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暗殺のハムレット (ファージングⅡ) (創元推理文庫) 文庫 – 2010/7/27

4.3 5つ星のうち4.3 14個の評価

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ナチスと講和条約を結び、平和を獲得したイギリス。要人訪英を前にして、ひそかに進行する暗殺計画。ファシスト政治下の日常と非日常を巧みに描く、傑作歴史改変小説第2弾。
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登録情報

  • 出版社 ‏ : ‎ 東京創元社 (2010/7/27)
  • 発売日 ‏ : ‎ 2010/7/27
  • 言語 ‏ : ‎ 日本語
  • 文庫 ‏ : ‎ 481ページ
  • ISBN-10 ‏ : ‎ 4488279066
  • ISBN-13 ‏ : ‎ 978-4488279066
  • カスタマーレビュー:
    4.3 5つ星のうち4.3 14個の評価

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上位レビュー、対象国: 日本

2021年6月2日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
三部作一話目の『英雄達の朝』は、面白くはあっても登場人物達の自分本位さが鼻について、ちょっと引いてしまうところもありました。
が、この二話目は、二人の主役の一方であるヴァイオラの、自分本位なまでの役者魂が、物語を展開する原動力になっていて、ぐいぐい引き込まれます。
もう一人の主役カーマイケルと直接顔を合わせるシーンは殆ど無いのに、二人の人生が複雑かつ巧みに絡み合っているように見えて、更にそこにハムレットの生き様まで織り合わさって綾を成す、その構成と語りの上手さには溜め息が出ます。
『ハムレット』をこんな風に〈改変〉してくれるとは、シェイクスピアも草葉の陰でニンマリしているのではないでしょうか?
2018年2月27日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
じっくりと読み進めるべき本ですね。相変わらず驚くような出来事も急展開ないですが、着実に英国のファシズムは蔓延しつつあり、暗殺計画の実行で二幕は幕を閉じました。個人的には特別すごくおもしろいわけでもないのですが、なんとなく読んでしまう感じです。カーマイケルの行く末が見届けるため、三巻へ。
2011年1月19日に日本でレビュー済み
前作が、殺人の謎を解き明かす物語だったとしたら
本作は、殺人の成否を読者が見守る物語である。

殺害の対象は、悪名高いヒットラーと前作の殺人で英国首相になりおおせたノーマンビー。

歴史を知る我々はヒットラーの行ったユダヤ人迫害の悪行を知っているけれど、
作中ではそれは漏れ伝わるだけで、覆い隠されている。
その中で、暗殺が善であるか否か、暗殺で歴史が変わるのか、
問われてくる点も非常に興味深い。

読者が登場人物の心情に近づけば近づくほど、
「そういう見方もあるのか」「こう展開するのか」と驚かされること請け合いだ。
歴史改変小説であるだけに、読者も最後まで結末がわからない。
次作の展開がどうなるかの想像も踏まえて、楽しみとワクワク感は尽きない。

そして読み終えて、ああ、やはりこの展開しかない、これが最善なんだな、と
納得出来る読後感だった。

英国田舎の貴族の領地、市井の見物客も集まるロンドンの劇場を舞台としてきた本シリーズ、
書名を見る限り、次作はあそこが舞台なのかーと思うと、期待が高まる。

私は、選ばれるだけあって非常に優れた小説だと思う。
シリーズ全体の結末がどう決着するのか、楽しみでならない。
1人のお客様がこれが役に立ったと考えています
レポート
2010年10月24日に日本でレビュー済み
 最近流行のサンデル教授白熱教室風に言えば、「数万人の命を救うために約数名に死んでもらうのは是か非か?」とか「‘正義’実現のためだったら殺人も許されるか?」となるでしょうか。このテーマを抱えながら、息もつかせぬ面白さで物語は進みます。早々手元に確保した未読の完結編『バッキンガムの光芒』の赤い帯には‘怒涛の完結編!’と大活字が踊ってますが、第二部『暗殺のハムレット』後半から早くも‘怒涛の展開’で興奮を覚えました。
 小説の形式は第一部と同じですが、1人称で回想するヒロインは、貴族令嬢から反対を押し切って女優になった30代前半の女性に変わります。(勝手にケイト・ブランシェット風の容姿を思い浮かべてました。)
 1949年6月末〜7月初め、ヒトラー初訪英に際し、英独友好を世界にアピールするため英首相ノーマンビーとヒトラーは揃ってシドンズ劇場での『ハムレット』、コヴェント・ガーデンでのワーグナーのオペラ『パルジファル』、ウィンブルドンでの親善試合観戦に臨むことになり、独裁者2人を一度に片付けられる千載一遇のチャンスと、暗殺が計画されます。
 最近の映画『イングロリアス・バスターズ』も思い起こしましたが、カバーの絵のような絢爛かつ重厚な劇場内部の雰囲気や、読者の私達まで共に観劇している気分にさせられる素晴らしい演出・演技の『ハムレット』から、『ゴッドファーザー 第三部』のパレルモのオペラ劇場で繰り広げられるクライマックスが思い出されてなりませんでした。
 この『ハムレット』で主人公ハムレットに抜擢されたのが前述のヒロインで、あれよあれよと言う間に嵌められ暗殺加担から逃れられなくなり、毎日芝居の稽古をする傍ら、ハムレットの如く苦悩します。
 一方で、第一部から登場のカーマイケル警部補は、不満がありながらも組織人として任務を忠実に遂行し、その結果、個人として心の底で願っていた本音と逆の事に手を貸してしまった愚かさに気付き、今後は職務に忠実なフリをして裏をかこうと決意します。命じられるまま何となく歯車の一部になってしまうのはありがちですし、「どーせ独裁者を殺しても直ぐ次の独裁者が出て来るだけ」と言い訳して何もしないのが大多数の中で、まだ彼は良心的で勇敢な方で、完結編ではきっとヒーローとして活躍するのかなぁ。
 自分がヒトラー暗殺可能な立場にいたらどうしたか、暗殺計画を察知したら見て見ぬ振りをしたか、密かに応援したか、密告したか、――To be or not to be ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。きっと多くの読者にとってそうでしょう。
 ☆が5つまでしか付けられないのが残念です。
2人のお客様がこれが役に立ったと考えています
レポート
2010年9月10日に日本でレビュー済み
ナチスドイツが勝利し、そのナチと和解した英国を舞台にした歴史改変本格推理小説の第2弾。このファージングシリーズは、まだ第三巻を読んではいないが、今年度の翻訳ミステリ、あるいは翻訳SFのベストに挙げてもいい内容だと思う。

