謎めいた導入部から、全てが明らかになる結末へ見事な構成を持つ作品です。
特に最後まで読み通すと、様々な伏線に「そうだったのか!」と思わされることになります。
また「犬神家の一族」を思わせるシーンは秀逸です。
しかし残念ながら、キャラクター性が全くありません。
その意味では、横溝正史とは、比べるべくもありません。
結果的に、平板な文章が、ただ淡々と続くだけの作品となってしまっています。
物語の構成がしっかりしているだけに、登場人物に「顔がない」のはもったいない限りです。
これで、もう少し「人物が描けている」作品ならば、間違いなく、文句なしの作品なのですが・・・
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模像殺人事件 (創元クライム・クラブ) 単行本 – 2004/12/11
佐々木 俊介
(著)
- 本の長さ248ページ
- 言語日本語
- 出版社東京創元社
- 発売日2004/12/11
- ISBN-104488012035
- ISBN-13978-4488012038
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登録情報
- 出版社 : 東京創元社 (2004/12/11)
- 発売日 : 2004/12/11
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 248ページ
- ISBN-10 : 4488012035
- ISBN-13 : 978-4488012038
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,096,416位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 275,398位文学・評論 (本)
- カスタマーレビュー:
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2005年9月11日に日本でレビュー済み
どうやら10年振りの第2作目という事らしいですが、なるほど、満を持してと
いう感じの質の高い作品でした。
全編に漂うレトロな雰囲気、それでいて現代だとはっきりわかる不思議な設定。
この雰囲気こそが、この作品の最大の売りかもしれません。
一方、包帯で顔を隠した怪しい男(二人も!)に加え、精神を病む少女も登場す
るなど、様々なガジェットを用いても決して安っぽくならず、トリックの切れ味も
悪くありません。
物語は平板な印象がありますが、本格ミステリーとしては良い出来栄え。
リーダビリティよりも雰囲気を重視している点で、もしかすると好みは分かれる
かもしれません。
いう感じの質の高い作品でした。
全編に漂うレトロな雰囲気、それでいて現代だとはっきりわかる不思議な設定。
この雰囲気こそが、この作品の最大の売りかもしれません。
一方、包帯で顔を隠した怪しい男(二人も!)に加え、精神を病む少女も登場す
るなど、様々なガジェットを用いても決して安っぽくならず、トリックの切れ味も
悪くありません。
物語は平板な印象がありますが、本格ミステリーとしては良い出来栄え。
リーダビリティよりも雰囲気を重視している点で、もしかすると好みは分かれる
かもしれません。
2010年6月26日に日本でレビュー済み
隠遁の富豪一家のもとに、長らく音信不通だった長男を名乗る
男――頭部を包帯でグルグル巻きにした――が二人も現れる。
マイナー推理小説家の大川戸は、道に迷い、成り行きでその家に
泊まることになったのだが、いずれが本物ならん、という騒動に
巻き込まれ、遂には殺人事件にまで立ち会う羽目に陥ってしまう。
のちに大川戸は、そこでの出来事を手記にまとめたのだが、ある男が
それを入手し、旧友の進藤啓作に依頼して事件の真相を探ろうとする。
なぜなら、彼らの共通の知人が、この事件
にかかわり、行方不明になっていたからだ……。
『犬神家の一族』 や 『曲った蝶番』 を彷彿とさせる発端、手記をもとに安楽椅子探偵
スタイルのディスカッションが行われる中盤、そして探偵役が現地に乗り込み、犯人
