過度の期待を以て購入し、物の見事に裏切られた。主題の凡庸さ・筋のつまらなさ・文章の硬さ等小説としての魅力が殆ど感じられず、読み通すのに相当の苦痛を伴った。更にミステリとしても悲惨な不良品で、「読者への挑戦」を挿入しながら論理的に犯人を指摘できる伏線は一切張っていない等、そもそも著者がミステリの定義を正しく認識していたとは到底思えない仕上がりだ。勿論、犯人たり得るキャラクターは1人しか出て来ないので挑戦される前から脱力系の真相はバレバレの状態。酷過ぎる。あんまりだ。
しかし、視点を変えて本作を我が国の元祖バカミスとして捉えたらどうだろう。直木賞受賞作史上屈指の珍品として、俄かに光を放ち始めるではないか。黒衣の怪人物が登場する終盤以降は大爆笑で涙が止まらないこと請け合いだ。内容の下らなさは保証する。絶対に読むべし。
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人生の阿呆 (創元推理文庫 402-1) 文庫 – 1988/7/1
木々 高太郎
(著)
比良カシウにはいっていたと思われるストリキニーネのために死者が出、比良家は家宅捜査を受けた。その時、物置小屋から無産党の弁護士の射殺体が発見される。そして、殺害時と目される日に、社長の息子良吉は、モスクワへ向けて旅立っていた……。直木賞を受賞し、著者の作家的地位を確立した作品を、初版の体裁を復元して愛好家に贈る。
- 本の長さ254ページ
- 言語日本語
- 出版社東京創元社
- 発売日1988/7/1
- ISBN-104488402011
- ISBN-13978-4488402013
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登録情報
- 出版社 : 東京創元社 (1988/7/1)
- 発売日 : 1988/7/1
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 254ページ
- ISBN-10 : 4488402011
- ISBN-13 : 978-4488402013
- Amazon 売れ筋ランキング: - 274,937位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2007年4月15日に日本でレビュー済み
本作は作者が探偵小説(当時の呼び方)とはどうあるべきかを模索した結果をそのまま書いた、ある意味実験小説である。なので、本作に対してトリックが云々とか、犯人の意外性がどうこうとか言っても意味がない。
読んでいれば犯人はすぐ分かるし、これと言ったトリックもない。作者はひたすら探偵小説はどうあるべきかを考えているのである。題名の「人生の阿呆」とは主人公の事を指しているとも言えるし、そのような模索を続けている作者自身を指しているとも言える。
日本におけるミステリの黎明期に、探偵小説のあり方を真摯に考えた作者の良心が伝わってくる一作。
読んでいれば犯人はすぐ分かるし、これと言ったトリックもない。作者はひたすら探偵小説はどうあるべきかを考えているのである。題名の「人生の阿呆」とは主人公の事を指しているとも言えるし、そのような模索を続けている作者自身を指しているとも言える。
日本におけるミステリの黎明期に、探偵小説のあり方を真摯に考えた作者の良心が伝わってくる一作。
2007年1月24日に日本でレビュー済み
比良カシウと呼ばれる小菓子の中に含まれたストリキニーネによるとみられる殺人事件が発生。大実業家比良良三の屋敷に向かった捜査陣は無産党の弁護士の射殺体を発見するというお話です。
推理(探偵)小説として初めて直木賞を受賞した作品。
作者の木々は探偵小説芸術論を掲げており、その名に恥じない業績であると言えるかもしれませんが、その後多くの人が指摘しているように推理小説としての要素と普通の小説が見事に融合しているとはいえません。
理想を高く持ちながらも残念ながらそれに見合うだけの作品を残していないですが、少なくとも従来の探偵小説にはなかった基軸を打ち出してきたことは確かであり一つのメルクマークであることは間違いないでしょう。
推理(探偵)小説として初めて直木賞を受賞した作品。
作者の木々は探偵小説芸術論を掲げており、その名に恥じない業績であると言えるかもしれませんが、その後多くの人が指摘しているように推理小説としての要素と普通の小説が見事に融合しているとはいえません。
理想を高く持ちながらも残念ながらそれに見合うだけの作品を残していないですが、少なくとも従来の探偵小説にはなかった基軸を打ち出してきたことは確かであり一つのメルクマークであることは間違いないでしょう。
2004年2月4日に日本でレビュー済み
それにしてもすごいタイトルですねえ(まるで太宰治か坂口安吾)。タイトルに惹かれて買ったのですが、読み終えて予想以上に満足しました。
作品中、主人公がソビエトを旅する場面で、挿絵ではなく、ロシアの風物をとった写真がたくさん使われているところが斬新でした(この写真は撮りおろしなのでしょうか? それとも内容に合ったものをどこかから転載したのでしょうか?)。解説にも書いてありますが、松本清張氏がこれにいたく影響を受けたそうです。なるほど、内容も大資本家と労働争議を背景にしている点、清張流の、社会派推理もののはしりのような感じだ、と思って読み進んでいくと、クライマックスでいきなり"読者への挑戦"登場!
私はかねてより、結局推理小説は、清張型とクイーン型の2極の間を行ったり来たりするしかないのではないかと考えていました。木々高太郎氏は、この作品の冒頭に探偵小説芸術論を高々と掲げていますが、その実践としてクイーン型と清張型をミックスするという手法をすでに(清張登場以前に)とっていたんですねえ。解説で、高村薫氏が述べているように、内容にいろいろ欠点はあると思うのですが、やはり日本推理小説史上の一つの記念碑的名作(推理小説史上初の直木賞受賞作ということはもとより)と呼んでもいいのではないでしょうか?
蛇足ながら、ロシア語の知識がないと解けない謎が一部あるのはちょっとアンフェアでは?
作品中、主人公がソビエトを旅する場面で、挿絵ではなく、ロシアの風物をとった写真がたくさん使われているところが斬新でした(この写真は撮りおろしなのでしょうか? それとも内容に合ったものをどこかから転載したのでしょうか?)。解説にも書いてありますが、松本清張氏がこれにいたく影響を受けたそうです。なるほど、内容も大資本家と労働争議を背景にしている点、清張流の、社会派推理もののはしりのような感じだ、と思って読み進んでいくと、クライマックスでいきなり"読者への挑戦"登場!
私はかねてより、結局推理小説は、清張型とクイーン型の2極の間を行ったり来たりするしかないのではないかと考えていました。木々高太郎氏は、この作品の冒頭に探偵小説芸術論を高々と掲げていますが、その実践としてクイーン型と清張型をミックスするという手法をすでに(清張登場以前に)とっていたんですねえ。解説で、高村薫氏が述べているように、内容にいろいろ欠点はあると思うのですが、やはり日本推理小説史上の一つの記念碑的名作(推理小説史上初の直木賞受賞作ということはもとより)と呼んでもいいのではないでしょうか?
蛇足ながら、ロシア語の知識がないと解けない謎が一部あるのはちょっとアンフェアでは?