志村さんはきわめて理性的な思考をする方であろう。理に勝ったといっても良いかもしれない。しかし，勝ってしまうと，わずかでも雑味を感じさせることが多いところ(私の敬愛する白州正子さんにこれを感ずることがある），この方にはそれを感じない。おそらく，理が働く場とは全く別の場で身体を使い切る時間を持っておられるからであろうか。
古い刺し子が醸し出す情念に通ずる力（もちろんより洗練された形としてではあるが）を感じさせ，印刷とわかっていてもつい触れてみたくなる。それにつけても，作者をはぐくんだ近江という土地が醸しだす先人の想いの厚みと洗練さをなんと表すべきであろうか。
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