事物の本質に迫れるといったものでもない」と語っていますが、それはその通りで、<辺境・周縁>を探求したからといって簡単に新しい歴史観や世界観を獲得できるわけではありません。
ただ、中央中心主義的な歴史観、世界観を相対化し、その全体像をつかむためにはこうした地道な作業は不可欠なのであり、鶴見さんは「今は焦って無理に大きな理論や物語を語るべき時期ではなく、これまで見落とされていたものを丹念に拾い集めながら材料を揃えていくべき時期だ」とも語っていました。
とは言え、そんなふうに<辺境・周縁>の地を巡りながらも、いつの間にか新しい世界像を作り上げてしまうのは鶴見さんの視野の広さと筆力によるものであり、そこには緻密に練り上げられた戦略もあるように思われます。多くの人に読んでいただきたい本です。