レイモンド・チャンドラー『長いお別れ』の映画DVDを入手する前に、400ページ以上の本ではあったが、本の方を再読してからDVDを観たら、あまりにも原作と異なる物語に脚色されていたのでがっかりしてしまった。
チャンドラーが1939年発表の処女長編『大いなる眠り』が気になり探してみたが処分したようで見付けることが出来なかった。
この『大いなる眠り=原題:The Big Sleep』を、どうしても再読してみたくなりAmazonで入手して読むことにした。
評者の手元に届いたのは、創元推理文庫の1959年(昭和34年)初版であり、訳者は双葉十三郎氏である。
少し調べてみたら1956年(昭和31年)に、東京創元社(のち創元推理文庫)から出版されたのが初出だったようである。
読みはじめてかなり物語の粗筋を思い出したが、やはり翻訳に隔世の感を覚えてしまった。
この本だけ読んでいたらマーロウは、かなり乱暴者のような感じを受けてしまうのは、翻訳がマーロウの話す言葉の訳に起因しているようである。
「うふう」(原書でどう書いてあるか興味津々だが)とマーロウが唸ったり、土砂降りの雨のなかで車を運転しながら、「窓拭装置はあっても、ガラスは絶えず曇り」などと訳している。(P219)
窓拭装置?まあ、ワイパーと訳せばだれでもわかるのだが、なんだか面白く読んでしまったのである。
「車庫」なども気になった。
これは英語で「garage」と書いてる直訳だと思うが「自動車整備工場」としたほうがよいだろう。
本邦初登場したフィリップ・マーロウだから仕方がないが、この後の『さらば愛しき女よ』から清水俊二氏がほとんどマーロウものを翻訳してマーロウ像を修正(インテリ探偵として)している。
清水俊二氏が双葉十三郎氏から面白いから『さらば愛しき女よ』読むよう勧められ、この本を読んでから、どうしても自分が翻訳したくなった経過をなにかで読んだ記憶がある。
古くは田中小実昌氏も何冊か翻訳しているが、最近では村上春樹氏がマーロウもの全作翻訳している。
が、粋な翻訳本を読むより二葉氏や清水氏の翻訳本で十分楽しめるから評者などは、それでよしとしておきたい。
フィリップ・マーロウは、ハードボイルド派の中で最も有名な探偵といえる。
その末裔として数多くの探偵が登場しているが、ローレンス・ブロックのマット・スカダーなどへと受け継がれていると思うのは評者だけではないだろう。
双葉十三郎氏訳『大いなる眠り』を楽しみながら読み終えました。
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大いなる眠り (創元推理文庫 131-1) 文庫 – 1959/8/1
レイモンド チャンドラー
(著),
双葉 十三郎
(翻訳)
私立探偵マーロウは、スターンウッド将軍の娘がゆすりにあっている件で、将軍家へ招かれた。マーロウは、脅迫状の差出人の家へ行き、二発の銃声を聞いて家の中へとびこんだが、それは秘密写真撮影の現場だった。新鮮な内容、会話の妙味、迫力ある描写、この処女長編で、チャンドラーはハードボイルドのチャンピオンとなった。
- 本の長さ279ページ
- 言語日本語
- 出版社東京創元社
- 発売日1959/8/1
- ISBN-104488131018
- ISBN-13978-4488131012
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登録情報
- 出版社 : 東京創元社 (1959/8/1)
- 発売日 : 1959/8/1
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 279ページ
- ISBN-10 : 4488131018
- ISBN-13 : 978-4488131012
- Amazon 売れ筋ランキング: - 270,080位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
著者について
