私はすでにドグラマグラの文庫本を持っている。
しかし、私は文庫本は嫌いではないけど、
ひとつの文学作品が「分冊化」されて出版されることを極度に嫌う性分である。
私はただひたすらに、一冊の分冊化されない書物としての「ドグラマグラ」が欲しくて本書を購入した次第である。
夢野久作氏の作品について言えば、もし、彼が十年かけて「これを書くために生きてきた」
と言わしめた程の大作、ドグラマグラを発表していなかったならば、おそらく歴史に名を残す作家にはなれなかったであろうと思う。
それほどまでにドグラマグラという作品はあまりに衝撃的で、世界の推理小説中の屈指の傑作である。
おそらく昭和十年当時の人々にはこの作品は理解し難かったに違いない。
それゆえ、現代というポストモダン以降の人間にはかえって理解しやすい作品ではあるまいか?
読むと精神に異常をきたすという、いわく付きの奇書ではあるが、
それは根拠の無い都市伝説に過ぎないので、推理小説が好きな方はぜひ読むべきであります。
これを読まずして死ねるか!
というほどの傑作である
補記
もうひとつの解釈。
角川文庫版のドグラマグラのレビューにひと通りの解釈を並べてみたのだが、しかしこの作品には、それとはまったく別の解釈もありうると述べておきたい。
角川文庫版においた私は、この一連の殺人事件の犯人は正木博士だと断言してしまった。
確かに「あの巻物」が呉一郎の心理遺伝の直接の原因ならば、その正木犯人説は成り立つのだが、
では、第一回発作の時点で母親を殺害した根本的動機がそれだと曖昧になってしまう。
この第一回発作時においてはまだ呉一郎は巻物の存在を知っていない。
事情が混み入ってくるが、その場合、正木博士犯人説は成立しなくなる可能性が出てくる。
解釈次第では正木博士が呉一郎に巻物を渡したのは、呉一郎の心理遺伝を確証するために過ぎなかったかも知れない。
正木と呉一郎が親子の関係であることは間違いない。
正木博士は本気で本当の意味で呉一郎を救おうとしたのかも知れない。
その場合、犯人はやはり呉一郎という解釈も成り立つのだ。
「解放治療場」における惨劇を食い止めることが出来なかった正木博士が良心の呵責に耐えられずに投身自殺した可能性だってあり得ない話ではない。
上記のように解釈すると、今迄信じていたはずのストーリーがまるで違ってレールが狂ってくるのだ。
つまり少なくともこの物語には二種類の解釈可能性があるということだ。
あたかもマルチエンディング制のゲームの様に、、、である。
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日本探偵小説全集〈4〉夢野久作集 (創元推理文庫) 文庫 – 1984/11/30
夢野 久作
(著)
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溢れる奇想を独自の筆致で描いた夢野久作。ここには小説における代表的業績を収めた。短編「瓶詰の地獄」は、構成の妙が読者を圧倒する珠玉作。中編「氷の涯」における北の港ウラジオの地に想う氷の涯の幻想は、想像を絶する内容の大長編「ドグラ・マグラ」とともに、まさに久作の独壇場である! 解説・由良君美 挿絵・夢野久作、横山隆一
- 本の長さ804ページ
- 言語日本語
- 出版社東京創元社
- 発売日1984/11/30
- ISBN-104488400043
- ISBN-13978-4488400040
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著者について
1889年福岡県生まれ。慶應義塾大学中退。1926年『新青年』の懸賞に二等入選した「あやかしの鼓」でデビュー。不朽の大作『ドグラ・マグラ』をはじめ、怪奇と幻想を湛えた作風で知られる。他の著作は「押絵の奇蹟」「犬神博士」「キチガイ地獄」など。1936年没。
登録情報
- 出版社 : 東京創元社 (1984/11/30)
- 発売日 : 1984/11/30
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 804ページ
- ISBN-10 : 4488400043
- ISBN-13 : 978-4488400040
- Amazon 売れ筋ランキング: - 111,397位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 414位創元推理文庫
- - 687位ミステリー・サスペンス・ハードボイルド (本)
- カスタマーレビュー:
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2019年6月5日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
ドグラマグラと言えば、角川文庫の上下巻を読むパターンが多いと思いますが、私は出来れば一冊にまとめてほしい!のと、角川文庫の表紙は個人的に安直なエログロナンセンス的表現であまり好きじゃない、ということで、この夢野久作集を選びます。