今回は第1作で、苦い結末を味わった主人公のカーマイクル警部補が、テロリストたちによるヒトラー暗殺の企てを追う。

その企てが成功するか否かは、ネタバレになるので書かないが、捜査を行うカーマイケル側とテロに巻き込まれる女優側の視点を交互に切り替えながら、とてもスリリングな展開になっている。きっと映像化しても面白いだろう。
また、前作では存在だけはほのめかされていたカーマイケルの私生活のパートナー、ジャックも登場し、よりカーマイケル中心の物語になってきた。(でもジャックのオネエ言葉は違和感があるな。同性愛者であっても、必ずしも女性言葉を使うとは思わないんだけど。原文でもそうなのかな?)

今回の結末も詳しくは書けないが、カーマイケルにとってはまたしても苦い結末。しかし、前回と違って、彼は置かれた状況に屈することなく、むしろ、その状況を利用し、ファシズムと戦おうとする。

前作でも思ったが、著者は単なるサスペンスものとしてこの小説を書いてはいない。ファシズムに染まった英国の政治、国民生活がどのようになるのか、そして、それを防ごうとする人々がどのような試みを行うのかといった、シミュレーションとしても読むことができる。

待ちきれず、次作も早速読み始めた。
4人のお客様がこれが役に立ったと考えています
レポート
2013年6月6日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
「ファージング」三部作の第二作。まさに、初作「英雄たちの朝」を引き続く形で綴られている。「英雄たちの朝」の主要メンバー(ファージング・セット)も顔を出すが、その対極にある人々からの視点で眺めている点が本作の特徴である。英国(民主主義国家)が次第にファシズムに染まって行く恐怖及び人種差別、階級社会、同性愛蔑視といった個人の自由を束縛するものへの強い反骨心といったテーマ、そして貴族の娘であるヒロインの一人称と捜査に当たるカーマイケル警部補の言動を主体にした三人称の章が交互に挟まれる構成等は初作と同様である。

これに幾つかの工夫が施してある。まず、全体をヒトラー及び英国首相(初作のマーク)暗殺劇に仕立て上げ、サスペンス(エンターテインメント)性を加味した。更に、ヒロインを舞台女優に設定し、「ハムレット」を演じさせる事によって、「ハムレット」が内包する悲劇性と(マーク等が推進する)英国が迎えつつある悲劇性を重層的に描いた。「ハムレット」の優柔不断性もヒロインの優柔不断性に投影されている。また、「ヘンリー八世」よろしく、ヒロインを六姉妹(中にはヒムラーの妻もいる!)とする事によって、血の繋がりという新たなテーマを設けた。そして、恐らくはIRAを意識した爆弾テロ批判という、これも新たなテーマを設けた。

正義漢カーマイケル警部補(三部作通しての主人公の由)の私生活を深く描いている点も特徴である。警部補自身に纏わる逸話も本作に深みを与えている。「英雄たちの朝」を凌ぐ充実した内容と言って良いのではないか。シリーズ最終作が楽しみである。
2011年3月27日に日本でレビュー済み
「ファージング'T英雄たちの朝」を読んだときは、正直ピンときませんでした。
しかし、ファージング'U暗殺のハムレットを呼んだ後では、「ファージング'Vバッキンガムの光芒」が早く読みたくてたまらなくなりました。
ファシズムの怖さについて、民主主義と自由の価値について、敢えて考えようと思ったことは無いのですが、この本を読んだ後では、考えずにいられません。
そのようなテーマを持ちながら、エンターテイメントとして完全に成立しています。
この本を読むきっかけを与えてくれた、週刊文春のミステリーランキングに感謝しています。
2018年1月19日に日本でレビュー済み
このシリーズ、一番盛り上がるところで本が終わる。主人公たちがこれからどうなるのか気になってしょうがないが、一読者に過ぎない自分は、彼らの人生の一場面にすれ違うことしかできないのか。マイナス1点はカーマイケルが若すぎる点。ひとり大活躍するのに20代とは。