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1888年シカゴ生まれ。7歳のころ両親が離婚し、母についてイギリスへと渡る。名門ダリッチ・カレッジに通うも卒業することなく中退。
1912年アメリカへ戻り、いくつかの職業を経たのち、1933年にパルプ雑誌《ブラック・マスク》に寄稿した短篇「ゆすり屋は撃たない」で作家デビューを飾る。
1939年には処女長篇『大いなる眠り』を発表。同書の主人公、私立探偵フィリップ・マーロウは、永遠のアイコンとなった。1953年に発表した『ロング・グッドバイ』で、アメリカ探偵作家クラブ(MWA)賞の最優秀長篇賞を受賞した。1959年没。享年70。
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2018年10月30日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2019年2月16日に日本でレビュー済み
双葉氏の旧訳を十代の頃読んだ時はどこがいいのかわからなかった。同じ旧約を今回再読して名作と言われる所以がようやく理解できた。現実性に富んだ人物描写が見事で特に大金持ちのスターンウッド老将軍の二人の娘、姉のヴィヴィアンと妹のカーメンの強烈な個性が鮮やかに描き分けられている。ただ登場人物はチンピラやペテン師が多く人間的魅力のある人物があまりいない。強いて挙げれば終盤に登場する「銀鬘(シルバー・ウイグ)」くらいであろうか。ただ彼女も善良な常識人でしかなく他の偽悪的な人物たちの中ではそれが目立つだけという感もある。
物語は前半が3つの殺人事件の解明、後半はヴィヴィアンの失踪した夫リーガンの行方を追うという展開で生き生きとした会話やスリリングなアクションの中で名探偵マーロウが鮮やかに真相を解明していく。
ただ、前半は事件としては通俗で格調は低く真相が判明しても特に感心するものはなかった。後半は凶悪な殺人鬼との対決となるがこれも事件としては結果的には本筋とは直接関係が無いためやや興ざめであった。
前半の最後で事件の新聞記事をマーロウが読むシーンがあるがこれはマーロウが解明した真相とは若干異なっておりこのへんも皮肉がよくきいている。終盤でマーロウがスターンウッド将軍に語るセリフ「僕はシャーロック・ホームズでもファイロ・ヴァンスでもない」(p253)には驚いたがこれも本格物への皮肉であろうか。またラストにタイトルの「大いなる眠り」という言葉が出て来るが、これも人間の死という尊厳なるものをネタにしてヒーローを気取る従来の名探偵たちへの痛烈な批判となっているのではなかろうか。
なお、中島河太郎氏の解説が非常に参考になった。
物語は前半が3つの殺人事件の解明、後半はヴィヴィアンの失踪した夫リーガンの行方を追うという展開で生き生きとした会話やスリリングなアクションの中で名探偵マーロウが鮮やかに真相を解明していく。
ただ、前半は事件としては通俗で格調は低く真相が判明しても特に感心するものはなかった。後半は凶悪な殺人鬼との対決となるがこれも事件としては結果的には本筋とは直接関係が無いためやや興ざめであった。
前半の最後で事件の新聞記事をマーロウが読むシーンがあるがこれはマーロウが解明した真相とは若干異なっておりこのへんも皮肉がよくきいている。終盤でマーロウがスターンウッド将軍に語るセリフ「僕はシャーロック・ホームズでもファイロ・ヴァンスでもない」(p253)には驚いたがこれも本格物への皮肉であろうか。またラストにタイトルの「大いなる眠り」という言葉が出て来るが、これも人間の死という尊厳なるものをネタにしてヒーローを気取る従来の名探偵たちへの痛烈な批判となっているのではなかろうか。
なお、中島河太郎氏の解説が非常に参考になった。
2023年5月23日に日本でレビュー済み
