『叫びと祈り』で短編の書き手として非凡な才能を見せた著者。さて、長編は?・・・ということで楽しみに読んだ。
正直、評価に迷うところ。ミステリーとしては平凡と言うしかない。ラストの捻りも特になく、あ~犯人はこの人か、みたいな感じ。
他方、カンボジアのストリートチルドレンを扱った文芸小説としてはよく出来ていると思う。ミステリーとしては冗長な文章も、文学としてなら理解は可能。
雨乞いの爺さんに何故、赤い入れ墨があり、それが多くの人に嫌われているのか。クメールルージュの歴史を知らなければ理解は出来ないのだが、小説中には一切の説明がない。
そんな突き放したところが、天の邪鬼の私には逆に心地よく感じられ、星1つプラスして計4つ。あ、あと、18ページにトレンサップ湖という表記があるけど、Tonle Sapなのでトンレサップ湖が正しい。
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リバーサイド・チルドレン (ミステリ・フロンティア) 単行本 – 2013/9/11
梓崎 優
(著)
ダブルポイント 詳細
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購入オプションとあわせ買い
僕らは、確かに生きている。君という人間を、僕は憶えている。カンボジアの地を彷徨う日本人少年は、現地のストリート・チルドレンに拾われた。「迷惑はな、かけるものなんだよ」過酷な環境下でも、そこには笑いがあり、信頼があった。しかし、あまりにもささやかな安息は、ある朝突然破られる――。突如彼らを襲った、動機不明の連続殺人の真相とは? 激賞を浴びた『叫びと祈り』から3年、カンボジアを舞台に贈る鎮魂と再生の書。
- 本の長さ328ページ
- 言語日本語
- 出版社東京創元社
- 発売日2013/9/11
- ISBN-104488017770
- ISBN-13978-4488017774
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商品の説明
著者について
1983年東京都生まれ。2008年、短編「砂漠を走る船の道」で第5回ミステリーズ! 新人賞を受賞。選考委員の綾辻行人、有栖川有栖、辻真先3氏を驚嘆させた。この受賞作を第1話に据えた連作短編集『叫びと祈り』を2010年に刊行、やはり数多くの称賛を浴び、その年の各種年末ベスト・ミステリ・ランキングでは軒並み上位にランクインした大型新人。本作「リバーサイド・チルドレン」は完成までに3年をかけ、満を持して放つ初長編となる。
登録情報
- 出版社 : 東京創元社 (2013/9/11)
- 発売日 : 2013/9/11
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 328ページ
- ISBN-10 : 4488017770
- ISBN-13 : 978-4488017774
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,329,914位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 6,532位ミステリー・サスペンス・ハードボイルド (本)
- カスタマーレビュー:
著者について
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2015年5月2日に日本でレビュー済み
真相に辿り着くまで三段構えになっており、その点では著者の意気込みが感じられる。
しかし犯人が熱病に冒されたような状態で殺人を続けるため、動機自体が破綻している。
そのため読者に犯意の説得性を与えない。
論理の客観性が失われ、筋道の立った推理を拒絶している。
カンボジアの底辺を生きるストリートチルドレンたちの青春小説としての側面も持つが、
感傷的で甘ったるく、子守唄まで挿入されてはたまらない。
いくら彼らの惨状を伝えようと躍起になったところで、ただのお涙頂戴に堕してしまっている。
伝えたいのであれば、よりシビアな筆致を要するだろう。
見るべき所はよく取材がなされている(と思われる)点だろうか。
"山狩り"や廃品換金システムに関しての詳細、主人公たちが棲む小屋の様子、
その傍らを流れる川や対岸の表情、雨季・乾季に際しての天気の薀蓄、"黒"や観光客が闊歩する
"街"の喧騒などなど現地のさまが饒舌に語られている。
※ 写真・自己紹介は無視して下さい
しかし犯人が熱病に冒されたような状態で殺人を続けるため、動機自体が破綻している。
そのため読者に犯意の説得性を与えない。
論理の客観性が失われ、筋道の立った推理を拒絶している。
カンボジアの底辺を生きるストリートチルドレンたちの青春小説としての側面も持つが、
