前作「キリストのクローン - 新生」の続きで、作品中に「前回のあらすじ」的な親切さがない本なので、「新生」から読まなければほとんど理解できないことにご注意を。
この本のサブタイトルである「真実」とは、神の真実に他なりません。
真摯なユダヤ教徒、キリスト教徒にとっては噴飯ものの内容でしょうが、本邦の「神狩り(山田正紀)」に近い解釈です。日本の作品である「神狩り」は、宗教心の薄い国柄ゆえ、SFとして一定の評価を得ましたが、この本がヨーロッパや米国、特にイスラエルでどのように受け取られたのかが気になります。
つまりそのくらい「涜神的」な内容なのです。神の否定どころか..............
ただ、文学史を振り返ると同様のテーマが散見されます。ドストエフスキーのカラマーゾフの兄弟の中の「大審問官」のように、神が全能であり善であるのであれば、なぜ善なる人、無垢な子供が理不尽な不幸に襲われるのか、という根本的な命題への解答の一つです。カミュはこの命題に対して「軽蔑」で応じ、ドストエフスキーは最後まで苦しむ道を選びました。最後の最後に勝利したのは信仰者であるアリョーシャですが、信仰の勝利ではなく、信仰に対して誠実な人間の勝利だったと思います。
とはいえ、近代人たる我々は心的態度の点で彼らからほとんど進歩していない、換言すればこの命題は未解決のままに残っています。
SFとして見れば、カタストロフィの描写など良く研究していると思います。この点、今までにないレベルです。映画化に向いています。ヒーローもいるし。
が、発想の飛躍がSF的に外に向かうのではなく、人間存在の根源に切り込んでいく作品なので、SFとしてはやや違和感があります。ホーガン好きなら合うように思います。
いずれにしても、テーマが普遍的なものであるためジャンル分けはあまり意味がありません。余計なお世話ですが、売りにくい本なのではないかと思います。
ボーセニューはこの本でパンドラの箱を開けました。問題提起であれば無数の人が行っています。これを次作でどのように解決するのか、とても楽しみです。
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キリストのクローン/真実 (創元推理文庫) 文庫 – 2011/6/29
ジェイムズ・ボーセニュー
(著),
田辺 千幸
(翻訳)
地球に迫りくる3個の小惑星。地球規模で再現される『黙示録』の世界。そして新生したキリストは人類創世の秘密を語る。『創世記』に描かれたことは、すべて真実であった。
- 本の長さ359ページ
- 言語日本語
- 出版社東京創元社
- 発売日2011/6/29
- ISBN-104488552056
- ISBN-13978-4488552053
登録情報
- 出版社 : 東京創元社 (2011/6/29)
- 発売日 : 2011/6/29
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 359ページ
- ISBN-10 : 4488552056
- ISBN-13 : 978-4488552053
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,524,000位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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上位レビュー、対象国: 日本
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2013年4月18日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
第一部では、とにかくぐいぐいとストーリーに引き込まれましたが、この第二部は、ストーリー展開の面では少しペースダウンした感じです。でも、聖書に書かれた災害の記述と符合する出来事の描写はスケールが大きく、この先のストーリー展開はどうなるんだろうと思わされました。第三部へのつなぎという面があり、第三部(未読です)に期待したいと思います。やはり、着想(テーマ)そのものが秀逸だと思います。
2011年11月5日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
第一部上巻は、結構面白かったのですが、下巻では、もう見捨てようと思いました。が!、勢いで、入手しました。が!!、やーっぱ、これは、私には向きませんね。中途半端過ぎて、どういう感覚で、読み進めればいいのか、わからず、全然、感情移入できません。個々のエピソードは、D××チャンネル辺りのシナリオをべったり書き写したような濃い部分があったかと思うと、突然、一行で、えらい事件が終わってしまうような場面もあったりで、バランスバラバラだし、その事件の原因も、謎というより、ただの、「神の力」?だったりするので、そんな力あるんだったら、変なことせんでもでええやんかという感想しか残りません。しかも、結局が、ダ・ビンチ・コードの焼き直しみたいな話なので、こりゃ苦しいです。原理主義的一神教保守主義へのアンチテーゼかもしれませんが、これでは、端から喧嘩にもなりませんね。挙句に、「人間が神だ」なんて、多神教にもならない。ただ、全く同じ話を、うまく書けば、もっともっと恐ろしく面白くできるのではないかと、想像だけはさせられるところもあるのが救いです。発想とか、モチーフは、いいのだと感じます。
2011年7月9日に日本でレビュー済み
前作『キリストのクローン/新生』の続編。前作で国連に務めることになったキリストのクローンである、クリストファーの正体が明かされ、さらにそこに潜む世界の謎、真実も解き明かされる。トンデモない展開。
前作を読んでいないと全く理解出来ない話の展開だけど、今回は、前半部分が小惑星の地球への衝突に始まる世界を襲う破滅的危機、後半部分が、その世界を救うため、キリストのクローンであるクリストファーが覚醒し、人々をニューエイジへ促そうとする話になっている。
前半部分の描写は、今回の東日本大震災のときの津波の記憶も真新しい現在、読んでいると吐き気を催すぐらいの怖さ満載の内容。目を背けたくなるような大惨事が繰り広げられる。その立て続けに起こる大惨事により25億人もの死者を出した人類だが、そこに救世主として現れるクリストファー。ある事件をきっかけに、かれは、覚醒し、人々に真実を告げようとするのだが...
その内容がトンデモない。この小説の前振りで、「著者からの大切なお知らせ」として、予めが著者が断っているように、キリスト教徒の一部にはかなり不快な思いを抱く人もいるだろう。神への冒涜とまではいかないけれど、読みようによっては、とても危険な書物だ。エンターテイメントとして読んでる分にはいいんだけど、クリストファーが明かした「真実」もよくあるトンデモ本みたいなところもあって、賛否両論かもしれない。お話としては面白かったが...
前作を読んでいないと全く理解出来ない話の展開だけど、今回は、前半部分が小惑星の地球への衝突に始まる世界を襲う破滅的危機、後半部分が、その世界を救うため、キリストのクローンであるクリストファーが覚醒し、人々をニューエイジへ促そうとする話になっている。
前半部分の描写は、今回の東日本大震災のときの津波の記憶も真新しい現在、読んでいると吐き気を催すぐらいの怖さ満載の内容。目を背けたくなるような大惨事が繰り広げられる。その立て続けに起こる大惨事により25億人もの死者を出した人類だが、そこに救世主として現れるクリストファー。ある事件をきっかけに、かれは、覚醒し、人々に真実を告げようとするのだが...
その内容がトンデモない。この小説の前振りで、「著者からの大切なお知らせ」として、予めが著者が断っているように、キリスト教徒の一部にはかなり不快な思いを抱く人もいるだろう。神への冒涜とまではいかないけれど、読みようによっては、とても危険な書物だ。エンターテイメントとして読んでる分にはいいんだけど、クリストファーが明かした「真実」もよくあるトンデモ本みたいなところもあって、賛否両論かもしれない。お話としては面白かったが...