約800ページ、非常に分厚く読みづらいですが、クラクラ眩暈がしそうなキチガイ地獄を心ゆくまで堪能できます。
宇宙について考え出すと、途方もないスケールに頭がおかしくなってしまいそうになりますが、ドグラマグラについて考えても同じことが起こりますね。
それとこれは余談ですが、ドグラマグラの作品構成は、ロックバンドThis Heatの1stアルバムと通ずるところがありますね。最初と最後のことですが。
他の2作品も非常に楽しく読めました。
おすすめ。
約800ページ、非常に分厚く読みづらいですが、クラクラ眩暈がしそうなキチガイ地獄を心ゆくまで堪能できます。
宇宙について考え出すと、途方もないスケールに頭がおかしくなってしまいそうになりますが、ドグラマグラについて考えても同じことが起こりますね。
それとこれは余談ですが、ドグラマグラの作品構成は、ロックバンドThis Heatの1stアルバムと通ずるところがありますね。最初と最後のことですが。
他の2作品も非常に楽しく読めました。
おすすめ。
2017年5月23日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
本書所収の「ドグラ・マグラ」は凄い。おそらく10数回は通読しているはずだが、その度に新しい発見・新しい解釈がある。ここまで読者を虜にする探偵小説は珍しいだろう。
同時に収録されている「瓶詰の地獄」と「氷の涯」も素晴らしい。
とにかく読んで見て欲しい一冊。
同時に収録されている「瓶詰の地獄」と「氷の涯」も素晴らしい。
とにかく読んで見て欲しい一冊。
2018年1月7日に日本でレビュー済み
「瓶詰の地獄」3部構成が巧い短篇。極限状況下の男女を描いて鮮烈。
「氷の涯」公金横領を巡る活劇スリラー風の作品ですが、この著者故の奇想に満ちた中篇。
「ドグラ・マグラ」説明不要、というか誰も説明できそうもない奇想小説の極北。
3篇とも凄いですが、やはり「ドグラ・マグラ」は断トツで凄い。この小説については色々な人が色々書いているので、私も勝手に好きな事を書かせてもらいます。
実を言えば私も今、所謂「狂人」という状態というか、統合失調症に認定されていて、毎日薬を飲まないとまずい、或いはおかしくなるという状況で日々日常の営み(働いたり、食事したり、トイレにいったり、ジムでトレーニングをしたり、小説を読んだり、音楽を聴いたり等)をしておるのですが、では薬を飲み忘れたりするとどういう状態になるかと言えば、テンションが高くなって一睡もできなくなったり、ジムのトレーニングが全く疲れなくなったりという状況で暮らしております。
まぁ精神の病気といってもピンからキリまであるので、一般的に危険という事で病院で一生暮らさないといけないという人もいたり、私の様にあまり危険性がないという事で日々社会生活が許されている人もいるので、あまりこういう病名がついたからといって、危険に思われると心外ではありますが、実際に危険な人もいるので、あまりデカい態度は出来ないのも真実だったりします。
この小説でも主人公が無意識の内に人を殺した疑いを晴らさないとならないという、こういう病気だと思われ易い、危険なタイプのキャラクター設定になっておりますが、こういう人だけではないという事も一応言っておきたいです。危険な人もいますが。
この作品に関して言えば、アイデンティティの揺らぎはジャプリゾ「シンデレラの罠」の先駆、推理小説の枠組みを借りた奇想小説としてはオブライエン「第三の警官」の先駆的作品だと思いました。1935年の時点の日本でこういう作品が書かれていたという事実に驚きます。大西巨人氏の「神聖喜劇」と共に世界文学史の中で議論すべき小説だとも思いました。
「ドグラ・マグラ」は読んだ人100人が100人とも違う解釈をしたり、感想を持ちそうな作品。他の二篇とともに必読、としか言えない小説でした。是非ご一読を。
「氷の涯」公金横領を巡る活劇スリラー風の作品ですが、この著者故の奇想に満ちた中篇。
「ドグラ・マグラ」説明不要、というか誰も説明できそうもない奇想小説の極北。
3篇とも凄いですが、やはり「ドグラ・マグラ」は断トツで凄い。この小説については色々な人が色々書いているので、私も勝手に好きな事を書かせてもらいます。
実を言えば私も今、所謂「狂人」という状態というか、統合失調症に認定されていて、毎日薬を飲まないとまずい、或いはおかしくなるという状況で日々日常の営み(働いたり、食事したり、トイレにいったり、ジムでトレーニングをしたり、小説を読んだり、音楽を聴いたり等)をしておるのですが、では薬を飲み忘れたりするとどういう状態になるかと言えば、テンションが高くなって一睡もできなくなったり、ジムのトレーニングが全く疲れなくなったりという状況で暮らしております。
まぁ精神の病気といってもピンからキリまであるので、一般的に危険という事で病院で一生暮らさないといけないという人もいたり、私の様にあまり危険性がないという事で日々社会生活が許されている人もいるので、あまりこういう病名がついたからといって、危険に思われると心外ではありますが、実際に危険な人もいるので、あまりデカい態度は出来ないのも真実だったりします。
