幻想怪奇と合理的解決が見事に融合した傑作。名のみ高くなかなか読めなかった人には驚天動地の復刊でしょう。
話は最初からかなり不可能興味が横溢していて「この小説、本当にミステリなのか」というくらい妖しい展開が続き、殆どホラーの様相を呈するけど、名探偵で精神科医の鋭い考察でなんとか合理的に解決する。が、最後の最後に至って釈然としないわだかまりも残り、本格推理小説を超えて一種異様な印象を残す逸品になっております。
この手の作品としては本当によく出来ていて、同業者のカー先生などかなり嫉妬したのではないかと邪推します。かの皆川博子氏も幻想ミステリとして大変好きだとか。
ただ、一言いっておくとあくまでミステリとしての傑作なので、期待しすぎてなにかとんでもない壮烈な小説だと思って読むと肩すかしを喰うかもしれないのでご注意を(昔個人的にそういう経験をしたもので。余計なお世話かもしれませんが)。
マクロイは色々復刊や新訳で読めるようになって作品ごとに毀誉褒貶あるのが判ってきましたが、これはかなり出来のいい部類にはいるといえ、最高傑作に名が挙がるのも頷けます。
昔、絶版状態の時に図書館から借りて感銘を受けたのが懐かしい思い出です。今回新訳で読んでも全然古びてないのが驚きでした。願わくば今回の版が絶版にならぬように。
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暗い鏡の中に (創元推理文庫) 文庫 – 2011/6/22
平凡な女性教師の解雇に秘められた驚愕の事情とは? 精神科医ウィリング博士は、幻のように美しく不可解な謎が生んだ事件と対峙する。マクロイの最高傑作、新訳版で登場。
- 本の長さ300ページ
- 言語日本語
- 出版社東京創元社
- 発売日2011/6/22
- ISBN-104488168078
- ISBN-13978-4488168070
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登録情報
- 出版社 : 東京創元社 (2011/6/22)
- 発売日 : 2011/6/22
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 300ページ
- ISBN-10 : 4488168078
- ISBN-13 : 978-4488168070
- Amazon 売れ筋ランキング: - 580,416位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 2,057位創元推理文庫
- - 3,489位ミステリー・サスペンス・ハードボイルド (本)
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2015年8月30日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
1950年発表の本作品は、70年代に邦訳された後、長らく絶版となっており、幻の傑作と呼ばれていたそうです。
それが、近年、著者の再評価が進み、2011年に新訳版が刊行されたもの。
内容は、ブレアトン女子学院の女性教師、フォスティーナが、勤務してわずか5週間だというのに、校長から突然解雇を告げられるところで幕を開ける。
その理由について、校長は固く口を閉ざしたままだが、彼女は、校内の人物(他の教師や生徒、メイド)の自分に対する態度がよそよそしいのに気づいていた。
親しい同僚、ギゼラは恋人のウィリング博士に調査を依頼するが、関係者の中から死者が出て…という物語。
フォスティーナを解雇に追い込んだ「ある現象」が、大変に不可解なもので、ホラーの要素の入ったものになっています。
これについて、合理的な説明がなければ、単なるホラーですが、さすがに「ミステリ」らしい解決が控えています。
しかし、あまり期待しすぎないことを、オススメします。
なぜなら、合理的解決を目指すと、ある方法に行き着いてしまい、全くの想定外ということはないだろうからです。
それでも、解決を導く糸口に工夫が凝らされていることには注目です。
また、ディクスン・カーの「火刑法廷」のような、合理的解決がされてもなお、不可思議な感覚が抜けきれないという、ミステリとホラーが融合したかのような余韻を残しているのが、趣向として楽しめました。
今度は絶版にならず、読み継がれてほしいと感じさせる佳作でした。
それが、近年、著者の再評価が進み、2011年に新訳版が刊行されたもの。
内容は、ブレアトン女子学院の女性教師、フォスティーナが、勤務してわずか5週間だというのに、校長から突然解雇を告げられるところで幕を開ける。
その理由について、校長は固く口を閉ざしたままだが、彼女は、校内の人物(他の教師や生徒、メイド)の自分に対する態度がよそよそしいのに気づいていた。
