様々なものの解説、歴史、神話などを織りあわせて綴られた西洋の大きなタペストリーのような本です。
読んでいるうちに不思議と内容に引き込まれて、作者の思いのままに、言葉のなかで迷子になったり連れまわされたりする感覚。
不思議な本ですが、とても特別な読書体験をもたらしてくれます。
こういった本を訳すのは難しいのではないかと想像するのですが、ありがたいことに翻訳はとても綺麗な日本語です。
何の違和感もなく「あれ?これって日本の作者が書いたんだっけ?」というくらいナチュラルで軽快。
これはものすごく幸運なことではないか、と思います。
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琥珀捕り (海外文学セレクション) 単行本 – 2004/2/1
ローマの詩人オウィディウスが描いたギリシア・ローマ神話世界の奇譚『変身物語』、ケルト装飾写本の永久機関めいた文様の迷宮、中世キリスト教聖人伝、アイルランドの民話、フェルメールの絵の読解とその贋作者の運命、顕微鏡や望遠鏡などの光学器械と17世紀オランダの黄金時代をめぐるさまざまの蘊蓄、あるいは普遍言語や遠隔伝達、潜水艦や不眠症をめぐる歴代の奇人たちの夢想と現実──。数々のエピソードを語り直し、少しずらしてはぎあわせていく、ストーリーのサンプリング。伝統的なほら話の手法が生きる、あまりにもモダンな物語! 解説:柴田元幸
*書評掲載:2004/3/7 毎日新聞、2004/4/4 朝日新聞・信濃毎日新聞・京都新聞ほか、2004/4/5 産経新聞
*書評掲載:2004/3/7 毎日新聞、2004/4/4 朝日新聞・信濃毎日新聞・京都新聞ほか、2004/4/5 産経新聞
- 本の長さ346ページ
- 言語日本語
- 出版社東京創元社
- 発売日2004/2/1
- ISBN-104488016383
- ISBN-13978-4488016388
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商品の説明
内容(「MARC」データベースより)
フェルメール、チューリップ狂、望遠鏡発明、普遍言語、潜水艦開発。偶然の幸運に身を任せる「琥珀捕り」の流儀に倣って詩人が繰り出す逸話たちの饒舌な物語。
登録情報
- 出版社 : 東京創元社 (2004/2/1)
- 発売日 : 2004/2/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 346ページ
- ISBN-10 : 4488016383
- ISBN-13 : 978-4488016388
- Amazon 売れ筋ランキング: - 859,343位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2007年11月12日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
この本の内容は実に広範囲に及んでいるので、興味がある部分を読んでいる時はすらすら読めるのだが(私にとってはギリシア神話やチューリップやフェルメールの話)、なじみの薄い話題(私にとっては言語の変革の歴史とかオランダの地理の話)が出たとたんにページをめくる手が遅くなる。
はじめのうちはこの知識の塊すべてに面白みを見出そうと構えて読んでいたが、そのうちつらくなっていったんよむのをやめてしまった。これでは本末転倒。面白いところを楽しめるよう読んでおけばいいやという気持ちで読み直したらあっという間に読んでしまった。この本は話と話の数珠繋ぎ。苦手な部分でもなんとなくたどっていけばいつかじぶんの興味のある話にたどり着けることに気がついた。
というわけで「琥珀捕り」は博識教養文学のような知的好奇心のあつまりだが、そのわりに気楽に読んでみる価値のある本だと思う。