1922年にデビューし、アーネスト・ヘミングウェイを祖とするハードボイルド手法を、推理小説に持ち込んで成功させたのはサミュエル・ダシール・ハメットであったが、続いて1933年にハメットと同じく、推理小説パルプ・マガジン『ブラック・マスク』誌でデビューを果たしたレイモンド・チャンドラーは、それまでゴミ扱いをされていた推理小説を文学に引き上げた、ハードボイルド推理小説界の圧倒的存在である。
1939年発表の本作「The Big Sleep」は、そのチャンドラーの処女長編であると同時に、彼の作品に於いての、と言うより、ハードボイルド小説の世界に於ける最も重要な主人公である私立探偵フィリップ・マーロウの初登場作品でもある。
マーロウは出現と同時に一躍有名になった。そして、生涯で7作品しかないチャンドラーの長編小説の主人公は全てマーロウであったのである。
そのスタイルは常に一人称形式。ストーリーはマーロウの視点で描かれ、また、余計な心情の吐露を取っ払った客観的な文体は、ストーリーを分かり難くさせている節もあるが、チャンドラーの長編作品群はハードボイルド小説史上の古典として高く評価されている。
大富豪スターンウッド将軍家に招かれたマーロウ。依頼の内容は将軍の次女カーメンが受けている強請りの解決についてであった。脅迫状の差出人の家の前に張り込んだマーロウは、稲妻の様な閃光と金属的で痴呆じみた叫び声を耳にする。続いて聞こえたのは三発の銃声だった。部屋に飛び込んでみると、そこには男の死体と裸身のカーメンの姿があった。
精神が薄弱な上に、色情の気のあるカーメンはトラブルの種を撒き散らかす。
次々に現れる不審な人物達、複雑化していく事件、更には先んじて起きていた将軍の長女ヴィヴィアンの夫の失踪も関わってくるのであった。
本作は、二度映画化されている。
1946年のアメリカ映画「三つ数えろ」ではハンフリー・ボガートが、1978年にはイギリス・アメリカ映画「大いなる眠り」でロバート・ミッチャムが主演をしているが、二人共役よりも年齢がいっている様に思う。特にロバート・ミッチャムは貫禄が有り過ぎだろう。チャンドラー自身は、一番イメージに近いのはケーリー・グラントであると明言している。
個人の感想をついでに述べれば、本書の冒頭に於ける将軍とマーロウの遣り取りがなかなか個性的で面白い。年老い、人生に飽いた将軍は老い先が短いらしく、普通の人間ならば耐えられられない様な高温の蘭栽培の温室の中で一日を過ごしており、マーロウもその温室に招じ入れられる。
将軍はブランデーを薦め、自分の好みはシャンパンで割ったものだと言うが、ただマーロウが飲むのを見るのみで舌で唇を湿らす。そして、匂いは好きだと言い、タバコを吸うマーロウをじっと見つめる。それから依頼を打ち明け、二人は会話を交わす。そんなシーンだ。
本書は、双葉十三郎の翻訳版である。原書自体が古いのであるから、日本語版の発刊は1956年で本書の出版も1959年。戦争を挟んでいる為にタイムラグは有るがそれでも随分昔だ。当然古くさい表現も有りはするが、時代がそうさせているのだからしょうがない。却って当時を想うに丁度良いと言うものだ。
最近では村上春樹もチャンドラー作品を新たに翻訳しており、試しに少し立ち読みしてみたことはあるが、わざわざ改めるまでの意味が見いだせなかったのが正直なところだ。
1939年発表の本作「The Big Sleep」は、そのチャンドラーの処女長編であると同時に、彼の作品に於いての、と言うより、ハードボイルド小説の世界に於ける最も重要な主人公である私立探偵フィリップ・マーロウの初登場作品でもある。
マーロウは出現と同時に一躍有名になった。そして、生涯で7作品しかないチャンドラーの長編小説の主人公は全てマーロウであったのである。
そのスタイルは常に一人称形式。ストーリーはマーロウの視点で描かれ、また、余計な心情の吐露を取っ払った客観的な文体は、ストーリーを分かり難くさせている節もあるが、チャンドラーの長編作品群はハードボイルド小説史上の古典として高く評価されている。
