歌舞伎が好きで、著者の歌舞伎をテーマにした「ねむりねずみ」と「桜姫」から入りました。
これらの作品でも探偵役を務める今泉と助手の山本君が登場するのですが、その最初の物語ということで興味を持ちました。
あちらは当然、梨園の雰囲気が強く、中心人物である大部屋役者、瀬川小菊のカラーがあるのでだいぶ雰囲気が違います。あちらの方がミステリ色が強く現実の世界に立っている感じがします。
それに比べてこの作品はどこか幻想的で最初から最後まで非現実感が強いです。
登場人物の誰も彼もが中二病的で、みんな屈折してひと癖あるのに実はいい人ばかりで少女漫画のようです。違法カジノの男、拳銃を隠し持っているドラッグの売人、ガーデニング狂いの引退した医者の老人、そしてどうやら危ない夜の仕事をしていると思われる火夜(かや)と倦怠して無気力な女子大生、真波。
探偵の今泉も歌舞伎ものよりずっと暗く屈折しています。それでもみんなイケメンと美女っぽくてそれもどこか少女漫画的です。
連続して殺人が起き、その犯人が誰かという謎はありますが、ミステリというよりはむしろ雰囲気で読む幻想小説のようです。
文章は繊細で美しく時に詩のようですが、小説としては自己陶酔的な部分が目立ち全体に設定が甘すぎる気がしました。うっとりできる話が読みたい人は好きだと思います。
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ガーデン (クイーンの13) 単行本 – 1996/2/1
近藤 史恵
(著)
- 本の長さ325ページ
- 言語日本語
- 出版社東京創元社
- 発売日1996/2/1
- ISBN-104488012183
- ISBN-13978-4488012182
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商品の説明
内容(「MARC」データベースより)
失踪した少女を追い、探偵は狂気の庭に足を踏み入れる…。小指のないまま温室に居座り続ける少女。「好きな人がいる、だから殺さねばならない」という彼女の呟きが意味するのは? 鮎川賞作家が、満を持して放つ会心作。
登録情報
- 出版社 : 東京創元社 (1996/2/1)
- 発売日 : 1996/2/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 325ページ
- ISBN-10 : 4488012183
- ISBN-13 : 978-4488012182
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,876,043位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 461,969位文学・評論 (本)
- カスタマーレビュー:
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2012年8月2日に日本でレビュー済み
まずこれを読む人は、タイトルや煽り文から作中に出てくる庭には何か謎があるのだと
想像するだろうが、特に謎もなくただ死体を通報しない都合のいい爺さんが管理してる
だけという肩透かしをくらいます。
次々に書かれるサブエピソードの数々も、斜に構えた登場人物たちのせいで
いまいち作中での重要性がわからず、最後にあれが動機でしたよと言われてそうですか
という感想しか湧いてこない。
適当に人が死んでいくうえにトリック的なものもほぼなく、会話内の疑問をとんちのように
暴いて終わりという味気ない事件で、全体的な感想としてもやもやしたものだけが残りました
想像するだろうが、特に謎もなくただ死体を通報しない都合のいい爺さんが管理してる
だけという肩透かしをくらいます。
次々に書かれるサブエピソードの数々も、斜に構えた登場人物たちのせいで
いまいち作中での重要性がわからず、最後にあれが動機でしたよと言われてそうですか
という感想しか湧いてこない。
適当に人が死んでいくうえにトリック的なものもほぼなく、会話内の疑問をとんちのように
暴いて終わりという味気ない事件で、全体的な感想としてもやもやしたものだけが残りました
2016年6月28日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
扉の紹介文で「本格ミステリの傑作」と紹介されていたがそうは思えなかった。
「凍える島」を読んで好みだったのでそういう感じを求めて手にとったのだけれど。
“エネメルを塗った小指が・・・”という結構ショッキングな幕開けで事件が始まっていくのだがその割には猟奇的だとかグロいだとかとはかけ離れているので読んでいて随分気楽に読めた。
会話主体で話も進んでいくし気がついたら読み終えていた。
事件自体の印象があまりに軽く、確かに連続して人は死んでいくのだけれどなんだか希薄。