と対峙してホワットダニット――「その屋敷で、いったい何が起こったのか?」を解き
明かす終盤、と展開されていく本作。
「二人の“包帯男”の正体はそれぞれ誰なのか?」という謎が軸になりますが、
あまりそれに囚われすぎると、著者の仕掛けた“罠”にまんまと嵌り、事件の
全体像を見誤ることになります(“包帯男”という、いかにもなガジェットは、読者
の目を真相から逸らす、巧妙なミスディレクションなのです)。
真相が明かされると、それまで読者に提示されていた構図が反転し、
手記に記されていたさまざまな場面の意味が、まったく違うものになる
という精緻に計算し尽くされたプロットが圧巻。
物語としては起伏に乏しく、淡々とした印象ですが、複雑に絡まった因果の糸を
鮮やかに解きほぐしてみせる解決場面のプレゼンテーションの巧さは特筆もので、
地味ながら独自の世界観を描き切った秀作といえると思います。
男――頭部を包帯でグルグル巻きにした――が二人も現れる。
マイナー推理小説家の大川戸は、道に迷い、成り行きでその家に
泊まることになったのだが、いずれが本物ならん、という騒動に
巻き込まれ、遂には殺人事件にまで立ち会う羽目に陥ってしまう。
のちに大川戸は、そこでの出来事を手記にまとめたのだが、ある男が
それを入手し、旧友の進藤啓作に依頼して事件の真相を探ろうとする。
なぜなら、彼らの共通の知人が、この事件
にかかわり、行方不明になっていたからだ……。
『犬神家の一族』 や 『曲った蝶番』 を彷彿とさせる発端、手記をもとに安楽椅子探偵
スタイルのディスカッションが行われる中盤、そして探偵役が現地に乗り込み、犯人
と対峙してホワットダニット――「その屋敷で、いったい何が起こったのか?」を解き
明かす終盤、と展開されていく本作。
「二人の“包帯男”の正体はそれぞれ誰なのか?」という謎が軸になりますが、
あまりそれに囚われすぎると、著者の仕掛けた“罠”にまんまと嵌り、事件の
全体像を見誤ることになります(“包帯男”という、いかにもなガジェットは、読者
の目を真相から逸らす、巧妙なミスディレクションなのです)。
真相が明かされると、それまで読者に提示されていた構図が反転し、
手記に記されていたさまざまな場面の意味が、まったく違うものになる
という精緻に計算し尽くされたプロットが圧巻。
物語としては起伏に乏しく、淡々とした印象ですが、複雑に絡まった因果の糸を
鮮やかに解きほぐしてみせる解決場面のプレゼンテーションの巧さは特筆もので、
地味ながら独自の世界観を描き切った秀作といえると思います。
2004年12月29日に日本でレビュー済み
あまり知られていない作家だが、間違いなくこれは傑作だ。
発端の不気味さ、どこへ向かっていくのか予測のつかない奇怪な物語、そして、ある意味狂気的なサプライズエンディング。
登場人物にキャラクター性がないという他の方のレビューは、なるほどまさしくその通りだが、むしろ私には、それこそが作者の意図したところではないかと思えた。
確かに「擬横溝」風を期待して読むと肩透かしを食うかもしれない。
そのへんは読み手の好みの問題になってくるが、私の場合、この「影絵めいて実在感のない登場人物たち」(解説より)の描き方は、暗く静的な、妖しい作品世界にぴったり合っているように感じたし、ミステリ的な仕掛けに対しても効果的に機能していると思った。
とにかく傑作。星は4つ半といったところだが、今後への期待を込めて5つ星を献上させていただきます。
発端の不気味さ、どこへ向かっていくのか予測のつかない奇怪な物語、そして、ある意味狂気的なサプライズエンディング。
登場人物にキャラクター性がないという他の方のレビューは、なるほどまさしくその通りだが、むしろ私には、それこそが作者の意図したところではないかと思えた。
確かに「擬横溝」風を期待して読むと肩透かしを食うかもしれない。
そのへんは読み手の好みの問題になってくるが、私の場合、この「影絵めいて実在感のない登場人物たち」(解説より)の描き方は、暗く静的な、妖しい作品世界にぴったり合っているように感じたし、ミステリ的な仕掛けに対しても効果的に機能していると思った。
とにかく傑作。星は4つ半といったところだが、今後への期待を込めて5つ星を献上させていただきます。