この小説でも主人公が無意識の内に人を殺した疑いを晴らさないとならないという、こういう病気だと思われ易い、危険なタイプのキャラクター設定になっておりますが、こういう人だけではないという事も一応言っておきたいです。危険な人もいますが。
この作品に関して言えば、アイデンティティの揺らぎはジャプリゾ「シンデレラの罠」の先駆、推理小説の枠組みを借りた奇想小説としてはオブライエン「第三の警官」の先駆的作品だと思いました。1935年の時点の日本でこういう作品が書かれていたという事実に驚きます。大西巨人氏の「神聖喜劇」と共に世界文学史の中で議論すべき小説だとも思いました。
「ドグラ・マグラ」は読んだ人100人が100人とも違う解釈をしたり、感想を持ちそうな作品。他の二篇とともに必読、としか言えない小説でした。是非ご一読を。
2015年2月23日に日本でレビュー済み
2015.2.23.Tue 晴れ
夢野久作を読むのは初めてのくせに、いきなり大著の『ドグラ・マグラ』から読み始めた私。
知る人ぞ知る名著。
オノマトペを多用した独特の文体と、奇怪なキャラクターたちが演じる脳内地獄。
何よりその圧倒的な世界観。
胎児の夢、電話交換所としての脳、狂人解放場としてのこの世界、そして自己喪失。
もはやこれは一個の宇宙論、壮大な哲学の伽藍だろう。
本書には『瓶詰の地獄』、『氷の涯』も収録されているのでこれで1200円というのはお得感がある。
本書を読んで、夢野久作のほかの作品も読んでみたくなった。
夢野久作を読むのは初めてのくせに、いきなり大著の『ドグラ・マグラ』から読み始めた私。
知る人ぞ知る名著。
オノマトペを多用した独特の文体と、奇怪なキャラクターたちが演じる脳内地獄。
何よりその圧倒的な世界観。
胎児の夢、電話交換所としての脳、狂人解放場としてのこの世界、そして自己喪失。
もはやこれは一個の宇宙論、壮大な哲学の伽藍だろう。
本書には『瓶詰の地獄』、『氷の涯』も収録されているのでこれで1200円というのはお得感がある。
本書を読んで、夢野久作のほかの作品も読んでみたくなった。
2002年4月24日に日本でレビュー済み
ドグラマグラを読むだけでも他の文庫で買うよりも値段が安くすむ。その上、「氷の涯」という名作まで読めて満足度大。「氷の涯」は、とにかくラストシーンのためだけにも読む価値がある。
2004年10月9日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
本書は夢野久作集と銘打ってありますが、夢野久作の作品を全く知らない方にとっては少なからずとっつきにくい内容になっていると思います。その理由としては、収録作品が「瓶詰の地獄」「氷の涯」「ドグラ・マグラ」の三作しかないうえに、代表作である「ドグラ・マグラ」が全804P中631Pを占める大長編であることがあげられます。このことから本書は、夢野久作集というよりは、集大作である「ドグラ・マグラ」を読むための一冊といってよいと思います。そういった意味で、「ドグラ・マグラ」として薦めるのなら、三大奇書の一つとして読みたい方や夢野久作作品の終着地点として読みたい方など、「ドグラ・マグラ」に集中して興味がある方が最適だと思います。夢野久作の短篇や中篇がたくさん読みたいという方には、収録作品数が少ないのであまりお薦めしません。
付録として収録されている「夢野久作の作品について」は夢野久作の息子さんである杉山龍丸氏が書かれたものです。本書を最後まで読み終えた後のステキなお楽しみです。
付録として収録されている「夢野久作の作品について」は夢野久作の息子さんである杉山龍丸氏が書かれたものです。本書を最後まで読み終えた後のステキなお楽しみです。
2007年3月29日に日本でレビュー済み
夢野久作の代表作「ドグラマグラ」と「瓶詰の地獄」と「氷の涯」を収録した本書。「ドグラマグラ」単体を買うよりお得かもしれません。私がこれを買ったのは某文庫の奴の表紙が最悪だったからですけど。でも何故「キチガイ地獄」を収録しなかったんだろう?
今、「ドグラマグラ」をリメイク映画にしようっていう命知らずな人、いるんでしょうかねぇ?監督や脚本家は所謂Jホラーの名手とかじゃない人の方がいいですけど。
主演は誰でしょうね?松山ケンイチがいいな。
「ドグラマグラ」は話自体は難解ですが、文体が変わっていて面白いです。チャカポコ節はリズム感があります。ラストで明かされる真相はとても衝撃的です。
そして「これを読んだら発狂する」は誇大広告ではありません。
今、「ドグラマグラ」をリメイク映画にしようっていう命知らずな人、いるんでしょうかねぇ?監督や脚本家は所謂Jホラーの名手とかじゃない人の方がいいですけど。
主演は誰でしょうね?松山ケンイチがいいな。
「ドグラマグラ」は話自体は難解ですが、文体が変わっていて面白いです。チャカポコ節はリズム感があります。ラストで明かされる真相はとても衝撃的です。
そして「これを読んだら発狂する」は誇大広告ではありません。