感傷的で甘ったるく、子守唄まで挿入されてはたまらない。
いくら彼らの惨状を伝えようと躍起になったところで、ただのお涙頂戴に堕してしまっている。
伝えたいのであれば、よりシビアな筆致を要するだろう。
見るべき所はよく取材がなされている(と思われる)点だろうか。
"山狩り"や廃品換金システムに関しての詳細、主人公たちが棲む小屋の様子、
その傍らを流れる川や対岸の表情、雨季・乾季に際しての天気の薀蓄、"黒"や観光客が闊歩する
"街"の喧騒などなど現地のさまが饒舌に語られている。
※ 写真・自己紹介は無視して下さい
2016年8月21日に日本でレビュー済み
仲間との共同生活は、一種の楽園なのだと思う。
もちろん日々の糧を探すための暑くて臭い重労働や、異分子として虫扱いされて排除される危険性はあるにしても、そこには仲間同士の信頼と絆がある。だからその絆を脅かす別のグループや警察、さらには姿なき殺人者に主人公は憤り、立ち向かった。
ある意味で牧歌的な日常から、殺人の連鎖、旅人との犯人探しの対話、そしてエンディング。高温高湿度な舞台でのスピーディーな展開から一転、旅人との対話でクールダウンされるのがうまい構成だと思った。ここで、雰囲気が一転して状況整理しながら犯人探しを行うミステリが楽しめる。最初は木に竹を接いだような強引なご都合主義の展開に思えたが、旅人が状況を整理して主人公を正解に導いていくところはむしろ楽しめた。
連続殺人というやりきれなさを突き抜けて、エンディングに明るさが戻ってホッとした。主人王が安易に楽園を抜けださなかったのも良かったと思う。
主人公が取り戻した日常、もちろん彼らにはそれが恒久的なものではないことはわかっているだろう。でも彼らが人間である自分を意識して暮らせる場を、実力で取り戻したことは彼らの勝利である。
ドキュメンタリー番組からインスパイアされたようにも思えるが(そういう番組があるかどうかは知らないけど)、ディテールの細かさがそれだけとは思えない。この作家の作品を読んだのは初めてだったが、「どのようにしてこの作品をものにしたのか」に一番興味を惹かれたことは書き記しておきたい。
もちろん日々の糧を探すための暑くて臭い重労働や、異分子として虫扱いされて排除される危険性はあるにしても、そこには仲間同士の信頼と絆がある。だからその絆を脅かす別のグループや警察、さらには姿なき殺人者に主人公は憤り、立ち向かった。
ある意味で牧歌的な日常から、殺人の連鎖、旅人との犯人探しの対話、そしてエンディング。高温高湿度な舞台でのスピーディーな展開から一転、旅人との対話でクールダウンされるのがうまい構成だと思った。ここで、雰囲気が一転して状況整理しながら犯人探しを行うミステリが楽しめる。最初は木に竹を接いだような強引なご都合主義の展開に思えたが、旅人が状況を整理して主人公を正解に導いていくところはむしろ楽しめた。
連続殺人というやりきれなさを突き抜けて、エンディングに明るさが戻ってホッとした。主人王が安易に楽園を抜けださなかったのも良かったと思う。
主人公が取り戻した日常、もちろん彼らにはそれが恒久的なものではないことはわかっているだろう。でも彼らが人間である自分を意識して暮らせる場を、実力で取り戻したことは彼らの勝利である。
ドキュメンタリー番組からインスパイアされたようにも思えるが(そういう番組があるかどうかは知らないけど)、ディテールの細かさがそれだけとは思えない。この作家の作品を読んだのは初めてだったが、「どのようにしてこの作品をものにしたのか」に一番興味を惹かれたことは書き記しておきたい。
2016年6月29日に日本でレビュー済み
前作の『叫びと祈り』が好きで、早く次回作を読みたいなと心待ちにしてました。
文章が綺麗で、読んでいて飽きないし、子どもたちを取り囲む世界や心の動きがよく分かります。
最終的に救いのある物語が好きで、どうなるかのかなとどきどきしながら読みました。
『叫びと祈り』のときにも感じましたが、物語のなかにはどこか諦観と悲観的な感情があり、また、殺人などの動機はいつもinnocentというかpureな感情が多く、かっこいいです。
文章が綺麗で、読んでいて飽きないし、子どもたちを取り囲む世界や心の動きがよく分かります。
最終的に救いのある物語が好きで、どうなるかのかなとどきどきしながら読みました。
『叫びと祈り』のときにも感じましたが、物語のなかにはどこか諦観と悲観的な感情があり、また、殺人などの動機はいつもinnocentというかpureな感情が多く、かっこいいです。
2013年10月16日に日本でレビュー済み
カンボジアには行ったことがありませんし、
先進国の日本で暮らしているため、本物のストリート・チルドレンの
苦しみが本作できっちり描けているかというと、それは私にはわかりません。
しかし小説としてこの作品を読むと、
叙情的な筆致が描く風景は醜くて美しく、
