イギリスの片田舎が舞台の牧歌的な展開と思いきや,さにあらず。謎が徐々に加速していく様は見事なページターナーで,未訳の作品も間違いなく紹介してもらえることを期待する。さらに蛇がキーポイントということだが,ここまでやってくれるというのも予想外。特に後半はD・カーのオカルト趣味どころか,日本の乱歩や横溝を彷彿とさせる土俗的なテイストや「血の狂気」もあって,それがグロテスク一歩手前の強烈な印象を残す。人間関係がやや複雑なのと,キーになる人物の事前提示がもう少し印象的ならよかったが,これは一気読みすれば解決だろう。
活動的なヒロインがとことん身体を張り,自らのトラウマと闘いながら「目覚め」ていくのも好印象だ(でも冒頭の思わせぶりな描写って…まさかこんな悩みがあったとはね。ちょっとやりすぎかと思うが,男女の読者で受けとめ方が異なるだろう)。
映画を意識したような視覚を喚起する場面も多々あり,サービス精神も旺盛。それが安っぽくなっていないのはストーリーテリングの力だが,さらに読みやすい翻訳も寄与している。同文庫のC・オコンネルも見習ってほしいものだ。
そうそう,例えば一昔前のオールスターキャストによるクリスティー映画のように,自らキャスティングしながら読むと面白いかも。適度にくせ者を配しつつ,自分ならヒロインはN・キッドマンで…だけど映画にすると,ヒロインの根本的なアレンジが必要なんだよなあ。あ,作中にホラー映画的なこけおどし演出がたまにあるのはご愛敬ってことで(笑)。はい,十分に楽しませていただきました。
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毒の目覚め 上 (創元推理文庫) 文庫 – 2012/8/25
蛇の毒で死んだ老人。世界で最も危険な蛇の出現。数々の事件は何者かの策略なのか? 謎に挑む女性獣医の姿を圧巻の筆致で描き、MWA賞受賞に輝いた壮麗なゴシック・ミステリ!
- 本の長さ310ページ
- 言語日本語
- 出版社東京創元社
- 発売日2012/8/25
- ISBN-104488207057
- ISBN-13978-4488207052
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登録情報
- 出版社 : 東京創元社 (2012/8/25)
- 発売日 : 2012/8/25
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 310ページ
- ISBN-10 : 4488207057
- ISBN-13 : 978-4488207052
- Amazon 売れ筋ランキング: - 399,395位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 1,482位創元推理文庫
- - 2,292位ミステリー・サスペンス・ハードボイルド (本)
- カスタマーレビュー:
カスタマーレビュー
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2013年9月22日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2013年2月12日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
殻に籠もって暮らす主役クララが、事件を紐解く過程で次第に内なる強さと美しさを解き放ち、人として当たり前の尊厳を手に入れ大いなる前進を果たす物語である。
事件の謎解き部は若干弱いが、後半山場はクララの正義感と逞しさと冷静な行動力に圧倒され中断できないほど力強い。
事件の謎解き部は若干弱いが、後半山場はクララの正義感と逞しさと冷静な行動力に圧倒され中断できないほど力強い。
2013年6月11日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
物語全体を覆う陰鬱なムード、個性的かつ魅力的な登場人物達、ところどころに散りばめられたユーモア、
二転三転する巧みなプロット、そしておぞましい真相・・・もう全てが秀逸です。
著者の本はデビュー作の「三つの秘文字」も読み、正直あまり好印象を抱かなかったのですが、
いやー、二作目で見事に化けましたね。
あまりの面白さに、寝る間も惜しんで上下巻、一気に読破してしまいました。
迷っている人がいたら是非読んでほしいです。
二転三転する巧みなプロット、そしておぞましい真相・・・もう全てが秀逸です。
著者の本はデビュー作の「三つの秘文字」も読み、正直あまり好印象を抱かなかったのですが、
いやー、二作目で見事に化けましたね。
あまりの面白さに、寝る間も惜しんで上下巻、一気に読破してしまいました。
迷っている人がいたら是非読んでほしいです。
2017年8月8日に日本でレビュー済み