大富豪スターンウッド将軍家に招かれたマーロウ。依頼の内容は将軍の次女カーメンが受けている強請りの解決についてであった。脅迫状の差出人の家の前に張り込んだマーロウは、稲妻の様な閃光と金属的で痴呆じみた叫び声を耳にする。続いて聞こえたのは三発の銃声だった。部屋に飛び込んでみると、そこには男の死体と裸身のカーメンの姿があった。
精神が薄弱な上に、色情の気のあるカーメンはトラブルの種を撒き散らかす。
次々に現れる不審な人物達、複雑化していく事件、更には先んじて起きていた将軍の長女ヴィヴィアンの夫の失踪も関わってくるのであった。
本作は、二度映画化されている。
1946年のアメリカ映画「三つ数えろ」ではハンフリー・ボガートが、1978年にはイギリス・アメリカ映画「大いなる眠り」でロバート・ミッチャムが主演をしているが、二人共役よりも年齢がいっている様に思う。特にロバート・ミッチャムは貫禄が有り過ぎだろう。チャンドラー自身は、一番イメージに近いのはケーリー・グラントであると明言している。
個人の感想をついでに述べれば、本書の冒頭に於ける将軍とマーロウの遣り取りがなかなか個性的で面白い。年老い、人生に飽いた将軍は老い先が短いらしく、普通の人間ならば耐えられられない様な高温の蘭栽培の温室の中で一日を過ごしており、マーロウもその温室に招じ入れられる。
将軍はブランデーを薦め、自分の好みはシャンパンで割ったものだと言うが、ただマーロウが飲むのを見るのみで舌で唇を湿らす。そして、匂いは好きだと言い、タバコを吸うマーロウをじっと見つめる。それから依頼を打ち明け、二人は会話を交わす。そんなシーンだ。
本書は、双葉十三郎の翻訳版である。原書自体が古いのであるから、日本語版の発刊は1956年で本書の出版も1959年。戦争を挟んでいる為にタイムラグは有るがそれでも随分昔だ。当然古くさい表現も有りはするが、時代がそうさせているのだからしょうがない。却って当時を想うに丁度良いと言うものだ。
最近では村上春樹もチャンドラー作品を新たに翻訳しており、試しに少し立ち読みしてみたことはあるが、わざわざ改めるまでの意味が見いだせなかったのが正直なところだ。
2012年8月9日に日本でレビュー済み
現在、創元推理文庫から出版されていますが、既に絶版状態が続いているため、
チャンドラー作品をほぼ出版している早川書房に問い合わせたところ、
『大いなる眠り』は村上春樹による翻訳で刊行予定であるとのことです。
ただ、刊行時期は未定とのこと。
清水俊二氏も翻訳していない作品だからこそ、是非とも新訳で読みたい作品です。
皆さん気長に待ちましょう。
11月16日追記
早川書房より単行本で12月6日に村上春樹訳で刊行予定 1,785円
チャンドラー作品をほぼ出版している早川書房に問い合わせたところ、
『大いなる眠り』は村上春樹による翻訳で刊行予定であるとのことです。
ただ、刊行時期は未定とのこと。
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皆さん気長に待ちましょう。
11月16日追記
早川書房より単行本で12月6日に村上春樹訳で刊行予定 1,785円
2013年2月12日に日本でレビュー済み
「大いなる眠り」、というタイトルは、ウィリアム.シェイクスピアの「ハムレット」から採用されている可能性があるとのこと。 教養あるチャンドラーならではのセンスある題名や華麗なる比喩の素晴らしさはもちろんだが、双葉十三郎氏の訳文が味わい深い。小生のチャンドラー初体験はこの双葉訳のチャンドラーだったのだ。
冒頭の訳文などは完璧ではないかと思う。川端康成もビックリだ。当時、中学生だった小生は、斬新な比喩にショックを受けた。おもちゃしか知らない少年が大人の華麗なる世界に、初めて触れたような、新鮮な衝撃だったのだ。
確かに、いま読むと、双葉訳には古臭い箇所が少なからずあるのは否めない。「〜じゃ。」という将軍のセリフは古色蒼然としている。「もちろんさ」を「モチさ」というのもまた然り。“太陽族みたいな訳文”と言われても仕方ない部分もある。また、全訳ではなく抄訳である。