はじめのうちはこの知識の塊すべてに面白みを見出そうと構えて読んでいたが、そのうちつらくなっていったんよむのをやめてしまった。これでは本末転倒。面白いところを楽しめるよう読んでおけばいいやという気持ちで読み直したらあっという間に読んでしまった。この本は話と話の数珠繋ぎ。苦手な部分でもなんとなくたどっていけばいつかじぶんの興味のある話にたどり着けることに気がついた。
というわけで「琥珀捕り」は博識教養文学のような知的好奇心のあつまりだが、そのわりに気楽に読んでみる価値のある本だと思う。
2005年6月11日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
不思議な本であった。脈絡のない夢を見ているような感じで文章が展開されていく(実際はきちんと計算されているのだけれど)。寓話の話かと思っていたら、いつのまにか、絵画の詳細な解説になっていて、気がつくと博学的なオランダの話、さらにキリストにまつわる宗教の話かと思いきや、ギリシア神話の話へと連なっていく・・・。作者はイギリスの高名な詩人だそうであるが、その博覧強記ぶりには驚かされる。森羅万象あらゆることを熟知しているのではないか、と思ってしまう。「解説」にもあったが、全26章、毎日1章ずつ読むことをおすすめする。ぼくはがむしゃらに読み進んでいったのだが、読んでいるうちに複雑な迷路に彷徨いこんで、自分を見失うことがしばしばあったからだ。
2012年2月26日に日本でレビュー済み
アイルランドの船長が炉辺で子どもたちにお話をはじめる。そんなイメージからはじまる何とも奇妙で魅力的な逸話集。
アルファベットのAからZまで、各々を頭文字にした「言葉」から連想を広げる24章は、つながりがあるようで微塵もない。イメージは同じ章のなかでさえ奔放に飛躍する。アイルランドの昔話からオウィディウスの変身譚、黄金時代のオランダ文化の薀蓄から20世紀の贋作絵描きまで、無秩序に軽快にまき散らされた逸話の断片が、全体でみると不思議な統一感を保ってひとつの小宇宙を造りあげている。
そこに規則さえ見出そうとしなければ、この小宇宙はとても親しみやすいし、これは訳の秀逸さもあるだろうが大変に読みやすい。純粋の「お話」として、それでそれで? と続きをせがむ子供のように楽しめばいいのだ。逸話そのものも面白いし、この世界は何より細部がいい。あとがきからの受け売りになるが、まさしく黄金時代のオランダ絵画のように、イメージのなかのイメージ、語りのなかの語りという虚と虚の重なり合いのなかに、色や質感や微細な光が、これでもかとばかりに描きこまれている。
たとえば「D−デルフィニウム」の章では、「さざ波ひとつない運河に影の重なる町」デルフトの色彩として、「磨き上げられた黒、ムール貝か光沢のあるタールのように青っぽくて深い色、水藻の触手にも似た黄みがかった褐色の揺らめく色調、古いファヤンス焼きの彩色陶器を見るような、バターの黄色やほうれん草の緑やキャベツの青のさまざまな階調である」といった具合だ。この描写は物語のはじまりではない。描写自体が物語なのだ。琥珀のなかに閉じ込められた虫の肢のように精緻なイメージはどれも静止している。それが果てしなく列なるおかげで不思議な動きを感じる。全体に共通してよく出てくる意匠はもちろん琥珀だ。それにわりあいフェルメールも多い。ギリシア古典かオランダ絵画、あるいはアイルランド神話。このどれかに毛一筋でも興味のある方なら必ず楽しめる作品である。
アルファベットのAからZまで、各々を頭文字にした「言葉」から連想を広げる24章は、つながりがあるようで微塵もない。イメージは同じ章のなかでさえ奔放に飛躍する。アイルランドの昔話からオウィディウスの変身譚、黄金時代のオランダ文化の薀蓄から20世紀の贋作絵描きまで、無秩序に軽快にまき散らされた逸話の断片が、全体でみると不思議な統一感を保ってひとつの小宇宙を造りあげている。
