小市民シリーズ第三弾は、小鳩君と小佐内さんが、それぞれ他の異性と付き合い始める意表の展開。特に小佐内さんは、下級生と付き合い、お姉さんぶって見せるのは驚き。ところが、この交際、キナ臭さが付きまとい、幸せそうなカップルに見えて、不穏なムードだった。間に、連続放火? 事件が起こり、それぞれの交際相手を通じて、小鳩君と小佐内さんも、無関係ではいられなくなるのだが、今巻のラストで、関連する謎が一気に弾けた感じ。
特に暗躍する小佐内さんが、凄い存在感。小学生みたいな幼い外見で、スイーツマニアと言う設定なので、暗い情念に満ちた行動とのギャップに驚かされる。まさか彼女が全てのシナリオを書いた黒幕なのか、と思わせる筆力で、下巻への興味が嫌が応にも高まった。一体この事件の真相は何か。一旦分かれた2人の関係も含めて、下巻を読むのが楽しみだ。
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秋期限定栗きんとん事件〈上〉 (創元推理文庫) 文庫 – 2009/2/28
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あの日の放課後、手紙で呼び出されて以降、ぼくの幸せな高校生活は始まった。学校中を二人で巡った文化祭。夜風がちょっと寒かったクリスマス。お正月には揃って初詣。ぼくに「小さな誤解でやきもち焼いて口げんか」みたいな日が来るとは、実際、まるで思っていなかったのだ。――それなのに、小鳩君は機会があれば彼女そっちのけで謎解きを繰り広げてしまい……シリーズ第3弾。
- 本の長さ254ページ
- 言語日本語
- 出版社東京創元社
- 発売日2009/2/28
- ISBN-104488451055
- ISBN-13978-4488451059
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商品の説明
著者について
米澤穂信
1978年岐阜県生まれ。2001年、『氷菓』で第5回角川学園小説大賞奨励賞(ヤングミステリー&ホラー部門)を受賞してデビュー。青春小説としての魅力と謎解きの面白さを兼ね備えた作風で注目され、『春期限定いちごタルト事件』などの作品で人気作家としての地位を確立する。11年に『折れた竜骨』で第64回日本推理作家協会賞、14年『満願』で第27回山本周五郎賞、21年『黒牢城』で第12回山田風太郎賞、翌年には同作品で第166回直木賞を受賞。他の著書に『さよなら妖精』『犬はどこだ』『追想五断章』『王とサーカス』『真実の10メートル手前』『本と鍵の季節』『米澤屋書店』などがある。
1978年岐阜県生まれ。2001年、『氷菓』で第5回角川学園小説大賞奨励賞(ヤングミステリー&ホラー部門)を受賞してデビュー。青春小説としての魅力と謎解きの面白さを兼ね備えた作風で注目され、『春期限定いちごタルト事件』などの作品で人気作家としての地位を確立する。11年に『折れた竜骨』で第64回日本推理作家協会賞、14年『満願』で第27回山本周五郎賞、21年『黒牢城』で第12回山田風太郎賞、翌年には同作品で第166回直木賞を受賞。他の著書に『さよなら妖精』『犬はどこだ』『追想五断章』『王とサーカス』『真実の10メートル手前』『本と鍵の季節』『米澤屋書店』などがある。
登録情報
- 出版社 : 東京創元社 (2009/2/28)
- 発売日 : 2009/2/28
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 254ページ
- ISBN-10 : 4488451055
- ISBN-13 : 978-4488451059
- Amazon 売れ筋ランキング: - 5,320位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 27位創元推理文庫
- - 34位ミステリー・サスペンス・ハードボイルド (本)
- - 462位文芸作品
- カスタマーレビュー:
著者について