殺人事件というよりそれ以外に存在している漠とした謎が解き明かされていくことの方が興味を引かれた。
「本格ミステリ」というより「なんとなくミステリアスアス」な物語という感じで読めばこれはこれで楽しめた。
「凍える島」を読んで好みだったのでそういう感じを求めて手にとったのだけれど。
“エネメルを塗った小指が・・・”という結構ショッキングな幕開けで事件が始まっていくのだがその割には猟奇的だとかグロいだとかとはかけ離れているので読んでいて随分気楽に読めた。
会話主体で話も進んでいくし気がついたら読み終えていた。
事件自体の印象があまりに軽く、確かに連続して人は死んでいくのだけれどなんだか希薄。
殺人事件というよりそれ以外に存在している漠とした謎が解き明かされていくことの方が興味を引かれた。
「本格ミステリ」というより「なんとなくミステリアスアス」な物語という感じで読めばこれはこれで楽しめた。
2015年7月12日に日本でレビュー済み
本書は大分「毛色違う」感じがする。
充分に面白くはあるけれど、かなりまだるっこしい。他のシリーズは「歌舞伎」のディティールを楽しむ部分が多くて、まだるっこしさが余り気にならないんだけど、本書ではまだるっこしさが前面に出てた気がしないでもない。
この手の「清潔ではない」の雰囲気は好みからは外れる。
充分に面白くはあるけれど、かなりまだるっこしい。他のシリーズは「歌舞伎」のディティールを楽しむ部分が多くて、まだるっこしさが余り気にならないんだけど、本書ではまだるっこしさが前面に出てた気がしないでもない。
この手の「清潔ではない」の雰囲気は好みからは外れる。
2005年7月27日に日本でレビュー済み
近藤さんのミステリーは女性ならではの感覚で書かれているな、
と常々思っていますが、これもそうですね。
異常、とも思える恋愛心理が
でもどこかありえそうな既視感を持って私に迫ってきます。
こういう理屈をこねた殺人の動機は
とても若く、自己愛そのものに見え、
だからこそとても近しい。
自分の中学・高校といった頃のなんにでも理屈をつけ、
『自分』と『他人』というものを明確にしたがっているのに、
どこかで他者による同意を求めてあがいていた自分を
無理矢理思い出させてくれますね。
…なので全然楽しくはないんですけど、
自戒も込めて読み返してしまう本です。
と常々思っていますが、これもそうですね。
異常、とも思える恋愛心理が
でもどこかありえそうな既視感を持って私に迫ってきます。
こういう理屈をこねた殺人の動機は
とても若く、自己愛そのものに見え、
だからこそとても近しい。
自分の中学・高校といった頃のなんにでも理屈をつけ、
『自分』と『他人』というものを明確にしたがっているのに、
どこかで他者による同意を求めてあがいていた自分を
無理矢理思い出させてくれますね。
…なので全然楽しくはないんですけど、
自戒も込めて読み返してしまう本です。
2011年7月24日に日本でレビュー済み
多視点にたった叙述や、主な事件の舞台となる庭の力の入った描写など、きっと凝ったミステリを書きたかったのだろうなと推察されます。
ただやたらと込み入った解決編に代表されるように、人工的にこねくり回した感じが濃厚でした。それを好む人もいるかもしれませんが、私には幻想味と論理性がかみ合っておらず、叙述の工夫も生きていないように思えて、あまり楽しめませんでした。
ただやたらと込み入った解決編に代表されるように、人工的にこねくり回した感じが濃厚でした。それを好む人もいるかもしれませんが、私には幻想味と論理性がかみ合っておらず、叙述の工夫も生きていないように思えて、あまり楽しめませんでした。
2005年9月14日に日本でレビュー済み
この作品は今泉文吾という探偵が活躍するシリーズとしては第2弾にあたるのですが、書かれたのはこちらの方が先なのだそうです。同居していた真波と火夜という二人の女性が主人公。ある日、火夜が失踪してしまい、心配する真波のもとに火夜の指が入った小包が送られてきます。そこで真波は同じマンションに住み探偵業を営んでいる今泉文吾に相談するのだが・・・というストーリーです。話が進むごとに次々と人が殺されていき、犯人の候補者がとても少なくなっていくというのが特徴です。
全ての登場人物が何らかの秘密を抱えており、読者の前に知っていることのすべては明らかにしないというもどかしさ。このような作風を持った作品は他にも色々ありますが、本作では探偵までもが秘密を抱えているというのが異色です。蛇足ですが、真波と火夜にはなんとなくマンガ『Nana』をイメージさせるものがありますね。
全ての登場人物が何らかの秘密を抱えており、読者の前に知っていることのすべては明らかにしないというもどかしさ。このような作風を持った作品は他にも色々ありますが、本作では探偵までもが秘密を抱えているというのが異色です。蛇足ですが、真波と火夜にはなんとなくマンガ『Nana』をイメージさせるものがありますね。