そこに規則さえ見出そうとしなければ、この小宇宙はとても親しみやすいし、これは訳の秀逸さもあるだろうが大変に読みやすい。純粋の「お話」として、それでそれで? と続きをせがむ子供のように楽しめばいいのだ。逸話そのものも面白いし、この世界は何より細部がいい。あとがきからの受け売りになるが、まさしく黄金時代のオランダ絵画のように、イメージのなかのイメージ、語りのなかの語りという虚と虚の重なり合いのなかに、色や質感や微細な光が、これでもかとばかりに描きこまれている。
たとえば「D−デルフィニウム」の章では、「さざ波ひとつない運河に影の重なる町」デルフトの色彩として、「磨き上げられた黒、ムール貝か光沢のあるタールのように青っぽくて深い色、水藻の触手にも似た黄みがかった褐色の揺らめく色調、古いファヤンス焼きの彩色陶器を見るような、バターの黄色やほうれん草の緑やキャベツの青のさまざまな階調である」といった具合だ。この描写は物語のはじまりではない。描写自体が物語なのだ。琥珀のなかに閉じ込められた虫の肢のように精緻なイメージはどれも静止している。それが果てしなく列なるおかげで不思議な動きを感じる。全体に共通してよく出てくる意匠はもちろん琥珀だ。それにわりあいフェルメールも多い。ギリシア古典かオランダ絵画、あるいはアイルランド神話。このどれかに毛一筋でも興味のある方なら必ず楽しめる作品である。
2004年9月9日に日本でレビュー済み
~嵐の夜、船長が語り始めると言う話を、父親が話し始める。物語序盤のこの入れ子がすべてを象徴している。語られた物語が次の物語を呼び、いつの間にか物語の迷宮を迷う。気が付くと入り口に戻っていたりもする。そんな、めくるめく感覚を味わえる希有な本です。
~~
読者に読ませようとする強烈な筋などありません。あるのは、ただただ、際限ない語りの楽しさ、物語の迷宮。そして、本を読む言う事の楽しさ。~
~~
読者に読ませようとする強烈な筋などありません。あるのは、ただただ、際限ない語りの楽しさ、物語の迷宮。そして、本を読む言う事の楽しさ。~
2004年3月21日に日本でレビュー済み
装訂の良さにつられ手にとって読み始めた。西洋の昔話? 逸話集? 不思議な内容に次々のエピソードに読み進んだ。結構厚みのある本で、おまけに二段組みだ。なのにすごい早さで読めた。読んでいる日本語にあまり違和感がない。一人称の語り口がいい味を出している。でも、何の本なんだか読み終わった後も解らない。不思議な本だった。星4つ。
2012年5月11日に日本でレビュー済み
ある話好きの男の、一方的でとりとめのない独白のようでありながら、その実、繊細に編まれた「物語りの鎖」とでもいおうか。
ある時は連想ゲームのように、ある時はしりとり遊びのように、ある時は「話の中の話」のように入れ子を作り、さまざまな仕掛けで繋がっていく話たち。しかもそれらは一筋縄で繋がっているのではなく、3次元的に連結している。この鎖を形作る「共通語」は「琥珀」と「オランダ」(共通言語といえば、エスペラントの話もある)。
物語の鎖は、始めと終わりで繋がって迷宮となり、輪となる(輪といえば、ロザリオの話もある)。
作者キアラン・カーソンは、読者に手の内からスルスルと手品の風呂敷を広げて見せているようだ。
壮大な物語りの風呂敷は、最後にはまたすっぽりと、作者の手の中に収まってしまうのである・・
ある時は連想ゲームのように、ある時はしりとり遊びのように、ある時は「話の中の話」のように入れ子を作り、さまざまな仕掛けで繋がっていく話たち。しかもそれらは一筋縄で繋がっているのではなく、3次元的に連結している。この鎖を形作る「共通語」は「琥珀」と「オランダ」(共通言語といえば、エスペラントの話もある)。
物語の鎖は、始めと終わりで繋がって迷宮となり、輪となる(輪といえば、ロザリオの話もある)。
作者キアラン・カーソンは、読者に手の内からスルスルと手品の風呂敷を広げて見せているようだ。
壮大な物語りの風呂敷は、最後にはまたすっぽりと、作者の手の中に収まってしまうのである・・