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米澤 穂信(よねざわ・ほのぶ)
1978年岐阜県生まれ。2001年、第5回角川学園小説大賞(ヤングミステリー&ホラー部門)奨励賞を『氷菓』で受賞しデビュー。11年『折れた竜骨』(東京創元社)で第64回日本推理作家協会賞(長編及び連作短編集部門)、14年『満願』(新潮社)で第27回山本周五郎賞を受賞。『満願』、15年刊の『王とサーカス』(東京創元社)はそれぞれ3つのミステリ・ランキングで1位となり、史上初の2年連続3冠を達成。
(本データは「いまさら翼といわれても 「古典部」シリーズ」が刊行された当時に掲載されていたものです。「BOOK著者紹介情報」より)
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2015年8月20日に日本でレビュー済み
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謎解きにとり憑かれた小鳩くんと、復讐を愛する小佐内さんの活躍を描く〈小市民シリーズ〉第三弾。
シリーズ初の上下巻ですが、キリがいいところで分かれているので読みにくさは感じません。本作が長いとの評価もあるようですが、そもそも物語のスパンが一年近くありますし、本シリーズにおける非凡と平凡の差がはじめて如実に示される作品なので、必要な長さではないでしょうか。
前作のラストで袂をわかった小鳩くんと小佐内さん。本作ではふたりにそれぞれ新たな出会いがあり、新しいパートナーが見つかります。
本シリーズでは、徹底して小鳩くんの視点で語ることにより、小佐内さんの心情が明示されないよう意図されています。そのため本作を読む前、小鳩くんと距離を置いた小佐内さんをどう描くのか疑問でした。本作ではそれを、小鳩くんの一人称の語りと、小佐内さんの新パートナーである少年の一人称による語りを交互に配置することで解決しています。視点の交代は、小鳩くんとその男の子の対照を強調し、非凡な人間と平凡な人間のあいだにある越えがたい溝を浮き彫りにする仕かけとして機能してもいます。
展開は一応「犯人は誰か」というオーソドックスな形式で進むのですが、じつはその謎はさして重要ではありません。前作で小佐内さんは、ミステリーやサスペンスにおなじみの「ファム・ファタール(運命の女)」としての本性をあらわしましたが、本作でもその本領を発揮。これまで以上に彼女の真意が隠されたまま物語が進むので、その「語られなさ」が彼女のキャラクターに理解しがたく恐ろしいイメージを付与しています。
そして本作の(あるいは本シリーズをとおしての)なによりのキモである、彼女の真意とはいかなるものか、という謎。それが明らかにされたとき、背筋が凍りつくことになるでしょう。
また〈小市民シリーズ〉の第1、第2作は以下のタイトルで出版されていますが、タイトルどおり、おいしそうなスウィーツがたくさん登場するので、お腹が空くこと請け合いです。
第1作 春期限定いちごタルト事件
第2作 夏期限定トロピカルパフェ事件
シリーズ初の上下巻ですが、キリがいいところで分かれているので読みにくさは感じません。本作が長いとの評価もあるようですが、そもそも物語のスパンが一年近くありますし、本シリーズにおける非凡と平凡の差がはじめて如実に示される作品なので、必要な長さではないでしょうか。
前作のラストで袂をわかった小鳩くんと小佐内さん。本作ではふたりにそれぞれ新たな出会いがあり、新しいパートナーが見つかります。
本シリーズでは、徹底して小鳩くんの視点で語ることにより、小佐内さんの心情が明示されないよう意図されています。そのため本作を読む前、小鳩くんと距離を置いた小佐内さんをどう描くのか疑問でした。本作ではそれを、小鳩くんの一人称の語りと、小佐内さんの新パートナーである少年の一人称による語りを交互に配置することで解決しています。視点の交代は、小鳩くんとその男の子の対照を強調し、非凡な人間と平凡な人間のあいだにある越えがたい溝を浮き彫りにする仕かけとして機能してもいます。