最初にこの作者の1作目「三つの秘文字」を読み、作風がおもしろかったのでこの第2作目も読んでみようと手に取りました。1作目が英国の北端シェットランド諸島を舞台にしていたのに対し、こちらはイングランドの村での出来事から始まります。ちなみに作者はイングランド出身の女流ミステリ作家です。前作のテーマは土地の古い伝承をからめたものでしたが、今回はまず”蛇”です(後半は変わってきますが、そこはネタばれになるので)。最後の「謝辞」に記載された参考文献は蛇に関する本ばかりですが、かなり勉強してからこの小説を書かれたのだと思います。そして、その知識が作中で惜しみなく披露されているため、この本を読んだだけでも蛇の種類や生態についてそこそこ詳しくなれるほどです。中でも特に猛毒の蛇について。
ストーリーなどは他のレビューアさんが詳しく書いていらっしゃるので、ここではその他に自分が感じたことなど書いてみます。とにかく蛇が続々と登場するので、まず爬虫類が生理的にダメだという人にはこの作品は無理だと思います(汗)。家に満ちあふれた蛇、どこから出てくるかわからない猛毒の蛇タイパン、赤ん坊の上でとぐろを巻く蛇、ちろちろと舌を出してこちらをうかがっている蛇、鎌首を持ち上げて攻撃態勢にある蛇、集団になって川のように走る大量の蛇の群れ・・・などなど、蛇に関する描写に満ち満ちています。見とれるほど美しいという蛇も登場するのですが、頭の中でそれを思い浮かべるだけでも結構気持ち悪くて背筋がゾクソクしてきます。私自身はといえばどちらかと言えば嫌いだけれど、テレビや爬虫類館などでは怖いもの見たさについ見てしまう方で、そんな私でも、夢に出てきてうなされそうな気分になりました。
また、前回のヒロインがコミュ二ケーション障害気味の産婦人科医だったのに対して、今回は人嫌いでできるだけつきあいを避けている獣医で、理由は違うと言えどかなり似たタイプというか・・・もしかしてこれは作者自身がこういう傾向がある人なのでしょうか。決して悪い意味ではなく、私小説つまり自分が経験したことしか書けない作家がいますが、この作者もそういうタイプなのかもしれません。主人公が、人と会いたくない、話したくない、目を見たくない、返事したくない、一刻も早く1人になりたい、と、そんな内省的なつぶやきがとても多くて、前作と同じだからというせいもありますが、正直、またかという感もありました。同じ作者なので似たような作風になるのはしょうがないのですが、もうちょっと何か変化をと思ってしまいました。
後半はキリスト教の現状についても勉強になりました。完成度は1作目より高く、テーマも、意表をつく後半もよかったと思います。3作目も翻訳されているので、そちらも読んでみたいと思います。
ストーリーなどは他のレビューアさんが詳しく書いていらっしゃるので、ここではその他に自分が感じたことなど書いてみます。とにかく蛇が続々と登場するので、まず爬虫類が生理的にダメだという人にはこの作品は無理だと思います(汗)。家に満ちあふれた蛇、どこから出てくるかわからない猛毒の蛇タイパン、赤ん坊の上でとぐろを巻く蛇、ちろちろと舌を出してこちらをうかがっている蛇、鎌首を持ち上げて攻撃態勢にある蛇、集団になって川のように走る大量の蛇の群れ・・・などなど、蛇に関する描写に満ち満ちています。見とれるほど美しいという蛇も登場するのですが、頭の中でそれを思い浮かべるだけでも結構気持ち悪くて背筋がゾクソクしてきます。私自身はといえばどちらかと言えば嫌いだけれど、テレビや爬虫類館などでは怖いもの見たさについ見てしまう方で、そんな私でも、夢に出てきてうなされそうな気分になりました。
また、前回のヒロインがコミュ二ケーション障害気味の産婦人科医だったのに対して、今回は人嫌いでできるだけつきあいを避けている獣医で、理由は違うと言えどかなり似たタイプというか・・・もしかしてこれは作者自身がこういう傾向がある人なのでしょうか。決して悪い意味ではなく、私小説つまり自分が経験したことしか書けない作家がいますが、この作者もそういうタイプなのかもしれません。主人公が、人と会いたくない、話したくない、目を見たくない、返事したくない、一刻も早く1人になりたい、と、そんな内省的なつぶやきがとても多くて、前作と同じだからというせいもありますが、正直、またかという感もありました。同じ作者なので似たような作風になるのはしょうがないのですが、もうちょっと何か変化をと思ってしまいました。
後半はキリスト教の現状についても勉強になりました。完成度は1作目より高く、テーマも、意表をつく後半もよかったと思います。3作目も翻訳されているので、そちらも読んでみたいと思います。
2012年10月4日に日本でレビュー済み
舞台はイギリスの片田舎、若い獣医、クララは人目を避け、ひっそりとこの村に住んで4年。
しかし、近所に住む若い母親から、赤ん坊のゆりかごに蛇がいる、という助けを求める突然の電話によって、ひっそりと暮らしてきた彼女の日常は破られる。
村の平穏を次から次へと脅かす蛇の群れ。しかし犠牲となった老人は果たして本当に蛇の毒で死んだのか?
