2長編を収録。
「人でなしの遍歴」☆☆☆
3度も殺されかかった主人公は、自らの非道な過去を振り返りつつ、自分に恨みがありそうな人物をひとりひとり訪ねていく。
6人の容疑者を訪ね歩く各章は、文体がキビキビしており、スピーディーな展開で、グイグイと読ませられる。
誰に殺されるか分からずに死ぬのはイヤだが、それさえ分かれば、犯人がつかまらないようにアリバイ作りにも協力しようとうそぶく主人公が面白い。
終章までは大いに楽しめたが、犯人を特定する手がかりの出現が唐突なのと、非道な行いを繰り返してきた主人公がそれ相応の罰を受けることがないのが個人的な好みに合わず残念だった。
「静かな教授」☆☆☆☆
倒叙物。
経済学の大学教授が、その妻を「可能性の殺人」により葬り去る。
犯行方法としては、そんなに上手くかな?という疑問が残るが、失敗しても構わない「可能性の殺人」だから、それは良いとして、たとえ成功しても、すぐに露見するんじゃないかという犯行計画に脆弱さがあるように思えた。
とはいえ、一章で殺人を遂行するテンポの良い書きだしで、その後も、視点人物を適宜変えながら、加害者と被害者の真実の姿を徐々に明らかにしてゆく過程は十分にサスペンスフル。
探偵コンビや警部補の造形も際立っていて、会話も地の文も小気味よい。
したがって、倒叙物にありがちな退屈さを回避し、間然としない展開である。
しかし、「人でなしの遍歴」でも感じたことだが、クライマックスでもうひと盛り上がりに欠けるように感じられたのがいささか残念だった。
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人でなしの遍歴 (創元推理文庫 M た 2-4) 文庫 – 2001/4/1
多岐川 恭
(著)
半ば厭世観に囚われた篠原喬一郎は、三度命を狙われたとき甘んじて殺されてやろうとさえ思う。しかしその相手だけは知っておきたいと、犯人候補者六人の許へ。狸親父が贖罪の巡礼を行う『人でなしの遍歴』と、うそ寒い家庭生活を送る大学教授が孤高の学究生活を乱す虚栄の妻を殺すべく可能性の犯罪を試みる『静かな教授』を併せ収める。
- 本の長さ465ページ
- 言語日本語
- 出版社東京創元社
- 発売日2001/4/1
- ISBN-104488429041
- ISBN-13978-4488429041
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登録情報
- 出版社 : 東京創元社 (2001/4/1)
- 発売日 : 2001/4/1
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 465ページ
- ISBN-10 : 4488429041
- ISBN-13 : 978-4488429041
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,263,726位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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