展開は一応「犯人は誰か」というオーソドックスな形式で進むのですが、じつはその謎はさして重要ではありません。前作で小佐内さんは、ミステリーやサスペンスにおなじみの「ファム・ファタール(運命の女)」としての本性をあらわしましたが、本作でもその本領を発揮。これまで以上に彼女の真意が隠されたまま物語が進むので、その「語られなさ」が彼女のキャラクターに理解しがたく恐ろしいイメージを付与しています。
そして本作の(あるいは本シリーズをとおしての)なによりのキモである、彼女の真意とはいかなるものか、という謎。それが明らかにされたとき、背筋が凍りつくことになるでしょう。
また〈小市民シリーズ〉の第1、第2作は以下のタイトルで出版されていますが、タイトルどおり、おいしそうなスウィーツがたくさん登場するので、お腹が空くこと請け合いです。
第1作 春期限定いちごタルト事件
第2作 夏期限定トロピカルパフェ事件
2020年12月9日に日本でレビュー済み
私自身は殺人事件にあまり興味が無くて、ライトな謎解きの方が好みなのですけど、不思議と何度読み返しても楽しめるエピソードです。
2019年5月17日に日本でレビュー済み
二作目にて互恵関係に終止符を打った小鳩くんと小山内さんの高校二年の秋から高校三年の秋までの一年間を描いた上下巻の上巻であるが、冒頭からなかなか意表をつく展開で楽しめる。二人に初登場の恋人が出来る。
物語はこれまでと違い小鳩くん視点と今回初登場となる小山内さんの彼氏(!)であり健吾の所属する新聞部部員の瓜野くん視点で交互に進んでいく。
放火事件を巡って次第に小山内さんの不穏な雰囲気が増してくる中、秋から春までを描き下巻に続く。
物語はこれまでと違い小鳩くん視点と今回初登場となる小山内さんの彼氏(!)であり健吾の所属する新聞部部員の瓜野くん視点で交互に進んでいく。
放火事件を巡って次第に小山内さんの不穏な雰囲気が増してくる中、秋から春までを描き下巻に続く。
2022年10月9日に日本でレビュー済み
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米澤穂信氏は氷菓が初読みだったのですが他の本も読んでみたいと思い手に取った本でした。
2014年5月16日に日本でレビュー済み
前作の誘拐事件を通じ、このまま一緒にいても『小市民』を目指すことができないと考えた小鳩常悟朗と小佐内ゆきは
互恵関係を解消し、秋にそれぞれ仲丸十希子、後輩で新聞部の瓜野高彦と付き合い始めるところから物語が始まり、
やがて毎月第二土曜日の未明に市内のどこかで起きる不審火に、瓜野は新聞部で実績を残すためそして
小佐内ゆきに認められたい、もっと言えば自分に惚れ込んで欲しいという気持ちから、
一方の常悟朗は河川敷で燃やされたライトバンが前作の誘拐事件に使われていたことから、
それぞれが別々のアプローチで調査を開始するのだが……というのが上巻の簡単なあらすじ。
本作は前作、前々作と異なり常悟朗と瓜野、それぞれの視点で物語が進行するが、
それぞれが不審火についてどれだけの情報を得ているのかを意識しながら読むとよろしいかと。
前作、前々作を踏まえたうえで本作を読むと、瓜野高彦のある意味自己中心的な行動原理そして、
読み手が知る小佐内ゆきの『本性』を未だ知らないことが、彼の『掌の上の孫悟空』的な滑稽さを浮かび上がらせている。
常悟朗もまた、謎に邂逅したら相手の感情などお構い無しに解かずにはいられなくなるという「悪癖」から逃れることができず、
「小市民」的な生き方ができないというもどかしさと、謎を解いた後に一種のエクスタシーを得るという相反する感情を描き切っている。
すぐさま下巻へ突入したのは言うまでもない。
互恵関係を解消し、秋にそれぞれ仲丸十希子、後輩で新聞部の瓜野高彦と付き合い始めるところから物語が始まり、
やがて毎月第二土曜日の未明に市内のどこかで起きる不審火に、瓜野は新聞部で実績を残すためそして
小佐内ゆきに認められたい、もっと言えば自分に惚れ込んで欲しいという気持ちから、
一方の常悟朗は河川敷で燃やされたライトバンが前作の誘拐事件に使われていたことから、