親しい同僚、ギゼラは恋人のウィリング博士に調査を依頼するが、関係者の中から死者が出て…という物語。
フォスティーナを解雇に追い込んだ「ある現象」が、大変に不可解なもので、ホラーの要素の入ったものになっています。
これについて、合理的な説明がなければ、単なるホラーですが、さすがに「ミステリ」らしい解決が控えています。
しかし、あまり期待しすぎないことを、オススメします。
なぜなら、合理的解決を目指すと、ある方法に行き着いてしまい、全くの想定外ということはないだろうからです。
それでも、解決を導く糸口に工夫が凝らされていることには注目です。
また、ディクスン・カーの「火刑法廷」のような、合理的解決がされてもなお、不可思議な感覚が抜けきれないという、ミステリとホラーが融合したかのような余韻を残しているのが、趣向として楽しめました。
今度は絶版にならず、読み継がれてほしいと感じさせる佳作でした。
2019年8月23日に日本でレビュー済み
美術の先生のフォスティーナの分身が現れる噂がたち、明確な理由を告げられず解雇される。彼女は前の学校でも同じようなドッペルゲンガー現象が原因で解雇されている。そして、フォスティーナがアリスを殺害する現場が目撃されるが、同じ時間帯に彼女と長距離電話をしているギゼラの証言があり、ドッペルゲンガーは本物ではないかと騒ぎになる。そして、当のフォスティーナも死亡する。
一連の事件の犯人は、とても意外な人物だ(そうじゃないと面白くないんだけどね)。探偵役のベイジル・ウィリング博士(ギゼラの恋人でもある)がドッペルゲンガーのからくりを見抜いたのは見事だが、残念ながら物証がない。犯人と対峙し、おどおどしい雰囲気のままラストを迎える。ウィリング博士がすべての謎を合理的に説明できたのが見事。いろんな伏線はあったのだが見事に騙された。スッキリしつつモヤモヤも残るが、それが読後感の良さにつながっている。
一連の事件の犯人は、とても意外な人物だ(そうじゃないと面白くないんだけどね)。探偵役のベイジル・ウィリング博士(ギゼラの恋人でもある)がドッペルゲンガーのからくりを見抜いたのは見事だが、残念ながら物証がない。犯人と対峙し、おどおどしい雰囲気のままラストを迎える。ウィリング博士がすべての謎を合理的に説明できたのが見事。いろんな伏線はあったのだが見事に騙された。スッキリしつつモヤモヤも残るが、それが読後感の良さにつながっている。
2013年3月9日に日本でレビュー済み
ここでの高レビュー、「幻の名作復活」に惹かれて読みましたが、これ、怪奇とミステリの融合なんてしてませんね。
それだったら、有名作でもっと良いのが幾つもありますよ。「バスカビルの魔犬」だの「暗闇坂の人食いの木」だの
ミステリファンでもない私でパッともっといいのがでるくらいなので、ここまで読むくらいの方だったらもっと色々知ってるでしょ。
この作品の場合、引っ張った挙句、無理のあるトリックで、犯人と思しき人物にはぐらかされ、尻切れトンボに終わる。
ってだけだったので、かなり肩すかしをくらいました。余韻が残る結末でなくて、オチがついてません。
探偵の推理を聞いた後の犯人(?)のドヤ顔で終わる、って作品は初めて読みました。
これくらいアマゾンのレビューと内容が食い違ってる事は珍しいです。
かなりの悪食だったり珍しい作品好きの相当なミステリマニアが喜ぶの?くらいの作品ですね。
それだったら、有名作でもっと良いのが幾つもありますよ。「バスカビルの魔犬」だの「暗闇坂の人食いの木」だの
ミステリファンでもない私でパッともっといいのがでるくらいなので、ここまで読むくらいの方だったらもっと色々知ってるでしょ。
この作品の場合、引っ張った挙句、無理のあるトリックで、犯人と思しき人物にはぐらかされ、尻切れトンボに終わる。
ってだけだったので、かなり肩すかしをくらいました。余韻が残る結末でなくて、オチがついてません。
探偵の推理を聞いた後の犯人(?)のドヤ顔で終わる、って作品は初めて読みました。
これくらいアマゾンのレビューと内容が食い違ってる事は珍しいです。
かなりの悪食だったり珍しい作品好きの相当なミステリマニアが喜ぶの?くらいの作品ですね。
2011年10月5日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
この本との出合いは1992年に遡ります。
「100冊の徹夜本」というミステリ紹介のガイドブックですが、滅法おもしろい本がありました。
「世間であまり話題にならないのに、面白い本。読み始めれば必ず、東の空がしらじらと明けるまで
読み通さずにはいられない面白本」ばかりを集め、紹介しているのです。
謎の書評家・佐藤圭。
その彼が1冊目に取り上げた作品がこの絶版になって久しい「暗い鏡の中に」というミステリでした。
ヘレン・マクロイの名前も知らなかった私ですが、この本をいつか読みたいと長年思っておりました。