だが、基本的には格調高い訳文で、清水俊二氏と田中小実昌氏の良さをバランスよく兼ね備えたような趣がある。007で言えば、ショーン.コネリーとロジャー.ムーアの良さを兼ね備えたピアース.ブロスナンのようだ(異論は認める)。 是非とも、復刊を望む。あえてハードボイルドぽくなく翻訳した感のある村上春樹訳と読み比べるのも贅沢な愉しみだと思うからだ。
冒頭の訳文などは完璧ではないかと思う。川端康成もビックリだ。当時、中学生だった小生は、斬新な比喩にショックを受けた。おもちゃしか知らない少年が大人の華麗なる世界に、初めて触れたような、新鮮な衝撃だったのだ。
確かに、いま読むと、双葉訳には古臭い箇所が少なからずあるのは否めない。「〜じゃ。」という将軍のセリフは古色蒼然としている。「もちろんさ」を「モチさ」というのもまた然り。“太陽族みたいな訳文”と言われても仕方ない部分もある。また、全訳ではなく抄訳である。
だが、基本的には格調高い訳文で、清水俊二氏と田中小実昌氏の良さをバランスよく兼ね備えたような趣がある。007で言えば、ショーン.コネリーとロジャー.ムーアの良さを兼ね備えたピアース.ブロスナンのようだ(異論は認める)。 是非とも、復刊を望む。あえてハードボイルドぽくなく翻訳した感のある村上春樹訳と読み比べるのも贅沢な愉しみだと思うからだ。
2011年9月16日に日本でレビュー済み
本作は決して駄作ではない。
チャンドラーの作品の中でも水準以上の出来といえよう。
にも関わらず☆2個としたのは訳文による。
訳されたのが大昔だから仕方がないのかもしれないが、
現代において本書の文体はあまりにも古臭すぎる。
「〜なのじゃ」なんて今どきの年寄も使わない。
リアリティの無いことおびただしい。
ハードボイルドがリアリズムを標榜する探偵小説である
からには、当然訳文にもその点は求められるべきだろう。
是非に新訳を望む。
チャンドラーの作品の中でも水準以上の出来といえよう。
にも関わらず☆2個としたのは訳文による。
訳されたのが大昔だから仕方がないのかもしれないが、
現代において本書の文体はあまりにも古臭すぎる。
「〜なのじゃ」なんて今どきの年寄も使わない。
リアリティの無いことおびただしい。
ハードボイルドがリアリズムを標榜する探偵小説である
からには、当然訳文にもその点は求められるべきだろう。
是非に新訳を望む。
2004年3月18日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
久しぶりに読み直してみて、このマーロウシリーズの第一作には、中編でありながら、チャンドラーの長所も短所もすべてが詰まっていると感じた。
長所は、読中の何とも気持ちのよい雰囲気であり、読後のやるせないような思いである。これをリリシズムとかカタルシスとかいう言い方で表すのがハードボイルドの世界では一般になっているが、そのどちらも十分に堪能することができる。勿論、名作「長いお別れ」とは比べるべくもないが。
短所はやはりプロットが単調なことと事件性の弱さか。チャンドラーの作品はマーロウの格好よさが際立っており、彼が遭遇する人物達も造詣豊かで心に残るのだが、骨格になる事件が漠然としているために、何が事件だったか、印象に残らないのだ。そのため、読んで暫くすると、筋がさっぱり思い出せない。だから、何度読み返しても、その度に新鮮な感動を味わえるのだが。
長所は、読中の何とも気持ちのよい雰囲気であり、読後のやるせないような思いである。これをリリシズムとかカタルシスとかいう言い方で表すのがハードボイルドの世界では一般になっているが、そのどちらも十分に堪能することができる。勿論、名作「長いお別れ」とは比べるべくもないが。
短所はやはりプロットが単調なことと事件性の弱さか。チャンドラーの作品はマーロウの格好よさが際立っており、彼が遭遇する人物達も造詣豊かで心に残るのだが、骨格になる事件が漠然としているために、何が事件だったか、印象に残らないのだ。そのため、読んで暫くすると、筋がさっぱり思い出せない。だから、何度読み返しても、その度に新鮮な感動を味わえるのだが。