それぞれが別々のアプローチで調査を開始するのだが……というのが上巻の簡単なあらすじ。
本作は前作、前々作と異なり常悟朗と瓜野、それぞれの視点で物語が進行するが、
それぞれが不審火についてどれだけの情報を得ているのかを意識しながら読むとよろしいかと。
前作、前々作を踏まえたうえで本作を読むと、瓜野高彦のある意味自己中心的な行動原理そして、
読み手が知る小佐内ゆきの『本性』を未だ知らないことが、彼の『掌の上の孫悟空』的な滑稽さを浮かび上がらせている。
常悟朗もまた、謎に邂逅したら相手の感情などお構い無しに解かずにはいられなくなるという「悪癖」から逃れることができず、
「小市民」的な生き方ができないというもどかしさと、謎を解いた後に一種のエクスタシーを得るという相反する感情を描き切っている。
すぐさま下巻へ突入したのは言うまでもない。
2015年10月11日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
小市民シリーズ第三作。
関係を解消した小鳩君と小佐内さんに恋人ができる。でも絶対後々別離が来るなとしか思えない(笑)
小佐内さんサイドとか特に終始キナ臭さが漂ってるし、というよりこの巻自体がどこか不穏な気配に満ちてる。
新たに第四の主要登場人物・瓜野が加わるけど、彼は等身大の男子高校生って感じで、だから見ていて憐れ。
また今回は健吾の出番と描写が多く、やっぱりこいつすげえなと思わせてくれる。
本筋の連続放火事件も勿論気になるけど、ラストで明らかになった三股……いい子だと思ったんだけどなあ。いや、いい子ではあるか……相変わらず苦い話だ。
関係を解消した小鳩君と小佐内さんに恋人ができる。でも絶対後々別離が来るなとしか思えない(笑)
小佐内さんサイドとか特に終始キナ臭さが漂ってるし、というよりこの巻自体がどこか不穏な気配に満ちてる。
新たに第四の主要登場人物・瓜野が加わるけど、彼は等身大の男子高校生って感じで、だから見ていて憐れ。
また今回は健吾の出番と描写が多く、やっぱりこいつすげえなと思わせてくれる。
本筋の連続放火事件も勿論気になるけど、ラストで明らかになった三股……いい子だと思ったんだけどなあ。いや、いい子ではあるか……相変わらず苦い話だ。
2015年5月27日に日本でレビュー済み
小鳩くんと小佐内さんは、前作の”夏季限定トロピカルパフェ事件”の最後でもったいなくもペアを解消しましたので、本作はそれぞれが新しいパートナーを見つけるところから始まります。上巻の中ほどは、話の密度が薄くスカスカした感じがして、うーん、これはヤッパリ夏季限定の方が面白かったか、などと思いましたが、下巻の中ほどからは、その分を取り戻すように快調になり、終わりで夏季限定を逆転してしまいました。
今回の事件は放火です。犯人は、多分この人かなというのは、物語の半分くらいで感じとれてしまいますので、興味は小佐内さんの関わりがどうなっているかに向きます。放火は罪が重いので、ちょっと心配になりました。
小鳩くんがいつものように切れ味鋭い頭脳で謎を解くのが物語の主題で、もちろん面白いのですが、このシリーズの魅力は小佐内さんのキャラクターであり、彼女と小鳩くんとの掛け合いです。本作でもあることはあるのですが、何しろそれぞれ別のパートナーを得るところから始まりますので、それは終わりの方になり分量も少なめで、ちょっと欲求不満が残ってしまいました。
この上は、米澤先生!、是非、第4作を。
今回の事件は放火です。犯人は、多分この人かなというのは、物語の半分くらいで感じとれてしまいますので、興味は小佐内さんの関わりがどうなっているかに向きます。放火は罪が重いので、ちょっと心配になりました。
小鳩くんがいつものように切れ味鋭い頭脳で謎を解くのが物語の主題で、もちろん面白いのですが、このシリーズの魅力は小佐内さんのキャラクターであり、彼女と小鳩くんとの掛け合いです。本作でもあることはあるのですが、何しろそれぞれ別のパートナーを得るところから始まりますので、それは終わりの方になり分量も少なめで、ちょっと欲求不満が残ってしまいました。
この上は、米澤先生!、是非、第4作を。