中身は、ドッペルゲンガーの伝説を下敷きにした、幻想譚。ゴシックミステリとでも呼べる作品でしょう。
各章のはじめに載せられている、ヴィクトリア朝の詩人スインバーンの詩が、不気味な中にもこの作品に
ピタリと合った雰囲気を盛り上げています。
ミステリとして読むよりは、不思議な伝説に現実がまぎれこんでしまった幻想物語として読んでほしい作品です。
最近になってヘレン・マクロイは何冊かは復刊されて評判も(一部で)上々だったようですが、
この作品だけはなかなか復刊されず入手困難なままでした。やっと念願の名作、徹夜本を
手に入れることができました。
テンポのいい現代作家の作品とは1線を画しているマクロイですが、陰影のこまやかな表現や、
きらめくようなイメージが魅力でした。
ゆったりと、ページをめくり、古い恐怖小説の愉しみを得たい方にお薦めです。
「100冊の徹夜本」というミステリ紹介のガイドブックですが、滅法おもしろい本がありました。
「世間であまり話題にならないのに、面白い本。読み始めれば必ず、東の空がしらじらと明けるまで
読み通さずにはいられない面白本」ばかりを集め、紹介しているのです。
謎の書評家・佐藤圭。
その彼が1冊目に取り上げた作品がこの絶版になって久しい「暗い鏡の中に」というミステリでした。
ヘレン・マクロイの名前も知らなかった私ですが、この本をいつか読みたいと長年思っておりました。
中身は、ドッペルゲンガーの伝説を下敷きにした、幻想譚。ゴシックミステリとでも呼べる作品でしょう。
各章のはじめに載せられている、ヴィクトリア朝の詩人スインバーンの詩が、不気味な中にもこの作品に
ピタリと合った雰囲気を盛り上げています。
ミステリとして読むよりは、不思議な伝説に現実がまぎれこんでしまった幻想物語として読んでほしい作品です。
最近になってヘレン・マクロイは何冊かは復刊されて評判も(一部で)上々だったようですが、
この作品だけはなかなか復刊されず入手困難なままでした。やっと念願の名作、徹夜本を
手に入れることができました。
テンポのいい現代作家の作品とは1線を画しているマクロイですが、陰影のこまやかな表現や、
きらめくようなイメージが魅力でした。
ゆったりと、ページをめくり、古い恐怖小説の愉しみを得たい方にお薦めです。
2014年4月27日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
オカルト的作品で読み手を選ぶ本です。名作との呼び声に惹かれて購入しましたが・・・。科学を基軸に考える私にはイマイチ肌に合いませんでした。
2011年6月21日に日本でレビュー済み
カーの『火刑法廷』や皆川博子の『聖女の島』と並ぶ本格ミステリと怪奇幻想の融合を有機的に果たした傑作。
原型となった短編「鏡もて見るごとく」(短編集『歌うダイアモンド』所収)があくまで端正にまとまった破綻のない作品なのに比べ、本作の論理性の揺らぎを示唆するような結末はあまりに衝撃的。名状しがたい恐怖と美をたたえたラストシーンはミステリ史上に永遠に残る。
ハヤカワミステリ版の高橋豊訳が特に読づらかった記憶はないが、今回の新訳でマクロイの掛け値なしの代表作が広く読まれるのは喜ばしい。
原型となった短編「鏡もて見るごとく」(短編集『歌うダイアモンド』所収)があくまで端正にまとまった破綻のない作品なのに比べ、本作の論理性の揺らぎを示唆するような結末はあまりに衝撃的。名状しがたい恐怖と美をたたえたラストシーンはミステリ史上に永遠に残る。
ハヤカワミステリ版の高橋豊訳が特に読づらかった記憶はないが、今回の新訳でマクロイの掛け値なしの代表作が広く読まれるのは喜ばしい。
2013年10月9日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
オリジナルは1950年なので,相当昔に刊行されています。それでも古臭さがまったく感じられないのは,物語の舞台が閉鎖的な女子学院(今で言うところのボーディング・スクール)だからでしょうか。
とても映画的な小説で,読んでいると様々なシーンが具体的なイメージを伴って眼前に現れてくるようです。全体的に陰鬱な感じで,青空よりも曇り空,穏やかなそよ風というよりは強めの秋風,にぎやかな町並みというよりはうら寂しい田舎の田園地帯・・・そんなイメージです。
最後まで読み切っても謎は完全に解決されませんが,それだけにいっそう怪奇幻想小説としての魅力が増しているように思います。
とても映画的な小説で,読んでいると様々なシーンが具体的なイメージを伴って眼前に現れてくるようです。全体的に陰鬱な感じで,青空よりも曇り空,穏やかなそよ風というよりは強めの秋風,にぎやかな町並みというよりはうら寂しい田舎の田園地帯・・・そんなイメージです。
最後まで読み切っても謎は完全に解決されませんが,それだけにいっそう怪奇幻想小説としての魅力が増しているように思います。