雨のにおいを感じるくらいにリアルで、ああさすがだなあと思いました。
梓崎優独特のロマンチックな文体は好き嫌いが分かれるでしょうが、
これだけの筆力がある新人はやはり数少ないとも思います。
ミステリの点でも「?」と腑に落ちないところもなくはないですけど、
それでも平均以上のレベルにはなっているのではないでしょうか。
あとは、今後の期待をこめて☆4つとしました。
腕にさらなる磨きをかけて、これからのミステリ界を担って欲しいと思います。
先進国の日本で暮らしているため、本物のストリート・チルドレンの
苦しみが本作できっちり描けているかというと、それは私にはわかりません。
しかし小説としてこの作品を読むと、
叙情的な筆致が描く風景は醜くて美しく、
雨のにおいを感じるくらいにリアルで、ああさすがだなあと思いました。
梓崎優独特のロマンチックな文体は好き嫌いが分かれるでしょうが、
これだけの筆力がある新人はやはり数少ないとも思います。
ミステリの点でも「?」と腑に落ちないところもなくはないですけど、
それでも平均以上のレベルにはなっているのではないでしょうか。
あとは、今後の期待をこめて☆4つとしました。
腕にさらなる磨きをかけて、これからのミステリ界を担って欲しいと思います。
2013年11月3日に日本でレビュー済み
『叫びと祈り』から三年、とても期待していたのですが、ちょっと困った読後感でした。
カンボジアのストリート・チルドレンの物語としては面白く読んだのですが、ミステリとしては期待外れという感じです。
中盤の盛り上がりで「おっ」と思い、推理の途中で「これは傑作かも」と思いましたが、真相を知って肩透かしを食いました。
犯人がそう言ってるんだからそれが真相なのでしょうが、でもこの説明はちょっと苦しいです。他の部分では人間ドラマが書けているけど、動機についてだけ人間の行動がおかしい気がします。異様な動機でもいいんですが、読者が納得できるように書いて欲しいです。
デビュー作の「砂漠〜」の動機は素晴らしかったのに、今回はなぜこんな無理矢理作ったような動機になってしまったんでしょうか。
三年あれば短編が何作か書けたでしょうし、そうすれば今頃第二短編集が出ていたのでは…
出来ればそっちの方が読みたかったというのが正直な気持ちです。
カンボジアのストリート・チルドレンの物語としては面白く読んだのですが、ミステリとしては期待外れという感じです。
中盤の盛り上がりで「おっ」と思い、推理の途中で「これは傑作かも」と思いましたが、真相を知って肩透かしを食いました。
犯人がそう言ってるんだからそれが真相なのでしょうが、でもこの説明はちょっと苦しいです。他の部分では人間ドラマが書けているけど、動機についてだけ人間の行動がおかしい気がします。異様な動機でもいいんですが、読者が納得できるように書いて欲しいです。
デビュー作の「砂漠〜」の動機は素晴らしかったのに、今回はなぜこんな無理矢理作ったような動機になってしまったんでしょうか。
三年あれば短編が何作か書けたでしょうし、そうすれば今頃第二短編集が出ていたのでは…
出来ればそっちの方が読みたかったというのが正直な気持ちです。
2014年8月7日に日本でレビュー済み
人を殺す動機が飛躍しすぎで、もう少し説得力を持たせる伏線をちゃんとはるか、別な動機にすべきではなかろうか。犠牲者が仲間内から絞られる必然性が苦しすぎる。
突然現れた人物がすらすら謎解きしちゃうというのも物語が作れてない。
韓国人だから漢字を知ってる、というのもどうなのか??現在の韓国では漢字教育してなくて読めない方が普通なはずなのだが・・・
カンボジアの様子はずいぶん調べて書かれたのだろうが、そのほかがおざなり過ぎはしないか?
突然現れた人物がすらすら謎解きしちゃうというのも物語が作れてない。
韓国人だから漢字を知ってる、というのもどうなのか??現在の韓国では漢字教育してなくて読めない方が普通なはずなのだが・・・
カンボジアの様子はずいぶん調べて書かれたのだろうが、そのほかがおざなり過ぎはしないか?
2013年10月10日に日本でレビュー済み
前作は気になりつつも読んでおらず。興味のある作家さんではあったので、こちらを読んでみました。タイトルにも設定にも惹かれた、のですが…最後まで作品と自分の距離が縮まらないままでした。文も表現もきれいだと感じたけれど、そのきれいさが曲者というか、あくまで個人的な印象ですが「きれいに」書こうという意識が強く出ている気がしてしまいました。カンボジアのゴミ山とそこで生き延びようとする子供たち、その熱や重みがあまりリアリティを持って感じられず。壮絶な理由からこの仲間に入ることになった主人公(語り手)が、饒舌すぎ、冷静すぎると感じたのも違和感のひとつだったかな…いわゆる普通に頭のいい子のままに思えてしまって、描かれている世界にそぐわない。そこで生きているリアリティが私には伝わってきませんでした。