彼女の家に押し入ってきた老人は死んだはずではなかったか?
次から次へと押し寄せる謎は、彼女を村の陰惨な過去の事件へと導くのだが・・・?
謎が謎を、秘密が秘密を呼び、最後まで一気読み。すべての謎が最後にジグソーパズルのようにはまっていく見事さに感動です。
最初は家族とちょっともめて、人嫌いになった女性かな?くらいにクララのことを思いながら読み始めましたが、彼女の深い心の闇の理由も、村の秘密、殺人事件の謎とともに、徐々に明らかになり、慄然としました。
つらい気持ちをかかえながら、周囲の人を思い、孤軍奮闘していく彼女を応援しながらの読書となりました。
イギリスの美しい自然も描かれていて、暗く陰惨になりがちなストーリー展開でも、この村が魅力的で、これもまたこの本を読む楽しみとなりました。
おすすめの1冊です。
しかし、近所に住む若い母親から、赤ん坊のゆりかごに蛇がいる、という助けを求める突然の電話によって、ひっそりと暮らしてきた彼女の日常は破られる。
村の平穏を次から次へと脅かす蛇の群れ。しかし犠牲となった老人は果たして本当に蛇の毒で死んだのか?
彼女の家に押し入ってきた老人は死んだはずではなかったか?
次から次へと押し寄せる謎は、彼女を村の陰惨な過去の事件へと導くのだが・・・?
謎が謎を、秘密が秘密を呼び、最後まで一気読み。すべての謎が最後にジグソーパズルのようにはまっていく見事さに感動です。
最初は家族とちょっともめて、人嫌いになった女性かな?くらいにクララのことを思いながら読み始めましたが、彼女の深い心の闇の理由も、村の秘密、殺人事件の謎とともに、徐々に明らかになり、慄然としました。
つらい気持ちをかかえながら、周囲の人を思い、孤軍奮闘していく彼女を応援しながらの読書となりました。
イギリスの美しい自然も描かれていて、暗く陰惨になりがちなストーリー展開でも、この村が魅力的で、これもまたこの本を読む楽しみとなりました。
おすすめの1冊です。
2012年11月26日に日本でレビュー済み
とにかくおもしろいです。 中盤までは文句なしっ!
このミス上位もいけるんでは?! と思ったくらい。
前作の比ではありません。
ヘビのように、みごとに脱皮しましたね、この著者は。
「女」の描き方も、名手サラ・ウォーターズやミネット・ウォルターズをほうふつとさせます。
ここまでやるかっ? という「ランボー」まがいの大奮闘には笑いを禁じ得ませんでしたが、破たんぎりぎりのところでふみとどまった筆運び。
宗教や爬虫類のお勉強もできて、目からウロコ。
ヘビーな幕開けから軽快なエンディングまで、ちょっぴり読者サービスのロマンスも盛り込んでいて、楽しめます。
(無意味なフェイントなど、読者の推理を横道にそらそうとする小手先技がいくつか気になった分、星ひとつマイナスです。)
このミス上位もいけるんでは?! と思ったくらい。
前作の比ではありません。
ヘビのように、みごとに脱皮しましたね、この著者は。
「女」の描き方も、名手サラ・ウォーターズやミネット・ウォルターズをほうふつとさせます。
ここまでやるかっ? という「ランボー」まがいの大奮闘には笑いを禁じ得ませんでしたが、破たんぎりぎりのところでふみとどまった筆運び。
宗教や爬虫類のお勉強もできて、目からウロコ。
ヘビーな幕開けから軽快なエンディングまで、ちょっぴり読者サービスのロマンスも盛り込んでいて、楽しめます。
(無意味なフェイントなど、読者の推理を横道にそらそうとする小手先技がいくつか気になった分、星ひとつマイナスです。)